高校生の馬鹿馬鹿しくて、
ちょっぴりセンチメンタルな
青春グラフィティ───開幕。
※登場人物が増える予定の為、名前を付けています。
653: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:29:58 ID:xwHNq4GmIw
今の俺に言えるのだろうか。
お前は子供なのだと。妹や弟と変わりない、子供なのだと。
──今の俺が、手を差し伸べられるのだろうか。
ふと、掛ける言葉を考えあぐねている俺の背後から、バタバタと駆け寄る音が耳を突いた。
「う、おっ…!?」
ドスリ、と背中に衝撃を食らう。
振り返ると、其処にはつい今し方見送った妹と弟の姿があった。
「お兄ちゃん、行ってらっしゃい」
「しゃーい!」
言い忘れてた。そう言って、頬を赤らめた二人が満足気な笑みを浮かべて俺を見上げた。
654: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:30:44 ID:8asKCdS6D2
「あれ?どうしたの?」
泣いている男の子に気付いた妹が、弟と二人で歩み寄る。
「お、おかっ…お母さんのとこに行きたいぃっ!」
ひくひくとしゃくり上げながら男の子が言った。
お母さん、お母さんと繰り返し泣く男の子に、妹が手を差し出す。
「私達がいるから、さみしくないよ。遊んでる内にお迎えの時間になっちゃうもん」
男の子は鼻を啜りながら振り返り、不安げに瞳を揺らした。
瞬きをする度に涙が零れ、寂しい、寂しいと訴えかけている。
655: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:31:22 ID:8asKCdS6D2
「本当、に…?」
「うん。本当だよ。弟もそうだよね?」
「あい!」
ほら、と言わんばかりに差し出された妹の手に、男の子の手が重なった。
しっかりと握られた小さな手は、座り込む男の子を立ち上がらせる。
「一緒に行こ」
「うん…!」
子供とは本当に単純なものだ。そう思えど、これではっきりと分かってしまった。
「私達がいるから」
この言葉で幾分か胸が軽くなった俺も、まだまだ単純な子供のようだ。
そして──
656: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:33:06 ID:xwHNq4GmIw
「行ってらっしゃい!」
妹と弟に手を繋がれた、幼い自分が笑っている。
ぐちゃぐちゃに濡れた顔で、少し照れ臭そうに頬を染めて。
「──…行って、きます」
どうやら、救われたのは今の俺だけではないらしい。
子供達は手を繋いだまま、保育園の奥へと駆けて行く。
いつの間にか、小さな俺の姿は消えていた。
657: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:33:42 ID:xwHNq4GmIw
──小さな俺が泣いている。
寂しい、寂しいと訴えて。
素直になれない、男の子。
手を差し伸べているのは誰だ?
俺の手を掴んでくれたのは──
橘少年の憂鬱‐fin.
658: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:39:35 ID:8asKCdS6D2
本当はもっと色々と書いていたのですが、余りにも長くなってしまうので割愛しました。
無理矢理感が否めませんが、これにて投下終了します。
次からは通常営業に戻ります。読んで下さった皆さんに感謝です!
>>639
ちょw泣いちゃいますやんw
皆さんの優しさに甘えてしまいがちですが、そう言って頂けるのは本当に嬉しいです。
応援して下さってありがとうございます!今晩は639さんの愛を抱き締めながら眠りますw
659: 名無しさん@読者の声:2012/5/2(水) 18:26:09 ID:3cviQqCynY
お帰り!
もうメガネも1も大好き!
つCCCCC
660: 名無しさん@読者の声:2012/5/2(水) 20:23:18 ID:WAglpR/xbg
よし、支援だ
続けろ下さい
661: 名無しさん@読者の声:2012/5/2(水) 20:42:45 ID:8bHY3xTgo2
待ってたよぉぉぉ☆
でも、>>1のペースでいいからね♪嫁、頑張り過ぎてキュ〜っときたw
つCCCCC
662: 名無しさん@読者の声:2012/5/4(金) 03:29:28 ID:0StBuOE6ag
橘になら掘られても構わない
割りとマジで
663: ◆UTA.....5w:2012/5/4(金) 16:39:45 ID:vGpekRe9Xc
>>659
お待たせしてしまって申し訳ございません。ただいまです!
メガネのみならず私まで…私も659さん大好きです!
>>660
ありがとうございます!
続行させて頂きます(`・ω・´)
>>661
待っていて下さってありがとうございます!甘えてばかりで申し訳ございません…orz
もう少し嫁のターンですw
>>662
メガネなら、もしかするとやりかねないかもしれません。割とガチで。
後方には十分ご注意下さい。
支援ありがとうございます!
投下します。
664: ◆UTA.....5w:2012/5/4(金) 16:41:13 ID:iVVTlb76UY
────‐‥
橘「………ん、」パチ
橘「いつの間に寝たんだ?……お陰で、懐かしい夢を見てしまった」
橘「しかし、何だか体が重い!苦しい!」
橘妹「Zzz...」スヤスヤ
橘弟「Zzz...」スピースピー
橘「こいつら…病人の上で寝やがって………ん?」パサッ
橘「濡れた、タオル……取り替えてくれてたのか」
665: ◆UTA.....5w:2012/5/4(金) 16:52:37 ID:vGpekRe9Xc
橘「………」
妹&弟「Zzz...」ギュウ
橘「ご丁寧に手まで繋いでくれちゃって。一丁前に、看病してくれていたんだな」
橘「そうか。俺の手を掴んでくれたのは、お前らだったのか…」
橘「……って、だから重い!」
橘(とりあえずベッドに寝かせておくか)
橘「」ゴソゴソ
666: ◆UTA.....5w:2012/5/4(金) 17:01:12 ID:iVVTlb76UY
──リビング
橘(そういえば、馬鹿共が揃って上がり込んでいたような…)
ガチャ
鳴海「Zzz...」クカー
桃山「Zzz...」スヤスヤ
篠原「Zzz...」スピー
橘「全員寝てるのかよ!」
橘「ったく、どいつもこいつ、も……」
667: ◆UTA.....5w:2012/5/4(金) 17:09:42 ID:vGpekRe9Xc
橘「…片付いてる」
橘「無法地帯と化していたリビングが片付いている…!」
橘「ゴミもちゃんと分別されている」
橘「……何という事でしょう。あの荒れ果てていたリビングが、見違える程綺麗に、過ごしやすくなりました」
橘「割れたお皿はビニールに包んでゴミ箱の中へ。子供達が怪我をしないようにと、匠の優しさ溢れる仕上がりに」
橘「砂漠のように撒き散らされた小麦粉は綺麗になくなり、卸したてのようなフローリングが輝きを放つようになりました」
橘「……」
橘「驚きの余り、ついやってしまった…」
668: ◆UTA.....5w:2012/5/4(金) 17:27:17 ID:vGpekRe9Xc
鳴海「むにゃむにゃ」ゴロン
篠原「…っ…うーん……」←鳴海の手が顔に乗っている
桃山「Zzz...」スヤスヤ
橘「……」
橘「本当、馬鹿な奴らだな」フッ
\ ガチャガチャ バタン! /
橘「む。もうそんな時間か」
橘「そういえば、いつの間にか外も暗いな」
669: ◆UTA.....5w:2012/5/4(金) 17:51:30 ID:iVVTlb76UY
ドタ ドタ ドタ…バタン!
橘父「ごめん!会議が長引いて遅くなった!」
橘父「お兄ちゃんは大丈夫──…」
橘「……」シー
橘父「???」
橘「お帰り、父さん」
橘父「ただいまー……って、お兄ちゃん!寝てなきゃ駄目だろう!」
橘「静かにって言ってるだろう」
橘父「ごめん、つい…」ショボン
670: ◆UTA.....5w:2012/5/4(金) 18:16:09 ID:vGpekRe9Xc
橘父「起きてて平気なのか?熱は?ご飯は食べたか?妹と弟は──…」
橘「いっぺんに訊かれて答えられるとでも思っているのか」
橘父「ごめん、つい…」ショボン
橘「二人は俺の部屋で寝てる。昼は済んだが、夜はまだだと思う。多分」
橘父「多分?」
橘「さっきまで寝てしまってたらしい。妹と弟と……こいつらのお陰で大分楽になった」
橘父「こいつら?」クルッ
橘父「えっ誰この子達!床で雑魚寝してるじゃん!!」
橘「静かにしろ」
橘父「ごめん、つい…」ショボン
671: ◆UTA.....5w:2012/5/4(金) 18:17:12 ID:iVVTlb76UY
橘父「そうだ、父さん帰りにお惣菜買って来たんだ。後で皆と食べなさい」
橘「……いや、俺はいい」
橘父「食欲湧かないか?駄目だぞ、ちゃんと食べないと」
橘「そうじゃなくてだな。ほら、あれ」
橘父「ん?鍋の中に……お粥だ。この茶色い物体は何だろうか」
橘「……林檎、だろうな」
橘「林檎は塩水に浸けておかないと変色するという事も知らないのか、あいつらは。ましてや、すりおろすなんて…」ブツブツ
672: ◆UTA.....5w:2012/5/4(金) 18:38:08 ID:iVVTlb76UY
橘父「………」
橘父「文句言いながら顔がニヤけてるぞ、お兄ちゃん」クスクス
橘「なっ!?ち、違う!これはただ馬鹿共が如何に馬鹿かというのを再確認してっ…!」
橘父「あれ、静かにしなくていいのかな?」
橘「〜〜っ!」
橘父「いい友達を持ったんだな」
橘「……ただの馬鹿だ、こいつらは」
橘「馬鹿だが……退屈はしない、と思う…」ゴニョゴニョ
橘父(まったく、素直じゃないなぁ…)
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