むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
604: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/18(木) 19:38:32 ID:.tgHhz2SVw
トト「よう!」
ジョー「おう!なんだ、トトじゃねーか!」
トト「調子はどうだ?」
ジョー「別に変わらねーよ。お前こそ地下くんだりまで何しに来たんだ?
確かシスター達と一緒に雑用を任されてるはずだろ?」
トト「お前が見張りを一人で買って出たおかげでな!」
ジョー「はは!わるいわるい!」
トト「シスター達はダメだよ。あいつら、昨日神父が連れてきた犬に夢中でさ」
ジョー「あぁ。例のホビットの飼い犬か」
トト「女ってのはなんでああ犬が好きなんだろうね?
あきれちまってモノも言えねぇよ」
ジョー「犬に限らねーよ。かわいいモンが好きなんだろ」
トト「しまいにゃ神への信仰よりかわいいモンを取るんじゃないかって勢いだぜ?」ヘラヘラ
ジョー「はははは!」
605: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/18(木) 19:40:13 ID:4YUZHqrID.
トト「この人が噂の宣教師か?」
ジョー「あぁ」
宣教師「……」ペコリ
トト「ほうほう…。結構キレイな人じゃねーか?」コショコショ
ジョー「そうか?あれで意外と気が強いんだぜ?」コショコショ
トト「お前が一人で見張りを買って出たのも分かる気がするよ」ニヤニヤ
ジョー「バカか!そんなんじゃねーよ!」
トト「おいおい、聞こえちゃうぞ?」ニヤニヤ
ジョー「くっ…!」チラッ
宣教師「……」
ジョー「」ホッ
トト「聞いてないな。考え事でもしてんのかな?」
ジョー「知らねーよ…」
トト「あーあ、つまんねーの」ムスッ
ジョー「お前なぁ…」ハァ
606: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/18(木) 19:43:54 ID:.tgHhz2SVw
ジョー「結局お前は何しに来たんだよ?」
トト「おっと、忘れんとこだった!これこれ!」つ【手紙】
ジョー「なんだ?」キョトン
トト「お前のお袋さんからだってよ。さっきアリアス様から受け取ったんだ」
ジョー「アリアス様が?」
トト「おう。届いたはいいが手が空かなくて渡せそうにないからと、代わりに頼まれたんだよ」
ジョー「嫌な予感がするなぁ…。朝にダガ様と揉めたばっかだぜ?」
トト「そうなのか?」
ジョー「アリアス様はダガ様と共に司祭様の付き人をしてるだろ?
ダガ様に頼まれて嫌がらせしようとしてるとか…」
トト「アホか!そんな暇な人じゃねーだろ。
アリアス様はダガ様と違って、いろいろ任されてんだからよ!」
ジョー「うーん。それもそうか…」
トト「2日も地下に籠って疲れてんじゃねーの?」
ジョー「そうかもな…」
トト「なんなら今からでも見張りを代わってやろうか?」
ジョー「いや、いいよ。ありがとな!」
トト「ならいいけどよ。俺も雑務が残ってるから、もう行くぞ?」
ジョー「おう、すまなかったな!」
トト「気にすんなって!」
カツンカツン
607: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/18(木) 19:50:33 ID:4YUZHqrID.
ジョー「…お袋から、か」
宣教師「…手紙ですか?」
ジョー「ん?なんだ、聞いてたのか?」
宣教師「すみません。聞き耳を立てるつもりはなかったのですが…」
ジョー「別にいいよ。地下だし、この距離で聞こえない方がおかしいしな」
ジョー「ん?」
宣教師「どうしたのですか?」
ジョー「い、いや…」
宣教師「?」キョトン
ジョー「(この様子じゃトトの軽口は聞いてなかったみたいだな…。助かったぜ…)」ホッ
宣教師「ところで、その手紙は前におっしゃっていた…?」
ジョー「あぁ。故郷に置いてったお袋からだ」
宣教師「……」
ジョー「…自分を見捨てたバカ息子に今さら、どうしたんだろうな…」
宣教師「お母様はジョーさんがここにいる事を知っていたのですね?」
ジョー「…出てく時に俺を連れてってくれた神父さんに事情を説明してもらったからな」
宣教師「ふふ…連絡出来る手段を残してから行くなんて、優しいジョーさんらしいですね?」ニコッ
ジョー「そんなんじゃないよ。ガキながらに義理を通しただけだ」
宣教師「……?」
ジョー「どうせお袋もあのままだろうし、きっちり関係を清算しとこうと思ってな」
宣教師「そう、ですか…」シュン
ジョー「あれから10年以上経つけど、生きてたのか…」
ジョー「俺がいなくなった後はどうしてたんだろう…」
608: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/18(木) 19:53:50 ID:.tgHhz2SVw
ジョー「」ビリッ カサッ
ジョー「……」ペラッ
宣教師「……」
ジョー「……」
ジョー「…なるほどな」カサッ
宣教師「なんと書いてあったのですか?」
ジョー「正確にはお袋からじゃないらしい」
宣教師「どういう事でしょう?」キョトン
ジョー「俺がいなくなって数年くらいした時、痩せはてた畑を引き取ってくれた人がいたんだと。
この手紙はその人が代理で書いたもんだ」
宣教師「ふむふむ」コクコク
ジョー「今までその人がずっとお袋の面倒を見てくれてたんだってよ」
宣教師「…それは、いわゆる恋仲ですか?」
ジョー「だろうな。たくましいもんだよ」
宣教師「…ま、まぁ希望を見いだせていたようで何よりではありませんか…?」アセアセ
ジョー「はっ!親父が死んだら息子の俺をほっといて引きこもってたクセによ。
俺がいなくなったら新しい男を作って幸せにしてやがった訳だ?」
宣教師「ジョーさん…」
609: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/18(木) 19:56:08 ID:4YUZHqrID.
ジョー「しかも帰って来てほしいんだとよ?ふざけやがって!」ビリッ
宣教師「」ビクッ
宣教師「何を…!?」
ジョー「こんな手紙、いらねぇよ!」ビリビリ
宣教師「……!」
ジョー「はぁっ…はぁっ…!」
宣教師「じょ、ジョーさん…」
ジョー「くそっ…」
宣教師「帰ってはあげないのですか…?」
ジョー「今の俺を見てお袋に会いたがってるように見えるか?」
宣教師「いえ…。ですが、今になって手紙が送られたという事は何かあったのでは…?」
ジョー「…病気だ。何年も前から患っていたんだと」
宣教師「……!それでしたら…」
ジョー「会ってやれってか?無責任なことを言うな!」
宣教師「しかしお母様はあなたに会いたがっているのでしょう?」
ジョー「知るか!都合のいいように使われるのはごめんだ!」
宣教師「なぜですか…!たとえ、わだかまりがあったとしても肉親なんですよ…!」
ジョー「さんざん身勝手にしてきた挙げ句に…最後くらい息子に看取られて逝きたいってか!?」
ジョー「あぁいいじゃねぇか!愛してる男もいて、息子への未練もスッパリ断ち切れて幸せかもな!?」
ジョー「けど俺はどうなんだ?」
ジョー「お袋を満足させる為に仕事をほったらかして、わざわざ痩せ細った姿を見て!和解して!」
ジョー「死んでいくのを眺めながら、知らねぇ男と一緒に涙ぐめってのか!?」
ジョー「他人から見る分には最高のお涙ちょうだい劇かもしれねぇな?」
ジョー「だが当人からすりゃ、ただの茶番だ!!」
宣教師「……」
610: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/18(木) 20:00:25 ID:.tgHhz2SVw
ジョー「それでもあんたは行けって言うのか…!」
宣教師「……」
ジョー「どうなんだよ?答えろよ!?」
宣教師「…また後悔したくはないでしょう?」
ジョー「……!?」
宣教師「あなたは過去にホビットの少女の命を奪って、これまで後悔の念に苦しみ続けてきたはずです…」
ジョー「っ…」
宣教師「同じ事をまた繰り返すつもりですか…?」
ジョー「だけど…!」グッ
宣教師「行くか、行かないかを決めるのはジョーさんです」
宣教師「ですが決められるのは今だけ…。選択をする機会は二度と戻りません」
ジョー「そんなの…分かってるよ…!」
宣教師「……」
ジョー「だけどな…。どういう顔をしたらいいんだ!?」
ジョー「俺はお袋を捨てた…!」
ジョー「たとえ和解出来ても、いつ来るか分からない別れに怯えなきゃならない!」
ジョー「そんな状況で…笑顔の一つも見せられそうにねぇよ…!」
611: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/18(木) 20:02:32 ID:4YUZHqrID.
宣教師「取り繕う必要はありませんよ。
ありのままのあなたでいいのです」
ジョー「いい訳がないだろ!俺は…俺は…!」ググッ
宣教師「お母様もきっと今まで通りのあなたを望んでいるはずです」
ジョー「…そんな事がなんであんたに分かるんだよ!?」
宣教師「もちろん分かっていません。分かってはいませんけど…」
ジョー「……?」
宣教師「…少なくとも他人に向けるような笑顔で接してくるあなたと会うより…」
宣教師「素直になれなくても親子として向き合おうとするあなたに会いたいのではないでしょうか?」
ジョー「っ…!」
宣教師「別れは確かに悲しいですが、最期の願いを聞き入れずにとどまったとしても、より強い後悔を残すだけだと思います」
宣教師「ジョーさんの決める事ですから、どうしても行かないとおっしゃるのなら、それでも構いません」
宣教師「……でも同時に傷付くあなたを、私は見たくありません…」
ジョー「くっ…!」
宣教師「…これ以上の事は言いません。余計な口出しをしてすみませんでした…」
ジョー「……」カツンカツン
宣教師「? どこへ?」
カツンカツン カツンカツン
宣教師「……」
612: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/19(金) 21:36:56 ID:hEL1ryUmTQ
―――大聖堂(通路)―――
ダガ「(あのガキを貶めるのは簡単だなんぞとアリアスは言いやがったが…)」
ダガ「あんなやり方でうまくいくもんなのか…?」ウーン
ジョー「」スタスタ
ダガ「!」ギョッ
ジョー「……」
ダガ「(ほ、本当に来やがった…!)」
ダガ「ふ…」ニヤリ
ジョー「……」
ダガ「おい、ジョー。俺の前を素通りはねぇんじゃねーか?」
ジョー「あっ…!」ビクッ
ダガ「なんだ、今さら気付いたのか?」
ジョー「い、いえ…挨拶が遅れて申し訳ない」ペコリ
ダガ「嫌な奴に会ったってぇツラだな?」
ジョー「そ、そんな事はありませんよ!」
ダガ「まぁいい…」
ジョー「で、では俺はこれで…」
ダガ「ところでお前、見張りはどうした?」
ジョー「」ギクッ
613: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/19(金) 21:39:52 ID:y3moFeW55g
ダガ「まさか一人でやるなぞと息巻いといて、サボってんじゃねぇだろうなぁ?」
ジョー「よ、用が終わったら、すぐに戻りますんで!」
ダガ「ほう…。なんだ?その用ってのは?」
ジョー「し、私用で司祭様の耳に入れたい事があるんスよ!」
ダガ「それなら俺が代わりに聞いてやるよ。
司祭様は今、司教様達と共に話し合いの場を開いておられるからな…」
ジョー「あ、いや…でもなぁ…?」アセアセ
ダガ「俺じゃ不服か?」
ジョー「ちがいます!ちがいます!」アタフタ
ダガ「ふ…。まぁいいぜ。俺で不満ならアリアスに言ったらどうだ?」
ジョー「アリアス様…!そうッスね!アリアス様なら…」
ダガ「……」
ジョー「あ、ちがいます!アリアス様ならっていうのはそういう意味じゃ…!」
ダガ「アリアスなら書斎にいるはずだ」
ジョー「へ…?」
ダガ「急ぎの用ならさっさと済ませろ。あいつは中々手が空かねぇからな…」
ジョー「…はっ!恩に着ます!」タタタッ
ダガ「……」
ダガ「ふ…ふふ…!本当にあいつの言う通りになりやがった…!」ニヤリ
ダガ「アリアスに頼って正解だったな…」ニヤニヤ
614: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/19(金) 21:41:55 ID:y3moFeW55g
ジョー「ここが書斎か…。俺には縁のないとこだと思ってたが…」ガチャッ
ジョー「」ソーッ キョロキョロ
ジョー「…いないな…ん?」
ジョー「あぁ、そういう事か」
ジョー「名簿に借りた本の題名と名前を入れて、指定した個室で自由に読むシステムなんだな」
ジョー「めんどくさいが名簿から探すか…」
ジョー「えー…アリアス…アリアス…と」
ジョー「2の読室か…」
ジョー「ふー…緊張するぜ」スーハースーハー
615: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/19(金) 21:46:01 ID:y3moFeW55g
コンコン
付き人2「…どうぞ」ペラ
ジョー「失礼」ガチャッ
付き人2「この書室は使用中よ。名簿に書いてなかった?」
ジョー「はっ!申し訳ございません!」
付き人2「……」ペラ
ジョー「…実はアリアス様にお願いしたい事がありまして…」
アリアス「お願いしたいこと…?」
ジョー「はい。先ほどトト越しに受け取った手紙なのですが…」
アリアス「あぁ…。あなたの母親の?ちゃんと届いたでしょう?」
ジョー「…えぇ。感謝します」ペコリ
アリアス「お礼ならいいわ。それより用件を言ってくれる?私は資料に目を通したいんだけど?」
ジョー「は、はい!申し訳ありません!」
616: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/19(金) 21:46:56 ID:hEL1ryUmTQ
アリアス「それで?」
ジョー「…しばらく休暇を頂きたいんです」
アリアス「……」
ジョー「許可をもらえないでしょうか?」
アリアス「理由を聞かない事には、なんとも言えないわね」
ジョー「母が病気を患って倒れているそうで…見舞ってやりたいんです」
アリアス「…そう。それはお気の毒ね」
ジョー「お気の毒…?」ピクッ
アリアス「ごめんなさい。言葉が悪かったわね」
ジョー「い、いえ…。そういう訳で休暇を頂けないでしょうか?」
アリアス「えぇ…構わないけど」
ジョー「あ!ありがとうございます!」ペコリ
アリアス「ただし二日よ」
ジョー「えっ」
617: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/19(金) 21:50:10 ID:y3moFeW55g
ジョー「ふ、二日…ですか?」
アリアス「そうよ」スッ
ジョー「お、お言葉ですが俺の故郷は西の領土にあるんです…」
アリアス「それで?」ペラ
ジョー「それでって…二日で見舞いに行ける距離じゃないでしょうが!」
アリアス「そうかしら?乗り物を使えば不可能ではないと思うけど?」
ジョー「乗り物なんかどこにあるんですか!?」
アリアス「村を越えた先を東に4時間も歩けばミラルドの町があるでしょ。
あそこでなら馬やベルメロを売ってくれる家畜商もいるわよ」
ジョー「馬…ましてやベルメロなんて一介の牢屋番じゃ手が届きませんよ!」
アリアス「貯金から切り崩せばいいじゃない?」
ジョー「そんな…!俺の貯金じゃ、とてもじゃないが無理だ!」
アリアス「計画性がないのね。なら諦めたら?」
ジョー「あ、諦めろだって!?」
アリアス「無理だと言ったのはあなたよ?諦めるしかないじゃない?」
ジョー「あ、あんたなぁ!こっちは親の死に目がかかってるんだぞ!?」
アリアス「……」ペラ
ジョー「おい!聞いてんのかよ!?」
アリアス「……」
618: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/19(金) 21:52:57 ID:y3moFeW55g
ジョー「本なんか読んでないで聞けよ!!」
アリアス「なぜ?話は終わったはずよ?」
ジョー「バカ言うな!いつ話が終わったんだよ!?」
アリアス「何が不満なの?
私はあなたの希望通り、休暇を与えたし、助言もしてあげたでしょ?」
ジョー「き、休暇はたったの二日!助言は何も役立ってないだろ!」
アリアス「…さっきから鼻息荒く喋ってるけど、あなたは誰に口を利いてるの?」
ジョー「へ…?」
アリアス「あなたは雇われの牢屋番、私は本部の重役よ?」
ジョー「う……」
アリアス「…こんな事は言いたくないけれど、あなたの態度は少し度が過ぎてる」
ジョー「す、すみません…」
アリアス「自分でも思い当たらない?」
ジョー「は、はい。あまりに失礼な振る舞いでした…」
アリアス「…まぁいいわ。この際だから色々と教えてあげる」
ジョー「は…?」
619: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/19(金) 21:54:42 ID:hEL1ryUmTQ
アリアス「まずあなたは組織に属してる事を知りなさい」
ジョー「……」
アリアス「組織とは大小や様々な系統はあれど、人と人が集まる場所」
アリアス「その中でそれぞれが自身の能力に合った働きをしている」
アリアス「そして足りない物を補う為に協力し合ってるの」
アリアス「当然、対人関係は大切になるわ?」
アリアス「あなたは対等の立場でない私に対して声を荒げたわよね?」
ジョー「はい…」
アリアス「つまり対人関係に気を配っていないと言えるわ」
ジョー「い、いえ…そんなつもりじゃ…」
アリアス「あなたにその気がなくても私にはそうとしか捉えられないの。分かる?」
ジョー「……」
620: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/19(金) 21:57:45 ID:y3moFeW55g
アリアス「更に付け加えて言うなら、組織に身を置く人間として責任を自覚なさい」
ジョー「なっ…責任は持ってますよ!」
アリアス「はたしてそうかしら?」
ジョー「……?」
アリアス「あなたは極めて個人的な理由で休暇を申し立てたにも関わらず、与えられた日数に不満を漏らしている」
ジョー「だって…」
アリアス「なに?」
ジョー「こ、個人的かもしれないけど…俺にとっては外せない。一生後悔するかもしれない事なんです…」
アリアス「気持ちは分かるわ。たった一人の親ですものね?」
ジョー「……」
アリアス「けどね。あなたの事情を汲んでも二日の休暇、それが限界よ」
ジョー「……!」
アリアス「…あなたの空いた穴を埋めるのは簡単よ?
けれど一人の個人的な事情で長期の休暇を許せば、全体に堕落した意識が根付くかもしれない」
アリアス「誰もが自由に持ち場を空けて休んでも許されるようなぬるい空気になられても困るの」
ジョー「大げさですよ…」
アリアス「大げさなくらいがいいのよ。宣教師のような例もあるのだし」
ジョー「……」
621: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/19(金) 22:01:44 ID:hEL1ryUmTQ
アリアス「そういう事だから、あなたにとって望ましい回答は出来ない」
アリアス「それでもまだ不満があるなら聞いてあげる」
アリアス「私は筋を通しているし、最大限に譲歩する努力はしたわ?」
アリアス「…さぁ何かある?
出来れば、これ以上の時間を奪われたくはないのだけれど?」
ジョー「いえ…」
アリアス「そう?納得してもらえてなによりね」
ジョー「……」
アリアス「出ていってくれる?
私はあなたと違って片付けなければならない事が山ほどあるの」
ジョー「はっ…」ガチャッ
バタンッ
622: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/19(金) 22:03:25 ID:hEL1ryUmTQ
ジョー「くっ…!」
ジョー「(ちくしょう…!)」グッ
ジョー「たった二日でどうしろって言うんだよ…」
ジョー「……」トボトボ
ダガ「おっ」
ジョー「」トボトボ
ダガ「ふ…。今にもくたばりそうなツラしてやがる…」
623: ◆WEmWDvOgzo:2013/4/19(金) 22:04:31 ID:y3moFeW55g
ガチャッ
ダガ「……」
アリアス「ノックくらいしてくれる?」ペラ
ダガ「うまくやったみたいだな?」
アリアス「当然でしょ?」
ダガ「ジョーの野郎、ひどく沈んでたぜ…?」
アリアス「それは悪いことをしたわね」
ダガ「ふ…お前もなかなかえげつねぇなぁ?
母親の手紙を偽って寄越すとはよ」
アリアス「……」ペラ
ダガ「ありゃ全部でたらめなんだもんなぁ?」
アリアス「……」
ダガ「ふ…。しかしあんな手紙に本当に乗せられるとは思っちゃいなかったが…」
アリアス「あの小娘がいなければ成立しなかったでしょうね」
ダガ「ククク…。あぁ、あのガキのくだらねぇ正義感とおせっかいが役に立ったな…」
アリアス「あとはジョーの弱味をちらつかせて小娘を脅すだけね」ペラ
ダガ「…そこはどうなんだ?」
アリアス「問題ないわよ。あのタイプは自分より他人を優先するはず」
ダガ「…はっ?いわゆる偽善者って奴だ?」
アリアス「あら、偽善だなんて神に仕える者として相応しくない言葉よ?」
ダガ「…それもそうか」
アリアス「今の内に考えておきなさい。あの小娘に何をさせるか」ペラ
ダガ「ふ…ふふ…!ククク!」
アリアス「(疲れた…。こっちは仕事が残ってるって言うのに…)」
アリアス「(ま、これで気が済むでしょ。借りも一つ出来たし…)」ペラ
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