むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
758:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 17:59:00 ID:i6iF4FIEZA
宣教師「このスープ、牢でも頂きましたね」ズズ
ジョー「言ったろ?司祭様のお情けでまともな飯を出してたんだよ」
宣教師「なるほど…」
「おい」
宣教師「?」クルッ
神父「こんなとこにおったのか」
ジョー「お!神父さんじゃねぇか。どうしたんだ?」
神父「見張りの分際でその口の聞き方はなんだ!」
ジョー「いいじゃねぇか。たいして変わんねぇよ。
あんたも俺も上に手綱引かれて畦道を走らされる馬車馬だ」
神父「なんだと!?」
ジョー「お互い貰えるニンジンは小さなもんだろ?」ニヤニヤ
神父「貴様と一緒にするな!!」
宣教師「どうなされたのですか?」
神父「司祭様に貴様を世話するように言われてな。これから私の下で働いてもらう事になった」
宣教師「神父様の下で…ですか?」
神父「まぁいわゆる教育係だな。邪教に通じていた小娘を面倒見る気にはなれんが、こうなったからにはコキ使わせてもらうぞ」
宣教師「」ムッ
ジョー「神父さんの下でか…。あんたも苦労が絶えねぇな」
神父「それはどういう意味だ!?」
759:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 18:04:04 ID:i6iF4FIEZA
宣教師「分かりました」スクッ
ジョー「おいおい、いいのか?まだ食い終わってないだろ?」
宣教師「えぇ、コキ使ってくださるようですので、存分に使われてきます」
神父「いい心がけだ。だがまだ食べていていいぞ。
手伝ってもらう前に渡したいものがあるのでな」
宣教師「?」
神父「」カサッ
宣教師「紙…?」
ジョー「まさか恋文でも書いてきたんじゃないだろうな?」ニヤニヤ
宣教師「えっ」
神父「そんな物を仕事前に渡すバカがいるか!?」
宣教師「」カァァ
神父「貴様も本気にするなっ!!」
ジョー「まぁこんなおっさんに恋文渡されてもな」
宣教師「お気持ちは嬉しいのですが…」
神父「貴様らいい加減にせんと本気で怒るぞ…!」ワナワナ
760:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 18:07:56 ID:rrB8Fet0jk
神父「ほれ、さっさと受けとれ!」つ【絵】
宣教師「これは…絵ですか?」
ジョー「どれどれ?」ヒョイッ
宣教師「あ、ちょっとジョーさん!」バッ
ジョー「へー!よく描けてるな!神父さんが描いたのか?」
神父「いや、これはホビットが描いたものだ」
ジョー「……は?」
宣教師「いいから返してください!」パシッ
ジョー「おっと」
神父「貴様に渡してほしいと頼まれたんでな」
宣教師「……」
ジョー「あのボウズは応接間の奥に閉じ込めてあるんだろ?
なんであんたに頼み事ができるんだ?」
神父「そんな事はどうでもよかろうが!」
ジョー「いや、どうでもよくないだろ」
神父「…どうでもいいと言ったらどうでもいいのだ!」
宣教師「(…これは私やルーボイ君、パッチ君を描いたもの…)」
ジョー「……」チラッ
宣教師「…カロ…ルくん」ギュッ
ジョー「はっ!やっぱりまだ吹っ切れてねぇんじゃねーか?」
宣教師「そ、そんな事はありません!」アセアセ
761:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 18:12:53 ID:rrB8Fet0jk
神父「なにぃ?貴様、また邪教に手を染めようとしているのか?」
宣教師「い、いえ…!」
ジョー「おいおい、そんな言い方はないんじゃないか?あんたもホビットの頼みを聞いちまったんだ」
神父「何が言いたい!?」
ジョー「ホビットに関わるのが邪教に通じるっていうなら、あんたも立派な邪教徒じゃねぇのか?」
神父「ば、バカを言うな!私はだな…!」
ジョー「あんたはどうなんだ?」
宣教師「え…」
ジョー「本当にいいのか?」
宣教師「…ジョーさんはホビットを憎んでいたのではないのですか?」
ジョー「…経験は人を変えるんだよ」
宣教師「……」
ジョー「もう一度聞くぜ。あんたはどうしたいんだ?」
宣教師「私は、もう彼らの事など…」
神父「わ、私も奴らを庇おうなどと思っとらんぞ!」
ジョー「あんだけ頑なだったのにどうしちまったんだ?」
宣教師「それは…」
神父「こいつは奴に騙されていたのだ!」
ジョー「?」
神父「奴らは癒しの力など存在しないと言っていた。しかし小僧は実際に我々の目の前で使ってみせたのだ!」
ジョー「…そういえば左目の布が取れてるな?」
神父「その通り!この傷は奴の力で塞がったものであり、癒しの力の存在を証明する確固たる印だ!」
ジョー「まさしく目印ってわけだ?」ニヤリ
神父「……!」カァァ
神父「そ、そういうつもりで言ったのではない!」
宣教師「……」
762:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 18:20:54 ID:i6iF4FIEZA
ジョー「それなんだけどな。裏があるかもしれないぞ?」
神父「はぁ?」
宣教師「どういう…ことですか?」
ジョー「あんまり大きな声じゃ言えないが昨日の夜に司祭様がアリアス様と話してたのを聞いたんだ」
神父「な、何を聞いたと言うのだ?」
ジョー「…癒しの力を持ってるのは、あんたが可愛がってたボウズだけだ」
宣教師「……?」
ジョー「うまく言えないが、そもそも癒しの力を持つホビットなんていなかったらしい」
神父「バカを言え!現にあの小僧は癒しの力を使ったぞ!」
ジョー「だから言ってるだろ?あいつ以外のホビットは使えないって」
宣教師「では…カロルくん達は嘘をついていたのではなくて…気付いていなかっただけ、ということですか?」
ジョー「ん?そうなのか?」
神父「なぜそうなる?」
宣教師「気付いていなかったのであれば、今までの発言も全て辻褄が合います」
宣教師「彼のお母様が『ホビットに癒しの力なんてない』とおっしゃられたことも、彼が直前まで力の存在を否定していたことも…」
神父「な、なるほどな!」
ジョー「ほんとに分かってんのか?」ジロジロ
神父「と、とと当然だ!!」シドロモドロ
763:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 18:26:50 ID:rrB8Fet0jk
ジョー「…そうすると気になるのは、なんで司祭様がボウズに癒しの力があると踏んだのか、だな」
神父「それは簡単だ。私が報告したのだ」
ジョー「えぇっ!?」
宣教師「彼が力を使うところを見たのですか!?」
神父「直接確認した訳ではないが二回ほど、それらしき場面があったんでな」
宣教師「そのような曖昧な報告で司祭様が確信なされたのですか…?」
神父「間違いなく使ったかと確認されたので、つい…間違いないと」
宣教師「あなたという人は……」
神父「だ、だがそうとしか思えん出来事があったのだ!」
ワイワイガヤガヤ
宣教師「神父様、声を抑えてください…」
神父「うっ」
ジョー「ここじゃ出入りが激しすぎるな。人目に付くし、聞かれてたって不思議じゃない」
宣教師「そうですね。一度場所を……」
シスター「神父様!」
3人「」ビクッ
シスター「礼拝堂で子供達が教えを待ちわびてますよっ!」ピシャリッ
神父「す、すまん。今行く…!」ガタッ
シスター「もうっ!早く準備してくださいね!」プンスカ
神父「分かっとる!貴様も来い!」
宣教師「わかりました」スクッ
ジョー「俺も持ち場に戻るとするか」スッ
シスター「先に行ってますからね!」スタスタ
宣教師「続きはまた後で」
ジョー「地下にいるよ。お務めに励んでな」
宣教師「はい」ニコリ
764:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 18:45:24 ID:i6iF4FIEZA
>>757
ありがとうございます!
そう言っていただけると、とても励みになります。
現状、あまり頻繁に更新出来そうにないのですが出来る限りお待たせしないように努力致しますので暖かい目で見守っていただけたら幸いですm(__)m
765:🎄 名無しさん@読者の声:2013/7/23(火) 16:34:19 ID:C6E.n7Fh6I
やっと追いついた!
サラッと読むつもりだったのに気付いたらしっかり読み込んでしもた…w
ハラハラとwktkが止まらないですが、忙しいなら無理はなさらずに(`・ω・´)つC
766:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/24(水) 19:02:48 ID:SkEtgVNlD2
>>765
追い付きましたか!読み込んでいただけたなんて恐縮です!
その上お気遣いまで…!
あまり更新の早いSSではないので退屈させてしまうかもしれませんが、どうかゆったりとした歩調で読み進めていただけたらと思います!
支援ありがとうございました!
767:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/24(水) 19:04:13 ID:SkEtgVNlD2
―――大聖堂(応接間の隠し部屋)―――
司祭「」ジロジロ
カロル「」ドキドキ
司祭「ふむ。キレイな顔じゃわい。体も改めるとしようかの?」
アリアス「かしこまりました」ガシッ
カロル「」ビクッ
アリアス「おとなしくなさい?乱暴にされたくはないでしょう?」
カロル「」ビクビク
アリアス「」ビリッビリッ
カロル「っ…!」
司祭「ふむふむ」ジロジロ
カロル「なに…?な、なんなの?」ビクビク
アリアス「透き通るような白い肌…。フフ、素敵」
司祭「なるほどのう…?実にキレイな肌じゃ」ニヤリ
カロル「」ゾクッ
アリアス「フフ…」ニヤニヤ
司祭「ほっほっほ」ニヤニヤ
カロル「(こ、コワイ…!)」ブルブル
768:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/24(水) 19:07:10 ID:Wy3d6Ik7q2
司祭「見事なものじゃ。昨日のアザがすっかり消え失せておるわ」ニヤニヤ
アリアス「間違いなく怪我を負わせたのですか?」
司祭「この杖を見たがえぇ。こやつの穢れた血がこびりついて茶褐色に褪せておる」つ【杖】
アリアス「…確かに1日で元通りになるとは到底思えないですわね」
カロル「ね、ねぇ。もういいでしょ?服を着させてよ?」
アリアス「替えの服を所望していますが?」
司祭「そんな物、ある筈がなかろう?卑しい種族めが…」
アリアス「だ、そうよ。残念だったわね?」ニッコリ
カロル「そんな…」
司祭「風邪をひこうがアザと同様に癒しの力が発揮されるじゃろうて。心配はいらぬよ」
アリアス「これでだいたいの概要は掴めましたね」
司祭「そうじゃのう。己の傷にまで作用するとは…たいしたものじゃわい」
アリアス「他に何か調べておきますか?」
司祭「いや、ヘタにいじらぬ方がよい。すでに必要な力は確認出来た」
カロル「……?」
769:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/24(水) 19:12:30 ID:Wy3d6Ik7q2
司祭「さて、戻るかの。お前さんも通常の務めに戻るがよい」
アリアス「かしこまりました」
カロル「あ…待って、ください!」
司祭「む?」
カロル「ボクたちは…どうなるんですか?」
司祭「愚問じゃな」クツクツ
カロル「ボクはどうなったっていいです!だからお母さまとマルクは……」
司祭「やっかましいぃぃぃぃ!!!」
カロル「」ビクッ
司祭「どうでもよい事をべらべらと…」
カロル「どうでもよくなんかっ…!」
司祭「…行くぞ」スタスタ
アリアス「はい」スタスタ
カロル「……」
バタンッ
カロル「お母さま…マルク……」
カロル「どうしたら、いいの…?」ギュッ
770:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/24(水) 19:19:30 ID:Wy3d6Ik7q2
―――村―――
ガシャァッ!!
ヒャハハハハハ!! キャアアァアァァ!!
バキッ ガッ ゴスッ チャグッ ビチョ
―――民家(ルーボイの家)―――
バンッバンッ
メイキ「なにが…どうなっているの?」ブルブル
メイキ「(神父様から大体の事情は聞いたけど…こんなのじゃない!)」
メイキ「(何がなんだかわか……)」
バカンッ!!
メイキ「あひぇっ!?」
テパ「ひらいた……ごま〜〜〜!!!」ワッショイワッショイ
村人4「こ、ここか…。ここなんだな!?」ズルズル
メイキ「あんた、魚屋の息子のテパじゃないか…!
く、鍬なんか持ってなにしてんのさ…!?」
テパ「うぉーナナナナナ!!」ジタバタ
771:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/24(水) 19:22:48 ID:SkEtgVNlD2
村人4「もう限界だ…!持ってんなら早くよこせ!」
メイキ「な、なにさ?なにをよこせってんだよ?」ビクビク
村人4「持ってないのか!?はま……」
テパ「なんでやねん!?」ガスッ
村人4「ぼごふっ」グシャッ
メイキ「イャアアアアアアアア!!!?」
テパ「ドタマぶっちぎり!スッキリすっからかんだぜ!」キラーン
メイキ「あんた、何してんのよぉ!?」
テパ「ハーマーキーくーれーよー」ブンブン
メイキ「はぁ!?」
テパ「ババアだから葉巻をもってこい!」
メイキ「誰がババアよ!?」
テパ「はーやーくー」ブンッ
村人4「」ゴシャッ
メイキ「」ビクッ
テパ「うってつけだぜ!!」キラーン
メイキ「ひぃぃ!」タタタッ
テパ「そっち?」スタスタ
772:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/24(水) 19:25:42 ID:SkEtgVNlD2
ガチャッ
メイキ「ルーボイ!逃げるよ!?」
シーン
メイキ「ルーボイ?」キョロキョロ
メイキ「(まさかあの子ったら勝手に出ていったんじゃ…!)」
テパ「葉巻ここ?」
メイキ「」ゾクッ
テパ「なぁ、なぁ、なぁ」
メイキ「ち、ちがう…ちがうのよ…!逃げようとしたんじゃないの!」アセアセ
テパ「ないっじゃんっ!?」ブンッ
ドカッ!!
メイキ「ハ、ハァァァ…!?」ドキドキ
メイキ「(床が…抜けて……)」
テパ「なぁ、なぁ、なぁ」ジリジリ
メイキ「やめて…や……」
テパ「」ブンッ
グシャッ!!
テパ「」ビチャッ ビチャッ
テパ「おもしろかっこいいぜ!!」シャキーン
773:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/28(日) 14:21:54 ID:myb4Deq0fM
―――夢(パッチ)―――
ワルド「どうしたね。パッチくん?目を瞑ってしまうなんてもったいないなぁ?」
「……!」ギュッ
ワルド「ほら、ごらんよ。こんなに楽しいショーを見逃したら、きっとあの世で後悔するよーん?」
バキッ ドッ ボカッ ギャァァァ!!
ワルド「いくらお目々を閉じてみたってお耳は素直に受け入れるだろう?」
ワルド「両親の悲鳴が…暴力の嬌声が…艶かしく耳をなぞってくれる」ニヤァ
「ワアァァァァァァ!!!!」
ワルド「ん〜?」
「あぁぁぁぁあぁぁ……あぁぁぁぁあぁぁ!!」
ワルド「自分の声で掻き消そうとしているんだねぇ?」ヘラヘラ
ワルド「よしよし。おじさんには分かるよ?そういうホビットを何匹も扱ってきたから…」ナデナデ
「わっ…!わっ…!わあ゛あ゛あ゛…!!」
ワルド「涙ぐましい努力だ。声が枯れてなお、聴くまいと声を張り上げる…」シュボッ
グシャッ ミシッ ベキッ ドガッ
ワルド「スー……ハァァ……」プカプカ
ワルド「こんな巻き草一つで崩れる理性なら、君も村人たちもいずれ朽ちていたさ」
ワルド「いい教訓になったろう?活かす機会も無いだろうがね?」
「っさい!!黙れ!!黙れよ!!」
ワルド「君もいっぱい吸い込んでおくといい。怒りも恐怖も悲しみも…」
ワルド「ぐちゃぐちゃに混ざった感情を、この煙たさが忘れさせてくれるだろう」
「うるさいって!言ってるだろ!?」
ワルド「くくく…」
ワルド「ぎゃはははははははは!!!」ゲラゲラ
…………………
774:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/28(日) 14:26:07 ID:yGLCYk4q6E
―――森―――
パッチ「わっ!わあ゛あ゛あ゛!!」パチッ
パッチ「…あっ…ふわ!」アタフタ
パッチ「……!」キョロキョロ
パッチ「に、逃げなきゃ…もっと、もっと遠くに…」スクッ
パッチ「」スタスタ
パッチ「」カクンッ
パッチ「へ?」グラッ
ズザァッ! ザザザザザザザァァ!!
パッチ「あぅ…うぅ……」ズルズル
パッチ「い、痛い……逃げないと…」スクッ
パッチ「」フラッフラッ
パッチ「あっ…」クラッ
パッチ「」バタッ
パッチ「(あれ…なんでだろ。体が動かない…)」
パッチ「(ボク…死んじゃうのかな)」ウツラウツラ
パッチ「(やだ…死にたく…ない……やだ………)」ウツラウツラ
……………………
775:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/28(日) 14:30:38 ID:myb4Deq0fM
ルーボイ「パッチ―!」スタスタ
ルーボイ「たく…あいつ、どこもいねーじゃん…」
行商人「ぼくー?何を探しているんだい?」
ルーボイ「へ?」クルッ
行商人「子供が一人で森に入ったら危ないじゃないか。迷子にならない内に家にお帰り?」
ルーボイ「おっちゃん…誰?」
行商人「おじさんは旅の商人だよ」
ルーボイ「旅の…!?」ブルッ
行商人「旅とは言っても一定のお客さんの所を回ってるだけだけどね。君は?」
ルーボイ「お、俺のことなんかいいだろ!別に!」
行商人「何を言ってるんだ。どうせそこの村の子だろ?」
ルーボイ「う、うるせぇ!」
行商人「おじさんが家まで送ってあげるから一緒に行こう。帰り道を忘れてしまったんだろ?」スッ
ルーボイ「来んな!」
行商人「なんだ、君は?人が親切で言ってるのに?」
ルーボイ「いいから!俺のことなんかほっとけよ!」
行商人「そういう訳にはいかないよ。子供を一人で森に置いてはいけない。
それに私も村に用があるんだ。ほんのついでだから遠慮しなくていい」
ルーボイ「用ってなんだよ?」
行商人「あそこの村長夫妻にご愛顧いただいていてね。週に一度はこうしてカーリン産のガーデンハーブを納めさせてもらってるんだ」
ルーボイ「なにそれ?」
行商人「上等な香りを持つ茶葉だよ。奥様の大のお気に入りなんだ」
ルーボイ「茶葉…葉っぱ…草……」
〜〜〜〜〜〜
『…たかだか巻いた"草"程度でここまで堕ちるとは思わなかったがね。
これじゃ証拠の隠滅どころか違法薬物に手を出したって事で、どのみちこの村は破滅するだろう』
〜〜〜〜〜〜
776:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/28(日) 14:33:09 ID:myb4Deq0fM
ルーボイ「ひっ」
行商人「?」キョトン
ルーボイ「うわあぁぁぁ!!!」タタタッ
行商人「えっ」
タタタッ タタタッ
行商人「ち、ちょっと!そっちは…!」ダッ
ルーボイ「あのおっちゃんも同じだ!」タタタッ
ルーボイ「…逃げなきゃ!殺される!」タタタッ
行商人「ま、待って!待ってくれ!」タタタッ
ルーボイ「や…来んな!くんなぁ!!」タタタッ
行商人「はぁっ…そっちは…!」ゼーゼー
ルーボイ「うわぁぁぁ!!」タタタッ
行商人「だからっ…そっちは…急な斜面が……」
ルーボイ「うるせぇ!うるっ…」カクンッ
ルーボイ「えっ」
ズシャッ! ゴロゴロゴロゴロ!
行商人「あぁぁぁぁ!!!」
行商人「だ、だから言ったのに…!」
行商人「お、俺は知らないからな!と、止めたのに…」ガタガタ
行商人「あんな崖みたいな勾配から落ちたら…」ブルブル
行商人「」ブルブル
777:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/28(日) 14:39:47 ID:myb4Deq0fM
ルーボイ「っ…てぇ〜〜〜〜〜」ズキンズキン
パッチ「」
ルーボイ「…ぱ、パッチ?」
ルーボイ「パッチ!おい、パッチ!」ユサユサ
パッチ「」
ルーボイ「パッ…チ……?」
ルーボイ「おい…起きろ。起きろよ…」ユサユサ
ルーボイ「なんでだよ…カロルはお前が生きてるって……」
ルーボイ「ウソだろ…!」ワナワナ
パッチ「ん……」
ルーボイ「ちくしょー!!」
パッチ「」ビクッ
パッチ「ルーボイ…くん?」
ルーボイ「…っ!?」
パッチ「ルーボイくん…なの?」
ルーボイ「パッチ!!」ダキッ
パッチ「わっ」ギョッ
ルーボイ「お前なにしてたんだよ!勝手にいなくなりやがって!」
パッチ「…ごめん」
ルーボイ「良かった!ほんと良かった!」
パッチ「どうして…ここにいるの?」
ルーボイ「お前がいなくなっちゃうからだろ!バーカ!」
パッチ「……」
ルーボイ「早く村に帰ろうぜ!」
パッチ「無理だよ…」
ルーボイ「へ?」
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