姫「いいですよねお父様」
王「姫ちゃん怖いよ」
姫「殴りたくもなりますよ。
――何ですかこの財政は!」
312: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/17(土) 23:17:32 ID:/5FRZFy.DE
勇者「よし決まり!行くよ姫!」ズルズル
姫「きゃー助けて拉致られるー」ズルズル
従者「そんなやる気ない声で叫んでも微笑ましいだけですよ」
姫「どこが微笑ましいと」
勇者「西棟前の丘にあったよ!」
従者「行ってらっしゃいませ」
313: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/18(日) 23:50:39 ID:A1avxOZkx2
勇者「……なあ、姫。西棟のあの木を覚えてる?」
姫「え?小さい頃よく登った、あの大きな木かしら」
勇者「そうそう、少し前に病気で枯れちゃったやつ」
姫「切り倒されちゃったのよね。で、それが?」
勇者「寂しい?」
姫「まあ、それは」
勇者「だから連れてきたんだよ」
314: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/18(日) 23:51:23 ID:A1avxOZkx2
勇者「絶対見てみるべきだって」
勇者「西棟前の丘の、あの木があった場所にさ」
勇者「あるんだよ、同じ色に染まった、夕暮れ空に溶け込んで」
勇者「ほら、もうすぐ見えてくるよ」
勇者「あかあかと燃えるあの大きな木が」
315: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/18(日) 23:51:50 ID:A1avxOZkx2
姫「赤い木……?これ、あの木なの?」
勇者「うん、そう」
勇者「芸術家さんがね、切り倒した木を貰って行ったらしいんだ」
勇者「使わせて貰えないか、って」
姫「綺麗……」
316: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/18(日) 23:52:15 ID:A1avxOZkx2
芸術家「……気に入って頂けたようで、ありがとうございます」ニコニコ
姫「芸術家さん。来ていたの」
芸術家「あはは、やはり皆さんの感想は、僕も気になりますから」
勇者「そっかあ」
芸術家「……結局、部屋にあるものだけではできませんでしたが」
姫「費用無しでしょう、上出来よ」
317: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/19(月) 23:15:47 ID:4SVeeV6rxk
姫「正直に言うと意外だったわ。いつもはもっと、豪華で派手なものを、こう、どばーんと置いてあったんだもの」
姫「でもこの木は目立たないし、圧倒するような迫力もない。代わりに素朴で優しくて、すごく温かい感じがする」
姫「もしかしたら、お父様の好みには合わないかもしれないわね。でも」
姫「私はすごく、好きだと思うわ」
318: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/19(月) 23:16:39 ID:4SVeeV6rxk
芸術家「……最高の誉め言葉を、ありがとうございます」
勇者「お、芸術家さん照れてる?」
芸術家「いや、そんなことは!」
姫「あらそんなに嬉しかった?もっと言おうかしら」
芸術家「ひ、姫様ぁ」タジッ
319: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/19(月) 23:19:24 ID:7l16fIcLfY
芸術家「あ、そうだそうだ。これを見て頂けませんか」
勇者「何これ、この木の葉っぱ?」
姫「何か書いてあるわよ」
芸術家「これはね、紙を加工してできてるんですよ。少しずつ色や形を変えて、針金を仕込んで」
勇者「へえ、本物みたいに作るなあ」
芸術家「あはは、これでも僕、芸術家ですから」
320: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/19(月) 23:20:08 ID:7l16fIcLfY
芸術家「で、紙ですから、文字が書けますよね」
姫「まあ、書けるわね」
芸術家「ということで、実はね、見に来てくださった皆さんに、願い事を書いて貰ってるんですよ」
勇者「……願い事?」
321: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/19(月) 23:20:41 ID:7l16fIcLfY
芸術家「東洋にはね、七夕という風習があるらしいんですよ」
芸術家「一年に一度、笹の枝に、紙で作った飾りと、願い事を書いた紙を吊るすと、願いが叶うんです」
姫「面白いわね、それが今日?」
芸術家「いえ」キパッ
姫「えっ」
芸術家「いや、素敵な風習なんでパクってきちゃいました。あはは」
322: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/19(月) 23:21:11 ID:7l16fIcLfY
姫「そんな適当でいいのね……」
勇者「まあまあ、楽しそうだしいいじゃん」
芸術家「あはは、まあそういう訳で、おふたりもいかがですか」
勇者「やる!」
姫「まあ、折角だし」
芸術家「はい、ではどうぞ」
323: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/20(火) 23:04:41 ID:XaSSnJluPk
勇者「魔王討伐に行きたい……っと」カキカキ
姫「あんた根にもつわねえ」
勇者「だって行きたいし。行かせてくれないの、割と残念だし」
勇者「あーあ、早く節約生活終わんないかなあ」
姫「……ふぅん。」
324: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/20(火) 23:05:09 ID:XaSSnJluPk
勇者「姫は?」
姫「無事に財政を立て直せますように」
勇者「うわ、普通」
姫「今はこれ以外にないわよ、切実に」
姫「念を込めたら叶いやすくなるかしら……」ズモモモモ
勇者「姫ー、顔怖いよ顔」
325: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/20(火) 23:05:36 ID:XaSSnJluPk
芸術家「では、僕が木のほうにお掛けしておきますね」
勇者「よろしくー」
姫「ああ、もしかしてあの梯子はそのために……」
芸術家「いや、梯子って難しいですね。僕もう何度落ちたか分かりませんよ」
勇者「それ多分芸術家さんだけだよ」
姫「言わないであげましょうよ」
326: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/20(火) 23:06:03 ID:XaSSnJluPk
従者「姫様!」
姫「あれ従者、あんたもこっち来たの?」
従者「来たの?じゃありませんよこのどアホ!どんだけ休憩する気ですか!」スパーンッ
姫「痛ったあ、何すんの……ってちょ、やめ……」ズルズル
従者「挨拶回りはまだ残ってますよ」ズルズル
勇者「……いってらー。」ヒラヒラ
327: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/21(水) 22:56:59 ID:IZAkWz/mtQ
仕立屋「あっ姫様、ドレスの具合はいかがでしょうか」
姫「仕立屋さん。お陰様で丁度よ、気に入ったわ」
仕立屋「ふふ、それは仕立て直した甲斐があるというものです」
従者「本当に別物ですね……」
仕立屋「私の手にかかればこんなものです」ドヤッ
328: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/21(水) 22:57:22 ID:IZAkWz/mtQ
仕立屋「姫様はサイズが変わってらっしゃらないので、私も仕立てやすかったんですよ」
従者「ああ、胸のサイズも」
姫「あんたそれセクハラよ?」
姫「ともかく、それじゃ、お兄様なんて大変だったでしょう。すごく背も伸びてらして」
仕立屋「まあ、頑張りましたわ。特に王子様には見返りがありましたし……」キラーン
従者「なんか怖い」
329: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/21(水) 22:57:42 ID:IZAkWz/mtQ
姫「あら、何かしら」
仕立屋「私の口からは申し上げられませんねえ」
姫「もう……」
従者「姫様、そろそろ次の方に」
仕立屋「あらすみません、つい話が長くなってしまって」
姫「良いのよ、仕立て直せだなんてお願い、聞いてくれてありがとうね」
仕立屋「いいえ、これからも何なりと」
330: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/22(木) 23:03:47 ID:/UGBUXLJ6g
王「姫ちゃん姫ちゃん、ちょっとこっち来てー」
姫「お父様?あら、そちらの方は……」
青年「初めまして、貴女のお父様の知人ですよ」
王「えっ」
姫「あら、それは失礼しました。初めまして、娘の姫です」
331: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/22(木) 23:05:30 ID:XXnWtGX0ys
青年「一曲いかがでしょう、お相手願えますか?」
姫「え、いやその、お父様が何て言うか……」チラッ
王「……姫ちゃん、行っておいで」
姫「嘘っ!?」
青年「面白いお嬢さんですね」クスクス
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