高校生の馬鹿馬鹿しくて、
ちょっぴりセンチメンタルな
青春グラフィティ───開幕。
※登場人物が増える予定の為、名前を付けています。
847: ◆UTA.....5w:2012/6/12(火) 03:17:56 ID:1GI25vtbK2
──叔母さんの子に生まれていたら。
何度そんな下らない思考を頭で巡らせただろう。
そんな事、叶う筈がない事なんてガキの頃から分かってた。
それでも、この炊きたてのご飯と出来たての惣菜が、俺の為に作られる事を願って止まなかった。
親というものを、母親というものを、叔母さんに重ねては鳴子に嫉妬している自分が情けなくて。
情けなくて、こんなにも居心地が悪い。
848: 名無しさん@読者の声:2012/6/12(火) 09:07:12 ID:UXpeLILNKg
おお、切ないな……
っCCCC゛ソッ
849: 名無しさん@読者の声:2012/6/13(水) 08:17:56 ID:WQMFfZqQ6o
鳴くん…(´;ω;`)
>>1さんほんとキャラ作り上手い!
支援!支援!支援!
850: 名無しさん@読者の声:2012/6/14(木) 23:26:56 ID:Bf.z1jkJr2
か、描いちゃった…
下手くそでごめんなさい!!
っCCCCC
851: 名無しさん@読者の声:2012/6/15(金) 00:53:40 ID:dmljttPSHw
し!え!ん!
852: 名無しさん@読者の声:2012/6/18(月) 15:39:06 ID:5Ki/6/nFyk
1位!1位!\(*゚∀゚*)/
おめっとーございます☆
イャッフ―――ッッッ!!
つCCC
853: 名無しさん@読者の声:2012/6/19(火) 11:51:26 ID:QB7x06Eq1Y
1位おめでとうございまっす。っC
854: ◆UTA.....5w:2012/6/21(木) 00:36:24 ID:omHfRjQS42
お久しぶりの1です。
相変わらずの停滞気味で申し訳ございません。それでも沢山の支援をくださる皆さんに、感謝の気持ちで一杯です。
そして、当SSがランキング1位になれていたという事実に先程気付きました。何かの間違いかと、何度も見直してしまいました。
こんなSSに一票を入れて下さった皆さん、本当にありがとうございます。
まだ少しお時間を頂いてしまうかと思うのですが、必ず更新致しますので気長に待っていて頂けると幸いです。
皆さんが入れてくれた一票に恥じぬよう、読んで下さっている皆さんに楽しんで頂けるよう、支援して下さった皆さんに応援して頂けるよう、頑張ります。
SSの投下がなくて申し訳ございません。本当に本当にありがとうございました!
855: 名無しさん@読者の声:2012/6/27(水) 12:55:33 ID:8Qv8QlwD3w
ずっと待ってます!!
856: ◆UTA.....5w:2012/7/4(水) 14:57:03 ID:DjgrPWL1Xc
「鳴子、そろそろお風呂入りなさいよ」
「はーい」
叔母さんに促されて、鳴子が面倒臭そうにリビングを後にする。
鳴子の姿が完全に見えなくなったのを確認して、そっと叔母さんに耳打ちをした。
「叔母さん、俺そろそろ……」
「あら、鳴くん帰るの?」
泊まってけばいいのに、と眉を寄せて叔母さんが笑う。
「鳴子、また拗ねるわよ。鳴兄帰ってるじゃんかー!って」
流石に親子と言うべきか、叔母さんが真似る鳴子はよく似ている。それこそ、分かる分かると頷いてしまう程に。
叔母さんと二人、どちらからともなくクスリと笑みが零れた。
857: ◆UTA.....5w:2012/7/4(水) 14:57:41 ID:MirOoAiuHU
「あんまり遅くまで外うろついてたら駄目だよ、物騒なんだから」
玄関先で靴を履く俺の背後から、唐突叔母さんが言う。
単純に心配しての事なのか、母さんから何かを聞いたからなのか、その答えは明白なのだけど。
「……なんで?」
そう返さずにはいられなかった。
叔母さんの返答が前者であるのなら、俺は素直に首を縦に振れるのに。
「なんでって……お母さん達も心配するでしょ」
分かり切っていた返答なだけに、自然と賺した笑みが零れた。
家に居る時間も殆どなく、息子の食事の用意もまともにしない。ろくに会話もせずに一日が終わるのなんて日常茶飯事で、顔を合わせない事も珍しくない。
一体これの何処に“心配”の二文字を感じさせる行動があるのか。
858: ◆UTA.....5w:2012/7/4(水) 14:58:15 ID:MirOoAiuHU
叔母さんを責めて、何かが変わる訳でもない。そもそも、叔母さんにぶつけるべき不満じゃないだろう。
ふう、と小さく息を吐いて、笑顔で叔母さんに振り返ってみせた。
「分かってる分かってる。んじゃ」
言葉少なく玄関のドアノブに手を掛ける。早く此処から出て行きたいと、その一心で。
だって、叔母さんの言葉は余りにも──
「鳴くん、お父さんもお母さんも、鳴くんの事を大切に思ってるんだよ。ただ、」
「だから分かってるって!」
余りにも、母親で。
こんなにも暖かいのに、胸が痛い。
859: ◆UTA.....5w:2012/7/4(水) 14:58:38 ID:MirOoAiuHU
叔母さんの家の灯りが遠ざかっていくのを背中に感じながら、住宅街を抜けて行く。
小さな段差に足を取られて、俺はやっと立ち止まった。
息を吸い込むと、喉が焼けたようにヒリヒリと痛む。こんなにも全力で走ったのは、いつぶりだっただろうか。
「はあ、はっ……」
腰に手を当てて空を見上げると、雲一つない夜空に真ん丸お月様がぽつんと独り。その周りを囲むように、キラキラ輝くお星様。
こんな時、自分がちっぽけに思えるなんて事はよくあるけれど、
「……うっぜーな、もう」
こんなにも綺麗な空なのに、馬鹿にされているように見えてしまう俺は、少し根性が捻曲がっているのかもしれない。
月の周りで輝く星が、まるでせせら笑いを浮かべているようで。
意地っ張りに浮かぶ月が、何故だか酷く滑稽に思えた。
860: ◆UTA.....5w:2012/7/4(水) 15:01:50 ID:MirOoAiuHU
***
「……」
もう何分こうしているだろう。
インターホンまであと数センチという所で、何度も手を引っ込めてしまう。
あれから数日、叔母さんからのメールは二通。
今日は家に来る?とか、食べたいものがあったらリクエストしてね!とか、内容は他愛ないごく普通のものだった。
(別に、普通に行きゃいいじゃんよ……)
気まずくなっているのは、きっと俺だけなのだろう。
インターホンまで、ほんの数センチ。あと少し手を伸ばせば、叔母さんがいつも通り迎えてくれるに違いない。
「よし、行く!」
「何処に?」
861: ◆UTA.....5w:2012/7/4(水) 15:02:10 ID:DjgrPWL1Xc
声のする方に振り返ると、ランドセルを背負った鳴子が首を傾げていた。
見慣れていない所為か、赤いランドセルはいつもより鳴子を女らしく見せてくれる。
「鳴兄、聞いてる?」
「へっ?ああ、うん……何が?」
慌てて頷いてみせたものの、あまりの不自然さに鳴子は怪訝そうに眉を寄せた。
「この前も黙って帰っちゃうしさー。鳴兄、最近変」
「変って、何が」
「全然家に遊びに来なくなったじゃん。来てもすぐ帰るし。そんなに居心地悪いかな、ボクん家」
予想外に核心を突いた発言に、堪らず視線が横に流れる。
まさかこんなガキに感付かれる程、自分が分かりやすい奴だったなんて。
862: ◆UTA.....5w:2012/7/4(水) 15:02:34 ID:MirOoAiuHU
「あー、その、別にそんなんじゃねぇから」
平静を装ってはみたけれど、鳴子の目はそれを見抜いているようだった。
眉間に寄せられた皺を一層深く刻んで、じっと俺を見つめる。
「お母さんと喧嘩でもした?」
「……なんでそうなんだよ」
「お風呂入ってる時に聞こえたもん。何か叫んで出てく鳴兄の声」
口を尖らせながら俯いて、鳴子は言った。
どうやら、叔母さんに喧嘩をしたのか訊ねてもはぐらかされたらしい。原因の分からない鳴子は、自分の家に何か問題があるのでは、と勘ぐっていたようだ。
強ち間違ってはいないんだけど、鳴子達に原因がある訳じゃない。そんな事、考えなくたって分かる事だ。
全部、俺が悪い。
863: ◆UTA.....5w:2012/7/4(水) 15:03:09 ID:MirOoAiuHU
「……お前、小学生なんだもんな」
「何それ。なんでいきなりボクの話になるんだよー」
鳴子の頬が、小学生らしくぷくっと膨れる。
「違うよ、お前は何も悪くない。俺が悪かったんだよ」
鳴子は疑問符を浮かべながら首を傾げた。
親が忙しいのをいい事に叔母さんに甘えて、構ってくれないと駄々を捏ねる。
下らない反発心で志望校を変えたり、夜にふらふら出歩いて気を引く。
母親の影を叔母さんに重ねて、勝手に鳴子に嫉妬する。
俺がしている事は、こんなにも格好悪くてガキ臭い事だった。
「……本当格好悪いな、俺」
この苛立ちを鳴子や叔母さんに向けるべきではない事くらい分かっている筈なのに、どうして素直になれないのか。
考えれば考える程、つくづく自分に嫌気が差す。
864: ◆UTA.....5w:2012/7/4(水) 15:03:56 ID:MirOoAiuHU
「やっぱり俺、今日は帰るわ。叔母さんに宜しく言っといて」
「えー!なんでなんで?ご飯食べてけばいいじゃん!」
鳴子が俺に腕を絡めて、縋るように上目遣いに見る。
「今度授業参観があってね、その時に読む作文を書いたの。先生にすっごく褒められたんだ。お母さんより先に、鳴兄に読ませてあげる」
だからいいでしょう?と、絡めた腕に力を込めて、鳴子は俺を制止した。
──作文。
その二文字の言葉に、ギクリと身を捩る。とうの昔の話なのに、鮮明に思い出される先生の困ったような優しい笑顔。
『鳴海くん、それは──』
865: ◆UTA.....5w:2012/7/4(水) 15:04:30 ID:DjgrPWL1Xc
「……夢とは言えない」
「え?何?」
思いがけず口を突いて出た言葉に、はっと我に返る。訝しげな表情をした鳴子が俺を見上げて首を傾げていた。
「……っ、何でもない」
「夢がどうしたの?鳴兄の夢の話?」
「何でもねぇって。お前には関係ないの」
「別に恥ずかしがる事ないじゃんか。ボク、鳴兄の夢聞きたいなあ」
夢を語る事は、何も恥ずかしい事ではないのだと。夢に向かって頑張る人程、輝いて見えるものはないのだと。
力なく腕を垂らしたままの俺の前に、鳴子はくるりと身を翻して力説する。
866: ◆UTA.....5w:2012/7/4(水) 15:05:19 ID:DjgrPWL1Xc
「んもう!鳴兄はうじうじうじうじ……うじ虫くんだね!」
「は?」
数分間の力説も俺には届かなかった事を悟ったのか、鳴子はあからさまな溜め息を吐いて首を振った。
「中学生のくせに情けないんだから。そんなんじゃ立派な大人になれっこないよ」
「立派な大人……?夢持ってりゃ立派な大人になれんのかよ」
「少なくとも、鳴兄みたいな臆病者よりかはね!」
「誰がいつ怯えたよ!」
臆病者と息巻く鳴子と重なる、小学生の俺の姿。
あの頃の俺は、あんなにも未来に胸を膨らませていたのに。
『鳴海くん、それは──夢とは言えないわよ』
先生の笑顔が、脳裏に焼き付いて離れなくて。“そうやって”生きていく事を信じていた自分が、酷く滑稽に思えて。
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