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3センチメンタル・ヤング・ピーポー
[8] -25 -50 

1: :2012/1/28(土) 22:24:39 ID:kbMCzVk3I2

高校生の馬鹿馬鹿しくて、

ちょっぴりセンチメンタルな

青春グラフィティ───開幕。



※登場人物が増える予定の為、名前を付けています。




599: ◆UTA.....5w:2012/4/15(日) 21:22:40 ID:0Mp7ukSNHM

小学三年生まで一人っ子として育った俺は、初孫という事もあってそれは大層可愛がられた。祖父母に至っては、会う度に俺にお小遣いやお菓子を与えてくれた。

しかし、だからといって両親は決して甘やかせるだけではなかった。所謂、飴と鞭というやつだ。
祖父母の家の障子を破いた時は噎び泣く程に叱られたし、家事を手伝った時は照れ臭くなる程褒めてくれた。

そうして素直な良い子に育った俺が九歳の頃、父さんの口から衝撃の一言を聞かされる事となる。

「もうすぐ、お兄ちゃんになるんだぞ!」


600: ◆UTA.....5w:2012/4/15(日) 21:36:20 ID:0Mp7ukSNHM

──妹。


母さんの腹の中ですくすくと成長していくそれに、期待を膨らませていたのはいつの事だったろう。
妹という存在は、俺にとって余りにも重いものだった。

「お兄ちゃんなんだから」

両親が発するその言葉が、決して悪意のあるものではないのだと、子供ながらに理解していたのに。それなのに、無邪気な笑顔で俺に懐く妹が憎らしくて堪らなかった。

俺と話している最中でも、妹が泣けば母さんは其方に。
俺が縄跳びで二重飛びが出来た事よりも、妹が寝返りを打った事の方が父さんは嬉しそうだった。


601: 祝600突破! ◆UTA.....5w:2012/4/15(日) 21:57:46 ID:0Mp7ukSNHM

最初の子供は可愛がられる、とよく言うが、二番目が女ともなれば話は別らしい。
祖父母や親戚も、妹と会う度に可愛い可愛いと囃し立て、やれスカートだ髪飾りだと買い与えた。物の価値も理解していない妹は、それを受け取って屈託のない笑顔を向けるだけで許される。

俺が妹に手を上げる事は決して許されず、教科書に落書きをされても許すしかない。勿論両親は妹を叱るが、両親のそれは俺の怒りとは比例しない訳で。
理不尽さを感じながら、ただ堪えるだけの毎日。出来る事なら傍に寄って来ないで欲しいと、そう思っていた。

これが、俺が妹を好きになれない最大の理由である。


602: ◆UTA.....5w:2012/4/15(日) 22:15:00 ID:0Mp7ukSNHM

ところがどうだ。目の前の母親であるこの人は、妹を抱えたその向こう側──腹の中にもう一つの命を宿していると言うではないか。

「妹ちゃんも、もう少しでお姉ちゃんね」

かつて俺に言ったように、母さんは笑顔でそう言った。まだ二歳の妹は、理解出来ていない様子で首を傾げる。

「おえーちゃ?」

「そうよ、お姉ちゃん。沢山遊んで、優しくしてあげてね」

「あい!」

俺は妹の明るい返事に弾かれるようにして、踵を返して自室に引っ込んだ。
閉じたドアの向こう側から、うがいと手洗いを促す母親の声。何故だか酷く、腹立たしかった。


603: ◆UTA.....5w:2012/4/15(日) 22:20:38 ID:ntc3BUzzNk

これにて投下終了します。

そして、またしてもランキングに入る事が出来ました。4位…!
順位は少し下がってしまいましたが、このSSに投票して下さる方が居る事、読んで下さっている方が居る事が何より嬉しいです。
本当にありがとうございます!

これからも頑張ります!
今日も読んで下さった皆さんに感謝です!


604: 名無しさん@読者の声:2012/4/16(月) 01:30:49 ID:ivArTeRS2k
わかるわかるよ兄の気持ち。

つCCCCCC
605: 名無しさん@読者の声:2012/4/16(月) 16:23:23 ID:K.7w4nfouE
ずっとこのss応援してるからね!

っ支援
606: 名無しさん@読者の声:2012/4/17(火) 14:36:09 ID:UNxM3yiW/w
律儀で丁寧な1さん真面目かわゆす
これでもくらえ
ノ⌒CC愛CC
607: 名無しさん@読者の声:2012/4/18(水) 20:36:24 ID:Ls61b1NVC.
支援(*´∀`)
ランキング4位おめでとうございます!!
608: 名無しさん@読者の声:2012/4/19(木) 02:48:25 ID:.jijuWjLjc
まだかなまだかな…(´・ω・`)
|ω・`)っCCCCC
609: ◆UTA.....5w:2012/4/19(木) 21:32:20 ID:bPXHr0xXl6
>>604
私も下に居るので、少しメガネの気持ちが分かるような気がします。中途半端な年齢だからこそ、小さな事で悩んでしまうんですよねw

>>605
ありがとうございます…!605さんの応援が無駄にならないように頑張ります!
嬉しいです、本当に(´;ω;`)

>>606
皆さんのご厚意に甘え、こうしてだらだら更新を続けてしまっている私には勿体なきお言葉…orz
606さんの愛で充電満タンです!

>>607
わー、ありがとうございます!
皆さんに応援して頂けて、4位に入る事が出来ました。これからも楽しんで頂けるように頑張りたいと思います!

>>608
遅くなってしまって申し訳ございません…!投下しますのでお待ち下さい!
待っていて下さってありがとうございます(*´ω`*)


支援感謝です。投下します。


610: ◆UTA.....5w:2012/4/19(木) 21:33:32 ID:6O1pXxFxNw

「聞いたよ、お兄ちゃん満点取ったんだってな」

風呂に入っている間に帰宅したのであろう父さんが、俺の濡れた髪をくしゃりと撫でた。
大きな父さんの手が俺の頭を何度も撫でる。風呂上がりで十分に温まった体に、じんわりと熱が広がってゆくのを感じた。

「あのね、父さん。クラスで満点だったの俺だけだったんだ」

「やるじゃないかー。勉強頑張ってるんだな、偉いぞ」

目尻に出来た小さな皺は、確かに俺に向けられている。それだけでただ嬉しくて、口元が緩んだ。


611: ◆UTA.....5w:2012/4/19(木) 21:44:33 ID:Y6BOHgbOBA

髪から滴る雫が鼻先で弾けるように、俺の心に暖かい波紋が広がる。むず痒い感覚に身を捩る俺に、父さんは笑った。

「そうだ、父さん。今日の体育の時──‥」

「おっと、其処までだ。先に髪を乾かしてきなさい」

そう言って父さんの手が俺の頭から離れて遠ざかってゆく。
もう少し聞いてくれたっていいじゃないか。心の中で子供じみた事を言ってみるが、実際に口に出したりはしない。

俺は、お兄ちゃんなのだ。

我儘を言ったり、感情に任せて声を上げる事なんてしない。そんな事をすれば、両親に何と言われるか容易に想像がつく。
“お兄ちゃんなんだから”と、そう言うに決まっている。
耳にする度に腹が立つこの言葉を避ける為には、聞き分けの良いお兄ちゃんでいなければならないのだ。


612: ◆UTA.....5w:2012/4/19(木) 22:02:49 ID:ppbfUw9gck

髪を乾かして戻れば、お決まりの光景が目に入ってきた。

「ご飯は残さず食べれたか?」

「あい!」

「そうか、妹は偉いなあ。沢山食べて大きくなるんだぞー」

仲睦まじい家族の光景。一般的な家庭の、何処にでもある日常の一コマ。
父さんの腕の中で妹がはしゃぎ、母さんは父さんの食事の用意をしながら、にこやかに二人を見ている。
……俺の冷ややかな視線になど、当然気付く様子もない。

「おやすみなさい」

リビングの扉を開けて、足を踏み入れる事もなく両親に告げた。二人の返事を聞く事もせずにその扉を閉め、自室のベッドに身を埋めて目を閉じる。

「…なんで、あいつばっかり」


613: ◆UTA.....5w:2012/4/19(木) 22:16:06 ID:nf/aYoEEu2

何故、妹ばかりが良いように扱われるのだろうか。
俺の胸の内で膨らむ醜い感情は、そればかりだった。何故、どうして、なんで、なんで、なんで。

こんなにも良い子でいるのに、こんなにも勉強を頑張っているのに、俺の精一杯の努力はただ妹が夕飯を残さず食べた事と匹敵する。
俺がテレビを観て笑っていようが何の関心も示さないのに、妹がテレビの真似事をするだけで手を叩いて喜ぶ。

これがただの可愛い嫉妬なのだと、幼い子供にどうして理解出来ただろうか。
当然そんなものなど知らない俺は、“お兄ちゃん”とはこんなにも辛いものなのかと、頭を悩ませる日々を送っていた。


614: ◆UTA.....5w:2012/4/19(木) 22:30:40 ID:49VOLGqiOw

────‐‥


ふと、目を開けるとまだ辺りは真っ暗だった。時計を確認するのも煩わしいが、まだ夜も明けていないのだから夜なのだろう。
ベッドに突っ伏した体勢のまま眠ってしまっていた所為か、体の節々が痛い。まだ小学生だというのに、将来が不安だ。

(寝る前にトイレ行ったっけ…)

急に不安が込み上げる。
小学五年生にもなって寝小便などしようものなら、今までの俺の努力は水の泡だ。
深夜にトイレに行く事程怖いものはないが、不安要素を残したままでは安心して眠れない。

「……トイレ、行っとこうかな」

ギシリ、とベッドが軋む音がやけに耳に障る。
恐る恐るドアを開けると、廊下の奥からやんわりとリビングの灯りが見えた。


615: ◆UTA.....5w:2012/4/19(木) 22:44:33 ID:ppbfUw9gck

(母さん達まだ起きてるのかな…?)

少しだけ早くなった鼓動を落ち着かせて、そろそろとリビングに向かう。
もし、起きていると気付かれればまたあの言葉を言われてしまうかもしれない。わざわざ気分を害する可能性のある行動をするのは気が引けるが、この灯りの中に両親が居るのだと安心したかった。

「……が、……思う…」

俺がリビングを覗くより先に、微かに聞こえてきたのは父さんの声だった。
何を言っているのかまでは聞き取れないが、起きているというのが分かっただけで十分だ。これで臆する事なく用を足せる。

ほっと安心したのも束の間、灯りに背を向け歩きだそうとした時だった。

「絶対に嫌よ!十分話し合ってきたじゃない…!」

薄暗い廊下の中、母さんの悲しそうな声が俺の耳を突いた。


616: ◆UTA.....5w:2012/4/19(木) 23:07:32 ID:2/QDgGshrU

珍しく喧嘩でもしているのだろうか?
生まれてこの方、両親の喧嘩など見た事がなかった。小言を言うくらいなら耳にした事はあるものの、今のように不穏な空気が流れるような言い合いをしている両親を俺は知らない。
怖いもの見たさでリビングへと近づき、身を縮めて盗み聞きを決行する事にした。もしかすると修羅場を見られるかも、なんて少しの期待を胸にして。

「だけどやっぱり、俺は心配なんだ。12週目までまだ時間もある。もう一度話し合おう」

「それは、どういう意味なの?何を話し合おうって言うの…?」

興奮気味の二人の声は、危険を冒してリビングに近付く必要もなかったのではと思う程、随分はっきりと聞こえた。
……小学生の俺には、いまいち理解のし難い内容だったけれど。


617: ◆UTA.....5w:2012/4/19(木) 23:27:28 ID:n5h324VbgQ

二人の会話は聞き慣れない単語の連発で、喧嘩というよりも父さんが母さんを説得しているようだった。どうやら母さんは、父さんの説得に応じるつもりはないらしい。
疑問符が浮かんでばかりの俺を余所に、二人の会話は進んでゆく。

「俺だって、こんな事は言いたくないんだよ。まだ小さな命でも、俺達の子には変わりない」

「だったら…!」

「だけど!……だけど、君だって俺の妻だ。大切な、たった一人の人なんだよ」

「私だってそうよ!!」

今まで聞いた事のない母さんの怒号に、はっと息を飲む。
怒っているようで、それでいて悲しい。泣いているような母さんの声。
困ったような父さんの溜め息が、リビングの外にまで洩れていた。


618: ◆UTA.....5w:2012/4/19(木) 23:28:32 ID:n5h324VbgQ

これにて投下終了します。
読んで下さった皆さんに感謝です!


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