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少年「ボクが世界を変えてみせる」
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1: 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:21:41 ID:apUuk9iOiY
むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。


786: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/1(木) 20:11:56 ID:ViDpTILY5o
行商人「それで落ちた時に行方が分からなかった友達も見つけたんだね?」

ルーボイ「おう。ケンカしちゃったけど…」

行商人「じゃあもう一回その子も探しに行こうか。仲直りして一緒に帰ろう、な?」ナデナデ

ルーボイ「」ジト

行商人「ん?なんだい、変な顔して?」

ルーボイ「なんでそんな優しくすんだよ?」

行商人「なんでって?」

ルーボイ「おっちゃんと俺は赤い人ってやつだぞ。変じゃんか!」

行商人「それを言うなら赤の他人だよ」

ルーボイ「どっちだっていいだろ!」

行商人「なんで、かぁ…。子供なのに難しいこと考えるんだなぁ?」

ルーボイ「いいから答えろよ!」

行商人「そんなこと言われてもなぁ…」ポリポリ

ルーボイ「おっちゃんだって、あの旅人みたいに騙すかもしんねーだろ!」

行商人「それを本人に言われても困るよ。しかも目の前で」
787: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/1(木) 20:26:11 ID:ViDpTILY5o
行商人「まぁ強いて言うなら…俺にも子供がいるんだ」

ルーボイ「子供?」

行商人「うん。今年で9歳になる」

ルーボイ「へっ!ガキじゃん!」

行商人「君もたいして変わらないだろう」ガビーン

ルーボイ「だからって助ける理由にはなんねーぞ!」

行商人「そうかもね。理由はないよ」

ルーボイ「ねーのかよ!」ガクッ

行商人「でも…君ぐらいの歳の子が助け合うのに理由を求めてはいけないよ」

ルーボイ「はぁ?」

行商人「君は知らない人が目の前でケガをして動けなかったらどうする?」

ルーボイ「え…声かけたり、大人を呼ぶかな」

行商人「それはなんでだい?」

ルーボイ「なんでって普通そうするだろ!」

行商人「そういうこと」

ルーボイ「いや、どういう事だよ!」

行商人「人を助けるのに理由なんていらない。そんなことばかり考えていたら寂しい大人になっちゃうよ」

ルーボイ「……!」

行商人「そうだろ?」ニカッ

ルーボイ「うん。そうだな!」
788: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/1(木) 20:32:55 ID:ViDpTILY5o
行商人「さて、さっき君が落ちた坂の下に来てみたけど」

ルーボイ「別の道があったんなら教えろよな。めちゃめちゃ痛かったじゃねーか」

行商人「(全然礼儀がなってないな…。この子の親の顔が見てみたい)」

行商人「君のお友達はどっちに行ったんだい?」

ルーボイ「あっち」ビシッ

行商人「じゃあそっちに行ってみようか」スタスタ

ルーボイ「」ピタッ

行商人「ん?どうしたの?」

ルーボイ「…俺、あいつの事殴った」

行商人「うん。聞いたよ」

ルーボイ「……」

行商人「早く見つけて仲直りしないとね?」ニカッ

ルーボイ「うん…」
789: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/1(木) 20:47:39 ID:ViDpTILY5o
行商人「結構深いとこまで来たな…」スタスタ

ルーボイ「あいつどこ行ったんだろ?」スタスタ

行商人「さぁ…この先の川を下って橋を渡ればミラルドの町だ。村からはかなり距離がある」

ルーボイ「……」

???「」グスッ

行商人「? 茂みから何か聞こえるね?」

???「ひっく…ひっく…」メソメソ

ルーボイ「パッチか!?」ダッ

行商人「あっちょっと」

ルーボイ「おい、パッチ!」ガサガサ

行商人「ま、待て!」ダッ

???「うえーん!」

ルーボイ「……あれ?」
790: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/1(木) 20:48:37 ID:ViDpTILY5o
???「うえーん!」

ルーボイ「お、おまえ誰?」オロオロ

行商人「ルーボイ君!勝手に走っちゃダメじゃないか!」タタタッ

ルーボイ「お、おっちゃん」アセアセ

行商人「ん?あの子が君のお友達かい?」

ルーボイ「違うっつの!」

???「グスッ…ぼく、シープ」

行商人「シープ君って言うのか。こんな森の中で何をしてるんだい?」

シープ「仲間とはぐれちゃって一人ぼっちなんだ」メソメソ

行商人「そうなのか…」

シープ「それにお腹も空いて…三日くらい何も食べてない」

行商人「それはかわいそうに…」

ルーボイ「おっちゃん、なんか食わせてやれよ!」

行商人「そうだね。売り物だがしょうがない。シープ君、顔を上げて。もう怖くないよ?」ゴソゴソ

シープ「ホント…?」ムクッ

行商人「」ビクッ

ルーボイ「おう。このおっちゃん優しいぞ!」

行商人「……!?」
791: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/1(木) 20:52:06 ID:J1qc8SjSd6
行商人「お、お、おま……」カタカタ

ルーボイ「どうしたんだ?」

シープ「ありがとう。人間のおじさん」ニコッ

行商人「こいつはホビットじゃないかぁ!?」

シープ「」キョトン

ルーボイ「あ、ホントだ。目が黄色だな」

行商人「は、離れろ!すぐに離れるんだ!」

ルーボイ「はぁ?」

行商人「消えろ!薄汚いホビットが!しっ!しっ!」シッシッ

シープ「……」

ルーボイ「お、おい…」

行商人「ホビットはいつも俺たちのかすみを食い漁る!
誰が食料なんか分けてやるか!勝手に野垂れ死んでろ!」

シープ「……」

行商人「ルーボイ君!行くよ!」

ルーボイ「なに言ってんだよ、こいつ助けてやれよ!」

シープ「?」

行商人「何を言ってるんだ!同じ空気を吸ったら呪われるぞ!」

ルーボイ「ホビットだからっていじわるすんなよな!さっき助けんのに理由はいらないって言っただろ!」

行商人「それとこれとじゃ話が全然違うじゃないか!」

ルーボイ「ホビットだって変わらねぇよ!」

行商人「だったら勝手にしたらいい!俺は知らないからな!」スタスタ

ルーボイ「おい、待てよ!」
792: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/1(木) 20:53:48 ID:J1qc8SjSd6
スタスタ スタスタ

ルーボイ「…何がダメなんだよ」

シープ「あ〜あ、行っちゃった!」ケロッ

ルーボイ「…ん?」

シープ「ねぇ。食べ物ある?」

ルーボイ「え…」

シープ「なんか出してよー!ねぇー!ねぇー!」グイグイ

ルーボイ「…おまえ元気じゃねーか!?」バッ

シープ「うん。元気だよ!お腹ペコペコだけど!」

ルーボイ「じゃあさっきのなんなんだよ!?」

シープ「うそっこでーす!」ピョンッ

ルーボイ「はぁ!?」

シープ「ビックリしたでしょー!」

ルーボイ「ウソだったのかよ!?」

シープ「うん!とびっきりのウソ!」キラキラ

ルーボイ「ふざけんなよ!心配しちまったじゃんか!」

シープ「あっ!ラムー!おかえりー!」フリフリ

ルーボイ「え?」

ラム「ただいま。シープ」スタスタ

バンパ「俺にもおかえりくらい言えよ!?」

シープ「あの行商人、食べ物持ってた!?」キラキラ

バンパ「おう。これなら1週間はしのげるぞ!」つ【袋】

シープ「わーい!」ピョンピョンッ

ルーボイ「わ、わけわかんねぇ…」
793: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/1(木) 20:58:03 ID:ViDpTILY5o
シープ「あ、こいつはどうするの?殺すの?」

ルーボイ「えっ」

ラム「その子は殺さないよ」

ルーボイ「な、なに…?」ドキドキ

シープ「ふーん」

バンパ「なんでもかんでも殺すとか言うんじゃない!」

シープ「いいじゃん!」

バンパ「これだからお子ちゃまは困るんだ。変な言葉を覚えたらそればっか言いたがる…」

シープ「むー!うるさい!」プクー

バンパ「うるさいってなんだ!」

シープ「ふーんだ!」プイッ

バンパ「…あぁもう!イライラさせる!」ガリガリ

ルーボイ「な、なんだよ…。なんなんだよ」ドキドキ
794: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/1(木) 20:59:44 ID:J1qc8SjSd6
ラム「怖がらせてごめんね」

ルーボイ「…は、はぁ?怖くねーし!」

ラム「あはは。そっか」ニコニコ

ルーボイ「…おっちゃんに何したんだよ?」

ラム「あの人間なら死んだよ」

ルーボイ「」ゾクッ

ラム「……」

ルーボイ「お前らがやったのかよ」

ラム「そうなるね」

ルーボイ「……!」

ラム「安心して。君には何もしないよ?」ニコリ

ルーボイ「」ボカッ

ラム「……!」ヒリヒリ

シープ「あぁっ!」

バンパ「何してんだ、ガキ!?」ズイッ

ルーボイ「うるせぇ!!」

バンパ「こんの…!」

ラム「バンパ!!」

バンパ「あぁ!?」

ラム「……」ジーッ

バンパ「う…わ、分かったよ」スッ

シープ「へいき?いたくない?」ナデナデ

ラム「平気だよ。シープ」ニコリ
795: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/1(木) 21:03:25 ID:ViDpTILY5o
ルーボイ「謝んねぇかんな!」プンスカ

ラム「いいよ。気にしてない」

ルーボイ「なんでおっちゃんを…」

ラム「殺してなんかいないよ。気絶させて、必要な物を貰っただけ」

ルーボイ「ま、またウソついたのかよ!」

ラム「ちょっとした遊び心。ううん、好奇心って言った方が正しいかな」

ルーボイ「はぁ?意味わかんねーぞ!」

バンパ「俺だって反対だったんだよ!こんなくだらない事に付き合わされんのは!」

ルーボイ「わかんねーよ!ちゃんと教えろっつの!」

シープ「はーい!ぼくが迷子のホビット役ー!」バッ

ルーボイ「えっ」

シープ「ぼくを助けてくれたらいい人間でー!助けてくれなかったら悪い人間!」

ルーボイ「?」

ラム「試したんだ。ここを通った人間でね」

ルーボイ「何がしたいんだよ!」

ラム「…森で会った同族が面白い事を言ってたんだ。差別しない優しい人間もいるってさ」

バンパ「それを確かめる為だけにラムのわがままで目的への足を止めてまで、こんな茶番劇をやらされたんだ!」

シープ「ぼくは楽しかった!」

ルーボイ「……!?」

ラム「君は合格。シープがホビットだって分かっても手のひらを返すようなまねはしなかったからね」

ルーボイ「……」
796: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/1(木) 21:06:39 ID:ViDpTILY5o
バンパ「もういいだろ。行こうぜ」スタスタ

シープ「バンパー!うそっこしたら疲れたー!」

バンパ「うるさい!しゃんとしろ!」スタスタ

シープ「ケチー!」タタタッ

ラム「じゃあそれだけだから、バイバイ」

ルーボイ「お前が言ってたのってカロルだろ…?」

ラム「……!」パチクリ

ルーボイ「なんとか言えよ」

ラム「」クスリ

ルーボイ「なに笑ってんだよ?」

ラム「…そんな気はしてたんだ」

ルーボイ「……?」

ラム「君はカロル君の友達なんだろ?」

ルーボイ「だったらなんだよ?」

ラム「カロル君を裏切らないであげてね」

ルーボイ「は…?」

ラム「あの子は…僕らとは違う。幸せになれる」

ルーボイ「…お前らは?」

ラム「」キョトン

ルーボイ「幸せになんねーのかよ?」

ラム「……」
797: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/1(木) 21:08:16 ID:J1qc8SjSd6
ナニヤッテンダー! ハヤクシロー!

ラム「今行くー!!」

ルーボイ「おい!どうなんだよ!?」

ラム「バイバイ!」タタタッ

ルーボイ「あっ!待てよ!」

タタタッ......

ルーボイ「……」

ルーボイ「なんだよ…。カロルのやつ!」

ルーボイ「ちゃんと友達いるじゃんか!」ニカッ

ルーボイ「よっし!俺もパッチを探すぞー!!」グッ

ルーボイ「おーい!パッチー!」タタタッ
798: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/7(水) 10:20:22 ID:uXqH8Y5qJ2
―――大聖堂(庭園)―――
ジョー「もう日暮れ時か…。二十歳を過ぎた頃から1日が早く感じる…」

ジョー「はぁ…なーんかジジクセェなぁ」

カツンカツン カツンカツン

ジョー「おっ」

宣教師「お待たせしました…」ズーン

ジョー「おう。お疲れ…さん?」

神父「たく…」ブツブツ

ジョー「二人ともどうしたんだ?」

神父「どうしたもこうしたもあるか!」

ジョー「な、なにがだよ?」

神父「教え子達がこいつを延々となじっていて私の教えを聞かなかったのだ!」

宣教師「ヘアヌード女、脱走女、ホビットの仲間と散々罵られて、筆記具を投げつけられて、誰も話を聞いてくれませんでした…」ガクリ

ジョー「ヘアヌードって…ほんとに子供が言ったのか、それ?」

神父「おかげで私までとばっちりを受けたのだ!」

宣教師「うぅ…せめてセミヌードと…」メソメソ

神父「そういう問題か!?」

ジョー「ガキんちょにまで広まってんのか…。まぁあんだけ派手に動いたんだ。しょうがねぇよ」

神父「それもこれも貴様が半裸でホビットと牢を抜け出したりしたからだ!」

宣教師「うぅ…ですがあの時は他に手立てが…」

ジョー「まぁまぁいいじゃねぇか。そんな事を言い合う為に集まった訳じゃないだろ?」

神父「ふん!」

宣教師「はい…」シクシク

ジョー「じゃあ3人集まった事だし、本題に入ろうぜ」

宣教師「本題と言っても…ジョーさんの話を聞かない事には始まりませんよ?」グスンッ

ジョー「あぁ、分かってる。全部話すよ」
799: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/7(水) 10:23:17 ID:uXqH8Y5qJ2
ジョー「(>>720-728)ってのを聞いちまってな」

神父「…本気で言っているのか?」

ジョー「あぁ、この耳ではっきり聞いたんだぜ。間違いない」

神父「…なぜだ。なぜ司祭様はそのような秘密を我々…。いや教徒全員に打ち明けて下さらなかったのだ!」

ジョー「…それじゃ秘密でもなんでもねぇだろうが」

宣教師「……」

ジョー「で、宣教師さん。あんたはどう思う?」

宣教師「大樹…癒しの力…王国…果実…」ブツブツ

ジョー「…心当たりでもあるのか?」

宣教師「確かではありませんが…まずは情報を探ってみましょうか」

ジョー「おっ!乗り気だな!」

宣教師「もう惑わされるのもうんざりですからね。こうなったら自分たちで真実を手繰り寄せるしかありません!」

ジョー「そうこなくっちゃな!」ニヤリ

宣教師「協力していただけますか?」

ジョー「当たり前だろ。俺はもうこんな組織には嫌気が差してんだ!
不透明で…無情で…人の心を弄びやがるやり方にな!」

宣教師「ありがとうございます」ニコッ
800: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/7(水) 10:24:16 ID:uXqH8Y5qJ2
ジョー「神父さんは?」

神父「…貴様ら、真実など知ってどうするつもりだ?」

宣教師「決まっているでしょう?」

ジョー「あぁ。分かりきった事を言うな」

神父「な、なんだ?」

宣教師&ジョー「「しかえんじつたぎゃふんえといわせてます!!」」

神父「!?!?!?」メダパニ

宣教師&ジョー「「えっ」」

神父「な、な、なんだって?」

宣教師「なんておっしゃいました?」

ジョー「仕返ししてぎゃふんと言わせる。あんたは?」

宣教師「真実を世に伝えます、と…」

ジョー「……」

宣教師「……」

神父「」ドキドキ

ジョー「ま、いいんじゃねぇか?」

宣教師「そうですね。目的など人それぞれです。辿る道と導が重なれば問題ありません」

神父「…こ、こいつら」ガクッ
801: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/7(水) 10:26:01 ID:uXqH8Y5qJ2
神父「バカバカしい。私は協力などせんぞ!」

ジョー「お、おいおい!ここまで来てそれは…」アセアセ

神父「10年以上、身を置いた組織に意趣返しなど出来るか!お前らの企みも全部報告してやるから覚悟しておけ!」

ジョー「てめぇ…」グイッ

神父「ひっ!や、やめんか!暴力はいかんぞ!」ビクビク

宣教師「ジョーさん!」

ジョー「…止めようってのか?」

宣教師「えぇ。暴力では何も解決しません。話し合いで収めましょう?」

神父「そ、そうだ!野蛮だぞ!雇われ者のぶんざ…ぐえっ」ググッ

ジョー「言わせとけば調子に乗りやがって…。
こっちはガキの頃から毎日力仕事してたんだ!お前なんかを捻り潰すのは訳ねぇぞ!」ググッ

宣教師「やめなさい!」ガシッ

ジョー「あんた優しすぎるぜ?こんな奴に何言ったって聞きゃしねぇよ!」

宣教師「落ち着いてください!お願いですから!」ギュッ

ジョー「わっちょっ!ち、ちょい!」アタフタ

宣教師「神父様を離してあげてください!」ギュッ

ジョー「わ、わかった!わかったから!」パッ

神父「」ゲホッゲホッ

宣教師「ありがとうございます…」ホッ

ジョー「い、いいから!あんたも離れろよ!」アセアセ

宣教師「あ、すみません」スッ

ジョー「(せ、背中に胸が当たってるっての…!)」カァァ
802: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/7(水) 10:28:18 ID:V3L/v4xpps
宣教師「神父様、どうしても協力していただけませんか?」

神父「ふ、ふざけるな!あんなことをされた後でまだ言うか!」プンスカ

ジョー「自業自得じゃねぇか」

神父「な、にゃにをうっ!?」

宣教師「これでも…協力していただけませんか?」ピラッ

神父「ん?それは…」マジマジ

宣教師「よく見てください」つ【絵】

神父「小僧が描いた…これがなんだと…」マジマジ

神父「…あぁっ!?」

宣教師「」ニッコリ

ジョー「ん?それがどうかし…えぇっ!?」

神父「あの小僧いつの間にぃぃ!?」

宣教師「彼の絵には私と村の子供二人、飼い犬のマルクくんとお母様。そして……」

ジョー「隅っこの余白に神父さんの似顔絵、か。よく描けてるわ。
こんなもんが司祭様にバレたらホビットの仲間扱いだな」

神父「お…おのれぇぇぇいぃぃぃ!!!」

―――一方その頃―――

カロル「くしゅんっ」

カロル「風邪…かな?」

カロル「服が欲しいなぁ。寒いよ…」ブルッ

カロル「……」

カロル「マルク…お母さま…宣教師さま…」

カロル「会いたい…」ギュッ
803: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/7(水) 10:30:54 ID:V3L/v4xpps
ジョー「やっと観念したか」

神父「くそぉ…ずる賢い種族め…!すでに罠を張っていたとはなぁ…!」

宣教師「ふふ。優しいカロルくんのことです。あなたを忘れるとかわいそうだと思ったんですよ。きっと?」

神父「余計なお世話だ!」

ジョー「じゃあ納得したとこで続きといくか」

宣教師「そうですね。まずは書斎に入って『大樹』『癒しの力』『ホビット』、三つの言葉が入った本を探しましょう!」

ジョー「はぁ!?」

宣教師「どうしました?」

ジョー「そ、そんなの時間がいくらあっても足んないだろ!
あそこに何千冊の本があると思ってんだよ!?」

宣教師「それぞれの題目ごとに棚が分かれていますから題目を伝承・史実に限定すれば、かなり絞れると思いますよ?」ニコッ

神父「それでも約500冊…。どんなに速読術を備えていても最低4日はかかるな」

ジョー「勘弁してくれよ!自慢じゃないが活字とか読めねぇんだ!」

神父「バカが。本当に自慢にならんな」

ジョー「うるせぇ!だいたい本なんか読み漁ってどうすんだ?」

宣教師「先ほどの話だけでは不明な点ばかりで何も明らかにされていませんし、少しでも手掛かりを見つけなくては…」

神父「…なぜ3つの言葉に限定して探すのだ?」

宣教師「話の流れから察するに『大樹』『癒しの力』『ホビット』、これらが共通して使われているように思えてならないのです」

神父「だが分かったところでどうする?たいした意味も無いかもしれんだろう」

宣教師「いえ、きっと大きな意味を持ちますよ」

神父「バカな。何を根拠に…」

宣教師「では一度整理してみましょう。その上で話し合えば答えは自ずと開けるはずです」
804: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/7(水) 10:33:45 ID:uXqH8Y5qJ2
宣教師「経緯は司祭様が教団を立ち上げてから、ですね」

神父「そこまで遡るのか?」

ジョー「まぁまぁ。オツムの出来から考えて、こん中で頼れるのは宣教師さんだけだ。黙って聞こうぜ」

神父「なっ!わ、私の頭脳をナメるなよ!!」

ジョー「あぁ、あんたはすげぇよ。とてもかなわねぇ」

神父「はっはっ!ようやく私の素晴らしさに気付いたか!」エッヘン

宣教師「…いいですか?」

ジョー「続けてくれ」

宣教師「これはアリアス様に聞いたのですが…本来の伝承は古代文字によって暗号化されていて、正確に伝えられたのは何十年か前の事のようです」

神父「うむ。私の生まれる前から伝承は明らかにされていたぞ。
教団を立ち上げて間もない頃、司祭様が解読し、王国に伝えたのだそうな」

宣教師「…そして名声と確固たる地位を築いた司祭様は多くの信者を抱え、それらの過程で得た教えを説いたのでしたね」

神父「だからなんだ?そんなのは教団員ならば常識だろうが?」

宣教師「…おかしいとは思いませんか?
ホビットにまつわる伝承は数多く存在しますが、人間に関する伝承がほとんど上がっていません」

ジョー「…うん。そういえばそうだな」

宣教師「…司祭様が解読した物はなにか、そこを突き詰めてみましょう」

神父「どういう事だ?」

宣教師「もし、これまでの教えが全て迷信だとしたらどうですか?」

神父「め、迷信だと?まだそんな事を言ってるのか?」

宣教師「昼間にジョーさんが話していたじゃありませんか。癒しの力を持つホビットは限られていると」

神父「……!そうか!司祭様は知っていたのだった!これまでホビットが癒しの力を持っていなかった事を!」
805: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/7(水) 10:36:05 ID:uXqH8Y5qJ2
ジョー「なのに教団から発信された伝承、聖典、史実、口頭からはホビットが癒しの力を持っていると伝わったわけだ?」

宣教師「えぇ、つまり伝承そのものが存在すら疑わしいまやかし物である可能性も否めません」

ジョー「それじゃ仮に司祭様はなんの為に、こんな凝った作り話を広めたって言うんだ?」

宣教師「それはおそらく…王国によって歪められたんだと思います」

神父「王国が伝承をでっちあげたと言うのか?そんなバカな!」

ジョー「いや、確かにそんな風な事を言ってたな。王国に利用されたとかなんとか…」

宣教師「ホビットへの差別を促す目的があったのではないでしょうか」

神父「…?」

宣教師「王国が伝承を作り替え、教団に広めさせて人々にホビットは悪という概念を植え付けたかったのではないかと」

ジョー「…そうなると司祭様が王国へ怒りを向けるのも、なんとなく分かるな」

神父「それなら伝承は…なんだったと言うのだ?」

宣教師「解読したモノは伝承とは異なるなにか…」

神父「なにかとはなんだ?」

宣教師「分かりません。ですがその答えが…3つの言葉に繋がる気がするんです」

ジョー「はは。なんだか随分と大きい話になってきたなぁ?」

宣教師「はい。この時点ではあくまで空想の域を出ませんが…」

神父「…だが、なぜ王国がホビットへの差別を促したと?」

宣教師「彼らを追いやる事で人間の世界を拡大したかったのではないですかね…」

神父「それだけの為にか?パッとせん理由だな…」

ジョー「そんなの考えてみても時間の無駄。
なんかしらの理由があった。それだけ分かってりゃいいじゃねぇか?」
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