むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
220:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/8(火) 20:01:14 ID:whq.aZ6wWc
ここは湖の上の町
透き通るほどキレイな水に囲まれて育った種が、
連日のように笑顔の花を咲かせています。
『こんな日には出かけよう。
今日は幸せが落ちている気がする』
毎日のように出る言葉は希望という名の肥料
笑顔の花は明るい陽射しに照らされて、
きらめきに満ちた夢を見ています。
この町に誰かを疑うような人間はいません。
争いが無いのだから、争いは起こらない。
町の人々は今日も笑顔の花を咲かせます。
221:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/8(火) 20:07:02 ID:1rWYGP2MtE
『こんな日には出かけましょう。
今日はとても大きな幸せが落ちている気がするの』
一人の少女がこぼした言葉、毎日自然と出てくる言葉が今日だけは違う意味を持つことになります。
不幸にも少女はこっそりと町に入り込んだ悪いホビットと出会ってしまうのです。
ホビットはずる賢い種族。
甘い言葉を紡いでまんまと彼女を騙し、少女の心に毒を忍ばせます。
ホビットによって毒された花々は枯れてしまいます。
それはすでに決まっていることであり、覆ることはないのです。
争いがひょっこりと顔を覗かせました。
町の人々は今日も笑顔の花を咲かせます。
222:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/8(火) 20:16:22 ID:whq.aZ6wWc
次の日の朝も町は眩しい陽射しに照らされます。
しかし笑顔の花が見当たりません?
ひとりぼっちの萎れた花がしくしくと泣いています。
取り囲むのは茶褐色に色褪せたお花畑
キレイだったはずの水は赤く濁っています。
灰色の世界にまどろむ少女はきらめきに満ちた夢を見ます。
それはいつもの町の景色
それはいつもの町の声
深く眠る彼女は怖い怖い悪夢を見ます。
それは変わり果てた町の景色
聞こえなくなった町の声
彼女は過ちを胸に残して泣いています。
彼女の傷を癒せるものは枯れた町への贖い
神への無償の奉仕、すなわち神の意思に沿うこと
ホビットに騙されたかわいそうな少女は外れることのない重い枷を背負うのです。
枯れた町へ想いを馳せて………
〜悲劇の町の少女〜
聖典・神の声より
著者:ノワール・バントン
754.79 KBytes
[4]最25 [5]最50 [6]最75
[*]前20 [0]戻る [#]次20
【うpろだ】
【スレ機能】【顔文字】