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少年「ボクが世界を変えてみせる」
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1:🎄 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:21:41 ID:apUuk9iOiY
むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。


137:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 20:35:41 ID:JjbL7qVj/A
少年「いやだ、いやだ!いやだぁぁぁああ!!!」

母「坊や……」ダキッ

少年「あ、あ、あぁぁぁぁ!!!」

母「もう、大丈夫よ…。
あれは夢、忘れてしまいなさい」ギュッ

少年「お母さま…」

母「落ち着いた?」ニコッ

少年「ねえ…」

母「ん?」

少年「…ボクが赤ちゃんだった時にも、あんな事してたの?」

母「」ビクッ
138:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 20:37:36 ID:hN22NeG0qs
母「なにを、いっているの…?」

少年「ねえ、答えてよ。お願い?」

母「……」

少年「なんで何も言ってくれないの?
ねえ、どうして?」

母「坊や、それはね…」

少年「ごめんなさい」

母「えっ」

少年「よく考えたら、お母さまがそんな事するわけないよね?
疑ったりしてごめんなさい」ペコリ

母「坊や…?」
139:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 20:41:37 ID:hN22NeG0qs
少年「だってお母さまはキレイだもんね?」

少年「汚れてなんかないよね?」

少年「ごめんなさい。二度とお母さまを疑ったりしないよ」

少年「ボク、お母さまを信じてるから!」ニコッ

母「坊や……」

少年「どうしたの。お母さま?」

母「……なんでもないわ」

母「(謝らなきゃいけないのは、あたし……。
ごめんなさい…ごめんなさい…)」
140:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 20:43:15 ID:hN22NeG0qs
少年「そういえば宣教師様は?」

母「少し出かけるそうよ?」

少年「そっか。じゃあボク、マルクに会いに行こうかな」

母「だめよ、おとなしくしてなくちゃ。
村から離れているとはいえ、いつ人間に会うか分からないわ」

少年「そっか、そうだね。
マルク、ひとりぼっちで寂しくないかなぁ?」

母「大丈夫よ、マルクは利口な子だもの。
ちゃんと自分の生活を送ってるわ?」

少年「そうだよね、ボク我慢するよ」

母「あなたもとってもお利口ね?」ナデナデ

少年「えへへ!」テレテレ

母「………」
141:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 20:45:44 ID:JjbL7qVj/A
――回想(昨夜)――
母「すみません、お風呂まで頂いてしまって……」

宣教師「お気になさらず。
この教会も所詮は借り物、私の所有地ではありませんのでご自由にお使いください」

母「ありがとうございます。あの子は?」

宣教師「疲れたのでしょう。奥の部屋で寝息をたてていますよ」

母「そう、ですか。そうですよね。
あんな事があったんですもの…」

宣教師「…こちらでお茶でもいかがですか?
拙い出来映えではありますがお菓子も用意しましたので」

母「おいしそうですわね。もちろん頂きます!」

宣教師「……怪我の具合はどうですか?」

母「宣教師様の手当ての甲斐もあって良くなりましたわ」ニコッ

宣教師「…失礼ですが癒しの力を以てして治せないのでしょうか?」

母「……」

宣教師「あ、いえ。答えにくいようでしたら…」

母「私は、癒しの力なんて持ってません」

宣教師「え…?」
142:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 20:48:35 ID:JjbL7qVj/A
宣教師「それはどういう意味ですか?」

母「そのままの意味ですよ?」

宣教師「し、しかしあなたはホビットでは?」

母「えぇ。私はホビットですがそのような力は持っていませんよ?」

宣教師「ですが言い伝えにはハッキリと…」

母「宣教師様、失礼ですが教団に入られて何年になりますか?」

宣教師「かれこれ10年ほどになります…」

母「まぁ!10年も?
ずいぶんとお若いのね!」

宣教師「ふふ。歳は21ですが、私は孤児として司祭様に拾われましてね。
幼い頃から教団にいたのです」

母「そうでしたの…」
143:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 20:50:43 ID:JjbL7qVj/A
宣教師「それよりも私が教団に入った年月とお話にどのような関係が?」

母「あぁいけない!そうでしたね。
10年であれば宣教師様がご存知無いのも無理はないですわ」

宣教師「と言いますと?」

母「あれは確か…あの子がまだ赤ん坊だった頃…」

母「忘れもしません、すべてが崩れ去った日……」
144:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 20:52:09 ID:hN22NeG0qs
――回想(ホビットの集落)――
兵士「ずる賢いホビットめ。
我々の目を盗んで森の奥に集落を作っていたとはな」

兵士「この世界にお前たちの居場所などない!」

母「あぁ…村が焼けている…」

兵士「見つけたぞ!殺せ!
一匹たりとも逃すな!」

父「待て!子供に手を出すつもりか!」

父「せめて、お前たちだけでもっ……!」

メラメラ メラメラ
145:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 20:54:16 ID:JjbL7qVj/A
母「………」

宣教師「そんな事があったのですか…」

母「あの日、王国の兵士たちが私たちの村を焼き払い、
家族も村の人たちも皆殺しにされてしまいました」

宣教師「……」

母「幸い夫のおかげであたしと息子とお父様は逃げられましたが、
後日、王国の兵士が去ったのを機に様子を伺いましたところ
焼け野原となった村に夫と村人たちの無惨な死体が残っていました」

母「その日からは今日を凌げるかも分からない有り様で…。
元々あたしたちホビットは迫害を受けていましたし、
人間の住む場所で買い物も出来ませんから。
年老いた父とまだ赤ん坊だったあの子を養う為に木の実を探したり、
狩りをしてみたり…時には体も売りました」

母「うふふ。ご心配なさらずとも昨日が初めてではありませんのよ?」

宣教師「申し訳ございません…」

母「あ、ごめんなさい…。そういうつもりで言ったんじゃないんです…」

宣教師「いえ、何も知らず今まであそこの村人達にホビットへの偏見を植え付けたのは私です…」

母「……しかたないですわ、環境がそうさせるんですもの」
146:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 20:55:58 ID:JjbL7qVj/A
宣教師「すみません…。話の続きをお願いします」

母「…どこまで話しましたっけ?」

宣教師「そ、それは…その……」カァァ

母「?」

宣教師「あの、か、体を……」

母「」ハッ

シーン

母「あらやだ!ごめんなさい!」アセアセ

宣教師「そ、その…お気になさらないでください」カァァ

母「ほ、ほほほ…続き、話しましょうか?」

宣教師「お、お願いします!」
147:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 20:58:24 ID:JjbL7qVj/A
母「そ、そうね。
あれは…確か村を追われて5年も経った頃かしら?
お父様も歳だったし、娘のあたしに苦労を掛けたくなかったんでしょうね…。
その日の食料を調達して帰ってみたら、遺書を残していなくなっていました」

宣教師「……」

母「あの子には病気で亡くなったと言ってあるんですがね。
幼かったあの子に残っている思い出はお父様が口癖のように言っていた人間への恨み言だけ…」

宣教師「そういえばあの子も言っていました。
おじいさまに教団の人間の話をされたと」

母「えぇ。あたしも父の遺書を見るまで知らなかったのですが、
ホビットへの差別の始まりは教団にあるようなんです」

宣教師「やはりそうですか…」

母「教団の目的は分かりませんが、ホビットが人間から癒しの力を盗んだという噂が流れたのも父が子供の頃の話だと聞きました」

宣教師「なっ……まさか……!」

母「そのまさかですよ」

宣教師「しかし、それではなぜ当時の人々は…」

母「分かりません、でもあたしは父の言葉が真実だと思っています」
148:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 21:02:15 ID:hN22NeG0qs
宣教師「ホビットは……力を盗んでいなかった…。
いや、そもそもそんな力は存在しなかった、と言うのですか?」

母「あたしたちは森で暮らすおとなしい種族、何も侵さず、何も拒まず静かに生きていた。
少なくとも人間の方々に伝わっているような伝承は存在しなかったそうです」

宣教師「そんな……バカな!?」

母「………」

宣教師「私は…私たち人間は…そんなものに惑わされてきたというのですか!?」

宣教師「そんな……私が今まで信じてきた事は…捧げてきたものは……」

母「……」
149:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 21:03:46 ID:JjbL7qVj/A
宣教師「あぁぁぁぁぁああ!!!」ダンッダンッ

母「せ、宣教師様!?」

宣教師「私は…罪深い!裁かれるべきは……あぁぁぁぁ!!!」ダンッダンッ

母「お、おやめください!
頭など打ち付けては傷付いてしまいます!」ガシッ

宣教師「放っておいてください!」バッ

母「きゃっ」

宣教師「あなたの話が本当なら……私は罰を受けなければなりません」

母「……いい加減になさい!」バシンッ

宣教師「っ!?」
150:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/31(月) 21:06:24 ID:hN22NeG0qs
母「あなたたち人間は、何をもって罪と定め、何をもって罰を与えようとするのか。
あたしにはさっぱり分からないわ!」

宣教師「」ビクッ

母「なぜ許す事を考えないの!?
なぜ正そうとは思わないの!?
あなたたちの都合に付き合わされるのは、もううんざりよ!!」

母「いつまで苦しみを背負って、どこまで悲しみを堪えれば分かってくれるのよ!?」

母「あたしたちは……誰も傷付けたりしない。
ただ静かに暮らしたいだけなの…」ブワァ

母「ねぇ、分かってよ…?
誰も不幸なんか望んでいない…。
あなたが不幸になっても、あたしも、あの子も喜んだりしないわ…」ポロポロ

宣教師「……」

宣教師「申し訳、ありません…」ガクッ
151:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/1(火) 19:03:04 ID:PegmcYVJcA
あけましておめでとうございます。
あの…今さらなのですが、登場人物に名前を付けた方がいいでしょうか?
読みにくかったりしませんかね?
152:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/1(火) 23:24:01 ID:.cUSspOk4Q
――――
母「……」

少年「宣教師さま、早く帰って来ないかなぁ」

母「そうねぇ。どこに行かれたのかしら?」

少年「帰ってきたら今までちゃんとお話出来なかったから、たくさんお話したいな!」

母「うふふ。そうなさい。宣教師さまも喜ぶと思うわよ?」

少年「えへへ!楽しみ!」

母「」ニコニコ

少年「ねぇ、お母さま!」

母「ん?なぁに…っ…!」ズキッ

少年「お母さま…?」
153:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/1(火) 23:25:44 ID:.cUSspOk4Q
母「っ……!」ズキズキ

母「だ、大丈夫よ…どうしたの?」

少年「大丈夫じゃないでしょ!?
だって昨日……!」

母「平気だから…心配しないで?」ニコッ

少年「けど…」

母「あたしはあなたの方が心配よ?
一昨日も、昨日も人間に暴力を振るわれて…」

少年「ボクは平気だよ…」

母「嘘おっしゃい、お腹だってアザだらけで…」

少年「平気だってば。ボクは大丈夫だから…」

母「だめよ、服を捲ってごらんなさい?」

少年「もう…わかったよ」ペラッ

母「ほら、こんなに……え?」

少年「ん…もう、いい?」

母「え、えぇ……」

母「(アザが消えてる…?)」
154:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/1(火) 23:27:25 ID:.cUSspOk4Q
少年「ね?平気だったでしょ?」

母「(どういうこと?そういえば一昨日もケガは無かったわね…)」

少年「お母さま?」

母「えっ」

少年「どうしたの?」

母「あ、いや…なんでもないのよ。ごめんなさい」

少年「ボクのおなか、ヘンだったの?」

母「なに言ってるのよ、ヘンなわけないじゃない?」クスクス

少年「よかった!」ニコッ


母「(……あれは癒しの力?
いや、ありえないわよね。そんな力は存在しないはずだもの…。
きっと打ち所がよかったのよ、それともなければ村の人間たちが子供相手だから加減したのか…)」
155:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/1(火) 23:29:38 ID:7FwZM..EWU
少年「それにしてもおなか空いちゃったね」

母「…そうね、何か作りましょうか?」

少年「ううん、いいよ。人の物を勝手に使っちゃだめなんでしょ?」

母「うふふ。大丈夫よ?
宣教師様には使っていいと言われてるから」

少年「そうなの?」

母「えぇ。そういえばあなたにビスケットを焼いたって言ってたわよ?」

少年「え?やった!ボク、ビスケット大好き!」

母「うふふ。あなたはホントにビスケットが好きね?」

少年「うん、小さい時に行った町で女の子に貰ったんだ。
それからずっと好き!」
156:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/1(火) 23:33:06 ID:.cUSspOk4Q
母「そんな事もあったわね。
あの女の子、どうしてるかしら?」

少年「きっと元気だよ?約束したもん、またねって!」

母「ふふ。それもそうね…。
あの頃はおじいさまも生きてて、家も無くて転々としてたから長居出来なかったけど…」

少年「懐かしいなぁ。
おじいさまに叱られちゃうからあの子にビスケット貰ったのは内緒にしてたんだっけ」

少年「あの女の子とはそれだけだったけど…」

母「…元気だといいわね。
あ、ビスケットは白い棚の2段目にあるそうよ」

少年「わかったー!」タタタッ

母「屋内で走るんじゃないの!」

少年「ご、ごめんなさい…」ピタッ
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