むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
19: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:59:19 ID:lvsJdXSM9o
少年「あ、あの…」
宣教師「はいっ」ビクッ
少年「あっ…ごめんなさい…」
宣教師「あっいや、どうしました…?」
少年「その…どうして…ボクを?」
宣教師「えっ」
少年「」ビクッ
20: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:05:09 ID:lvsJdXSM9o
宣教師「あっいや、その…どうしてと言われましても」
少年「…小さい頃、おじいさまが言ってました。
神に仕える人間は人一倍、ボクたちを嫌ってるって…」
宣教師「え、えぇ。まぁ…」
少年「……どうして、ですか…?」
宣教師「(い、言えない。
神に仕える身でありながらホビットを哀れに思ったなんて…)」
少年「……?」キョトン
宣教師「」キュンッ
宣教師「えっ」
少年「」ビクッ
21: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:10:33 ID:apUuk9iOiY
宣教師「(い、今もしかして私…。
いや、ありえない。何かの間違いに決まってます!
そうですよ、不気味な黄色い眼で見つめられたって)」
少年「」ジーッ
宣教師「」キュンッ
22: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:12:11 ID:lvsJdXSM9o
少年「……あっ!」バッ
宣教師「えっ」ビクッ
少年「ごめんなさい!ボク…家に帰らなきゃ!」
宣教師「そ、そうですか。
しかし先ほどのケガが…」ドキドキ
少年「だ、大丈夫です!
……ありがとうございました!」ペコリ
宣教師「い、いえ。そんなお構い無く」ドキドキ
少年「」ダッ ガチャッ バタンッ
宣教師「行ってしまった……」ドキドキ
23: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:14:29 ID:apUuk9iOiY
宣教師「それにしても」
宣教師「あれほどのケガを負って短時間で動ける程度に回復するとは」
宣教師「(あれが例の癒しの力……)」
宣教師「(いや、違う。癒しとはもたらす力)」
宣教師「(それにホビットが自己再生できるなんて聞いた事がない)」
宣教師「(あの子は一体……)」
宣教師「まあいいでしょう。
今は明日の分のビスケットを焼かなければ」
宣教師「………あの子にも焼いてあげますかね」
24: 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 22:34:00 ID:vTG5urokkw
すごくいい 支援
25: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:49:58 ID:awL1.A7dcc
>>24さん
支援ありがとうございますm(__)m
正直初めてのSSで手を震わせながら投稿ボタンを押しているような状況ですが
暖かい目で見ていただけると助かります。
今日はここで切っておきます。
おやすみなさい。
26: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:28:03 ID:hTsbsopuA2
――村外れの民家――
少年「」タタタッ
少年「はぁっ…はぁっ…」
少年「」ニコニコ
少年「」ハッ
少年「」ブンブン
少年「……」
少年「」ギュッ
少年「ただいま」ガチャッ
27: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:29:52 ID:hTsbsopuA2
母「おかえりなさい。
ずいぶん遅かったのね?」
少年「うん、ちょっとね」
母「そう」
少年「うん」
母「」ジーッ
少年「な、なに?」
母「どこに行ってたの?」
少年「か、川でマルクと遊んでたんだ。
そしたら夢中になっちゃって。それで……」
母「……あらあら、じゃあ泳いできたのかしら?」
少年「う、うん」プイッ
母「楽しかったでしょうねぇ。
あなたの目も泳ぎ足りないと言ってるわ」クスクス
少年「え……」アセアセ
28: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:31:58 ID:h173FRh8P2
母「まぁ!人間の村へ行ったの?」
少年「……ごめんなさい。お母さま」
母「……人間に見つからなかった?」
少年「」ドキッ
少年「うん、見つかってないよ…」
母「ふふ、また目が泳いでる」
少年「うぅ…」カァァ
29: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:33:01 ID:hTsbsopuA2
母「おいで、わたしのかわいいぼうや」
少年「…うん」ダキッ
母「ふふ…いつまで経っても甘えん坊ね」
少年「……だめ?」ジーッ
母「いいのよ、あなたは私のかわいい息子だもの」ナデナデ
少年「えへへ。うれしい」ニコニコ
30: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:34:22 ID:h173FRh8P2
母「……そう」
母「あなたは私のたった一人の家族」
母「世界で一番愛してるわ。誰よりも」
母「だからこそ、誰よりもあなたを失いたくないのよ」
母「ああ、私のかわいい坊や」ダキッ
少年「お母さま…?」
31: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:37:09 ID:hTsbsopuA2
母「見つかったんでしょう?」
母「人間に、何をされたの?」
少年「っ……!」ギュッ
母「目を閉じても分かるわ」
母「こうして抱き締めていると、分かるの」
母「あなたの胸からポタポタと音がする。
心が涙をこぼしているのが聴こえるわ」
32: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:38:27 ID:h173FRh8P2
少年「」ウルッ
少年「……」ウルウル
少年「う、うぅ…」ポタポタ
少年「わああぁぁん!!」ポタポタ
母「辛かったでしょう。もう大丈夫よ」ナデナデ
33: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:39:58 ID:h173FRh8P2
少年「ヒック…グスッ……」キュッキュッ
母「あらあら、こすっちゃだめよ。
目が傷付いてしまうわ?」
少年「グスッ…ごめんなさい…」
母「いいのよ。それにしてもどうして人間の村へ?」
少年「………」
母「おしえて?」
少年「いやだ……」
母「まぁ…どうして?」キョトン
少年「だって…お母さまを悲しませたくないもの」
34: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:41:32 ID:h173FRh8P2
母「…ふふ、あなたは本当に心優しい子。」
母「でもね、坊や。
あなたがどんなにひどい言葉をぶつけるより」
母「私を嫌いになってしまうより」
母「あなたが独りで抱え込んでしまう方がよっぽど辛いわ」
少年「お母さま……」ウルッ
母「ふふふ。やっぱり嫌われるのもショックかも?」ニコニコ
少年「………」ダキッ
35: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:46:20 ID:h173FRh8P2
母「話す気になってくれた?」ポンポン
少年「うん。実はね…友達が欲しかったの」
母「そう」ニコニコ
少年「悲しく…ないの?」
母「あら、どうして?」
少年「だって……」
母「お友達が欲しいなんて、当たり前のことじゃない。
あなたが誰と仲良くしても私はダメなんて言わないわ」
母「(……そうよね。
私以外知らないんだもの。
マルクは…友達と言っても言葉を交わせない野生の獣。
この子は一緒に笑いながら
たくさん遊べる仲間が欲しかったんだわ。
それでも気を使って、
寂しさを奥底にしまって…。
人間に求めてしまったのね…)」
少年「そっか」ニコニコ
母「そうよ?」ニコニコ
36: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:47:39 ID:hTsbsopuA2
少年「それとね?」
母「うん」ニコニコ
少年「友達が、できたの」ニコッ
母「うんうん」ニコニコ
母「うん……?」
母「えっ」
37: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:49:57 ID:h173FRh8P2
少年「お母さま?」キョトン
母「あっううん、なんでもないのよ。
続けてちょうだい?」アセアセ
少年「うん。それでね。女の人なの」
母「へぇ。女の子と仲良くなったの。
すごいじゃない?」
少年「ううん。大人の人間だよ」
母「えっ」
少年「へ?」キョトン
38: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:52:54 ID:h173FRh8P2
母「あ、あーら…そ、そうなの」
少年「うん。ビスケットくれたんだ!」パァァ
母「そ、そう…?」
少年「おいしかったよ!」ニコニコ
母「よ、よかったわねぇ」ニコニコ
母「(大人の女性と友達なんて、冗談よね…?
もしかして変な趣味の人じゃ…?
ま、まさかねぇ…?
でもこの子が言ってる事だし…)」アセアセ
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