むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
23:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:14:29 ID:apUuk9iOiY
宣教師「それにしても」
宣教師「あれほどのケガを負って短時間で動ける程度に回復するとは」
宣教師「(あれが例の癒しの力……)」
宣教師「(いや、違う。癒しとはもたらす力)」
宣教師「(それにホビットが自己再生できるなんて聞いた事がない)」
宣教師「(あの子は一体……)」
宣教師「まあいいでしょう。
今は明日の分のビスケットを焼かなければ」
宣教師「………あの子にも焼いてあげますかね」
24:🎄 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 22:34:00 ID:vTG5urokkw
すごくいい 支援
25:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:49:58 ID:awL1.A7dcc
>>24さん
支援ありがとうございますm(__)m
正直初めてのSSで手を震わせながら投稿ボタンを押しているような状況ですが
暖かい目で見ていただけると助かります。
今日はここで切っておきます。
おやすみなさい。
26:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:28:03 ID:hTsbsopuA2
――村外れの民家――
少年「」タタタッ
少年「はぁっ…はぁっ…」
少年「」ニコニコ
少年「」ハッ
少年「」ブンブン
少年「……」
少年「」ギュッ
少年「ただいま」ガチャッ
27:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:29:52 ID:hTsbsopuA2
母「おかえりなさい。
ずいぶん遅かったのね?」
少年「うん、ちょっとね」
母「そう」
少年「うん」
母「」ジーッ
少年「な、なに?」
母「どこに行ってたの?」
少年「か、川でマルクと遊んでたんだ。
そしたら夢中になっちゃって。それで……」
母「……あらあら、じゃあ泳いできたのかしら?」
少年「う、うん」プイッ
母「楽しかったでしょうねぇ。
あなたの目も泳ぎ足りないと言ってるわ」クスクス
少年「え……」アセアセ
28:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:31:58 ID:h173FRh8P2
母「まぁ!人間の村へ行ったの?」
少年「……ごめんなさい。お母さま」
母「……人間に見つからなかった?」
少年「」ドキッ
少年「うん、見つかってないよ…」
母「ふふ、また目が泳いでる」
少年「うぅ…」カァァ
29:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:33:01 ID:hTsbsopuA2
母「おいで、わたしのかわいいぼうや」
少年「…うん」ダキッ
母「ふふ…いつまで経っても甘えん坊ね」
少年「……だめ?」ジーッ
母「いいのよ、あなたは私のかわいい息子だもの」ナデナデ
少年「えへへ。うれしい」ニコニコ
30:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:34:22 ID:h173FRh8P2
母「……そう」
母「あなたは私のたった一人の家族」
母「世界で一番愛してるわ。誰よりも」
母「だからこそ、誰よりもあなたを失いたくないのよ」
母「ああ、私のかわいい坊や」ダキッ
少年「お母さま…?」
31:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:37:09 ID:hTsbsopuA2
母「見つかったんでしょう?」
母「人間に、何をされたの?」
少年「っ……!」ギュッ
母「目を閉じても分かるわ」
母「こうして抱き締めていると、分かるの」
母「あなたの胸からポタポタと音がする。
心が涙をこぼしているのが聴こえるわ」
32:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:38:27 ID:h173FRh8P2
少年「」ウルッ
少年「……」ウルウル
少年「う、うぅ…」ポタポタ
少年「わああぁぁん!!」ポタポタ
母「辛かったでしょう。もう大丈夫よ」ナデナデ
33:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:39:58 ID:h173FRh8P2
少年「ヒック…グスッ……」キュッキュッ
母「あらあら、こすっちゃだめよ。
目が傷付いてしまうわ?」
少年「グスッ…ごめんなさい…」
母「いいのよ。それにしてもどうして人間の村へ?」
少年「………」
母「おしえて?」
少年「いやだ……」
母「まぁ…どうして?」キョトン
少年「だって…お母さまを悲しませたくないもの」
34:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:41:32 ID:h173FRh8P2
母「…ふふ、あなたは本当に心優しい子。」
母「でもね、坊や。
あなたがどんなにひどい言葉をぶつけるより」
母「私を嫌いになってしまうより」
母「あなたが独りで抱え込んでしまう方がよっぽど辛いわ」
少年「お母さま……」ウルッ
母「ふふふ。やっぱり嫌われるのもショックかも?」ニコニコ
少年「………」ダキッ
35:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:46:20 ID:h173FRh8P2
母「話す気になってくれた?」ポンポン
少年「うん。実はね…友達が欲しかったの」
母「そう」ニコニコ
少年「悲しく…ないの?」
母「あら、どうして?」
少年「だって……」
母「お友達が欲しいなんて、当たり前のことじゃない。
あなたが誰と仲良くしても私はダメなんて言わないわ」
母「(……そうよね。
私以外知らないんだもの。
マルクは…友達と言っても言葉を交わせない野生の獣。
この子は一緒に笑いながら
たくさん遊べる仲間が欲しかったんだわ。
それでも気を使って、
寂しさを奥底にしまって…。
人間に求めてしまったのね…)」
少年「そっか」ニコニコ
母「そうよ?」ニコニコ
36:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:47:39 ID:hTsbsopuA2
少年「それとね?」
母「うん」ニコニコ
少年「友達が、できたの」ニコッ
母「うんうん」ニコニコ
母「うん……?」
母「えっ」
37:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:49:57 ID:h173FRh8P2
少年「お母さま?」キョトン
母「あっううん、なんでもないのよ。
続けてちょうだい?」アセアセ
少年「うん。それでね。女の人なの」
母「へぇ。女の子と仲良くなったの。
すごいじゃない?」
少年「ううん。大人の人間だよ」
母「えっ」
少年「へ?」キョトン
38:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:52:54 ID:h173FRh8P2
母「あ、あーら…そ、そうなの」
少年「うん。ビスケットくれたんだ!」パァァ
母「そ、そう…?」
少年「おいしかったよ!」ニコニコ
母「よ、よかったわねぇ」ニコニコ
母「(大人の女性と友達なんて、冗談よね…?
もしかして変な趣味の人じゃ…?
ま、まさかねぇ…?
でもこの子が言ってる事だし…)」アセアセ
39:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 10:01:14 ID:h173FRh8P2
――教会――
宣教師「くしゅんっ」
宣教師「……風邪でしょうか?」
宣教師「……まあいいです」
宣教師「ふむ、おいしそうに焼けました」
宣教師「村の子供の分とあの子の分は別に分けておきましょう」
宣教師「ふぁぁ…」
宣教師「夜も更けましたし寝ましょうか」
宣教師「」ハッ
宣教師「……そういえば、あの子の家を知りません」
40:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 10:03:25 ID:hTsbsopuA2
少年「それでねっ!ボクお礼しに行きたいの!」
母「そうねぇ。じゃあ明日、一緒に行きましょうか」
少年「うんっ!」パァァ
母「(うふふ。嬉しそうねぇ。
この子が私以外に感情を向けるなんて初めてだから、なんだか私まで嬉しいわ)」ニコニコ
少年「あっそうだ!
おみやげに庭のカリアムで花束を作ろうかな!」
母「いいわねぇ。
でも今日は遅いから、それは明日にしましょうか?」
少年「あっうん…そうだね。」シュン
母「大丈夫よ、坊や。
明日は逃げたりしないから」
少年「うん!歯磨きしてくるね!」タタッ
母「まぁまぁ。
家の中で走っちゃだめじゃない?」ニコニコ
41:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 10:05:22 ID:h173FRh8P2
少年「おやすみなさい。お母さま」
母「おやすみなさい。かわいい坊や」
少年「ふふっ」ワクワク
母「(あんまり楽しみで寝れないのね。
うふふ。困った子だわ)」ニコニコ
少年「お母さま」ワクワク
母「なぁに?」ニコニコ
少年「早く明日にならないかな?」ワクワク
母「まぁ?」ニコニコ
少年「ボクずっと起きてようかな?」ワクワク
母「夜更かしする悪い子は朝ごはん抜きよ」
少年「はーい…」シュン
42:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 10:07:14 ID:h173FRh8P2
少年「おやすみなさい」ギュッ
母「おやすみなさい」ニコニコ
少年「」ウトウト
少年「」スピー
母「……まだまだ子供ね」クスクス
母「生まれてくれてありがとう。
私のかわいい坊や」
母「……」
母「」スースー
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