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3センチメンタル・ヤング・ピーポー
[8] -25 -50 

1: :2012/1/28(土) 22:24:39 ID:kbMCzVk3I2

高校生の馬鹿馬鹿しくて、

ちょっぴりセンチメンタルな

青春グラフィティ───開幕。



※登場人物が増える予定の為、名前を付けています。




634: CCCCC:2012/4/26(木) 16:48:53 ID:N1ZTg0WOrs
続きはよ



はよ
635: 名無しさん@読者の声:2012/4/27(金) 17:17:29 ID:m3zW5siTzA
何度でもCあげる!

っCC
っCCC
っCCCC
っCCCCC
636: 名無しさん@読者の声:2012/4/29(日) 22:18:01 ID:EQqcqvdMMc
待ってます(`・ω・´)

>>1さんのペースでよいよ!
支援!
637: 名無しさん@読者の声:2012/5/1(火) 12:30:58 ID:Es8OnaRa8Q
CCCCCCCC
638: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 00:56:53 ID:ryZhY5jGUY

>>632
ご想像にお任せします、という逃げ方はありでしょうか…?
632さんが思った方と同一である事を願いますw

>>633
私も少し、この表現はどうだろうと思いましたw
文字で表す事の難しさをひしひしと感じています。

>>634
毎度の事ながらお待たせしてしまって申し訳ございません…!
もう少しで私生活も落ち着くかと思いますので、更新率を上げられるように努力したいと思います。

>>635
沢山沢山ありがとうございます!
凄く嬉しいです。本当にありがとうございます。

>>636
どうして皆さん、そんなに優しいのでしょうか。皆さんに優しい言葉を掛けて頂く度に、有難さと申し訳ない気持ちで胸が一杯になります…orz

>>637
⊃C⊂ ギュッ×8
ありがとうございます!


更新率が右肩下がりで本当に申し訳ございません。それでもこうして支援して下さる方が居る事に、感謝の意を述べずにいられません。
停滞気味ですが、放置はしませんので気長にお待ち頂けると幸いです。


639: 名無しさん@読者の声:2012/5/2(水) 04:54:01 ID:bFdYpcHwkY
何かこう…1がいい人だから応援したくなるんだよね
リアルが一番大事なんだから気にしないでゆっくりしていいんだよ

つCCCCC
つ愛
640: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:19:27 ID:8asKCdS6D2

 ***


両親の意味深な話し合いを目撃してから数ヶ月、母さんはあっけなくこの世を去った。

子宮に癌腫瘍が発見された母さんは、堕胎を拒否。通院で治療を進めるも、若さ故に進行は速く、次第に容態も悪化していったそうだ。
尤も、俺と妹には死に至るその時まで、そんな姿を決して見せはしなかったのだが。

意識を失った母さんの体から帝王切開で取り出された赤ん坊は、二千グラムにも満たない未熟児だった。

母さんが命を掛けて守った俺の弟は、透明な箱の中に閉じ込められていた。鼻に管を通されて、自力で呼吸すら上手く出来ないようだ。

なんて無力な、小さな命だろう。
硝子越しに弟を見て、ただ素直にそう思った。

それはお前も同じだと今なら言ってやれるのだけど、生憎そういう訳にもいかない。
当時の俺もまた、無力なただの小学生だった。


641: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:20:05 ID:8asKCdS6D2

無力な小学生には、やはり何もする事は出来ず、現実味も湧かないままに喪に服した。

「どうしてあの子が死ななければいけなかったの…!」

「可哀想に…子供には母親が必要なのは君も分かっているだろう」

「可能性を分かっていながら知らんぷりだなんて、人の血が流れていないのかしら」

父さんを取り囲んで、まくし立てる母さんの親族。立ち込める線香の香り、啜り泣く声。

そして、ピクリともしない母さん。

そのどれもが俺の知らないものばかりで、何処か別の次元に飛ばされたような気分だった。


642: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:20:53 ID:xwHNq4GmIw

「にーたん、いちゃいちゃいの?」

一人呆けていた俺の横で、妹は心配そうに下から覗き込んだ。
死というものを理解していない妹に、俺の気持ちなんて分からないのだろう。

「いちゃいちゃいとんでけする?」

いつもの調子で俺に声を掛ける妹が、今ばかりは唯一の救いだった。
何処かへ飛ばされそうな意識を、舌足らずな妹の声だけが引き戻してくれる。

「いちゃいちゃいの、とんでけ!いちゃいちゃい、とんでけ!」

精一杯の力を込めて、俺の中にある“痛いの”とやらを飛ばしてくれているのだろう。
妹は呪文のように何度も繰り返し、顔を真っ赤にさせていた。


643: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:21:39 ID:xwHNq4GmIw

一生懸命な妹を前に、今までの自分が情けなく思えてくる。

俺は、一体何に腹を立てていたのだろうか。こんなにも小さな妹を相手に、どうして。

「…妹も、俺と一緒なんだね」

小さなふっくらとした妹の手を握る。

「にーたん一緒?」

「そう。一緒だ」

妹の手は柔らかくて、しっとりと潤っていた。俺の手にすっぽりと収まる、小さな小さな子供の手。

「一緒だね……」

理解していないなんて、どうしてそう思えたのだろう。妹も俺も、何も変わらない。
母親を亡くしたという事実には、変わりないのに。


644: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:22:17 ID:8asKCdS6D2

「妹、おいで」

「にーたん…?」

握り締めた手をそのままに歩きだす俺を、怪訝な顔で妹が見上げた。自分よりも大きな歩幅に合わせて、よたよたと俺の横を歩く。

目前に見えた父さんは、まだ親族達に囲まれたままだった。

「……父さん、」

俺の声に気付いた父さんが間隙から顔を覗かせる。親族も同様に俺の声に気付き、肩を上下に揺らしながら振り返った。

「父さんでいてくれて、ありがとう」


645: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:23:04 ID:xwHNq4GmIw

“ありがとう”

その言葉を口にした瞬間、互いの瞳から抑えきれない感情が溢れだした。
俺が先だったか、父さんが先だったか。目の前が歪んで見えなくなる程に、とめどなく溢れる涙が頬を濡らす。


父さんは、母さんの夫であり、俺達の父親なのだ。
自分の愛するもの達を前にして、どちらか一方の命を選択するなど不可能だろう。双方を助けられるのであれば、迷わずそうした筈だ。

自らの命を懸けてでも尚、母親である事を選んだ母さんと、その狭間で揺れ続けていた父さん。
結果、母さんは自らの命を以てして我が子を守り、父さんは父親であり続ける事だけを強いられた。

誰が悪い訳でもない。何が正しい選択だったかなど、誰も決められない。
一体誰が、父さんを責める事が出来るのか。


646: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:23:57 ID:xwHNq4GmIw

「俺、父さんの手伝い、ちゃんとするからっ…!母さんの分も、ちゃんと妹と弟の面倒、見るから!」

だから、と俺が口にするより先に、父さんの腕が俺と妹を包み込んだ。

「大丈夫だ。父さんは、何があってもお前達を守るよ」

グッ、と強く力を込めると、父さんはその腕を解いて立ち上がった。後ろを振り返り、親族の方に向き直る。
父親の背中というものは力強くて、それでいて優しい。その背中を前にして、自然と背筋が伸びる思いがした。


647: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:24:52 ID:8asKCdS6D2

「私が責任を持ってこの子達を育てていきます。私はこの子達の父親ですから」

父さんに続いて頭を下げる俺を見て、妹も真似をする。
並んで頭を下げる俺達に、親族は渋い顔をしながらも何も言えないようだった。

「男手だけで、どうやって育ててくっていうのよ…」

ぽつりと呟いた声に、祖母が此方に歩み寄り、俺と妹の肩に手を置いた。
目尻の下がった優しい顔をしている祖母は、母さんの雰囲気とよく似ている。

「私も出来る限りの協力をするわね。家族なんだもの」

涙ぐみながら頭を下げる父さんに、祖母がにこりと微笑む。
俺達に差し伸べられた皺くちゃな細い手は、親族にとって、さぞ面白くない展開だったろう。
バツの悪い顔をして渋々引き下がる親族を尻目に、俺は目一杯の笑顔で感謝の意を述べた。


648: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:26:01 ID:8asKCdS6D2

 ***


「行ってきまーす!」

「まーす!」

「よし、急ぐぞ二人共」

写真の中で微笑む母さんに挨拶を済ませて、慌ただしく玄関に向かう。
母さんの死から三年が経ち、成長の遅れを心配されていた弟も、随分はっきりと言葉を発するようになった。

「あー…弟、靴が左右反対だ。こっちが右。分かるか?」

「あい!」

「妹は大丈夫だな。よし、行こう」

妹は年々しっかりとしてきて、逆に困らされる事が増えたように思う。
例えば今朝の髪型。二つに結べと言われたからそうしたのに、高さが低いだのゴムの色がどうだのと難癖をつける。
女の子の扱いに慣れていない俺と父さんは、妹に頭を悩まされる事もしばしば、という状況だ。


649: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:27:13 ID:xwHNq4GmIw

「朝は父さんが連れて行けるから無理しなくていいのに」

ネクタイを締めながら、父さんが苦笑気味にリビングから顔を覗かせる。
以前に比べると少し痩せた気もするが、スーツをきちんと着こなす父さんは息子ながら少し誇らしい。皺のないカッターシャツと整えられた髪は、真面目な父さんのイメージを壊す事なく清潔に保たれている。

「いいよ、通学路の途中だし。父さんはゆっくりしてて」

「うーん……嬉しいけど、無理するなよ?」

「はいはい、行ってきます。……あ、朝ご飯はちゃんと食べろよ」

背後でブー垂れる声がするが、朝から中年の相手をしている時間はない。
朝ご飯の重要さを教えてやりたい衝動を堪えて、玄関のドアに鍵を掛けた。


650: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:27:54 ID:xwHNq4GmIw

背中に弟を負ぶって、手には保育園の荷物と幼い妹。
後ろ指をさされてヒソヒソと哀れみの言葉を囁かれるのにも、もう慣れた。

「橘くんは可哀想だから」
そう言われて、次第に友人とも疎遠になった。

「お母さんが居なくて大変ね」
こう言う奴に限って、家は恵まれていてよかったと優劣に浸っているのではと思えてくる。

俺は自分の事を可哀想だと思った事は一度もないし、妹達にもそうであってほしいと思う。

ただ、願わくば──

願わくば、そんな目で見ない奴らに出会いたい。
俺の家庭の事など知らず、馬鹿な事を言い合って、喧嘩出来るような。そんな友人を持てるのなら。


651: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:28:31 ID:8asKCdS6D2

「お兄ちゃん、いつもご苦労様です」

「いえ、宜しくお願いします。それでは」

子供達の声で賑わう園内で交わされるお決まりの挨拶。

妹達を預けているこの保育園の教諭達は、気さくでなかなか印象がいい。何より、腐る程見てきた哀れんだ目で俺を見ない。
妹達に影響が少ないのは、有難い環境だと言える。

「……ん?」

園内の奥へと入って行く二人を見送って踵を返すと、靴箱の隅で誰かが座り込んでいるのが見えた。
妹と同じくらいだろうか。膝を抱えて泣いている様子の男の子は、何処か昔の俺に雰囲気が似ているように思えた。


652: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:29:19 ID:xwHNq4GmIw

そんな事を考えた所為だろうか。一回り大きい背中が朧気に浮かんで、男の子と重なった。
やがてそれは鮮明となり、俺の前に姿を現す。

「──あ、」

その後ろ姿は、俺だった。
ガキだった頃の俺が、まるでいじけているかのように膝を抱えて泣いている。

「………」

それをぼんやりと眺めながら、俺はただ立ち尽くしていた。

幼い自分の後ろ姿。あの時から、俺は何も変われていないのではないか。
自分の事を悲観して、その原因を他人の所為にする。

自分は何も悪くない、そう言って一番哀れんでいるのは俺自身なのではないか。


653: ◆UTA.....5w:2012/5/2(水) 15:29:58 ID:xwHNq4GmIw

今の俺に言えるのだろうか。
お前は子供なのだと。妹や弟と変わりない、子供なのだと。

──今の俺が、手を差し伸べられるのだろうか。

ふと、掛ける言葉を考えあぐねている俺の背後から、バタバタと駆け寄る音が耳を突いた。

「う、おっ…!?」

ドスリ、と背中に衝撃を食らう。
振り返ると、其処にはつい今し方見送った妹と弟の姿があった。

「お兄ちゃん、行ってらっしゃい」

「しゃーい!」

言い忘れてた。そう言って、頬を赤らめた二人が満足気な笑みを浮かべて俺を見上げた。


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