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少年「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1:🎄 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:21:41 ID:apUuk9iOiY
むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。


737:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/7(日) 12:36:05 ID:5qrvW4u.To
「あれ…おじいさまは?」

マリー「……」

「どこに行ったの?」

マリー「…おじいさまは出かけたわ。用事があるからって」

「用事って?」

マリー「さぁ?あたしも知らないけど、先に行ってていいそうよ?」

「え?またどこかに行くの?」

マリー「えぇ…同じ場所に留まり続けると人間に見つかる恐れがあるもの」

「そう…そうだね…」

マリー「さ、ゆっくり食べなさい。食べ終わったら行くわよ?」

「おじいさま…ひとりぼっちになっちゃう。やっぱり待とうよ?」

マリー「……」

「ね?いいでしょ?」

マリー「そうね…。少しだけ待ちましょうか」

マリー「それでも来なかったら、行きましょう…」

「うん!」

マリー「……」

……………………
738:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 19:56:31 ID:PQJ03F4Riw
―――大聖堂(応接間の隠し部屋)―――
カロル「」パチッ

カロル「いっ…!」ギシッ

カロル「腕が縛られ…てる?」

カロル「そっか…。ボク…捕まっちゃったんだっけ」

カロル「」ハッ

カロル「お母さま?お母さまは!?」キョロキョロ

コンコン コンコン

カロル「…?」

???「起きているか?」

カロル「…だれ?」

???「私だ」

カロル「神父のおじさま…?」

神父「うむ。寝覚めはどうだ?」

カロル「……」

神父「ククク…扉越しからでも分かるぞ?
その様子では望みは聞き入れられなかったようだな?」

カロル「うん…」

神父「ははは!当然の結果だな!」

カロル「っ…!」

神父「ホビットの分際で欲を掻くからこういうことになるのだ!」

カロル「なんで…」

神父「む?」
739:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 20:01:27 ID:Iq/2yn3AyA
カロル「なんでダメなの?」

カロル「ボク達が欲しがったらいけないの?」

神父「……」

カロル「ずっと…我慢してきたんだよ?」

カロル「いっぱい頑張ったんだ…」

カロル「自分たちのお家があって、おいしいご飯があって、お日さまが昇ったら心を通わせる友達とたくさん遊んで…」

カロル「お日さまが沈んだら柔らかいベッドであったかい毛布にくるまってぐっすり眠って…」

カロル「起きたらお母さまがいて、優しく笑ってるんだ」

カロル「少しずつだけど…夢が叶ってたのに…」

神父「くだらん願いだ」

カロル「なんでボク達が幸せじゃいけないの…!」

カロル「人間と…友達になったっていいじゃない!」

神父「それが許されるには清らかでなくてはならない。
お前達のように罪深く、浅ましく、薄汚れた種族には許されんのだ」

カロル「ボクらと人間の何が違うっていうのさ…!」

神父「なっ…!ふざけるなよ、貴様ぁぁ!」

カロル「」ビクッ
740:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 20:06:50 ID:PQJ03F4Riw
神父「太古よりお前達は癒しの力を奪った種族として忌み蔑まれる存在だ!
人を襲い、食物を盗み、王国の怒りを招いて人を破滅に追いやるホビットがどれだけいると思っているのだぁ!!」

カロル「……!?」

神父「己の罪も自覚せずに図々しい事ばかりぬかしおって!恥を知れ!」

カロル「」プルプル

神父「なんとか言ってみたらどうだ!?」

カロル「もういいよ!!」

神父「なにぃっ!?」

カロル「どっか行ってよ!ボク、おじさまと話したくない!」

神父「何を貴様ぁ!ここは我々の敷地内だぞ!?」

カロル「おじさまだってボクとなんか話したくないんでしょ!?」

神父「当然だ!」エッヘン

カロル「なら放っておいてよ!」

神父「い、言われなくともそうするに決まっとろうが!」

カロル「…じゃあそうすれば!?」

神父「ぐぬぬ…!」ギリッ

神父「ふん!」クルッ スタスタ

カロル「…なんなのさ」シュン
741:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 20:13:30 ID:Iq/2yn3AyA
――――――
カロル「…これからどうなるんだろう」

カロル「閉じ込められたままなのかな…」

コンコン コンコン

カロル「……?」

神父「おい!」ドンッ

カロル「わっ!」ビックリ

神父「…聞こえてるなら返事せんか!」

カロル「…な、なに?」

神父「…貴様、なにか頼みたい事はないのか?」

カロル「…へ?」

神父「頼み事はないのかと言っとるんだ!」

カロル「ど、どうしたの?」

神父「うるさい!いいから言え!」

カロル「…何がしたいの?」

神父「な、なに?」

カロル「また騙そうとしてるんじゃ…」ジト

神父「な、なんだと、貴様ぁ!?」

カロル「だって…変だもん」ムスッ

神父「うるさい!あるのかないのか!」

カロル「…もしかして暇なの?」

神父「なっ…なっ…にゃにをぅっ!?
人が下手に出てやればいい気になりおってぇ!!」

カロル「…違うの?」キョトン
742:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 20:47:08 ID:Iq/2yn3AyA
神父「目を癒してもらった礼に頼みの一つも聞いてやろうと言うに!邪推しおってぇ!!」

カロル「えっ」

神父「そこまで疑うなら知らん!いつまでも孤独に震えていればいい!」

カロル「お、おじさま!」

神父「」クルッ スタスタ

カロル「待って!」

カロル「おじさま…」

カロル「…行っちゃったの?」ウルッ

カロル「」ウルウル

カロル「うぇぇん…」ポロポロ

神父「やかましい!泣くな!」

カロル「……」

神父「最初からどこにも行っとらんわ!」

カロル「グスッ……!」

カロル「ごめんなさい…」

神父「ふん!」

カロル「でも…さっきまでひどい事言ってたから」

神父「む?うぅん…うぉっほん!」

カロル「……?」

神父「つ、罪深き種族に借りなど作りたくないからな!それだけだ!」

カロル「…そうなんだ?」ニコッ
743:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 20:49:20 ID:PQJ03F4Riw
神父「あぁ。そうだ!分かったらさっさと言え!
ただし無茶な頼みは聞かんからな!?」

カロル「…ホントにいいの?あのおじいさまに怒られるんじゃ…」

神父「うっ…!そ、それはお前が司祭様の前で口を滑らせなければいい話だ!」

カロル「そっか、そうだね!」

神父「さぁ言え!私の気が変わらん内にな!」

カロル「…宣教師さまに渡してほしい物があるんだ?」

神父「渡してほしい物だと?」

カロル「うん。宣教師さまにあげようと思って絵を描いてきたの!」

神父「…なんと幼稚な」

カロル「ダメ?」

神父「ダメだとは言わんが…そんなことでいいのか?」

カロル「うん!」

神父「てっきり母親と自分を牢屋から出せだのと無茶を言うかと思っていたが…」

カロル「ホントはそうしたいけど、そんなこと言ったらおじさま怒るもの」

神父「まぁな…」
744:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 20:51:06 ID:Iq/2yn3AyA
カロル「だからいいんだ。やり残したのって言ったら、これくらいだから」

神父「ふむ…。ちなみにだが、お前が司祭様に願おうとしていた望みとはなんだったんだ?」

カロル「なんで?」キョトン

神父「なんとなく気になっただけだ。黙って答えろ!」

カロル「あ、うん…えと…」

神父「……」

カロル「……」

神父「……」

カロル「……」

神父「…どうした?」

カロル「黙りながら答えようって思ったんだけど、分かんなくて」

神父「普通に答えればいいだろうが!?」

カロル「え?だって黙って答えろって…?」

神父「だからと言って黙る奴があるか!?」

カロル「ご、ごめんなさい」アセアセ

神父「まったく…面倒な奴だな」
745:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 20:58:06 ID:PQJ03F4Riw
カロル「ボクね。宣教師さまを許してってお願いしたかったんだ?」

神父「あぁ。それは前にも聞いたが…」

カロル「それからお母さまとマルクと3人で一緒に帰るんだ!」

神父「ふむふむ」

カロル「あと見張りのお兄さんにおやすみをあげてってお願いしようと思ってたの」

神父「む?なぜだ?」

カロル「お母さんのお見舞いに行きたいんだけど、おやすみが貰えないから行けなくて困ってるって聞いたんだ」

神父「それは確かに不憫だがお前が気にする事でもあるまい?」

カロル「えー。そうかな?」

神父「それはそうだろう?」

カロル「うーん…でも困ってるって聞いたよ?」

神父「そんなものは本人の問題だ。そっとしてやるのが普通だろう」

カロル「でも自分でなんとかできなかったらどうするの?」

神父「知らんわ!こちらには関係なかろう!」

カロル「それならどうしておじさまはボクの頼みを聞いてくれるの?」

神父「はぁ?」

カロル「それっておじさまが優しい人間だからだと思うんだ。
だから関係ないボクを放っておけないんじゃないかな?」ニコッ

神父「なっ…!な、な、なな…!」カァァ
746:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 21:08:18 ID:PQJ03F4Riw
神父「オホンッ…で、それが望みだったのか?」

カロル「ううん、他にもあったよ?」

神父「ずいぶん多いな…」

カロル「パッチくんを探してほしくて…」

神父「…逃げた子供か」

カロル「うん。どこに行っちゃったんだろ…」シュン

神父「……」

カロル「ちゃんと生きてる筈だよ?でも帰ってこないから…」

神父「…そうか」

カロル「うん…」

カロル「あとね。村にお医者さまを呼べたらいいなって…」

神父「……!」

カロル「みんな苦しそうで…無事な人間たちも悲しそうだったから」

神父「(こ、この小僧…)」
747:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 21:15:00 ID:Iq/2yn3AyA
―――回想(神父)―――
司祭「ほう…。そのような事になっておったか」

神父「はっ…。あのままでは村は崩壊の危機に瀕するかと思われます!」

司祭「何を言うとる?既に崩壊しとろうが?」

神父「は?いや、しかし…徐々に修正していけば元通りとはいかずとも息を吹き返せるのでは…」

司祭「ほほほ。それもまた一つの道じゃろうな?」

神父「は…?と、言われますと?」

司祭「まずは王国に報告して出方を見るとしよう」

神父「そ、そんなことを知らせれば…!」

司祭「まぁ…どう転ぼうと主が定められた道じゃよ」

神父「だ、黙っているという訳にはいかないのですか?」

司祭「黙ってなんとする?」

神父「は…?」

司祭「黙っていたとして万が一、王国に知られたらどうする?」

神父「そ、それは…」

司祭「そうなれば責めを負うのは我々じゃ。
謂れの無い罪を問われるのであれば何もかも話してしまった方がよい」

神父「……」
748:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 21:16:09 ID:PQJ03F4Riw
司祭「そう気を落とすでない。
お前にも、いずれまた別の布教地を任せてやろう。なにも急ぐ必要はない」

神父「い、いえ、そういう訳では…」

司祭「そんなことよりも、そのホビットが癒しの力を使ったというのは確かか?」

神父「そ、そんなこと…ですと…!?」

司祭「なんじゃ?」

神父「はっ…い、いえ…」

司祭「ふむ。それでホビットは癒しの力を使ったのか?」

神父「は、はい……」

司祭「ほっほっほ!そうか…それは実に許しがたい…!」ニヤリ

神父「……」

……………………
749:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 21:17:49 ID:Iq/2yn3AyA
「ま……さま…?おじさま…?」

神父「」ハッ

カロル「おじさまー?」コンコン コンコン

神父「す、すまん…。少しボウッとしていた」

カロル「大丈夫ですか?」

神父「うむ…」

カロル「急に声がしなくなったから心配したんだよ?」

神父「あぁ…すまんな」

カロル「平気。ボクは気にしてないよ!」

神父「…とりあえず約束通り、絵は届けてやる。
扉を開けるが逃げ出そうなどと思うなよ?」

カロル「はーい!」

神父「…」ガチャッ

神父「む?なんだ、これは?」ガチャッガチャッ

カロル「どうしたの?」

神父「鍵は回した筈なのだが扉が開かんのだ」

カロル「え……」

神父「一体どうなっているんだ?」ガチャッガチャッ

「その扉は特別でのう」

神父「」ビクッ

司祭「扉に備え付けられた鍵の他に…わしが持つ、この鍵を差し込まねばならんのじゃよ?」ジャラジャラ

神父「しさ……ぃ…さま…!?」

司祭「時に神父よ…。貴様、そこで何をしておるんじゃ?」

アリアス「…立ち入りを禁じていた訳ではないけれど、無断で扉を開けるのはまずいんじゃないかしら?」

神父「……!?」
750:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 13:46:55 ID:klXJlN7p4w
司祭「何をしとると聞いておろうに。さっさと答えんか」

神父「そ、それは…」

アリアス「まさか逃がそうとしていたの?」

神父「ち、違います!断じて!」

司祭「では何をしておったんじゃ?」

神父「む、村で起こった出来事にどこまで関わっていたのか…聞き出そうと思いましてな」

司祭「なんじゃ。まだこだわっておったのか?その話はもう済んだじゃろうが?」

神父「は、はぁ…」

司祭「…まことにそれだけか?」

神父「……」

司祭「話を聞くだけであれば扉を開く必要はあるまい?」

神父「失礼致しました!こうなれば恥を忍んで申し上げます!」

司祭「?」

神父「小僧とその母親を連れていた道中、ある物を預けておりまして、それを回収しに来たのです!」

司祭「ある物?なんじゃ、それは?」

神父「え、絵です!絵を預けたのです!」

司祭「絵?なにゆえにそのような物を預けたのじゃ?」

神父「あ、いや…」

カロル「違うよ!絵じゃなくて絵本でしょ?」

神父「そ、そうだ!そうだった!
布教をする際に子供らの目を引くようにと絵本を用意したのですが小僧が読みたいと言うので、つい渡してしまいましてな…。
あは、あはは。あはははは!」

司祭「ほう?まぁそういうことなら構わぬが、一言わしに断りを入れてくれんか?」

神父「はっ!大変失礼致しました!」フカブカ

司祭「ふむ…。鍵を開けてやろう。しばし待つがいい」

神父「はっ!ありがとうございます!」
751:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 13:48:58 ID:klXJlN7p4w
司祭「」ガチャッ

司祭「ほれ、開いたぞ?」

神父「失礼します!」スタスタ

カロル「袋の中に入ってるよ?」

神父「うむ、これか?」パシッ

カロル「うん」

神父「」ガサゴソ

神父「あぁ、あったあった。これだな?」つ【絵本】

カロル「おじさま…」コショコショ

神父「分かってる…。本の間に挟んでおいた…」コショコショ

カロル「うん、ありがとう…!」ニコリ

アリアス「待ちなさい」

神父「はっ…!?」ドキッ

アリアス「その袋は没収よ。囚人に荷はいらないでしょう?」

司祭「ふむ。それもそうじゃな」

神父「あ、はっ…。か、かしこまりました」つ【袋】

司祭「……」パシッ

カロル「あっ」

司祭「」ガサゴソ

司祭「ほっほっほ。これはこれは」ニヤリ

アリアス「なにか?」

司祭「見よ。見事にガラクタばかりじゃわい?」スッ

アリアス「…飴の入った小袋に古ぼけた万年筆。数枚の紙、汚れた頭巾とカツラ…ですか。ふふ」クスクス

司祭「持たせておいても問題はなさそうじゃが…万一の事を考えて取り上げておこうかの」

神父「……」

カロル「」シュン
752:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 13:52:59 ID:kcUjvD4cU2
―――大聖堂(応接間)―――
神父「では私はこれで…」

司祭「まぁ待て。お前にも用があるのじゃ」

神父「は?」

司祭「悪いが宣教師に付いていてもらえんか?」

神父「それははたまた…なぜ?」

司祭「村での布教活動も無くなった今となっては、あやつもする事がなく、時間をもて余しておるじゃろう。
奴の持ち場が決まるまでの間、お前の仕事を手伝わせてやってくれ」

神父「は、はぁ」

アリアス「余計な動きをされると面倒だから、よく見ていて」

神父「…余計な動き?」キョトン

アリアス「仮にもあの娘はホビットと通じていたのよ?」

神父「あ、あぁ…そうでしたな」

司祭「頼んだぞ」

神父「はっ!お任せください!」

神父「(ついでに絵を渡してやるか)」
753:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 17:15:03 ID:i6iF4FIEZA
―――大聖堂(広間)―――
ジョー「いやー。出てこられてよかったな!」

宣教師「ありがとうございます」モグ

ジョー「久々の牢外の飯はどうだ?」

宣教師「昨日もいただきました」モグモグ

ジョー「…なんだ、そっけないな」

宣教師「そういえば見張りの仕事はいいのですか?」

ジョー「あぁ、いいよ。別に逃げられたりしないだろ」

宣教師「知りませんよ…?」

ジョー「平気だって。これでも長いこと見張りをやってきたんだ。俺の勘は外れないよ」

宣教師「(今まで見た限り、あまりあてにならない気がしますが…)」モグモグ

ジョー「あんたの方はどうなんだ?見たとこ、やる事も無さそうだが」

宣教師「そうですね。布教も止まったままですし、司祭様の許しが降りたら村へ行こうと思っています」

ジョー「ふーん。村、か」

宣教師「なにか…?」

ジョー「いや、いいんじゃないか?」
754:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 17:27:56 ID:rrB8Fet0jk
ジョー「この菜飯うまいな!」ガツガツ

宣教師「…ジョーさんはどうされるのですか?」

ジョー「ん?」ゴックン

宣教師「…本当に行かないのですか?」

ジョー「あぁ、見舞いか?」

宣教師「はい…」

ジョー「あれ、嘘だぜ。ぜーんぶな」

宣教師「……へ?」

ジョー「ダガに頼まれてアリアスが仕組んだんだってよ。昨日の夜に言われたよ」

宣教師「な、なんですか、それ…!」

ジョー「あんたに嫌がらせしたかったんだと。ガキじゃあるまいし、暇な連中だぜ」

宣教師「……!」ワナワナ

ジョー「だからいいんだよ。こうなったらヤケになって馬車馬みたいに働くだけだ」

宣教師「そ、そんな事の為に…私は……か、体を…奪われそうに…!」ワナワナ

ジョー「へ?」

宣教師「許せません!!」ガタッ

ジョー「…おーい、どうした?」

宣教師「アリアス様に一言言ってきます!」

ジョー「行っても相手にされないと思うぞ?」

宣教師「くっ…!」ギリッ

ジョー「それにアリアス様はあんたのかわいがってたホビットの件で司祭様とランデブーだ。邪魔すんとどやされちまうぞ?」

宣教師「ですが…納得出来ません!」

ジョー「惨めだけど諦めるしかねぇよ。上の気まぐれに付き合わされんのも、下のお役目ってやつさ」

宣教師「く…ぐぐ…!」ギリギリ

ジョー「今回の事でそれがよーく分かったよ。下にいる以上じたばたしてもしょうがねぇってな」

宣教師「なんというか…吹っ切れてますね?」
755:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 17:36:17 ID:rrB8Fet0jk
ジョー「母さんに何もねぇって分かったし、胸のつかえも取れたからな。吹っ切れなきゃしょうがねぇだろ?」

宣教師「はぁ…」

ジョー「こうして出てきてるって事はあんたも色々と吹っ切れたのか?」

宣教師「私ですか?」

ジョー「あぁ、牢屋じゃホビットの話しかしなかったクセにこうやって世間話してんだぜ?」

宣教師「言われてみれば…そうかもしれませんね」

ジョー「このままいけばおとがめ無しだ。最初からそうしときゃよかったんだよ」

宣教師「そうですね…」

ジョー「…ほんとにそう思ってるか?」

宣教師「……」

ジョー「見たとこ、奴らを信じたい気持ちと信じられない気持ちでにらめっこしてるようにも見えるけどな?」

宣教師「何が言いたいのですか…?」

ジョー「ま、いいんだけどな」

宣教師「ジョーさんこそ、何か隠していませんか?」

ジョー「……?」

宣教師「わざわざ私などを食事に誘って…何か言いたい事があるのでは?」

ジョー「別に。単なる暇潰しだよ」

宣教師「でしたら私などではなく、トトさんを誘えば…」

ジョー「ははは。野郎と飯食ったってむさ苦しいだけだ」

宣教師「…私と食事をしたところで場が華やかになる訳でもないでしょう」

ジョー「大丈夫だよ。華は無くても飯はうまいから」

宣教師「…それはよかったですね」イラッ
756:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 17:38:35 ID:i6iF4FIEZA
宣教師「本当に何もないのですね?」ジト

ジョー「疑り深い奴だな。なにもないって言ってるだろ?」

宣教師「…そうですか」

ジョー「それより解放されてみて居心地はどうなんだ?」

宣教師「あまり良くはないですよ。話しかけられる相手もいませんし」

ジョー「そりゃそうだろうな。あんな事があった後じゃ誰も寄り付かねぇよ」

宣教師「こうして普通にお話してくださるのもジョーさんだけです」

ジョー「なんだよ。人のこと散々疑っといて?」

宣教師「すみません」シュン

ジョー「いや、別に怒ってないって」

宣教師「……」

ジョー「ま、無視されるのも今のうちだけさ。んな気ぃ落とすなよ?」

宣教師「はい…」

ジョー「俺でよけりゃいつでも話し相手になってやるから。な?」

宣教師「ありがとうございます…」グスンッ

ジョー「…あんた意外とおセンチなんだな」
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sage:


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