むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
288:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/20(日) 20:16:43 ID:HNswQRyMvc
牢屋番「先に言っておくが逃げようなんて考えるなよ?」
宣教師「」ギクッ
宣教師「……考えませんよ」
牢屋番「今はあんた以外に囚人がいないからな。
二人できっかり12時間交代、監視の目は離れないぜ?」
宣教師「はぁ…。今は、ということは先日まで別の囚人が?」
牢屋番「あぁ。たまにいるんだ。
あんたみたいに邪教に堕ちる教徒がな」
宣教師「私以外にも…」
牢屋番「まれにホビットを捕らえることもあるが…」
宣教師「ホビットを…ですか?」
牢屋番「あぁ。正直あれはどうなってるのかよく分からん。
噂じゃ断罪されただの、反省を促してから野に放つだのと言われちゃいるが…。」
宣教師「違うと?」
牢屋番「まるっきり違うさ。
実際は飯も服も与えずに牢に閉じ込めて、衰弱させてからアントリア様が連れていってる」
宣教師「アントリア神官が?」
289:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/20(日) 20:23:14 ID:HNswQRyMvc
牢屋番「そうだよ、よく分からないだろ?
あの方は本来、王国に仕える専属の僧侶だ」
宣教師「何度かお目にかかりましたが…私もあの方は教団の人間では無いと聞いてました」
牢屋番「一応俺たちと同じ宗派の人間ではあるが、それにしたってわざわざ王国から田舎の大聖堂まで来るか?
しかもホビットを連れてく為にだぞ?」
宣教師「確かにおかしいですね…。
司祭様からも聞いたことがありませんし、
アントリア神官とも1、2回ほどお話をさせていただいてますが、そのような話は……」
牢屋番「ふーん。
あんたは司祭様のお気に入りだと聞いてたから、てっきり何かしら知ってると思ってたが…」
宣教師「私はなにも知りませんよ。
それにお気に入りなどでもありません」
牢屋番「そうか?
去年あたりには若干20歳にして一人で村一つ任された宣教師だって、教徒の間で話題になってたぞ?」
宣教師「それは…。たまたま前任の神父様が病を患ってしまったので、代役を仰せつかったまでです…」
牢屋番「まぁ神父様も歳だったと聞くしな。
だが、それにしたって人の集まる村や町の管轄を位の低い宣教師に委ねるくらいだ」
宣教師「それは、そうかもしれませんが…」
290:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/20(日) 20:27:14 ID:2jtQ6Mfo/w
牢屋番「しかもたびたび司祭様が自ら赴いて様子を伺いに来てたんだろ?」
宣教師「たしかに不馴れな私を気にかけてくださってました…」
牢屋番「……孤児だったあんたを拾ってやったのもあのお方だつたと言うじゃないか?」
宣教師「はい…。感謝していますし、ずっと司祭様のことを尊敬しておりました」
牢屋番「なら、なぜだ?
そんな大恩ある方を裏切ってまで、ホビットに執着する理由があるのか?」
宣教師「……私にも分かりません。
しかし今まで書物や誰かの声で賜った教えと、自分の目で見た物の違いが大き過ぎたのです…」
牢屋番「バカを言うな。あんな奴らに同情の余地なんか無い」
宣教師「なぜあなたはホビットを憎むのですか?
彼らが一体なにをしたと言うのです?」
牢屋番「したさ。数え切れないくらいな」
宣教師「…え?」
牢屋番「長くなっていいなら話してやろうか?」
宣教師「是非、お願いします…」コクリ
291:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/20(日) 20:30:35 ID:HNswQRyMvc
牢屋番「俺は農家の出でな。
両親は市場に納入する作物を育ててたんだ」
宣教師「……」
牢屋番「貧乏暇なしってやつでさ。
毎日のように両親と一緒に土を耕して、雑草を刈って肥料を蒔いて…。
たっぷりと手間暇かけて育て上げた作物を収穫するにも、そこでまた一苦労だ」
牢屋番「ガキの俺にはキツかったなぁ。
なんでこんな生活しなきゃならねぇんだって両親に当たったこともあった」
牢屋番「けど、なんだかんだ楽しかったよ。
父さんは職人気質で取っ付きにくかったが、俺が作業を覚えるたびに笑いながら頭をなでてくれた」
牢屋番「母さんは俺の背が伸びるたびに畑の作物と比べて『ジョーもこの子もすくすく成長してるわね』なんて言うんだ。
息子の成長と作物の成長をいっしょくたにしてんだぜ?笑えるだろ?」クツクツ
宣教師「…素敵なご両親ですね?」ニコリ
牢屋番「はは。ただのんきなだけさ」
宣教師「…あなたはジョーさんとおっしゃるのですか?」
ジョー「あぁ。まぁ短い付き合いになるだろうから覚えなくてもいいけどな?」
宣教師「いえ、覚えさせていただきます」ニコニコ
ジョー「はは…やっぱ、あんた変わってんな?」
292:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/20(日) 20:33:39 ID:HNswQRyMvc
宣教師「ジョーさんはなぜご家業を継がず、ここに?」
ジョー「…まぁ、まずは話の続きだ」
宣教師「あ、はい…」
ジョー「あれは俺が15ぐらいの時だ。
いつも通り早起きして作物を一つ一つ数えてたら、なぜか数が足りなかった」
ジョー「獣の仕業かと思ったが、それにしちゃキレイにもぎ取られててな」
ジョー「その日から事あるごとに同じ事が続いた。
さすがに俺たち親子もバカじゃないからな。
気付いたよ。誰かが盗んでんだって」
ジョー「熟した実から、まだ青い実までもぎ取られて…。
かかしを置いてみたり、柵を張ったり、挙げ句には父さんが寝ずに見張ってたが、ことごとく無駄だった」
ジョー「次第に畑から作物が減って市場への納入にも間に合わなくなった。
急いで種を蒔いたが作物は成長に時間が掛かるからな。焼け石に水だったよ」
293:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/20(日) 20:36:57 ID:2jtQ6Mfo/w
ジョー「父さんも疲れ果てて倒れちまって、母さんは父さんの看病しなきゃなんねぇから作業にも手が付かない。
自然と俺が一人でキツい農作業をしなきゃならないわけだ」
宣教師「それは…辛いですね」
ジョー「辛いなんてもんじゃないぜ。
熱い日射しに照り付けられながらひたすら耕す日もあれば、寒さに凍えながら萎れちまった実を抜いたり…」
ジョー「そんな中でも作物は盗まれ続けるし、とても一人じゃ追い付かなかったよ」
ジョー「市場の方も、もたついてる俺たちに愛想尽かして買い取ってくれなくなっちまった」
ジョー「それでも売らなきゃ食ってけないからな。
荷車を担いで売り歩いたが、まぁこれが誰も買ってくれない…」
ジョー「市場で売られてる物と違って質も値段も、なんの保証もないからな…」
ジョー「結局、売れないまま盗まれ続けて…。
そんなこんなしてる内に父さんも死んじまった」
294:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/20(日) 20:38:54 ID:HNswQRyMvc
ジョー「…父さんの死をきっかけに塞ぎこんだ母さんは畑も、俺のこともほったらかして引きこもる始末だ」
ジョー「俺も今までの分が堰を切ったように溢れてなぁ。
全部バカらしくなって作業もやめちまった」
ジョー「そんなある夜の事だ。
ほったらかして伸びきった雑草を踏みながら適当に晩飯用の作物を漁ってたら……」
295:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/20(日) 20:39:51 ID:HNswQRyMvc
――回想(ジョー)――
ジョー「……ちっ!」ブチッ
ジョー「たわんだ葉にしぼんだ実ばっかだ」ブツブツ
ブチッ ブチッ
ジョー「ん?なんだ?」キョロキョロ
???「」ブチッ
ジョー「……おい!」
???「」ビクッ
ジョー「お前、なにしてんだ!?」
???「」ダッ
ジョー「あっ!待て!」ガッ
???「わっ…」ボトボト
ジョー「…それ、なんだよ?」
???「あぁ…あぅ……」ビクビク
296:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/20(日) 20:41:22 ID:HNswQRyMvc
ジョー「これも!これも!全部うちの畑で取れたモンじゃねぇか!?」
???「……うぅ…」ブルブル
ジョー「まさか…今までのもお前なのか!?」
???「ち、ちがいます…」
ジョー「ウソつけ!じゃあお前はここで何してたんだよ?
うちの作物を盗んでたんじゃないのか!?」
???「そ、そうですけど…」
ジョー「ふざけんな!お前顔見せてみろ!」バッ
???「あ……」ビクッ
ジョー「……!」
???「」ブルブル
ジョー「瞳が黄色く光ってる…。お前…ホビットか?」
ホビット「ゆ、ゆる……ゆるして、ください…」ガクガク
297:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/20(日) 20:47:29 ID:2jtQ6Mfo/w
ジョー「この…!」グイッ
ホビット「きゃっ…」
ジョー「お前のせいで…お前のせいで、俺たち家族は…!ちくしょう!!」
ホビット「……?」
ジョー「うぅ…なんでだよ…。なんでなんだ…?」ポロポロ
ホビット「だって…これしか、しらない…」
ジョー「なんだと!?」
ホビット「わたしたちは…ほかに生きるすべがない…」フルフル
ジョー「それなら、盗みも許されるってのか!?
そのせいで俺の父さんが死んでもいいってのかよ!?」
ホビット「しらない…わからないの…」ウルウル
ジョー「おまえ…!」グッ
ホビット「うっ…!」
ジョー「死ね…。お前なんか死んじまえ…!」グググッ
ホビット「あ、あ、あ…ぐっ…」ブクブク
ジョー「……」グキッ
ホビット「」カクンッ
ジョー「はぁ…はぁ…」
ホビット「」
ジョー「父さん…仇…ぅ…うぇっ…げほっ」ゲロロロ
ジョー「…うぷっ!…おぇっ……」ゲロゲロ
ジョー「は、はひ…ははは…母さんにも、教えてやんなきゃ」フラフラ
ジョー「俺、父さんの仇、とったんだ…」フラフラ
――――
298:🎄 名無しさん@読者の声:2013/1/24(木) 23:16:59 ID:SjpgvNX9ww
当初ほのぼのファンタジーだと思っていたら、意外とえげつない展開が続き驚いている現在。
それでもすごく、このSSが好きです。支援。
299:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/25(金) 23:18:39 ID:D9txi/yolg
宣教師「殺したの…ですか?」
ジョー「あぁ…。それほどに許せなかった…。
あいつのせいで全てが崩れたんだぞ?
それを…知らない、分からない。そんな無責任な言葉で片付けられるか!」
宣教師「気持ちは分かりますが、命を奪っても何も解決しませんよ?」
ジョー「……分かってるさ。だが、そんなの今さらだろう?」
宣教師「そうですね…」
ジョー「実際、あんたの言う通りだったよ。何も変わらなかった。
帰って母さんに話してやったら興味無さげに頷いただけで次の日からはまた同じ景色が巡るばかりだ」
宣教師「失ったものを補うために失わせても虚しさしか残りません…。
きっとお母様は報復など望んでいなかったのでしょう…」
ジョー「苦しかったんだ。しょうがないだろ?
俺はただいつもの暮らしを続けたかった。それを奴は奪ったんだ!」
300:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/25(金) 23:19:30 ID:IGFgpVzJso
宣教師「…それでもジョーさんにはお母様がいらっしゃるのでしょう?」
ジョー「…故郷に置いてったよ」
宣教師「へ…?」
ジョー「当たり前だろ?
父さんが死んだ途端に息子を見なくなるような母親だぞ!?」
宣教師「肉親を、捨てたのですか…?」
ジョー「そうさ!見捨てて何が悪い?
なんで俺ばっかり辛い思いをしなきゃならないんだ?」
宣教師「……」
ジョー「それもこれもホビットのせいさ!
奴らのせいで父さんは死んで、母さんは壊れた!
俺は何も悪くない!悪いのはあいつらだ!」
宣教師「……」
宣教師「(考え方があまりにも、幼い…)」
301:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/25(金) 23:21:08 ID:IGFgpVzJso
ジョー「あんたは奴らの事を何も知らないから、教えに背くなんてバカなマネが出来るんだろうな?」
宣教師「そんな事は……」
ジョー「いつの時代も奴らは卑しい存在さ。人間を妬んでは盗みを繰り返す…」ワナワナ
ジョー「癒しの力も!誰かの幸福も!自分の欲を満たす為なら平気で奪える薄汚い種族だ!」カベヲ ダンッ
宣教師「落ち着いてください…!
私に当たったところでどうにもならないでしょう?」
ジョー「ふん…。今は罪人だが、あんたは腐っても教団の人間だろ?
ここまで言ってもホビットが正しいと思えるのか?」
宣教師「…確かにあなたのおっしゃる通り、罪を犯すホビットもいるでしょう」
ジョー「分かってるじゃないか?
ならあんな奴らとは決別して、司祭様に赦しを…」
宣教師「しかし、それとこれとは話が別です」
ジョー「……?」
宣教師「先ほどジョーさんが語ってくださった過去も、想いも…」
宣教師「ホビットを忌み嫌う理由にはなりません!」
ジョー「な、なに…!」イラッ
302:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/25(金) 23:23:32 ID:IGFgpVzJso
宣教師「不条理な出来事を受け入れながら生きるのは、何もあなただけではない!」
ジョー「くっ…!あんた、やはりホビットに毒されてるな?」
宣教師「勘違いなさらないでください。あなたの気持ちは分かると言ったはずです」
ジョー「なら、なんでだ!奴らのした事は許されるってのか!?」
宣教師「許せるかどうかは知りません。
ですが、少なくとも過ちを繰り返すのは間違っています」
ジョー「あ、過ちだと?」
宣教師「あなたは"その子"の犯した罪に対し、自らもまた罪を犯すことを選んだ」
ジョー「罪…!?」
宣教師「…あなたには"その子"の命を奪った罪があるでしょう?」
ジョー「違う!罰を与えただけだ!
犯した罪には必ず罰が下る!俺は何も間違っちゃいない!」
303:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/25(金) 23:25:32 ID:IGFgpVzJso
宣教師「自分を正当化しても意味はありませんよ?
あなたの中には今も罪の意識が残っているはずです…」
ジョー「分かった風な口を聞くな!お前は罪人だろう!?」
宣教師「……確かにあなたから見て私は罪人かもしれません。
しかし罪人だからといって、あなたに私の全てを否定する権利はない」
ジョー「な、なんだと?」
宣教師「ホビットも罪人も奴隷もあなたも神の目に映れば同じ命にすぎない。
身分や偏見を言い訳にするなど、愚かな行為だとは思いませんか?」
ジョー「くっ…!屁理屈をこねたとこでお前は罪人だ!
神の代弁者である司祭様が決めたって事は、お前は神の意思で罪の烙印を押されてるんだよ!」
宣教師「くだらない…」
ジョー「なっ!?」
宣教師「……以前までの私なら、あなたの言葉をすべて受け入れたかもしれないですね」
ジョー「今度はなんだ?また屁理屈でも言うつもりか!?
どんな言い訳しようがお前は……」
宣教師「」ハァ
ジョー「」ピクッ
ジョー「おい、今のため息はなんだ?」イライラ
宣教師「別に…」フッ
ジョー「ふざけるな!」
宣教師「ふざけてなどいませんが?」
ジョー「……てめぇ…!」ギリッ
304:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/25(金) 23:27:50 ID:IGFgpVzJso
ジョー「屁理屈の次は開き直りか?人をバカにするのもいい加減にしろよ!!」
宣教師「……」プイッ
ジョー「はっ?まただんまりか?
分かったよ、もう分かった!
あんたにゃ何を言っても無駄だってな!」
宣教師「……」ツーン
ジョー「ちっ!あんたは分かる人だと思ったから、ここまで言ってやったのにな…。
一生牢屋で頭を冷やせばいい」
宣教師「…ジョーさんこそ、頭でっかちじゃないですか?」ボソッ
ジョー「…なんだと!?」
宣教師「…あなたも本当は分かっているはずです。同じ命に境など無いことを…」
ジョー「……」グッ
305:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/25(金) 23:29:22 ID:D9txi/yolg
宣教師「あなたの話を聞いていると、まるで逃げ道を探すために己を正当化しようとしているように見えます」
ジョー「違うな、俺は正当化しようとしてるんじゃない。正しい事だけを言ってるんだ」
宣教師「……自分を騙して苦しくはならないのですか?」
ジョー「黙れ!」ダンッ
宣教師「あなたが手にかけたホビットもあなたと同じだと思いますよ?」
ジョー「まだ言うかっ!」
宣教師「その子は他に生きる術を知らないと言ったのでしょう?」
ジョー「だからなんだっ!?」イラッ
宣教師「…不条理な出来事にさらされ、理不尽を受け入れられず。
生きようともがいた結果が他人から奪うことだったのかもしれない」
ジョー「そんなの俺の知ったことか!?」
宣教師「そう。その通りです」
ジョー「はぁ?」キョトン
306:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/25(金) 23:30:46 ID:D9txi/yolg
宣教師「今、まさにあなたが言った言葉こそが答えなのです」
ジョー「あんた、何を言ってるんだ?」
宣教師「あなたが言ったんじゃありませんか?
自分が受けた理不尽を知らない。分からない。
そんな無責任な言葉で片付けられないと」
ジョー「う……」ドキッ
宣教師「誰しも心に怠惰を抱えるもの」
宣教師「自分を第一に考え、無関心に振る舞う悪しき習性です」
宣教師「それでいながら自分に向けられれば怒りに駈られる。思いやりに欠ける卑劣な保身」
宣教師「あなたは言い訳を重ねる事で、今までの怠惰を隠してきたのでしょうね」
宣教師「なにより家族想いで優しいジョーさんだからこそ…選択を誤った。
優しさを捨てて、己を偽ることで…」
ジョー「くっ…!」グッ
307:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/25(金) 23:32:07 ID:D9txi/yolg
ジョー「あぁ。そうさ!怠惰にかまけて何が悪い!?」
ジョー「自分を騙して何が悪い!?」
ジョー「正直に生きてなんになる!?」
ジョー「俺は気付いたんだ!何が正しいかって事にな!」
ジョー「優しいままでいれば悔やみ続ける!
優しいままでいれば傷付けられる!
優しいままでいれば許すしかなくなる!!」
ジョー「作物も、畑も、生活も、父さんも、母さんも、奪われた俺はどうすればいい!?」
ジョー「恨むしかないだろうが!?
奪ったあいつを!あいつがいないなら、あいつに近いものを!!」
ジョー「奴らを許したら俺には何も残らない!
優しさが邪魔になるなら捨ててやるさ!」
ジョー「お人好しなんか辛く、悲しいだけだ!
そんな負け犬になるくらいだったら俺は奪ってやるよ!」
ジョー「奪って、奪い尽くして、奴らの苦しむサマを眺めながら嘲笑ってやる…!
俺はこんなにも幸せなのに、お前らは不幸だってな!」
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