むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
715:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/6/6(木) 19:38:26 ID:lFqhfFxm2w
すみません。>>709はミスです。脳内削除していただけるとありがたいですm(__)m
716:🎄 名無しさん@読者の声:2013/6/30(日) 23:35:58 ID:KQZ1ttse8M
ずっと支援してます 支援
717:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/1(月) 18:15:20 ID:i6iF4FIEZA
>>716
お気遣いいただき、ありがとうございます!
すみません。少し忙しくなりまして、書いてはいるのですが話をまとめられないので投稿出来ない状況ですorz
なるべく早く投稿出来るよう努力致しますので、時間を頂けたらと思います。
一言も無くスレを止めてしまい、申し訳ありませんでした。
支援ありがとうございました!
718:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/3(水) 20:47:00 ID:BuAGEhMwno
―――大聖堂(地下牢)―――
ジョー「あ〜あ、柵が曲がってるよ。こいつ一体どんな力出したんだ?」グッグッ
ダガ「ぐがぁ…ぐごごご…」グースカピー
ジョー「捕まったってのに呑気なもんだぜ…。ここに入ってくる奴らには緊張感ってものがねぇのかな?」
母「……」ブルブル
ジョー「ん?どうした?寒いのか?」
母「いえ…」ブルブル
ジョー「…なんか持ってくるよ。腹も空いてんだろ?」
母「結構です…今は喉を通りません」ブルブル
ジョー「まぁそう言うなって。あと何回、口に入るかも分からないんだ。食っとかなきゃ損だよ」
母「あたしはどうなったって……」
ジョー「それが分かってんならなおさら食っとけ。天に昇れば腹も減らなくなるんだからな」
母「坊や…うぅ……坊や……!」シクシク
ジョー「……」
719:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/3(水) 20:50:24 ID:8vmLCPxZ0w
――――――
ジョー「」カキカキ
ジョー「…こんなもんか。さて、報告書もまとめたし…うーん…!」ノビッ
母「グスッ…」
ジョー「まだ泣いてんのか?」
母「……」
ジョー「もう消灯時間だぜ?いい加減に寝たらどうなんだ?」
母「うぅ…!」ブワッ
ジョー「見てらんねぇな…ったく!燭台の灯りも消すからな?」
母「あぁぁぁぁ…!」メソメソ
ジョー「……」
ジョー「ふっ」フッ
カツンカツン カツンカツン
母「あぁぁ…!」メソメソ
ジョー「はぁ…さすがにあれじゃ寝られねぇな」スタスタ
ジョー「地下だから泣き声も響くし、ダガの筋肉親父もよくあんな中でグースカいびきをかけたもんだ」
ジョー「はぁ……今夜はタコ部屋に戻って雑魚寝するか」
ジョー「(母さんも俺が故郷を離れた後に…ああして泣いてくれたのかな)」
ジョー「……」
ジョー「…そんな訳ねぇか」
ジョー「さて、報告書を渡して寝るかな。アリアス様もまだ起きてんだろ」スタスタ
720:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/3(水) 20:52:34 ID:8vmLCPxZ0w
―――大聖堂(礼拝堂)―――
ジョー「…ん?」
アリアス「……」
司祭「ふむ」
ジョー「…こんな夜更けにどうしたんだ?」コソコソ
司祭「して…宣教師はどうしておる?」
アリアス「部屋に戻りました」
司祭「うむ…」
アリアス「こちらに信頼を寄せている風ではありませんでした。まだ懐疑的になっていますね」
司祭「おとなしくしておればよいがな…」
アリアス「どうでしょう?おそらく色々と探り始めるのではないでしょうか?」
司祭「…見張りを立てるか」
アリアス「始末されてはいかがです?」
ジョー「!?」ギョギョッ
司祭「…やめんか。滅多な事を言うでないわ」
アリアス「理解に苦しみます。なぜ彼女に固執なされるのです?」
司祭「…わしにも一角の親心があるのじゃよ」
アリアス「……」
ジョー「(なんなんだ、一体…?)」
721:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/3(水) 20:54:36 ID:BuAGEhMwno
アリアス「神父の報告にあった村の件はどうなされるおつもりで?」
司祭「確かめるまでもない。王国に伝え、様子を見よう」
アリアス「ですが…王国に伝われば村の存続が危ういかと」
司祭「だからなんじゃ?代わりなどいくらでもあろうて?」
アリアス「…かしこまりました」
司祭「せいぜい王国に労力を使わせろ。わしらがどうこうしてやる謂れはあるまい」
アリアス「しかし…あの程度の規模の村であれば大した分散にもならないと思われますが?」
司祭「むぅ…然るに大樹への道筋を辿るには弱かろうな」
アリアス「提案させていただいてもよろしいでしょうか?」
司祭「む?」
アリアス「大樹に着くまでに必ず検閲を受ける事になります。ホビットを通す事は不可能かと。
それならば敢えて癒しの力を持つホビットの存在を国王に知らせてはいかがでしょう?」
司祭「ほう?」
アリアス「王国は嬉々として大樹への道を開く筈です」
司祭「そんな事をすれば王国は間違いなく利用しようと手を尽くすじゃろう?
わしが過去に解読した伝承も奴らの醜い欲によって政を円滑に進める為の潤滑油とされたのじゃぞ?」
アリアス「歴史を繰り返す事になる、と?」
司祭「当然じゃ。今度こそ同じ轍は踏まん!
人間としての進化を捨て、目の前の果実にかぶり付いたケダモノの首を掻き切る為にもな!」
アリアス「あまり大きな声を発されては……」
司祭「構わんよ。聞かれて困る事もなかろう?」
アリアス「司祭様が思われている程…全ての者が妄信的という訳でもございません」
司祭「…どちらにせよ、ここにおるのはわしとお前の二人じゃ。心配はいらんよ」
アリアス「……」
ジョー「(なんの事だか分からないが…反乱でも起こす気なのか?)」
722:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/3(水) 20:57:40 ID:8vmLCPxZ0w
司祭「計画を成す為には、あのホビットの存在は必要不可欠じゃ」
アリアス「…私はこの目で確認していないのですが、癒しの力を扱えるというのは本当なのですか?」
司祭「うむ。わしも生涯の内に見られるとは思わなんだが事実、目に焼き付けた」
アリアス「神父と宣教師も確認したそうですが、そのままにしておいてよろしいのですか?」
司祭「構わぬわい。意識的にホビットは癒しの力を扱えるものと根付いておる。
まさか力を持つホビットが今までいなかったとは誰も考えまい」
アリアス「それもそうですね…。正直に申しますと私は今も疑わしく思いますが…」
司祭「これまで伝承を手掛かりに闇雲にホビットを集めておっただけじゃからな」
ジョー「(おいおい…)」
司祭「アントリア神官は二日後に来るのじゃったな?」
アントリア「えぇ。そのようにご連絡を頂いてます」
司祭「ほほほ。偶然の産物とはいえ、実に良き頃合いじゃ。
主も天より祝福を授けてくださったのじゃろう」
アリアス「(…そう上手くコトが進むかしら?)」
司祭「アントリア神官を迎えてから、再度計画を詰めるとしよう。下がってよいぞ」
アリアス「失礼します…」ペコリ
ジョー「(とんでもない話を聞いちまったな…)」スタスタ
723:🎄 722のアリアスがアントリアになっているのは誤植ですorz ◆WEmWDvOgzo:2013/7/3(水) 21:01:17 ID:8vmLCPxZ0w
アリアス「」スタスタ
アリアス「?」ピタッ
ジョー「……」
アリアス「あなたは…」
ジョー「夜分遅くに申し訳ない」ペコリ
アリアス「報告書を提出しに来たの?律儀なものね?」
ジョー「それもありますが…お願いしたい事がありましてね」
アリアス「休暇の話?残念だけれど二日以上は与えられない」
ジョー「そこをなんとかお願い出来ませんかね?」
アリアス「あなたもしつこい人ね。どうしても見舞いに行きたいのなら勝手になさい。
ここでの居場所を失ってもいいのならね」
ジョー「……」
アリアス「早く報告書を寄越しなさい。サインはこちらで書いておくから」
ジョー「…そういえば礼拝堂でおもしろい話を耳にしたんですが」
アリアス「!」ドキッ
724:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/3(水) 21:03:03 ID:BuAGEhMwno
ジョー「俺は貧乏農家の出だから頭は悪いが、さすがにあんたらの話は読めたぜ?」
アリアス「……」
ジョー「たいした計画だ。今まで親密な関係を築いていた王国に反乱を起こそうなんてな?」
アリアス「声を抑えなさい」
ジョー「おっと…」
アリアス「どこから?」
ジョー「へ?」
アリアス「どこから聞いていたの?」
ジョー「…さ、最初っからだよ」オドオド
アリアス「嘘ね」
ジョー「うっ」ギクッ
アリアス「素直に話してみなさい?」
ジョー「…ここで言っていいのか?夜中ったって便所に起きる奴がいるかも分からないぜ?」
アリアス「それもそうね」
ジョー「(ふぅ…なんとか誤魔化せたか)」ドキドキ
725:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/3(水) 21:07:45 ID:BuAGEhMwno
アリアス「本当の目的は何?まさか見舞いに行きたいだけではないのでしょう?」
ジョー「いや、ささやかな願いさ?」
アリアス「そう…それならあなたはきっと喜ぶわね」
ジョー「なんだ?」キョトン
アリアス「休暇は与えられないけど代わりにいい事を教えてあげる」
ジョー「へっ…!あんたのホクロの数か?悪いが年増の色気に気付くには俺はガキ過ぎるかもな?」ニヤリ
アリアス「」イラッ
ジョー「それにあんたみたいな冷血女は好みじゃないしな?」
アリアス「あまり調子に乗らないで。私はこれでも司祭様の付き人よ?」
ジョー「おいおい、この期に及んで立場でごり押しか?」ニヤニヤ
アリアス「」バッ ガシッ
ジョー「おっ?」グイッ
ズダァァァン!!
ジョー「〜〜〜〜〜!!」ズキズキ
アリアス「」グッ
ジョー「かっ…はぁ……!」プルプル
アリアス「大の男が女に投げられて転がるなんて情けないものね?」
ジョー「あっ…はぐっ!んぁ……」パクパク
アリアス「なんとか言ってみたら?」ニヤリ
ジョー「……!」パクパク
アリアス「あぁ…そういえば首を絞めていたんだったわ?何も言えないでしょうね?」ニヤニヤ
ジョー「」プルプル
アリアス「このままあなたを消すのもいいかもしれない」ニヤニヤ
ジョー「(た、助け……!)」パクパク
726:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/3(水) 21:11:07 ID:8vmLCPxZ0w
アリアス「でも…今回は許してあげる」パッ
ジョー「……うぇっほぉ!うぅ…うぇっほぉえほ!!」ゲホゲホ
アリアス「ふふ。口が軽いのも考えものよ?」ニヤリ
ジョー「おぇっ…うっ…ぶぼほぉっ」ゴホッゴホッ
アリアス「間違っても吐かないでね。神聖なる大聖堂の通路で」
ジョー「っ…!っ…!っ!」ズキズキ
アリアス「司祭様の付き人をしてる意味、分かってもらえた?」
ジョー「!」コクコク
アリアス「物分かりが良くて助かるわ?」ニコッ
ジョー「はぁっ…はぁっ…」
アリアス「ところで、まだ休暇が必要?」
ジョー「っ…!悪いがそれだけは譲れねぇ!」
アリアス「よほど痛い目に合いたいのかしら?」
ジョー「ひっ」ビクッ
アリアス「冗談よ?私もそこまで鬼ではないわ?」
ジョー「じゃあ…」
アリアス「礼拝堂で見た夢は忘れなさい。所詮は眠りこけて見たありもしない夢。
そんな話を現実に持ち込まれても迷惑なの」
ジョー「はぁ…」
アリアス「…それから休暇はあくまで二日が限度よ」
ジョー「えっ」
アリアス「代わりにいい事を教えてあげる」
ジョー「代わりもクソも……」
アリアス「品の無い言葉遣いね。いいから聞きなさい」
ジョー「……!」ギリッ
727:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/3(水) 21:13:22 ID:8vmLCPxZ0w
アリアス「あの手紙は全て嘘。最初から存在しない物なの」
ジョー「……は?」キョトン
アリアス「かわいそうだけれど諦めて」
ジョー「な…何がどうして…」
アリアス「ダガに頼まれたから仕方なく」
ジョー「ダガに?」
アリアス「宣教師にいいように言われたのが腹立たしかったらしくて。
私にまで当たってくるものだから軽く筋書きだけ提供したのよ。
そうしたら何を血迷ったのか勝手に合鍵を盗んで、あの騒ぎ。とんだ迷惑だと思わない?」
ジョー「」ポカーン
アリアス「そういう事だから休暇は必要ないでしょ?」
ジョー「ま、待てよ…」ワナワナ
アリアス「なに?」
ジョー「なに?じゃねぇだろうがァァぁあ!!?」
アリアス「大きな声を出さないで。みんな寝ているのよ?」
ジョー「あぁ!?」ムカッ
アリアス「また絞められたいのかしら?」
ジョー「く…く…くっ!」ヒクヒク
728:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/3(水) 21:15:29 ID:BuAGEhMwno
アリアス「なんなら二日の休暇でゆっくりして親に便りでも出したら?
それであなたの親御さんが危篤状態だったりしたら、その都度対応するわ」
ジョー「あ、あんたなぁ…!人がどんだけ悩んだと…!」ヒクヒク
アリアス「報告書を預かりましょうか」
ジョー「」ブチッ
ジョー「」プルプル
ジョー「〜〜〜!」つ【報告書】
アリアス「はい、ご苦労様」
ジョー「(この冷血オバタリアンぶっころしてやる…!)」イライラ
アリアス「あ、そうそう。くれぐれも夢のお話をしないように。
まぁ言ったところで誰も相手にしないでしょうけれど」
ジョー「……!」
アリアス「それじゃおやすみなさい」スタスタ
ジョー「……」
ジョー「冷血オバタリアン…」ボソッ
ダダダダダダダダッ!!
ジョー「」ビクッ
アリアス「」ピタッ
ジョー「うわっちょっ」アタフタ
アリアス「」ニコッ
ジョー「あ、あはは…?」ビクビク
アリアス「殺すわよ?」
ジョー「す、すんません!」
729:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/7(日) 12:18:55 ID:5qrvW4u.To
―――夢―――
「……おかあさま、おかあさま」ユサユサ
マリー「んぅ…どうしたの?坊や?」ウトウト
「おなか空いた…」グー
マリー「さっき食べたばかりでしょう?」
「…葉っぱと川の水だもん」
マリー「……」
「ねぇ。街に行こうよ?」
マリー「……!?」
「ボク知ってるんだ!近くに街があるって!
街に行ったらおいしい食べ物がいっぱい買えるよ?」
マリー「やめなさい。おじいさまが起きたらどうするの?」
「なんでダメなの?人間がいるから?」
マリー「そうよ。人間はあたし達をいじめるの。
街に入ったりすれば、とてもタダでは済まないわ?」
「そんな事ないよ!ねぇ、行ってみようよ!」
マリー「……」
祖父「駄目だ」
「…おじいさま」
730:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/7(日) 12:20:29 ID:5qrvW4u.To
マリー「お父様…起きていたの?」
祖父「カロルや、いつも言っているだろう?
人間はおそろしくおぞましい種族だ」
「うん…」
祖父「近付くのはもちろん、見かけてもいけない。
私もおまえのお母さんも人間のために苦しんできたのだよ?」
「はい。ごめんなさい…」シュン
祖父「お腹が空いたのなら、これをお食べ」つ【木の実】
「木の実…?」
祖父「あぁ。坊やが腹を空かせてしまわないように残しておいたのだ」
「いいの?」
祖父「もちろんだとも。足しにならないかもしれないが、今はこれで我慢しておくれ?」
祖父「マリーは私たちを食べさせる為に朝から頑張っている。
とても疲れているのだ。少しでも休ませてあげなさい」
マリー「やめてよ、お父様…。子供に気を遣わせるような事は言わないで?」
祖父「…すまない」
「……グスッ」
マリー「」ビクッ
731:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/7(日) 12:22:33 ID:PS6bUdj8sg
「ごめ……なさい」ポロポロ
マリー「坊や…?」
「えぐ…ボクが…ワガママ言ったから…」ポロポロ
マリー「坊や…。違うのよ?あなたは何も悪くないの」
祖父「そうだとも、カロルや。おまえが泣くことはないのだよ?
私たちが悪いのだ。まだ幼いおまえに苦労を強いているのだから…」
「ヒック…ひっ…うぅ……グスッ」ポロポロ
マリー「坊や、いい子だから泣かないで?
そうだ、何か探してくるわ?おいしくて、お腹がいっぱいになる物をたくさん!」
「ううん、いらない…。もう、お腹いっぱいだもん…」ポロポロ
マリー「無理しないの!探せばきっと果実が成っている木の一つや二つあるわ?」
祖父「おまえは疲れているだろう。わたしが…」
マリー「なに言ってるの!お父様は病を患ってるんだからおとなしくしていて!」
祖父「しかし…」
マリー「じゃあ行ってくるわね!」
「お母さま…!」
マリー「すぐに戻るからいい子にしてるのよ?」ニコッ
マリー「」タタタッ
祖父「マリー……」
祖父「(フィズスを亡くして、おまえも辛いだろうに…)」
732:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/7(日) 12:24:46 ID:5qrvW4u.To
「おじいさま…。ごめんなさい」
祖父「謝るのは私の方だ」ナデナデ
「……」
祖父「ひもじいのだろう?いつもお腹を空かせてしまって…」
祖父「そのうえ私は体が弱いから、生きるのが精一杯でおまえと遊んでもやれない…」
「へいきだよ?おじいさまとお母さまがいて、いつも一緒だから。それだけでいいんだ!」
祖父「そうか…。おまえは良い子だね?」ナデナデ
「えへへ」テレテレ
祖父「(私がいなければ…この子の食べる分も増えるだろう)」
祖父「(マリーの負担も減って、ほんの少しだが楽になるはずだ)」
祖父「(やはり私はいるべきではない…。二人の為にも……)」
祖父「カロルや」ポンポン
「なぁに?おじいさま?」キョトン
祖父「…今夜は私と一緒に寝ようか?」
「…どうしたの?」
祖父「ん?なにがだね?」
「おじいさま。いつも一人で寝たがるから」
祖父「はは…いつもおまえのお母さんに一人占めされてるからな?
それともカロルは私と一緒では嫌かな?」
「ううん!いいよ!一緒に寝よう?」ニコッ
祖父「ははは…おまえは本当に優しい子だね」ニコッ
「えぇ!なんで?」
祖父「気にしないでおくれ。じゃあ寝ようか」
「うん!」ポフッ
733:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/7(日) 12:26:44 ID:PS6bUdj8sg
「おじいさまの体、あったかい…」
祖父「そうか?」
「うん」
祖父「…カロルや」
「なぁに?」
祖父「…お母さんが好きかい?」
「大好き!」
祖父「そうか、そうか」ニコニコ
「おじいさまも大好きだよ!」
祖父「……!」
「おじいさま?」
祖父「…幸せだ。こんなにも幸福なことはない」ポロポロ
「泣いてるの…?ボク、いけない事しちゃった?」オロオロ
祖父「違うのだよ、カロル。嬉しいのだ。
抱えきれない程に幸せが溢れて…どうしてもこぼれてしまうのだよ」ポロポロ
祖父「私は幸福者だ…。だからこそ忍びない…。
私はおまえ達を…幸せにしてはやれないのだ…」ポロポロ
「おじいさま?」
祖父「…いや、なんでもないよ。もう寝よう」
「うん…」ウトウト
734:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/7/7(日) 12:28:52 ID:5qrvW4u.To
〜〜〜〜〜〜
「」スヤスヤ
祖父「カロルや。もう寝たのかい?」
「」スヤスヤ
祖父「」スクッ
祖父「許しておくれ。二人とも…こうでもしなければ、優しいおまえ達のことだ。
別れを許してはくれないだろう」
祖父「」スタスタ
祖父「」ピタッ
祖父「っ…!いざとなると、こんなにも辛く険しいのか…。
この足を暫し前へ進めれば、自然と別れはいざなってくれるというのに…」
祖父「(二人と別れれば私に生きる術はない…。この別れは永遠となるだろう)」
祖父「(こんな命など惜しくはない。むしろ消えいくサダメなら楽に思えるほどだ)」
「」スヤスヤ
祖父「だが…愛する孫の寝顔を見て別れを選ぶなど……」
祖父「あまりに残酷で…あまりに救いが無さすぎる……」
祖父「(…カロル。マリー。私はやはり……)」
祖父「」ググッ
祖父「ゴホッゴホッ」
「んぅ…」モゾモゾ
祖父「」ビクッ
「……うぅん」スヤスヤ
祖父「…駄目だな、この子の幸せには変えられん」
祖父「せめて強く生きておくれ…。それが唯一の願いだ」
祖父「(往生際の悪いことだ…。遺書を置いて消えよう)」スッ
「おじい…さま…」スヤスヤ
〜〜〜〜〜〜
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