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少年「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1:🎄 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:21:41 ID:apUuk9iOiY
むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。


433:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 17:38:04 ID:2f6ATVrpfk
神父「うぅ…ぐぐ…」

母「これは…酷いケガね。本当にあの子が?」

カロル「うん…。おじさま。大丈夫ですか?」スッ

神父「ぐぁっ…!」ズキンッ

母「何をしてるの!むやみに傷の近くに触れたらダメよ!?」

カロル「ご、ごめんなさい」オロオロ

神父「ぐぬぬ…!」ズキズキ

母「大丈夫ですか?あたし達が村まで送りますから、もう少し辛抱なさってくださいね?」

神父「だ、黙れ!薄汚いホビットめ!
そうして目の前に甘言を滴らせ、私が蜜を舐めるのを待っているのだろう?」

母「落ち着いてください。大きなケガをなさっているのですから、興奮してはいけません」

神父「だ、だま…うぐぐ!」ズキズキ

母「ほら、だから言ったじゃありませんか?」

カロル「起き上がれますか…?」スッ

神父「うぅ…。え、ええいっ!触れるな、汚らわしい!」バシッ

カロル「っ……!」

神父「元はと言えば貴様の仲間がやった事だろうが!?」

カロル「ごめ…なさ…」ションボリ

神父「己の罪も自覚せずにのこのこやって来おって!」

カロル「」ウルッ
434:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 17:40:25 ID:Ou70Vp7aU.
母「待ってください。それはあなたにも言えるんじゃありませんか?」

神父「何をっ!貴様、ホビットの分際で…!」

母「元を正せば寝ている坊やを連れ去ろうとしたのはあなたよ?」

神父「はっ!笑わせるな!ホビットをどうしようが人間の自由だ!」

母「自由ですって?それならあたし達の自由はどうなるの!」

神父「貴様らは神に仇なし、我々人間から癒しの力を奪った罪深き種族だぞ!
なぜお前達に自由があると考える!?
その腐りきった性根こそが罪なのだ!」

母「あなた達の身勝手な理屈に従う謂れはありません!」

母「あたし達にはあなた達と心を開いて接する気持ちがあるわ!」

母「なぜ、そんな迷信を広めるの!?
あなた達のために苦しんでいるホビットが何人いると思っているのよ!?」

神父「や、やかましい!あたかも己が正しいように振る舞うな!
正しいのは我々……!ぐっ…!」ズキッ

母「はぁっ…。はぁっ…」

カロル「……」
435:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 17:43:12 ID:Ou70Vp7aU.
母「坊や…。やっぱり戻りましょう?」

カロル「ううん。ダメ」フルフル

母「この人は宣教師様とは違うわ…。助けても、あたし達への見方は変わらない」

カロル「いいんだ。見返りを望んだ訳じゃないもの。
嫌がってても、助けなきゃ。見捨てる方がよっぽど嫌われるよ?」

神父「うっ…くっ!」ズキズキ

母「……なんでそこまでして…人間と関わりたいの?
お友達も出来たし、十分願いは叶ったはずよ?」

カロル「人間だからじゃないよ。ホビットでも、獣でも、苦しんでいる命の痛みは同じだから…」

母「けれど前にも言ったはずよ?
人間とホビットはとても難しいって…」

カロル「うん。ボクなりに分かってるつもり。
でもね。ボクらまで人間を拒んじゃったら、分かり合える日は来ないと思うんだ」

母「……」
436:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 17:46:00 ID:Ou70Vp7aU.
カロル「誰かが水をあげないと花は枯れてしまうでしょ?
キレイなカリアムの花も萎れちゃったら色褪せるじゃない」

母「水をあげても…枯れる花は枯れるのよ?」

カロル「それなら枯れるまで水をあげようよ?
諦めて枯らせたら、花がかわいそうだもん」

母「……!」

母「……そうね。あなたのお父様もきっと…同じ事を言うわ。
あたしが信じてあげなきゃいけないわよね…」

カロル「えへへ…。今までのお花はみんなキレイに咲いたもの。
素敵な出会いがいっぱいあったから、こうやって言えるんだ」ニコッ

母「ごめんね。あたし…」

カロル「謝らないで。誰も悪くないでしょ?」ニコニコ

母「(…本当に優しい子…。まるでフィズスの生き写しのよう…)」ホロリ

神父「ケガ人の前でごちゃごちゃとよく喋る口だ。
そうやって言葉を紡ぎ、人間を欺くのであろうが…」ヨロヨロ

母「…起き上がって平気なのですか?」

神父「貴様らの助けなど借りぬ!どこへなりと消え失せろ!」ヨタヨタ

母「あ、そっちは木が……」

ゴンッ!

神父「」フラフラ

母「だから言ったのに…」

神父「遅いわ!!……いっ…!」ズキズキ
437:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 17:49:35 ID:2f6ATVrpfk
神父「ぐっ…!くそ…。今ので収まりかけた痛みが…!」ズキンズキン

カロル「」タッタッ

神父「ひっ!く、来るな!」ビクッ

カロル「怒鳴ると傷に障るよ?ボクらが案内するから村まで歩こう?」

神父「だ、だから…薄汚い種族の助けは借りんと…」

カロル「でも一人で帰れないでしょ?」

神父「やかましい!お前のような者に付いていくよりマシだ!」

カロル「無理しないで?こんなに血が出てる」スッ

神父「だからっ!触るなと何度言えば…!」

カロル「ご、ごめんなさい…」シュン

神父「たく…!不浄の手で触れおってからに。修道服が汚れ……」ハッ

神父「(痛みが…和らいでる?)」スリスリ

神父「っ…!や、やはり触ると痛いな…」ズキズキ

神父「(だが確実に和らいでいる。先ほどまでの刺すような激痛がこない…)」

―――――

カロル「うん…。おじさま。大丈夫ですか?」スッ

神父「ぐぁっ…!」ズキンッ

母「何をしてるの!むやみに傷の近くに触れたらダメよ!?」

カロル「ご、ごめんなさい」オロオロ

―――――
438:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 17:54:12 ID:Ou70Vp7aU.
神父「(そういえば、先ほど触れられた時も…。言葉を出せなかった程の激痛が和らいだ…)」ジロジロ

カロル「な、なに?」

神父「(これが癒しの…力、なのか?)」ジロジロ

カロル「ぼ、ボクの顔に…何か付いてるかな?」

神父「くっ…。片目ではよく見えんが…どうやら目に映る方法だった訳ではなさそうだな」

カロル「なにが?」キョトン

母「そういえば…目は大丈夫なのですか?
安静にした方がいいのでは…」

神父「……だいぶ和らいだ。貴様らが我々から奪った術でな」

カロル「すべ…?」

母「なんのことですか?」

神父「とぼけるな。奪った力をぬけぬけと披露しおって。
それで恩を売ったつもりか!?」

カロル「え…?」

母「はい?」

神父「しかし奪った力など、所詮は盗みの垢にまみれた代物だ。
使役し、他者に施したところで罪の清算になると思うなよ!」ビシィッ

カロル「う、うん…。そうだね。あはは」ヒクヒク

母「お、おほほ…」ヒクヒク

神父「待て!なぜわざとらしく愛想笑いする!?」
439:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 17:59:04 ID:Ou70Vp7aU.
カロル「だ、だって…ね?」チラッ

母「えぇ。よく分からない事をおっしゃるものだから…」

神父「しらばっくれるな!この子供が癒しの力を用いて私の傷を癒したのであろうが!?」

母「……あぁ。なるほど。宣教師様も勘違いしていたわね」

神父「宣教師だと!?ふん…。やはりたぶらかしたのはお前達か」

カロル「おじさまは宣教師さまを知ってるの!?」バッ

神父「知らいでか!?
私は教団の人間だぞ!そのうえ奴より位の高い神父だ!」ドヤァ

母「別に位は聞いてませんけど…」シラー

カロル「教えて!今宣教師さまはどこにいるの!?」

神父「くっくっく…!奴なら今は大聖堂にいる!
罪を犯し、牢に入れられているそうだ!」

カロル「え…?」

母「なんですって!?」

神父「聞いた話では司祭様に刃向かったらしいがな。
たしか教団のホビットに対する見方を変えるべきだなどと」

母「なんで…そんな事を……」

カロル「宣教師さま…ボクたちの為に…」
440:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 18:02:34 ID:Ou70Vp7aU.
神父「おそらく牢を出る事はないだろう。目を覚まさない限りはな」

カロル「じ、じゃあボク…起こしに行く!」

神父「その目を覚ますじゃないわ!」

カロル「なら…どうしたらいいの?」

神父「奴がお前たちとの悪しき関係を清算し、悔い改めた上で司祭様に謝罪すれば、司祭様も寛大なお心を以てして許されるだろう。
そうすれば以前のように教団員として教えを従事し、布教活動をまっとうできるはずだ」

カロル「それって…」

神父「つまりはお前たちを見捨てるという事だな」

カロル「ボクたちを…見捨てる?
もう友達ではいられないの…?」

母「……」
441:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 18:08:18 ID:U0P6p.FErc
神父「当たり前だ!そもそもお前たちと関わらなければ奴が堕ちる事もなかったんだぞ!?」

カロル「ボクの…せい?」

神父「そうだ!奴は若干20歳にして村一つを任された。位の低い宣教師としては異例の待遇だったんだぞ!
いずれは教団の幹部になるだろうと間違いなく期待されていた!」

神父「奴はこの先も栄光を約束されていたんだ!
それをお前たちが全て崩した!紛れもなく、お前たちのせいだろう!?」

神父「(まぁそのおかげで奴が失墜し、私が村を任された訳だがな…)」ニヤリ

カロル「……」

――回想(>>111-123)――

カロル「やめろ!やめろよ!?」

アッ イヤッ ギャハハハハ パンッパンッ
イヤァァァァァァ!!!

カロル「お願い…だよ…」

カロル「(ボクが…友達なんて欲しがったから……)」

――――
442:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 18:10:43 ID:swnM2r.2YI
カロル「」ブルブル

母「坊や…」ダキッ

カロル「お母さま…やっぱり、ボク……間違ってたのかな?」ブワッ

母「そんな事、ない…。坊やのせいじゃないのよ…?」ギュッ

神父「いいや!お前のせいだ!罪深き種族めが!」

カロル「……分からない。分からないよ。ボクは…ただ…」ポロポロ

神父「私は宣教師のように癒しの力などにほだされんぞ!
自らの罪を受け入れるがいい!」

母「……!」キッ

神父「」ビクッ

母「いい加減にしてちょうだい!
この子はあなたを助けたかっただけなのよ!?」

神父「ふ、ふん。笑わせるな!助けたかっただと?
お前たちは災いを招く忌まわしき種族だ。
真に人間を想うのなら、我々に近寄るな!」

カロル「近寄るな……?」ドクンッ

母「どうしたら分かってくれるの!?
なにがそうまでさせるのよ!?
この子の気持ちを…少しは考えてよ…!」
443:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 18:14:24 ID:swnM2r.2YI
神父「ホビットに配慮するバカがどこにいる!?
女々しく泣きおって!それで罪を受け入れたつもりか!?」

カロル「…ぅ…ぇぐ…」メソメソ

神父「はっきり言ってやろうか!?」

カロル「な…にを…?」

母「やめなさい!それ以上、坊やに淀んだ感情をぶつけないで!」

神父「お前たちはそんざ……」

「そこまでにしなよ?」

神父「」ビクッ

ガサッ

カロル「グスッ…。だれ?」

母「……?」

ラム「やあ、おじさん。また会ったね?」ニコッ

神父「お…ぉ…ぉまえは…!」ワナワナ

ラム「声が上擦ってるよ?」クスクス

神父「だ、だだ黙れぃ!!」

ラム「心配しなくても何もしないよ。今度はホント」

神父「く……!」ガクガク

神父「(信用できるか…!)」ギリッ
444:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 18:20:49 ID:swnM2r.2YI
カロル「ラムくん…。どうしてここに…?」

ラム「だってなかなか帰ってこないんだもん。
心配するに決まってるじゃないか?」

カロル「あ、その…ごめんね。すぐに戻るって言ったのに…」

ラム「ううん。気にしてないよ?
それより早く別の場所を見つけよう。
あそこはもうバレちゃったみたいだから」

カロル「え、けど…」

ラム「……分かっただろ?人間に期待するだけ無駄だって」

カロル「……」シュン

ラム「僕ね。少し前からそこにいたんだ。
ちょこっとだけ話も聞いてた。
だから…カロル君が辛いのも知ってるよ?」

カロル「……」

ラム「行こう?これ以上、君が辛い思いをすることはないんだから」

母「そうね。行きましょ?
幸いケガの具合も良くなったみたいだし」

カロル「……」
445:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/24(日) 18:22:32 ID:swnM2r.2YI
ラム「まだ…何かあるの?」キョトン

カロル「」チラッ

神父「ひぃっ!?な、なんだ!なんだ!?
また私に危害を加えようとでもいうのか!?」ビクビク

カロル「あの…。さっき言ってた…司祭様っていう人には、どうしたら会えますか?」

ラム「か、カロル君!?」ビックリ

母「何を言っているの…!?」

神父「し、司祭様に会うだとぉ?
そんな事、出来る訳が……」

神父「ん?」

神父「」ハッ

神父「(待てよ?そういえばもともとホビットを連れてくるように言われてたんだったな…。
あまりの事態に忘れるところだった…)」

カロル「会えない…ですか?」

神父「」ニヤリ

神父「いいや?会わせてやってもいいぞ…?」ニヤニヤ
446:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:16:58 ID:aGBdsxic0Q
神父「司祭様に会いたいというなら会わせてやってもいいぞ?」ニヤニヤ

カロル「ホント!?」パァァ

ラム「ち、ちょっと!本気で言ってるの?」

神父「あぁ。本気だとも。司祭様に会わせ……」

ラム「お前になんか聞いてない!」

神父「な、何を!貴様!?」

ラム「ねぇ。カロル君、どうなの?」

カロル「…ボクだけで行くから二人はここで待ってて」

ラム「なっ…!」

母「ダメに決まってるじゃない!?」

ラム「」ビクッ
447:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:18:27 ID:tKolNl3U7M
母「今まで坊やが望むなら…そう思って目を瞑ってきたけど」

カロル「……」

母「今度は認められない!
教団の本部に行けばあなたは一生陽の目を見られなくなる!
ささやかな幸せすら、失ってしまうのよ!?」

神父「き、貴様!人聞きの悪いことを言うな!?」

母「ならあなたはなぜ坊やを拐おうとしたの!?」

神父「そ、それは…」ゴニョゴニョ

母「あたし達に話せないような理由なんでしょう?
話せば坊やが考えを変えるかもしれないから、話せないんでしょう?」

神父「あ、いや…それはだな…」ゴニョゴニョ

母「この人間はあなたが司祭に会いたがる気持ちを利用してるだけよ!
何か企んでるに決まってるわ!」

カロル「……」
448:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:20:58 ID:tKolNl3U7M
神父「そ、そんな事はないぞ。私はお前の熱い気持ちに打たれたのだ!」

ラム「信じちゃダメだよ。人間は平気で嘘をつく生き物だから」

神父「余計なことを言うな!」

母「お願いよ!考え直して…?」

カロル「……それでも、行かなきゃ」

神父「よーし、よく言った!」

ラム「なんでさ。君が行く必要なんてないだろ?」

カロル「ボクじゃなきゃダメなんだ」

ラム「……!?」

カロル「ボクがちゃんと話さなきゃ。宣教師さまは悪くないって…。
そうしないと宣教師さまが不幸になってしまうもの」

ラム「宣教師…?」

母「……!」

母「(まさか…宣教師様を…)」
449:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:22:26 ID:aGBdsxic0Q
カロル「お母さま。おねがい。ボクに行かせて?」

母「ダメよ!行かせないわ!」

カロル「お母さま…」

母「…宣教師様は坊やの不幸を望まないはずよ…。
あなたを恨んだりしないわ?」

カロル「…だから助けないの?」

母「違う!そうじゃないの!」

カロル「宣教師さまは本気でボクたちを助けようとしてくれたよ…?」

母「分かってる!でも!…あたしのたった一人の家族なの!」

母「もう…失うのはたくさん!」

母「あたしには……あなたしかいないのよ…!」ウルッ

ラム「……」

カロル「……ごめんなさい。お母さま…」

母「なっ…なんで…なんで分かってくれないの?」

カロル「……」

母「あたしはただ、あなたが心配だから……」
450:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:25:30 ID:aGBdsxic0Q
カロル「ねぇ。お母さま」

母「え…」

カロル「村で約束したこと、覚えてる…?」

母「っ…!」

カロル「ボクは覚えてる。お母さまとの大切な約束だから」

母「……」

カロル「たとえば相手が人間でも……」

母&カロル「友達なら最後まで信じなさい」

ラム「……!」

カロル「……えへへ。やっぱり…覚えてた?」

母「自分で言ったことだもの…。覚えてるに決まってるわ」

カロル「……」ニコッ
451:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:27:35 ID:tKolNl3U7M
カロル「じゃあもうひとつ思い出してみて?」

母「…?」

カロル「宣教師さまが手を差し伸べてくれた時のこと」

母「それも、覚えてる……」

カロル「今まで…あんなことって、無かったでしょ…?」

母「……そう…ね」

カロル「…ボクが村でいじめられた時も、お母さまを傷付けられた時も、助けてくれたじゃない?」

母「……」

カロル「ルーボイくんとパッチくんだって。
宣教師さまがいなかったら…ホントの友達になれなかったと思う…」

母「(坊や……)」

カロル「みんな…みんな…。宣教師さまが…くれたんだよ?」グスンッ

母「……」

カロル「」グシグシ

母「分かったわ。あたしはもう何も言わない…」

カロル「…お母さま!」

母「けど、一人では行かせないからね?」

カロル「え…。でもそしたらお母さまが…」

母「これだけは譲らないわよ?」
452:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:30:26 ID:tKolNl3U7M
カロル「ラムくんはどうするの?
お母さまがいないと…一人にしちゃう」

ラム「僕のことは気にしないで」

カロル「え?だって…」

ラム「カロルくん達とは、ここで別れるよ」

カロル「…そ、そんな…」

ラム「同じホビットでも君は何かが違うみたい。
はっきり言って、不愉快だ」

カロル「…!」

ラム「君とは会ったばっかりだし、その人間も知らないけどこれだけは言えるよ。
君は人間を間違った目で見てる」

カロル「そんなこと…ないもん」

ラム「人間は汚い。汚いんだ。
君はまだ、本当に奪われる怖さを知らないから…」

カロル「……」

ラム「……あんまりお母さんを困らせたらいけないよ?
後悔するようになってから、思い出してしまうから」

カロル「……」

母「……ラム君」

ラム「……?」

母「ごめんなさいね…」

ラム「いえ…。それじゃ…」

カロル「ら、ラムくん…!」

ラム「バイバイ。カロル君!」ニコッ

カロル「っ……」

ラム「」スタスタ

スタスタ………
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