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姫「殴っていいですか」
[8] -25 -50 

1: ◆xXC7.dNnEA:2011/10/28(金) 22:21:53 ID:SCGnwLC0bk
姫「いいですよねお父様」

王「姫ちゃん怖いよ」

姫「殴りたくもなりますよ。



  ――何ですかこの財政は!」


2: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/28(金) 22:22:26 ID:SCGnwLC0bk
姫「小麦の不作で大赤字」

姫「改めて見てみれば、前から赤字続きじゃないですか」

王「でっでも、財政は宰相くんの担当だもん」ビクッ

姫「必死に遣り繰りする宰相さんに我儘放題だったのはどこの王様でしょう」

王「父さんは知らないよ!」

姫「よし殴る」グッ
3: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/28(金) 22:23:13 ID:SCGnwLC0bk
姫「今年はともかく、例年の赤字はほとんど宮廷費のせいですね」

王「だって気付いたらこうなってたもん、ねえ母さん」

王妃「なっちゃったものは仕方ないわねえ」

王「ほら!」ドヤッ

姫「どや顔やめてください」
4: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/28(金) 22:23:37 ID:SCGnwLC0bk
姫「国民の財産をこんなに使い込んでいたなんて」

姫「一国の姫として情けないです!」

王「まあ落ち着いて」

姫「お父様」

王「ごめんなさい」
5: 名無しさん@読者の声:2011/10/28(金) 22:23:48 ID:MCqPV4LSQM
次のランキングに波乱を呼ぶ予感!!
6: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/28(金) 22:24:04 ID:SCGnwLC0bk
王妃「ねえ姫ちゃん、うちのお隣さんのことは知ってるでしょう」

姫「隣国とは、あの大帝国ですか」

王妃「そう。うちみたいな小国は、すぐに侵略されてしまうから」

姫「大帝国の傘下に入ることで、戦争を免れているんですよね」

王「隣の皇帝さん、威厳たっぷりだよね」

姫「お父様は黙ってて」
7: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/28(金) 22:24:32 ID:SCGnwLC0bk
王妃「守ってもらう代わりにね、毎年お金を払っているのよ」

姫「まさかそのお金も」

王「うん……払えない☆」キャピッ
8: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/28(金) 22:25:50 ID:Ur8zpOk9GY
>>5
ちょwww気が早いwww
ちまちま頑張って行く予定です(`・ω・´)
ありがとうございます!
9: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/28(金) 22:26:55 ID:SCGnwLC0bk
姫「どどどどうするんですか!侵略されますよ侵略!」ガターンッ

王「侵略はやだなあ」

姫「戦争だって嫌ですよ!」

王「だからごめんってば」

姫「ごめんで済んだらけーさつは要りません!」
10: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/28(金) 22:27:43 ID:SCGnwLC0bk
王「だから、さ」

姫「はい?」

王「姫ちゃん財政立て直してよ」

姫「えっ」
11: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/28(金) 22:28:15 ID:SCGnwLC0bk
姫「ええええだってその、お父様に代わって財政を握るなんて大それたこと」

王「父さんも宰相くんに任せっきりなんだけどねえ」

姫「待ってください、何でそうなるんですか」

王「あ、財政っていっても城の中のことだけだから」

姫「どっちにしろ恐れ多くてできませんよ!」
12: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/28(金) 22:29:08 ID:SCGnwLC0bk
姫「お母様、お母様からも何とか」

王妃「ふふふ、きっと良い経験になるわよう」

姫「宰相さんも何か言って!」

宰相「城内のことは僕も申し上げにくいもので……」

王「決まりだね!」

姫「ええー……」
13: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/28(金) 22:30:57 ID:Ur8zpOk9GY
宰相「隣国には支払い期限を1年間待ってもらえることになりました」

姫「つまり1年間で立て直せと」

宰相「小麦の不作さえなければ、辛うじて払えた額です」

王「姫ちゃんしっかりしてるから大丈夫だよ」

姫「……考えさせて、ください」
14: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 07:26:32 ID:YAvYrPMcAM
従者「お疲れですね」

姫「そりゃ疲れるわよ、まさか財政がそこまでヤバかったなんて」ハァ

従者「宰相さん最近やつれてましたもんね」

姫「お父様は元気そうだけど」
15: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 07:26:58 ID:YAvYrPMcAM
従者「どうなさいますか」

姫「どうって」

従者「だーかーらー、姫様が財政云々の話ですってば」

姫「普通に無理じゃん!」ガバッ
16: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 07:27:16 ID:YAvYrPMcAM
姫「考えてもみてよ、生粋の箱入り娘が急にそんな遣り繰りできると思う?」

姫「失敗したら戦争よ、戦争」

従者「でもやらなかったら今まで通りですよ」

姫「それは駄目だけど……」
17: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 07:27:36 ID:YAvYrPMcAM
姫「……従者はどう思う?」

従者「俺なら逃げますね」

姫「即答!?」

従者「だってめんどいし」

姫「普通に切り捨てた!」
18: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 07:27:54 ID:YAvYrPMcAM
従者「でも姫様は違うでしょう」

従者「姫様はこの国が大好きですから」

姫「…………」

姫「……ありがとう、もう寝るわ。今日は帰ってちょうだい」

従者「了解しました」
19: 名無しさん@読者の声:2011/10/29(土) 07:38:13 ID:oCFwVVGzgU
熱烈支援
(`・ω・´)
20: 名無しさん@読者の声:2011/10/29(土) 08:07:00 ID:.L.Jxg.m9s
しえんっ!
21: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 11:34:39 ID:Vu4dJaZiYU
>>19-20
支援ありがとうございます!ヽ(゚∀゚*)ノ
話が動き出すまでもーちょっと進めますよっと
22: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 11:35:59 ID:bIIsrLE4fw
王「びっくりしてたね、姫ちゃん」

王妃「当然よ、あの子真面目ですもの」

王「父さん怒られちゃったよ」

王妃「あなたはもう少し反省した方がいいわ」
23: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 11:36:39 ID:bIIsrLE4fw
王「母さんはどう思うんだい?」

王妃「そうねえ、面白そうだとは思うけれど」

王「姫ちゃんのことだから、やるとなったら相当頑張るよ」

王妃「ふふ、見てみたいわねえ」
24: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 11:37:47 ID:bIIsrLE4fw
王妃「ねえ、あなた」

王「なんだい母さん」

王妃「……もし、1年間経っても駄目だったら」

王「その時は、この国がなくなる時だろうね」

王「戦争だけは、絶対にしないからさ」
25: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 11:38:59 ID:bIIsrLE4fw
姫「やらせてください」バーン

王妃「あら潔い」

王「ありがとう姫ちゃん!」

姫「私で力が及ぶかは分かりませんが、全力は尽くします」

王妃「まあそんなに固くならないで」
26: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 11:40:14 ID:bIIsrLE4fw
王「やりたいことがあったら言ってね、基本的に言うこと聞くから」

王妃「分からないことがあったら宰相くんに聞くのよ」

王「父さんはー?」キラキラ

王妃「あなたは頼りにならないでしょう」

姫「本当に放置してたんですか……」
27: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 11:41:32 ID:bIIsrLE4fw
姫「さて、どうしよう」

従者「何も考えてなかったんですか」

姫「うるさいわね、だって何からやればいいのか……」

従者「やるって言っときながら」

姫「今からやるのよ!」
28: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 11:44:30 ID:5tzXfudkYk
姫「そもそも原因は何なのかしら」

従者「豪奢を極めた生活を送っている訳ではありませんしね」

姫「そうよ、国が小さいこともあるけれど、王族にしては随分と慎ましく暮らしているもの」

従者「まあ国民からするとまだ贅沢三昧でしょうけどね」

姫「そういうものなの……?」
29: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 11:45:16 ID:5tzXfudkYk
姫「いっそ一般市民レベルに生活水準を落とそうかしら」

従者「やめてください、なけなしの威厳が」

姫「何よなけなしって!威厳あるわよ、お母様ならまだそれなりに!」

従者「王様にはないんですか」
30: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 23:23:46 ID:bIIsrLE4fw
従者「ともかく、財政難の原因が分からないことには何とも」

姫「そうよねえ、宰相さんに帳簿でも見せて貰おうかな」

従者「それがいいですね」

姫「そうと決まれば早く行きましょう」

従者「御意」
31: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 23:24:36 ID:bIIsrLE4fw
姫「宰相さん」

宰相「どうなさいましたか、姫様」

姫「少し過去の帳簿を見せて貰いたくて」

従者「財政難の原因が知りたいと仰ったものですから」

宰相「熱心でいらっしゃいますね」
32: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 23:25:51 ID:/VjY1d6A56
宰相「でしたら資料室に保管してありますよ。お連れしましょうか」

姫「いいの?仕事の邪魔にならないかしら」

宰相「丁度外の空気に当たろうかと考えておりましたので」

姫「ありがとう、それならお願いするわ」

従者「姫様方向音痴ですもんね」ププッ

姫「うううるさいわよ」
33: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 23:26:27 ID:/VjY1d6A56
姫「大体あなたが案内してくれないから」

従者「あくまで自分は姫様に付き従う者ですから」

姫「私が迷うの面白がってるだけでしょ」

従者「九割方そうですが身分を弁えているだけですよ」

姫「ほとんどそうじゃん表に出なさい!」

宰相「お二方も相変わらずですねえ」
34: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/29(土) 23:27:00 ID:/VjY1d6A56
姫「そもそもこの城が大きすぎるのよ、これも無駄なんじゃないかしら」

従者「世間ではそれを責任転嫁と」

姫「あんたは黙んなさい」

宰相「もう到着しますよ」
35: 名無しさん@読者の声:2011/10/30(日) 12:54:46 ID:f79T6dgeUQ
支援(´∀`*)
36: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/30(日) 13:22:24 ID:Vu4dJaZiYU
>>35
支援ありがとうございますヽ(´∀`*)ノ
またちょっと投下ー
37: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/30(日) 13:23:02 ID:Vu4dJaZiYU
宰相「こちらが資料室です」

姫「……どんだけ本があるのよ」

宰相「建国以来の資料が各種取り揃えてあります」

従者「俺帰っていいですか」

姫「だめ」
38: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/30(日) 13:23:37 ID:Vu4dJaZiYU
宰相「奥から2番目、向かって右側から3つ目、4つ目の棚が財政の記録になっています」

宰相「奥の方から古い物が並んでいますので、手前をご覧になるとよろしいかと」

宰相「城内の記録は燕脂色の表紙のものです、この部屋から持ち出す際にはあちらの冊子に記録してください」

従者「頭が痛い」
39: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/30(日) 13:24:03 ID:Vu4dJaZiYU
宰相「では僕はこれで」

姫「ありがとう、助かったわ」

従者「では俺もこれで」

姫「だから逃げるなって言ったでしょ」ガシッ
40: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/30(日) 13:24:31 ID:Vu4dJaZiYU
姫「あなた嫌味を言うときは頭の回転速いのにね」

従者「それとこれとは別問題です。あ、これ去年のじゃないですか」

姫「本当に?見せて見せて」
41: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/30(日) 13:26:07 ID:IteBxXaruU
姫「去年の支出内容は……っと」パラパラ

姫「あー、やっぱり人件費はかさむわねえ。皆一流だもの」

従者「俺誉められました?」

姫「食費も衣装代も緩みがちで……もっと締めていかないと」

従者「それにしても、一体この“王の娯楽費”って何でしょうかね」

姫「これ……え?」
42: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/31(月) 14:34:16 ID:GlQQNTFhlc
姫「お父様――っ!!」バーンッ

王「うわあ姫ちゃんびっくりしたよ!」

姫「よくものうのうと画集なんてお読みになれますね!全国民に土下座なさい!」

姫「原因ほとんどお父様の買い集めた絵じゃないですか!」
43: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/31(月) 14:36:36 ID:GlQQNTFhlc
姫「ほらそこに掛かってる絵だって!一体いくらしたんですか」

王「それはそんなに高くないよ!むしろ食堂にある絵の方が」

姫「いくらでしたか」

王「せ、せいぜい(自主規制)円……」

姫「」クラッ

従者「姫様お気を確かに」
44: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/31(月) 14:41:49 ID:Vu4dJaZiYU
従者「この地方の名画をことごとく集められましたね」

王「そうなの!父さんの自慢のコレクションだよ」

姫「こいつ本当殴りたい」
45: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/31(月) 14:43:38 ID:Vu4dJaZiYU
姫「とにかく!本当に手元に置きたいもの以外は手放して頂きますからね」

王「それは駄目え!姫ちゃん酷い!」

姫「つべこべ言わずに売り払いましょう」

王「姫ちゃんの鬼!悪魔!父さんがどれだけ頑張って集めたか知らないでしょ!」ワアアン

姫「知りたくもないですよ如何にして国民の財産を浪費したかなんて!」
46: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/31(月) 23:48:01 ID:0MRnBcGkRk
従者「しかし姫様、いきなり売り払えというのも少々酷かと」

王「うんうん、従者くんは分かってるなあ」

姫「従者まで……じゃあどうしろって言うのよ、こんなにお金使って」

従者「そうですね、例えば」

従者「ただ売却するのではなく、その絵で収入を増やしてみては如何でしょう」
47: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/31(月) 23:50:34 ID:f2kNfbK7/o
姫「稼ぐって……?」

従者「他国にその絵を貸し出して代金を取ったり、いっそ王立で美術館を作ってしまったり、色々とやりようはありますね」

王「はい!父さん美術館作りたい!」

姫「そんな資金がどこにあるんですか!」
48: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/31(月) 23:52:06 ID:f2kNfbK7/o
姫「ふうん……纏まったお金は入らないけれど、確かに長期的な収入は見込めるわね」

王「ほら、他にやり方あるんだし絶対売らないからね!」

姫「お父様に決定権はありません!」

王「あるもん王様特権が」

姫「くっ、流石に逆らえないわ……」
49: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/31(月) 23:53:34 ID:f2kNfbK7/o
従者「それでは当面の間、国外に絵画を貸し出して収入を得るということで」

姫「すぐに纏まったお金が入ると思ったのに」

王「父さん売らないからねっ!」

姫「はいはい分かったから」
50: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/10/31(月) 23:54:47 ID:f2kNfbK7/o
姫「それにしても、そんなすぐに借り手が見つかるかしら」

従者「この地方でも有数の名画揃いでしたからね」

王「父さんみたいな人には喉から手がでる代物なんだよ……って、あー!」

王「返して貰えなかったらどうしよう!」

姫「行くわよ従者」スタスタ

従者「御意」スタスタ
51: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/1(火) 11:42:04 ID:QZJczNwe4M
姫「とりあえず、財政難の最大の原因は取り払ったわ」

従者「王様は気乗りしなさそうでしたが」

姫「良いのよ言わせとけば」

従者「まあその内大人しくなりますよね」
52: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/1(火) 11:44:08 ID:BD5gqboGtA
姫「纏まった収入にならなかったのが心残りね……」

従者「やっぱり売りたかったんですか」

姫「あんたが余計な提案するから」

従者「それは失礼を」

姫「なんかむかつく」
53: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/1(火) 11:45:02 ID:BD5gqboGtA
従者「絵画を全て売ってしまえば大金が入り、今年帝国に払う分は確保できたでしょうね」

従者「でも、来年以降の分はどうなるでしょう」

従者「一度に叩き売っただけの代金で、この国の将来の財政は立ち直るでしょうか」

姫「それは……」
54: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/1(火) 11:45:44 ID:BD5gqboGtA
従者「姫様もまだまだですねえ」

姫「しょうがないじゃない、急にこんなこと任されたんだから」

姫「本気を出すのはこれからよ」

従者「明日から本気出すんですね分かります」

姫「ニートみたいに言わないで頂戴」
55: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/1(火) 23:45:16 ID:BD5gqboGtA
王妃「ねえねえ従者くん、あの子どうかしら」

従者「どう、とは」

王妃「父さんが泣きついてきたのよ、姫ちゃんが怖いよーって」

従者「なるほど」
56: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/1(火) 23:45:59 ID:BD5gqboGtA
従者「まじでアホです」

王妃「うふふ、辛辣ねえ」

従者「そして暴走します」

王妃「あら大変」

従者「……でも、必死ですよ」
57: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/1(火) 23:47:10 ID:YEY72tQYGM
王妃「意外と優しいこと言えるじゃない」ニコニコ

従者「貴女は俺を何だと思ってるんですか」

王妃「ツンデレ?」

従者「うわあ」
58: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/1(火) 23:51:05 ID:cdu7xIBYa.
姫「うーん……」コテン

姫「うううー……」グルン

姫「んんー……?」グググ

従者「どうなさいましたか姫様、その顔不細工ですよ」

姫「あんた本当に私より格下?」
59: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/1(火) 23:51:45 ID:cdu7xIBYa.
姫「他に減らせるとこないかなって」

従者「財政ですか」

姫「それ以外に何があるっていうの」

従者「体重とか」

姫「標準体型よ!」
60: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/1(火) 23:52:49 ID:cdu7xIBYa.
従者「やっぱ人件費じゃないですか」

姫「あー生意気な従者をリストラしたりとか?」

従者「やかましい姫君を嫁に出したりとか」

姫「まじで首にするわよ」

従者「わあ怖い」キャッ
61: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/1(火) 23:55:01 ID:cdu7xIBYa.
姫「正直な話、リストラは気が進まないわ」

従者「と言いますと」

姫「だって城の使用人さん達にも生活があるじゃない」

姫「私達の都合で人生を狂わせる訳にはいかないわ」
62: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/1(火) 23:57:57 ID:vaPRAZHb9M
従者「甘いですね」

姫「甘いわよ」

従者「でも王族的には間違ってませんよ」

姫「なら構わないわ」
63: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/2(水) 00:00:55 ID:TKQezqcdlg
侍女「姫様、お食事のお時間です」

姫「ああごめんなさい、すぐに行くわ」

従者「ではこの話は後にしましょうか」

姫「ええ、そうする」
64: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/2(水) 00:02:52 ID:TKQezqcdlg
姫「全部を少しずつ削っていくしかないのかしら」

従者「必然的にそうなりますね」

姫「本当に、1年間で……」

姫「いいえ、やめましょう。まずはご飯よ」

従者「御意」
65: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/2(水) 15:50:17 ID:YJIMGSU7Oo
王「姫ちゃん遅いよー」

姫「すみません、お父様」

王子「お前も相変わらずだね、姫」

姫「お兄様!」パアッ
66: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/2(水) 15:52:34 ID:YEY72tQYGM
姫「どうしたのお兄様、いつの間に辺境から帰ってらしたの?」

王子「決めていた2年間も終わったからね、暫くはこっちにいるよ」

姫「そっか、お疲れ様です」

王妃「まあ、みんな冷めない内に頂きましょうよ」

王「ゆっくり話すのはそれからだね」
67: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/2(水) 15:56:21 ID:YJIMGSU7Oo
王子「久々の家族の食卓……」ジーン

姫「本当に久しぶりね」

王「王子くんも大変だったでしょ、たくさん食べるんだぞー」

王妃「父さんみたいなお腹にならない程度にね」

王「母さんひどい!」ボヨーン
68: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/2(水) 15:59:43 ID:wPFCMzneoQ
姫「お兄様は、確か実務経験に行ったのよね」

王子「そうだね、辺境って言う割に至って平和なものだったけれど」

王「うんうん、平和がいちばんだよ」

王子「平和すぎる気もしますがね」
69: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/2(水) 16:18:16 ID:VwxIAK9LCQ
王妃「じゃあ王子くんには退屈だったかしら、あそこは」

王子「そんなことはありませんよ、ほとんど毎日砦の兵士と訓練していたし」

姫「じゃあお兄様、剣の腕も上がったんじゃないの」

王子「そうだと良いけどなあ」
70: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/2(水) 19:00:08 ID:CDn3vnH7O.
王子「これからは、城の方で政務の勉強もするんだ」

王「父さんの仕事も減りそうで嬉しいよ」

王妃「まあ、あなた元から仕事なんてさぼってばかりでしょう」

王「それ言っちゃだめえ!」
71: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 19:28:39 ID:fcKWrgb8mk
C
72: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/2(水) 23:06:58 ID:wPFCMzneoQ
>>71
支援ありがとうございます!(*゚∀゚)=3ムッハー
73: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/3(木) 15:24:52 ID:cdu7xIBYa.
王「まあとりあえずたくさん食べなよ、話はそれからだ」

姫「話って何ですか」

王妃「父さんのお腹の話よ」

王子「ああなるほど」

王「ねえみんな父さんのこと嫌い?」
74: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/3(木) 15:27:49 ID:CDn3vnH7O.
王子「食べる量は増えたはずなんですけどね、流石にこれは無理かな」

姫「無理って?」

王子「明らかに食べ切ることを想定してない量だろう、これ」

王「父さんは余裕だよ!」ボヨーン

姫「お父様は別よ」
75: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/3(木) 15:34:13 ID:/h1J5f9sxg
王妃「そうねえ、確かにいつもたくさん残してしまうわね」

王子「砦ではお代わり争奪戦でしたから」

王「熾烈な戦いだろうね」

姫「……これも減らせる、かな?」
76: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/3(木) 15:42:49 ID:CDn3vnH7O.
王子「どうしたんだい、姫」

王妃「そういえば、まだ王子くんは知らないのよね」

王子「何でしょう」

王「いや、実はね……」
77: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/3(木) 15:50:38 ID:QZJczNwe4M
王子「父上」

王「……はい。」

王子「殴っていいですか」

王「わあ兄妹」
78: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/3(木) 15:57:34 ID:CDn3vnH7O.
王子「殴りたくもなりますよ何ですかその状況!」

姫「普通そうよねー、あ、このお肉美味しい」

王「ごめん!ごめんって!」

王妃「平謝りよねえ。料理長さんが自信作って言ってたのよ、それ」

王子「一体父上は何をやってたんですか!」

王「だからごめんってばー!」
79: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/3(木) 23:06:17 ID:1Mn.ULmtuc
王子「で、姫が立て直すの?」

姫「城内のことはね」

王「流石に国のことは宰相くんにお願いしてるけど」

王子「大体分かりました」
80: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/3(木) 23:09:42 ID:cdu7xIBYa.
王子「その手伝い、俺にもさせてください」

王「いいよー」

姫「ノリ軽くない?」

王妃「まあ良いじゃないの」
81: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/3(木) 23:12:32 ID:cdu7xIBYa.
王子「どちらにせよ実際に国政を学びたいと思っていました」

王子「知識だけなら身につけています、俺でも宰相の邪魔にはならないでしょう」

王妃「ふふ、頼もしい子がふたりもいて母さん幸せだわ」

王「父さんはー?」ワクテカ

王妃「何か言ったかしら」
82: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/3(木) 23:18:49 ID:1Mn.ULmtuc
王妃「それじゃあふたり共、よろしくね」

王「頑張ってねー」

王子「父上無駄遣いしちゃ駄目ですよ」

王「分かってるもん」
83: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/11/4(金) 13:08:32 ID:YJIMGSU7Oo
何やら最近のSS限定ランキングで、このSSを2位にして頂けたということで、ありがとうございます!ヽ(*´∀`)ノ
結構たくさんの方が見てくださってるようで、とても嬉しいです
これからもご期待に沿えるようなものを書いていけるよう頑張りますので、何卒宜しくお願いします……m(*_ _)m

今日の更新はまた後で来ますね(*゚ω゚)ノシではでは
84: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/4(金) 21:12:05 ID:1Mn.ULmtuc
従者「へえ、王子がそんなことを」

姫「そう。お兄様が手伝ってくれるなら頼もしいわね」

従者「あんなんが役に立ちますかねえ」

姫「……あんたいつになくキツいわね?」

従者「さあ」
85: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/4(金) 21:16:52 ID:YJIMGSU7Oo
姫「食事も終わったことだし、行くわよ従者」

従者「はいはい今度はどこですか」

姫「厨房よ」

従者「なるほど、食費削減ですね」

姫「お父様のダイエットも兼ねてのことよ」
86: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/4(金) 21:21:21 ID:vaPRAZHb9M
姫「今回は上手くいきそうな気がするわ」

従者「まあ量を減らせってだけですもんね」

姫「厄介な権力者もいないし」

従者「後から文句言いそうですけど」

姫「先手必勝よ」
87: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/4(金) 21:27:47 ID:BD5gqboGtA
料理長「いやです」

従者「なんと」
88: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/4(金) 21:38:18 ID:BD5gqboGtA
料理長「申し訳ございませんが、姫様のご命令とあっても、私が従うことはできません」

姫「どうして?」

従者「この提案に、何か問題が?」

料理長「問題どころじゃありませんよ」

料理長「何故なら……何故なら私が城にお仕えしているのは……」フルフル

料理長「豪華な料理が作りたいからなんですよ!!」バーンッ
89: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/4(金) 21:49:47 ID:VwxIAK9LCQ
姫「…………」

従者「…………」

料理長「…………」

姫(……ねえ従者)コソッ

従者(そうですね姫様)ヒソヒソ

姫・従者(めんどくせえ……)
90: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/5(土) 12:57:42 ID:VwxIAK9LCQ
姫「ね、ねえ料理長さん。何も貧相な料理を作れと言っている訳じゃないのよ」

従者「そうですよ、ただ少し食費を減らして貰えればと」

姫「そうよ、量を減らしたり高級食材を控えてもらえれば」

料理長「甘い……甘いですよおふたり共……」

姫(あっなんかまた面倒事の予感)
91: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/5(土) 13:03:17 ID:/h1J5f9sxg
料理長「半端な材料で一流の作品ができるとでもお考えか!」

料理長「少量の盛り付けで、城にふさわしい豪勢さが表せるとでも……?」

料理長「ええそうですとも、私は権力になど屈しない」

料理長「私の意志を曲げるようならば、こちらにも考えがある……」

料理長「王宮料理人など、辞めさせて頂きます!」
92: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/5(土) 13:09:43 ID:BD5gqboGtA
姫「おおお落ち着いて!早まらないで料理長さん!」

従者「そうですよ面倒臭モガッ」

料理長「今まで姫様方のお食事を作らせて頂けて……私は幸せでした」

姫「待って!聞いてほしいの!」
93: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/5(土) 13:15:09 ID:YEY72tQYGM
姫「私、あなたの料理すごく好きよ」

姫「さっきのお肉、とても美味しかったわ。自信作なんですってね」

姫「あなたに辞められると、私達がみんな困るわ」

料理長「姫様……!」
94: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/5(土) 13:23:06 ID:1Mn.ULmtuc
料理長「そのようなことを言って頂けるとは、料理人として感激の極みです」

姫「じゃあ!」

料理長「ですが、自分の信念を曲げる訳には……」

姫「そう……残念ね」
95: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/5(土) 13:28:41 ID:YEY72tQYGM
姫「隣の帝国では、皿の上に少しだけ料理を盛るのが流行りだと言うわ」

姫「その姿はとても品があって、宝石のように美しいんですって」

姫「料理長さんが作ったものだったら、多分うっとりするほど美味しいんでしょうね」

姫「一度食べてみたかったわ……」グスッ

従者(うっわあ)
96: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/5(土) 14:02:04 ID:VwxIAK9LCQ
料理長「姫様!」

姫「ああ、でも料理長さんの信念を曲げる訳には」

料理長「いいえ構いません!姫様のお願いとあらば、この私が作って差し上げましょう!」ガシッ

姫「本当に?嬉しい!ありがとう料理長さん!」ガシッ
97: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/5(土) 14:05:58 ID:VwxIAK9LCQ
従者「お見事です」

姫「崇めていいのよ」

従者「お断りします」
98: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/5(土) 14:08:34 ID:YJIMGSU7Oo
姫「これで問題はひとつ解決っと」

従者「長続きしますかね」

姫「それはおいおい考えればいいわ」

従者「御意」
99: 名無しさん@読者の声:2011/11/5(土) 17:27:58 ID:ke8kDwatac
どんな食材を使ってでも一流の品を作るのが料理人だろうに…って金髪ぐるまゆが言ってたかも。

C
100: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/5(土) 20:26:08 ID:RXwsYJSRA.
>>99
どこぞのギャグ要員の料理長と違って、出来た人なんでしょうね……(´ω`*)
支援ありがとうございます!
101: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/6(日) 11:52:34 ID:RXwsYJSRA.
王子「…………」パラパラ

宰相「…………」ジーッ

王子「……うっわあ」ペラッ

宰相「お分かりになりましたか」

王子「これは酷い」
102: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/6(日) 12:17:03 ID:RXwsYJSRA.
宰相「城内の帳簿は姫様がお持ちのようですが」

王子「いや、これで構わないよ。宮廷費が酷いことだけ分かれば十分だ」

宰相「そこを締めるのは姫様のお仕事ですからね」

王子「そっちは任せるとしようか」
103: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/6(日) 12:28:47 ID:QZJczNwe4M
宰相「宮廷費に圧迫された、ギリギリの国政費」

宰相「一度負債を抱えてしまえば、抜け出すのは難しいでしょう」

王子「借金漬けの王国が、行き着く先は破産ってことか」

宰相「国の崩壊が、少し遅くなるだけの話です」
104: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/6(日) 12:32:43 ID:VwxIAK9LCQ
王子「……そうなると。歳入を増やすか歳出を減らすか」

宰相「増税を、お考えですか」

王子「……宰相はどう思うんだい?」

宰相「僕は……」
105: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/6(日) 12:36:51 ID:YEY72tQYGM
宰相「正直に申し上げると、このままでは免れないと思います」

宰相「歳出は既に切り詰めています」

宰相「これ以上は、削ってはいけないものまでなくしてしまう」

王子「なあ宰相、」

宰相「はい」

王子「俺はね……」
106: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/6(日) 23:15:02 ID:YEY72tQYGM
王「……なんか朝食すごいことになってない?」

姫「何ででしょうねえ」シレッ
107: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/6(日) 23:18:00 ID:TKQezqcdlg
王「オムレツが小さくなってソースが芸術的にかかってる!」

王「スープの表面にもなんか模様が描いてある!」

王「ああっサラダのトマトが花の形に!?」

料理長「美しさこそ至高です」ドヤッ

王「よく分かんないけど全部ちっちゃい!」ガーン
108: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/6(日) 23:19:33 ID:TKQezqcdlg
王妃「ふふ、とても綺麗。ねえあなた」

王「あ、ああそうだね、でも母さん」

王子「このくらいの量の方が、食べやすくて良いですね」

王「そ、そうかな?」

王妃「あなたも昔はもっと少食だったのに……」チラッ
109: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/6(日) 23:23:05 ID:VwxIAK9LCQ
王妃「…………」ジーッ

姫「…………」ジーッ

王子「…………」ジーッ

王「」ポヨン

王「…………、分かったよう……」
110: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/6(日) 23:26:28 ID:VwxIAK9LCQ
姫「美味しさは変わらないわね」

王「そこだけが救いだよ」

料理長「心なしかカロリー控え目にしてみました」

王「嫌なところまで気が利くね……」
111: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/7(月) 08:02:02 ID:YEY72tQYGM
王「そうだ、父さんみんなに話したいことがあったんだよね」

姫「何ですか?」

王「ふっふっふ……」

王「王子くんも帰ってきたことだし、お帰り記念お祝いパーティーを開きたいと思います!」バーンッ
112: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/7(月) 08:03:11 ID:YEY72tQYGM
王子「俺の、ですか?」

王「うん、無事に帰ってきてくれたんだからね、みんなにも元気な姿を見せてあげなきゃ」

姫「待ってください、どこにそんなお金があるって言うんですか!」

王妃「まあ姫ちゃん、落ち着きましょう」

姫「お母様」

王妃「簡単に無駄遣いとは、言い切れないことなのよ」
113: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/7(月) 22:09:43 ID:CDn3vnH7O.
王子「と言いますと……?」

王「えっとね、まず、何だかんだで父さんはこの国の王様です」

王「一応国民のみんなを治める立場です」

王「上に立ってる人が、よく知らないし取っ付きにくい嫌な人だったら、多分嫌だと思うんだよね」

王妃「私たちはね、親しみやすい君主でいたいのよ」
114: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/7(月) 22:13:09 ID:CDn3vnH7O.
王子「ではもしかして、今までの舞踏会も……?」

王「うん、父さんたちも楽しいし、街の人たちも楽しんでくれてたみたいだしね」

王妃「王子くんが辺境に行ってから、舞踏会はずっと開いていなかったし」

王妃「国民の皆さんには、少し寂しい思いをさせてしまったかもしれないわ」

姫「そうだったんですか……」
115: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/7(月) 22:20:34 ID:YEY72tQYGM
姫「うううそれでも支出は痛い」

王子「良いじゃないか、節約すれば」

姫「お兄様まで」

王子「正直俺も出費は痛いと思うけど、そういうことなら必要だろうし」

王子「自分のために会を開いて貰えるのは、とても光栄なことです」
116: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/7(月) 22:27:06 ID:VwxIAK9LCQ
姫「……仕方ないです」

王妃「それじゃあ決まりね」

王「まあまあ、やるからには姫ちゃんも楽しもうよ!」

姫「でも経費削減はさせてくださいね!」

王「分かってるってばー」

姫「不安だわ……」
117: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/8(火) 12:39:37 ID:RXwsYJSRA.
姫「とは言ったものの」

従者「まさかまた無策ですか」

姫「うっさいわね」

従者「わあ図星」

姫「お金のことだけ考えれば、パーティーなんて開かないのが一番なのよ」
118: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/8(火) 12:46:10 ID:BD5gqboGtA
姫「そりゃあ私だって、お兄様が帰ってきてくださったのはすごく嬉しいのよ?」

従者「はあ」

姫「でもね、だからと言ってそんなに豪勢にお金を使うのは……」

従者「そうですね」

姫「ああっ、でもこれが王族としての運命?やっぱり威厳が必要なの?」

従者「知りませんよ」
119: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/8(火) 12:53:50 ID:cdu7xIBYa.
従者「ともかく、その催しは舞踏会と同じような形式になるんでしょう」

従者「また過去の帳簿でもご覧になったらいかがですか?」

姫「確かにそうね、資料室に行きましょうか」

従者「道分かるんですか」

姫「あんたが案内しなさいよ」

従者「はいはい」
120: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/8(火) 22:25:32 ID:cdu7xIBYa.
姫「迷ったわ」

従者「案の定ですね」プークスクス

姫「だって案内してくれないんだもの!」

従者「俺に期待するだけ無駄ですよ?」
121: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/8(火) 22:26:58 ID:cdu7xIBYa.
従者「その辺の侍女にでも道を聞きながら行けば良かったものを」

姫「あっ」

従者「……姫様意外と抜けてますね?」

姫「そんなことないわよ!ああ、ほら向こうから人が」

姫「ちょっと、あなた!少し良いかしら」

?「はい……って、あ!姫!」
122: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/8(火) 22:31:04 ID:CDn3vnH7O.
姫「なんだ、勇者だったの」

勇者「何だとは何だよ、失礼な」

姫「うん、でも会えて丁度良かったわ」

勇者「奇遇じゃん、俺も姫のこと探してた」
123: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/8(火) 22:32:49 ID:CDn3vnH7O.
姫「何か約束でもあったかしら」

勇者「いや、お願いっていうか相談なんだけどさ」

勇者「俺もそろそろ魔王討伐に行きた」

姫「駄目」

勇者「ええー……」
124: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/8(火) 22:42:56 ID:YJIMGSU7Oo
勇者「なんでー!?俺結構強くなったろ!」

姫「駄目なものはだーめっ」

勇者「理不尽だ!」

姫「貴族上がりのボンボンが魔王討伐なんてちゃんちゃらおかしいのよ!」

勇者「貴族関係ないし!」

姫「じゃあ泣き虫ゆーちゃん」

勇者「やめて超やめて」
125: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/8(火) 22:52:51 ID:RXwsYJSRA.
勇者「小さい頃の話を持ち出すのはほんとにやめて……」

従者「勇者さんは確か、姫様の幼馴染みでいらっしゃいましたよね」

姫「そう、遊び相手に連れてこられたくせに、泣き虫で全然相手にならなくて」

勇者「だから今は違うってば!」
126: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/8(火) 22:56:20 ID:RXwsYJSRA.
勇者「ていうか何で駄目なんだよ?俺のことまだ泣き虫だと思ってる?」

姫「流石にそれだけで止めたりしないわよ」

従者「否定はしないんですね」

勇者「ひでえ」
127: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/9(水) 17:44:44 ID:YJIMGSU7Oo
姫「あのねえ、勇者ひとり送り出すのに幾らかかるか分かってる?」

勇者「布の服と木の棒だけで放り出すくせに」

姫「今時そんなことしないわよ、精々いちばん安い鎧くらいあげるでしょ」

勇者「自分で持ってるやつの方が立派だよ!」
128: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/9(水) 17:53:45 ID:TKQezqcdlg
姫「そうね、主な内容は」

姫「送別会の費用に国内への伝達、関所の整備、ルート上の街に根回しして商品の流通と物価の調整とか」

勇者「そんなことまで!?」

姫「最初に放り出すだけと思ったら大間違いよ」ドヤッ

従者「俺らも帳簿を見て初めて知ったんですけどね」

姫「余計なこと言わない」
129: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/9(水) 18:00:12 ID:VwxIAK9LCQ
勇者「でも、そんな莫大な費用って訳でもないんだろ?」

姫「そうね、確かに舞踏会とか舞踏会とかパーティー諸々よりは遥かに些細な額だわ」

従者「まだ諦めてないんですか」

姫「でも今は、些細な額でも惜しいのよ」

勇者「……え?」
130: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/9(水) 18:07:50 ID:wPFCMzneoQ
従者「……という訳なんですが」

勇者「それやばいじゃん」

姫「やばいわよ、分かりきってるわ」

勇者「どーすんの?」

姫「だから魔王討伐やめさせてるの!」
131: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/9(水) 18:15:18 ID:QZJczNwe4M
勇者「じゃあさ、お金掛けたくないなら国が払わなければいいんじゃねえの?」

姫「は?」

勇者「俺が勝手に行っちゃうの」

姫「却下」

勇者「早いよ!」
132: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/9(水) 18:21:50 ID:wPFCMzneoQ
姫「あんた王国の面目潰す気?」

従者「国が支援するのが通例なんです」

勇者「そうなんだ?」

姫「あの小国はついに勇者ひとり送り出せなくなったなんて噂が立ったら……」ガクブル

勇者「姫、とりあえず落ち着け」
133: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/9(水) 18:25:01 ID:wPFCMzneoQ
姫「ともかくお金ないから無理!ごめん、諦めて!」

勇者「分かったけどさあ、どうせひき止めるなら」

勇者「あなたが心配だから!」ウルッ

勇者「くらいは言ってくれても良かったんじゃないの」

姫「誰がそんなこと」

勇者「うん、ごめん俺が悪かった」
134: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/10(木) 17:42:31 ID:wPFCMzneoQ
従者「姫様、本来の目的をお忘れではありませんか」

姫「あ、そうそう思い出したわ」

姫「ねえ勇者、資料室の場所知らない?分からなくなっちゃったのよ」

勇者「え、また?」

従者「また、とは?」

姫「要らないこと突っ込むんじゃないわよ」
135: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/10(木) 17:45:48 ID:BD5gqboGtA
勇者「この年で方向音痴がまだ治らないなんて、逆に奇跡的だよね」

姫「うるさいわね、さっさと案内してよ」

勇者「わあ横暴、従者さんも大変だねー」

従者「そうですね大変ですねー」

姫「あんたが言うか」
136: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/10(木) 17:48:56 ID:/h1J5f9sxg
勇者「資料室は西棟でしょ、行けば分かるから俺もついていこうか」

姫「頼むわ、こいつ使い物にならないのよ」

従者「それほどでも」

姫「突っ込まないわよ」

勇者「それにしても何で東棟の端なんかに来たのさ」

姫「出来れば聞かないでほしいわ」
137: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/11(金) 15:35:03 ID:TKQezqcdlg
勇者「……へえ、それで帳簿を」

従者「開催するなら、出来るだけ費用を削らなくてはなりませんから」

勇者「ふーん……?」

姫「何よ、不満そうな顔して」

勇者「俺を送り出すお金はないのに、お兄さんを迎えるお金はあるんだ」

姫「当然よ王族だもの」サラッ

勇者「グサッてきた」
138: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/11(金) 15:39:54 ID:vaPRAZHb9M
勇者「あーあ、旅に出る日を夢見て毎日の訓練も欠かさなかったのに」

姫「めんどくさい男ね」

従者「全くです」

勇者「それ従者さんまで言うー?あ、そこの角右だよ」

姫「あら、確かに見覚えがあるわ」

従者「無事到着ですね」
139: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/11(金) 15:49:37 ID:cdu7xIBYa.
姫「相変わらずの威圧感ね、ここは」

従者「俺帰っていいですか」

勇者「帰りたくもなるよなあ」

姫「つべこべ言わないで探すわよ」

勇者「俺も?」

姫「もち」
140: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/11(金) 16:00:22 ID:QZJczNwe4M
宰相「あれ、姫様もいらしたんですか」

姫「宰相さん!」

勇者「宰相さんお久しぶりです」

宰相「勇者さんも。お会いしない内にすっかりご立派になられて」

勇者「いやあ」

姫「お世辞よ?」

勇者「水差さないでよ!」
141: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/11(金) 16:05:16 ID:BD5gqboGtA
姫「舞踏会の費用について、もっと詳しい記録が見たくて来たのよ」

宰相「でしたら一緒ですね」

姫「あら、宰相さんも?」

宰相「いいえ、僕がというよりは……」

王子「なあ宰相、ここの衣装費って」

従者「!」ピクッ

王子「!」ハッ
142: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/12(土) 18:28:57 ID:cdu7xIBYa.
従者「これは王子、お久しぶりです」

王子「ああ久々だな、まだこの城に仕えていたのか」

従者「ええ、生憎とそれだけの能力は持ち合わせてございますので」

王子「その能力が正しく使われているかは甚だ疑問だがな」

従者「それはどのような意味で仰っているんでしょうね」

勇者「なにこの空気」
143: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/12(土) 18:29:43 ID:cdu7xIBYa.
王子「そのままの意味だが有能な使用人にも分からないほど難解だったか?」

従者「一国の王子が言葉の含みにも気付かれないとは将来が案じられますね」

姫「忘れてたわ、ふたりが折り合い悪かったの……」ハァ

宰相「出会ってしまったものは仕方ありませんね」グッタリ

姫「宰相さん帳簿見せて?」

宰相「はい、過去何年分ほどが御入り用ですか?」
144: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/12(土) 18:31:44 ID:TKQezqcdlg
勇者「へー、これが城の財政記録」

姫「あんた部外者なのに何で見てるのよ」

勇者「姫が呼んだんだろ?」

宰相「構いませんよ、政治に深く関わる類のものではありませんので」

勇者「だってさ」

姫「……もう」
145: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/12(土) 18:32:15 ID:TKQezqcdlg
姫「客に振る舞う料理代は、この分だと何割か削れそうだわ」

勇者「毎回大量に残ってたよな」

宰相「ええ、かなり」

姫「料理長さんも、もう作りすぎはやめてくれるでしょうね」

宰相「お見事でした」

姫「お世辞はいいのよ」

勇者「鼻の穴膨らんでるけど」
146: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/13(日) 08:59:35 ID:wPFCMzneoQ
姫「あとは……装飾費って何に使ったのかしら」

勇者「本当だ、何か特別な飾り付けとかしてたっけ?」

宰相「その時々によって、大きな美術品を置いていたようですね」

姫「ああ、そういえば……」
147: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/13(日) 09:03:45 ID:wPFCMzneoQ
姫「お兄様がいた最後の舞踏会では、大きな氷の彫刻が置いてあったわ」

勇者「その前は確か、色とりどりの炎が灯る燭台が大広間中にあって」

宰相「巨大噴水のときもありましたね」

姫「薔薇園に巨大な迷路を作ろうとした時は、完成が間に合わなかったみたいだけど」

勇者「王様半端ねえな」

姫「お父様らしい……」
148: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/13(日) 09:11:53 ID:CDn3vnH7O.
姫「やめさせようかしら」

宰相「しかし姫様、それを楽しみに舞踏会へやってくる国民も少なくありません」

勇者「うんうん、確かに綺麗だもんな」

姫「じゃあせめて費用を抑えて……」

勇者「そんなことできんの?」

姫「うーん……」
149: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/13(日) 09:18:05 ID:CDn3vnH7O.
宰相「こればかりは、直接聞いてみないと分かりませんね」

姫「そうね、でも誰に?」

宰相「王様が保護している芸術家の方に作らせているそうですが」

勇者「お抱えか、やるなあ」

姫「お父様そんなことまで……」
150: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/13(日) 09:28:45 ID:1Mn.ULmtuc
姫「美術品のことは置いておいて、他に何かできることはないかしら」

勇者「さっきお兄さんが何か言ってなかったか?」

宰相「そうでしたね、王子……」

王子「その耳は飾りか?目上の者に敬意を払えないような者が城に仕えるのが解せないと言ったんだが」

従者「ええ、自らの権威を振りかざし敬意を要求するような者に払う敬意は持ち合わせてございませんので」

勇者「だめだこれ」
151: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/13(日) 18:23:14 ID:YJIMGSU7Oo
姫「はいはい二人ともそこまでー」

王子「姫、だってこいつ」

従者「大人げないですよ王子」プーッ

王子「お前に言われたくはない」ムカッ

宰相「王子、そろそろ王様がお呼びのお時間ですが……」

王子「ああそうだったな、すぐに行こう」

宰相「すみません、僕達はこれで失礼致しますので」
152: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/13(日) 18:33:12 ID:QZJczNwe4M
姫「嵐が去ったわ……」

勇者「正確には片方だけどな」

従者「」ムッスー

姫「あんたも大概めんどくさいわよね」

従者「だってあいつ胡散臭い」

勇者「へ、へえ……」
153: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/13(日) 18:38:30 ID:1Mn.ULmtuc
宰相「王様から、帰還記念パーティーについてのお話があるそうです」

王子「父上か。あまり派手なことを企まないで貰いたいんだけどな」

宰相「それにしても珍しいですね、王子が誰かと口論なさるなんて」

王子「だってあいつ胡散臭い」ムスッ

宰相「は、はあ……」
154: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/14(月) 23:21:04 ID:YJIMGSU7Oo
王子「父上、母上」

王「ああ王子くん!早く話したかったんだよー」

王妃「わざわざ呼びつけてごめんなさいね」

王子「構いませんよ。それで、ご用件は」

王「そうそう、王子くんのお帰りパーティーなんだけどね」

王「今度こそ白タイツを履い」

王子「お断りします」キパッ
155: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/14(月) 23:23:07 ID:cdu7xIBYa.
王「なーんーでー!?王子くんずーっと嫌がってるよね!?」

王子「いーやーでーすー!何で俺がそんな歴史の遺物を履かなきゃいけないんですか!」

王「黒歴史を共有するためだよ!」

王子「父上も嫌なんじゃないですか!」

王妃「懐かしいわねえ、若かりし日のことが」

王子「母上も懐かしんでないで何とか言ってください!」
156: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/14(月) 23:24:26 ID:cdu7xIBYa.
王妃「正直私も履いてほしいわ」

王子「まさかの」

王妃「だって面白そうですもの」

王「ほら!」ドヤッ

王子「囲まれた……!」
157: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/14(月) 23:26:18 ID:cdu7xIBYa.
王子「ええとですね、真面目な話」

王「うん?」

王子「舞踏会や催し事の度に衣装を新調するのは、無駄なことかと思われます」

王子「費用削減のためにも、一度着たものでも着られるものは再び利用するべきです」

王妃「そうね、それで?」

王子「だから俺は普通に長ズボンを」

王「結局そこじゃん!」バーン
158: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/14(月) 23:28:16 ID:cdu7xIBYa.
王妃「でもねえ王子くん、仕立屋さんにもうお願いしちゃったのよ?」

王子「そんな、勝手に」

王「先手必勝だもんねー」ニヤニヤ

王妃「仕立屋さんは、それはもう大変乗り気だったわ」

王子「味方はいないのか」
159: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/14(月) 23:29:14 ID:cdu7xIBYa.
王妃「仕立屋さんは明日、城までみんなの計測に来るわ」

王「止めるんだったら直接止めることだねー」

王子「止められなかった場合……」

王「白タイツとかぼちゃパンツが届きます!」

王妃「着ないことも出来るかもしれないけれど、お洋服のお金は払うことになるわね」

王子「頭痛い」
160: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/15(火) 23:45:18 ID:RXwsYJSRA.
姫「それにしても、お兄様が言いかけていたのは何だったのかしら」

従者「何でも良いですよそんなん」

姫「あんたも協力しなさいよ」

従者「はーい」

王子「姫?少しいいかい」コンコン

姫「あら噂をすれば」
161: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/15(火) 23:48:14 ID:YJIMGSU7Oo
王子「なんだ、お前もいたのか」

従者「姫様付きの従者ですからー」

姫「ちょっと、喧嘩するなら余所でやってよね?」

王子「しないよ、姫に話があって来たから」

姫「話……?」
162: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/15(火) 23:49:02 ID:YJIMGSU7Oo
王子「さっき、舞踏会の収支表を見てたろう」

姫「お兄様が調べてらしたあの冊子ね」

従者「それが何か?」

王子「いやね、衣装代をなくせるんじゃないかと思ったんだよ」
163: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/15(火) 23:49:58 ID:YJIMGSU7Oo
王子「城内のことは姫に任せるって言っていたけれど、自分のための会でお金を使わせてしまうのが心苦しくてね」

姫「それで舞踏会の帳簿を?」

王子「ああ」

王子「そもそも、催し事の度に洋服を新調するのはおかしいだろう」

王子「以前に着たもので事足りるんじゃないか」
164: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/15(火) 23:50:25 ID:YJIMGSU7Oo
姫「良いわねお兄様、そうしましょうよ」

従者「今回は簡単にいけそうですね」

王子「ただな、父上達がもう発注してしまったらしくて、明日仕立屋が来るそうなんだ」

姫「それじゃあすぐに断らなくちゃ」

王子「その事で、姫に手伝ってほしいんだよ」
165: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/16(水) 16:21:36 ID:YJIMGSU7Oo
姫「え?どうして?」

従者「断るだけなら簡単でしょうに」

姫「わざわざお兄様と一緒に行く必要はないと思うのだけれど……」

王子「え、えーと……」
166: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/16(水) 16:22:48 ID:YJIMGSU7Oo
王子(やばい、どうするんだ俺!)

王子(ひとりで行ったところで、白タイツを嫌がっているだけだと思われるのが落ち)

王子(いや実際そうなんだけど!城内を仕切ってる姫が一緒にいた方が!)

王子(いっそ素直に協力を求めて……いや、でも)

王子「」チラッ

従者「ん?」ジロッ

王子(言えない……!!)
167: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/16(水) 16:24:54 ID:wPFCMzneoQ
王子「…………」ズモモモモ

姫「あの、お兄様。よく分からないけどそんな難しい顔をなさらないで」

従者「そうですよ不審者のようです」

姫「あんたが喋ると面倒臭くなるからやめて!」

姫「あの、私も一緒に断りに行くから」

王子「あっ、本当かい?」ホッ
168: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/16(水) 16:26:40 ID:wPFCMzneoQ
王子「ありがとう、それじゃあ明日頼むよ。午前中に来るらしいから」

姫「え、ええ」

王子「それじゃ、俺はこれで」ソソクサ

姫「お兄様、また明日」

従者「…………」

姫「何だったの今のお兄様……」

従者「……怪しいですね。」
169: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/17(木) 23:03:11 ID:BD5gqboGtA
姫「あ、芸術家さんに会いに行くのはどうしようかしら」

従者「仕立屋のところに行った後で良いんじゃないですか?」

姫「駄目よ、作り始めちゃってたらどうするの?」

従者「というか既に作り始めているのでは?」

姫「いやああああ装飾費が!」ガバッ
170: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/17(木) 23:03:56 ID:BD5gqboGtA
姫「い、一刻も早くに行くのよ!いいわね!?」

従者「落ち着いてください」

姫「これが落ち着いていられますか!」

従者「落ち着けっつったろ」

姫「あんた誰に向かって口利いてんの?」ギロッ

従者「落ち着きましたね」
171: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/17(木) 23:04:27 ID:BD5gqboGtA
従者「王子と仕立屋に会った後、すぐに芸術家に交渉へ行くということで構いませんね?」

姫「仕方ないけれど、構わないわ」

従者「でしたら今日はもうお休みになってください、お疲れでしょう」

姫「あら珍しい、意外と優しいこと言えるじゃない」

従者「姫様といい王妃様といい……」ハァ
172: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/18(金) 16:22:02 ID:RXwsYJSRA.
仕立屋「王様、この度は名誉な仕事を仰せ使いまして本当にありがとうございます」

王「またまた、そんな畏まっちゃってー。いつもありがとうね、今回も頼むよ」

仕立屋「お任せください、何せ今回は特別ですから……」

仕立屋「私が!あの王子様に!白タイツとかぼちゃパンツを履かせられるなんて!」キャーッ

王「あー……そのことなんだけどね?」
173: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/18(金) 16:22:56 ID:RXwsYJSRA.
仕立屋「……なるほど、王子様が」

王「まあ嫌がるのは分かりきってたんだけどねー」

仕立屋「王様も大概性格がお悪いですね」クスクス

王「お互いにねー」ププッ
174: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/18(金) 16:23:31 ID:RXwsYJSRA.
王「と言う訳だから、いつもの衣装室でよろしくね」

仕立屋「かしこまりました」

王「あ、でも王子くんの言い分に納得したらやめてあげてね」

王「俺、直接止められたらいいよって約束しちゃったから」

仕立屋「はい、納得できればですが」
175: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/18(金) 16:24:10 ID:RXwsYJSRA.
王子「仕立屋、少しいいかい?」

仕立屋「ああ王子様お会いしたかったです!計測にいらしたんですね」

王子「いや、そうじゃなくてね……」

姫「仕立屋さん、お久しぶりね」

仕立屋「姫様も!」キャーッ
176: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/18(金) 16:24:40 ID:RXwsYJSRA.
仕立屋「暫くお会いしないうちに、すっかり女性らしくなられて」

姫「もう!誉めても何も出ないわよ!」テレテレ

仕立屋「いえいえ、本当のことを言ったまでですので」

姫「仕立屋さんも相変わらずお綺麗なままよね」

仕立屋「嫌ですわ姫様、お口がお上手で」

王子「なにここ怖い」
177: 名無しさん@読者の声:2011/11/18(金) 16:50:00 ID:jlE40XSkYo
しえん!・ω・´
178: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/18(金) 23:40:15 ID:VwxIAK9LCQ
>>177
支援ありがとうございます!ヽ(´∀`*)ノ
正直に言うと支援という概念を忘れかけておりまして、何これこんなん読んでる人いるの?と聞きたくなってきた頃合いでしたから、余計に全身に染み渡りました。ええもうそれはがっつりと。
これを糧に、引き続き頑張って書いて行きますね!(`・д・´)
179: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/19(土) 12:00:24 ID:QZJczNwe4M
従者「姫様、早いうちに本題に入られたほうが」

姫「あっ、そうだったわ、忘れてた」

仕立屋「あら、次のドレスに何かご希望ですか?」

姫「いいえ、次のドレスは必要ないの。ねえお兄様」

王子「あっ、ああ」ビクッ
180: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/19(土) 12:00:55 ID:QZJczNwe4M
仕立屋「……姫様、それはどういう?私の作る洋服がご不満ですか?」

姫「いいえ、別にそういうことじゃないのよ!」

従者「経費の問題で、毎回新しく衣装を作らせるのはどうかという話になりまして」

姫「そう、せっかく仕立屋さんに作って貰ったドレスを一回しか着られないのは、寂しいでしょうって、お兄様も」

王子「えっ」
181: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/19(土) 12:01:30 ID:QZJczNwe4M
仕立屋「そうなんですか?」

王子「そ、そうだな、前に作って貰ったもので、気に入っていたのもあるし」

仕立屋「でも王子様、以前にお作りしたときよりも一回り大きくなられて、丈が合わないかと思われるのですが……」チラッ

仕立屋「……もし今回お作りしたら、それを何度も着て頂けるのですか!?」キラキラ

王子「誤解だ違う!」
182: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/19(土) 12:01:57 ID:QZJczNwe4M
王子「そういう意味で言ったんじゃ」

姫「」ゲシッ

王子「痛っ!?」

姫(お兄様も合わせてくださいよ)ヒソヒソ

王子(嫌だよ!)ヒソヒソ
183: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/19(土) 12:02:29 ID:QZJczNwe4M
王子(このままじゃ、悪夢の白タイツが実現してしまう……)

王子(しかも何度も履かされるぞこれは!)

王子(この場でそんな屈辱なことを言える訳がない)

王子(すぐに、俺が何とかしなきゃ……!)

従者(王子の顔おもしれえ)
184: 名無しさん@読者の声:2011/11/19(土) 20:23:56 ID:kwoIR95q7M
私怨がほしいのかね(。-∀-)
しょうがないなーちょっとだけだよ
つCCCCCC
185: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/19(土) 22:00:53 ID:cdu7xIBYa.
>>184
勘違いしないでよね、べ、別に欲しいなんて言っtすいません欲しかったです。
ちょっとと言いつつその量www
ありがとうございましたヽ(´∀`*)ノ
186: 名無しさん@読者の声:2011/11/19(土) 22:43:41 ID:rja6giOJWA
面白いです(*´∇`*)
励みになるなら、支援ヽ(・∀・)ノC
187: 名無しさん@読者の声:2011/11/20(日) 00:10:37 ID:FSOdBrpgVY
もっと評価されてもいいと思う支援。。。C⊂(・ω・ )ソッ…
188: 名無しさん@読者の声:2011/11/20(日) 03:58:09 ID:dTwe0kp1gI
イツモミテルヨ…
しえん!・ω・´
189: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 19:24:55 ID:wPFCMzneoQ
ひええええなんかすみません、こんなに沢山支援ありがとうございます!((;゚Д゚))))
これであと100レスは頑張れるよ、俺……!

>>186
ありがとうございます、そのレスが励みになりまくりです(*´Д`)
これからも面白いって言って頂けるよう頑張りますね!(`・ω・´)

>>187
勿体ないくらいのお言葉をありがとうございます!(*ノωノ)
読んでるSSとか、ランク予想なんかにもちらほら名前を出して頂いて、それだけでも嬉しいのに、本当に有難いです……(´ω`*)

>>188
ミラレテイルダト…<●><●>ジッ
ありがとうございますヽ(´∀`*)ノ
190: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 19:29:05 ID:RXwsYJSRA.
なんか嬉しかったから今日の更新は大奮発しちゃいます予定です(*´艸`)
書き溜めが消える?知るか!アドリブ上等いくらでも書いてやらあ!(ぇ
ご飯食べたら投下しに来ますね、ではでは(*・∀・)ノシ
191: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 21:16:29 ID:RXwsYJSRA.
従者「……サイズが変わっていて、新しく作らなくてはいけない人の分だけを作るということはできませんか?」

王子「余計なことを」チッ

姫「お兄様何か言った?」

仕立屋「それでも問題はないように、思われるでしょうが」
192: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 21:18:22 ID:vaPRAZHb9M
仕立屋「考えてみてください」

仕立屋「国民が舞踏会に行って、いざ城に入って」

仕立屋「そこで王族の皆様が、以前と同じ服を着ていたら、どう思うでしょう」

姫「それは……あまり喜ばしくないわ」

従者「まあ、そうですよね」
193: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 21:21:42 ID:vaPRAZHb9M
仕立屋「しかも王様お抱えの仕立屋である私が衣装を作らせてもらえないとなると……」

仕立屋「いやああああああお願いです!作らせてくださいいいいいい」ガシッ

王子「うわっちょちょちょっと落ち着け!放せ!」ジタバタ

従者「面白い人ですね」

姫「ほんとにねえ」
194: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 21:24:53 ID:BD5gqboGtA
王子「すごい力だな……」ボロッ

仕立屋「すみません、ちょっと取り乱してしまいまして」テヘッ

従者「新しく作ると費用がかかり」

従者「かと言って同じものを着回すのは問題になる」

姫「じゃあどうしろって言うのよ」

王子「……別に矛盾はしないんじゃないか?」
195: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 21:28:49 ID:CDn3vnH7O.
姫「お兄様、何かあるの?」

王子「新しく作らずに、見た目を変えれば良いんだろう」

従者「それはつまり……」

仕立屋「以前にお作りした衣装を、仕立て直せと?」
196: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 22:11:43 ID:1Mn.ULmtuc
姫「確かにそれなら……衣装代がなくなる訳ではないけれど」

王子「可能かい?」

仕立屋「ええ、できると思いますが……」

姫「なら良いじゃない!」
197: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 22:14:14 ID:RXwsYJSRA.
仕立屋「ええと、仕立て直すなら、同じものだと分からないようにしないと」

従者「そんなこともできるんですか?」

仕立屋「ええ、普通の洋服屋にはきっと難しいでしょうけれどね」

姫「そうなの?すごいわ仕立屋さん!」

仕立屋「それほどでもありませんわ!」ドヤッ
198: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 22:42:42 ID:vaPRAZHb9M
王子「なら決まりだな」

姫「そうね、良かったわ」

仕立屋「あら、王子様はまだお話することが、たーくさん残ってますわよ?」ジリッ

王子「……え?」ジリッ
199: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 22:48:00 ID:YEY72tQYGM
仕立屋「王様から直々に依頼をお受けしましたもの、慎重に決めないと」

王子「いや仕立屋、話せば分かる、一旦落ち着こうか」

仕立屋「あの形なら、丈を伸ばす必要がなくなりますわね」

従者「何の話ですか?」

仕立屋「ふふ、王子様はこのパーティーで白タイ」

王子「わ――っ!?」
200: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 22:49:21 ID:YEY72tQYGM
姫「白タイ?結婚式みたいねえ」

従者「他にも何か言いかけてませんでしたか」

王子「細かいことはいいから!姫、この後何か予定があったんじゃないのか」

仕立屋「まあ王子様、詳しいお話は全身くまなく測定しながらに致しましょう」ズルズル

王子「という訳だ!来てくれてありがとうな、姫、また!」ズルズル
201: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/20(日) 22:49:57 ID:YEY72tQYGM
ズルズルズルズル

姫「……何だったのかしら」

従者「面白いネタを逃した気がします」

姫「同感よ」

従者「気が合いますね」
202: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/21(月) 23:04:31 ID:VwxIAK9LCQ
従者「さて、次の課題に移りましょうか」

姫「そうよ芸術家さん!早く会いに行かなきゃ」

従者「王様が保護なさっている芸術家は、城内で生活しているそうですが」

姫「え、どこ?」

従者「さあ」

姫「……また、探すの?」ヒクッ
203: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/21(月) 23:06:22 ID:wPFCMzneoQ
姫「誰か居場所を知ってそうな人……」

従者「北棟の外れだそうですよ」

姫「珍しく協力的じゃない?」

従者「さて、無事に姫様は辿り着けるのでしょうか」

姫「やっぱり案内はしないのね」
204: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/21(月) 23:07:50 ID:wPFCMzneoQ
姫「……遠すぎる」ゼエハア

従者「辿り着くのにどんだけ掛かってるんですか」

姫「だって道分からないんだもの!」

従者「思わず道順教えたくなりましたよ」

姫「教えてよ!」
205: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/21(月) 23:08:57 ID:RXwsYJSRA.
姫「で、ここが芸術家さんの部屋?」

従者「そのように聞いていますが」

姫「とりあえずノックを……」

ウワアアアアアァァァァ…

ガシャンッ グシャグシャ バシッ

姫「…………」

従者「さあ姫様早く」

姫「あんたは鬼か」
206: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/22(火) 13:30:46 ID:CDn3vnH7O.
姫「げ、芸術家さん?今少し、大丈夫かしら?」コンコン

ズベッ ガシャーンッ バサバサバサッ

シン……

従者「……死にましたね」

姫「いやあああっ芸術家さん!芸術家さんっ!お願い返事して!無事ですかーっ!?」ガンガン
207: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/22(火) 13:35:33 ID:TKQezqcdlg
芸術家「いやあ、すみません。少し部屋が汚くてね、ははは」ボロッ

姫「生きてて良かったわ……」ホッ

従者「どんな部屋なんですか」

芸術家「いや、お恥ずかしい。わざわざ姫様が訪ねてくださったのにこんな有り様では」ニコニコ

芸術家「酷い状態ですが立ち話も何ですから、よろしければどうぞ、中に」
208: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/22(火) 13:38:02 ID:1Mn.ULmtuc
姫「うっわあ……」タジッ

従者「よくもここまで散らかしましたね」

芸術家「あはは、王様に住まわせて頂いてるのにこの使い方じゃあ、申し訳が立ちませんねえ」

姫「絵の具や粘土はまだ分かるわ、でも何で部屋の隅に枯山水が?」

従者「ベッドに生えている茸は作品ですか、本物ですか?」

芸術家「あ、あはははは……」
209: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/22(火) 13:47:47 ID:TKQezqcdlg
芸術家「いやだなあ、情けない。つい、作りたいものを作らせてもらえる環境にいると、こう、創作意欲が溢れだして」

従者「そこにある猫缶の山も作品ですか?」

芸術家「いや、最近迷い込んだんだけれどね、彼女の存在自体がまさに芸術ですよ」

姫「餌付けしてるだけじゃん!」
210: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/23(水) 14:12:33 ID:cdu7xIBYa.
従者「そろそろ本題に入られては如何でしょうか」

姫「ええ、そうね」コホン

芸術家「はい、姫様がこちらにいらっしゃるなんて……一体何でしょうか」ニコニコ

姫「お兄様の帰還パーティーに飾る作品は、もう何か考えているのかしら?」

芸術家「…………」ピタッ
211: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/23(水) 14:15:31 ID:YEY72tQYGM
芸術家「うわあああああすいません!何としてでも納期には間に合わせますので申し訳ございません!」ガシャーン

姫「えええちょ、落ち着いて!」アタフタ

芸術家「ごめんなさいごめんなさい!何も決まってなくてごめんなさい!毎回ギリギリでごめんなさい!」ガシャンッバサバサ

姫「じ、従者ぁ」

従者「仕方ないですね」ヨイショッ
212: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/23(水) 14:22:45 ID:/h1J5f9sxg
従者「えい」ビシッ

芸術家「はうっ」ピスッ

従者「……王宮秘伝武術・でこぴん」

姫「普通のでこぴんよね?」

従者「こういうのは実力行使に限るんです」
213: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/23(水) 14:30:37 ID:VwxIAK9LCQ
芸術家「いや、あはは。取り乱しましてすみません」

姫「できれば前触れくらいは欲しかったわ……」

芸術家「昔から、我を忘れてしまいがちでしてねえ」

従者「大体どんな人か分かりましたよ」

姫「ほんとにねえ」
214: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/23(水) 14:50:02 ID:YEY72tQYGM
姫「でも好都合だわ」

芸術家「はて、何のお話でしょう」

姫「あのね、私たちは別に完成を急かしに来たんじゃないのよ」

従者「ええ、むしろ決まっていなくて安心しました」

姫「今回の作品の、製作費を抑えてほしいの」
215: 名無しさん@読者の声:2011/11/23(水) 15:46:24 ID:rja6giOJWA
壁|ミ♪(・ω・)ノ{いつも楽しく読んでます)
壁|(/-ω-)/⌒C{支援!)
壁|ミ☆サッ......C
216: 名無しさん@読者の声:2011/11/24(木) 14:41:21 ID:CY1QV5Vlpw
更新楽しみにしてる

(=゜-゜)<支援
217: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/24(木) 17:48:37 ID:QZJczNwe4M
>>215
壁|ω`;){なんですって嬉しい!
壁|ω`*){それはありがとうございます
壁|(((*´ω`)っC ソッ…

>>216
またまた嬉しいお言葉を……(゚Д゚*≡*゚д゚)
支援ありがとうございます!今からまた更新しますねヽ(´∀`*)ノ
218: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/24(木) 17:51:20 ID:1Mn.ULmtuc
芸術家「……製作費を?」

姫「ええ。難しいかしら」

芸術家「そう言われましても、出来るとも出来ないとも僕には」

従者「それは、どういう?」

芸術家「正直に申し上げますと、製作費なんて気にしたことがないんですよ」
219: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/24(木) 17:53:15 ID:RXwsYJSRA.
芸術家「自惚れるようですが、王様は大層僕の作品を気に入ってくださっていて……」

姫「そうよね、毎回芸術家さんの作品だもの」

従者「城に住まわせるくらいですしね」

芸術家「はは、改めて思うと恐縮だなあ」

芸術家「使いたい素材や道具は、いつだって最高級のものを十分なだけ用意して貰えました」
220: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/24(木) 17:56:22 ID:YEY72tQYGM
従者「……その結果が、この部屋と」

芸術家「あは、そういうことになりますねえ」

姫「もしかして、美術品の出費にこのお金も入ってたのかしら」

従者「さあ、それはどうだか」
221: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/24(木) 18:17:41 ID:/h1J5f9sxg
芸術家「王様は惜しみなく僕を育ててくださいました」

芸術家「もし僕に出来ることがあるのなら、全力で協力するつもりです」

姫「そう言われても、どうやったら製作費を減らせるのかは私たちにも」

従者「なるべく材料を買わないでほしいのですが、そのせいで支障が出てはいけません」

芸術家「……買わなければ、良いんですか?」
222: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/24(木) 18:18:05 ID:/h1J5f9sxg
芸術家「買わないようにすることなら、或いは出来るのかもしれません」

姫「本当に?」

芸術家「はい。ええと要するに、あるもので作れば良いんでしょう」

芸術家「幸いにもこの部屋には、たくさんの材料がある」

芸術家「この部屋にあるものだけで作品を作れば、姫様の仰ることが可能でしょうか」
223: 名無しさん@読者の声:2011/11/24(木) 22:59:42 ID:g/4JcTXXFc
しーえーん!!
ヽ(*´∀`)ノ
224: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/25(金) 00:22:02 ID:/h1J5f9sxg
>>223
支援ありがとーございまーす!
がーんばーるぞー!!
ヽ(´∀`*)ノ
225: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/25(金) 20:49:34 ID:BD5gqboGtA
従者「それは現実に出来ることなんですか?」

芸術家「はい、ある程度大きなものを作るには材料が足りませんが……そうだ、組み合わせれば」

芸術家「素材はこの中だと……いや、でもそれだと見映えが……いっそコンセプトを変えて」ブツブツ

姫「……出来そうね?」

従者「そうですね」
226: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/25(金) 20:50:14 ID:BD5gqboGtA
姫「芸術家さん、芸術家さん」

芸術家「あっ、すみません姫様、つい夢中になってしまって」ハッ

姫「それは構わないけれど、お願いして良いかしら?」

芸術家「はい、慎んで承ります!」

従者「決まりですね」
227: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/25(金) 20:50:41 ID:BD5gqboGtA
姫「……終わった」

従者「大変な1日でしたね」

姫「全くよもう……早く帰りましょう」

従者「道分かるんですか?」

姫「その辺の使用人に聞きながら行くわ」
228: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/25(金) 20:51:09 ID:YJIMGSU7Oo
仕立屋「ああっ、姫様!」

姫「あら仕立屋さん、どうしたのこんな場所で」

姫「それと、お兄様も……」

王子「」グッタリ

従者「根こそぎ気力を搾り取られた感じですね」

姫「何があったの……」
229: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/25(金) 20:51:33 ID:YJIMGSU7Oo
仕立屋「うふふ、私ったら本当に抜けてて、皆さんのサイズの測定に来たのに忘れちゃってたんですよ」

姫「そういえば急いで帰ってしまったものね……ごめんなさい、探したかしら」

仕立屋「いえいえ構いませんよ!今から致しても宜しいですか?」

姫「ええ、構わないわ」
230: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/26(土) 20:38:01 ID:RXwsYJSRA.
姫「という訳だから従者、先に帰ってくれていいわよ」

従者「了解しました。そこのボロ布はどうしましょうか」

王子「ボロ布って」

姫「送り届けてやってくれる?」

王子「姫まで荷物扱い?」
231: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/26(土) 20:44:03 ID:RXwsYJSRA.
仕立屋「はい、では真っ直ぐに立ってください」

姫「ええ、腕は」

仕立屋「そのままでよろしいですよ」

姫「面倒ね……」

仕立屋「まあ、我慢なさってくださいな」
232: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/26(土) 20:50:33 ID:YJIMGSU7Oo
仕立屋「それにしても、姫様も王子様も、とても気さくな方ですよね」

姫「そうかしら?普通だと思うのだけれど」

仕立屋「いいえ、とても親しみやすくていらっしゃいます」

仕立屋「特に王子様なんて弄り甲斐があって本当に素敵……!」キラキラ

姫「は、はあ」
233: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/26(土) 20:52:43 ID:YJIMGSU7Oo
姫「一体お兄様に何をしたの?」

仕立屋「こればかりは、姫様であっても申し上げられませんねえ」

仕立屋「秘密にするって、王子様と約束してしまったんですよ」

姫「お兄様がねえ……」

仕立屋「今回は諦めてくださいな」

姫「仕方ないわ」フゥ
234: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/26(土) 20:53:41 ID:YJIMGSU7Oo
仕立屋「姫様の方こそ、いつまでも秘密になさっていると、王様や王妃様が心配なさいますよ?」

姫「秘密なんて、あったかしら?」

仕立屋「またまた、勿体振らないでくださいよ」ニヤニヤ

仕立屋「勇者様とのお付き合いは、どこまで行かれたんですか?」

姫「…………は?」ポカン
235: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/27(日) 15:09:45 ID:CDn3vnH7O.
仕立屋「あら面白い顔をなさって」

姫「いやいやいや、だって待って何で私が?あいつと?」

仕立屋「幼馴染みでいらっしゃると聞きましたわ。今でも仲睦まじくお話なさってるとも」

姫「いやそれくらいでデキてることにされても」

仕立屋「違うんですか?」

姫「違うわよ!」
236: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/27(日) 15:10:33 ID:CDn3vnH7O.
仕立屋「ですが先日も、寄り添いあって東棟の廊下を歩いてらしたと」

姫「従者もいたわよ」

仕立屋「三角関係ですか!」

姫「ええと仕立屋さん、一旦落ち着きましょうか」
237: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/27(日) 15:11:03 ID:CDn3vnH7O.
仕立屋「恋人でいらっしゃらないんですか……」ショボン

姫「当然よ、何でそうなったのか不思議だわ」

仕立屋「だってお似合いです」

姫「感性を疑うわ……」
238: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/27(日) 15:11:32 ID:CDn3vnH7O.
仕立屋「でも姫様、今度のパーティーでも勇者様と踊られるのでしょう」

姫「まあ恒例行事というか……他に相手もいないし」

仕立屋「勇者様は何色がお好きでしたっけ」

姫「あいつは確か青が……って待って仕立屋さん、そのメモは何?」

仕立屋「では、いつぞやの水色のドレスを仕立て直しましょう!」

姫「なんかもう手に負えないわ」
239: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/28(月) 21:15:44 ID:YJIMGSU7Oo
姫「はー……やっと終わった」

姫「お兄様は挙動不審だし、従者は案内してくれないし」

姫「芸術家さんはその……あれだし、仕立屋さんは変に勘繰るし」

姫「……私が勇者と、ねえ」

姫「正直よく、分からないのよ」
240: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/28(月) 21:16:18 ID:YJIMGSU7Oo
従者「おはようございます姫様、何かやけにやつれてますね?」

姫「うっさいわね、忙しかったからよ」

従者「そうですか大変ですね、でも残念なことにますます忙しくなりますよ」

姫「はいはい、なあに?」

従者「詳しくは王様からお話になるそうどす」
241: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/28(月) 21:16:42 ID:YJIMGSU7Oo
姫「うー、何はともあれ衣装費と装飾費が減りそうで良かったわ」

従者「それは何より」

姫「料理代も例年よりは減りそうだし、料理長さんにお願いするまでもないかしら」

従者「一応釘は刺された方が良いかと思いますが」

姫「まあ、念のためそうしましょうか」
242: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/28(月) 21:17:19 ID:YJIMGSU7Oo
姫「お父様」

王「姫ちゃん、よく来てくれたねえ」

姫「はあ。今回は何ですか?」

王「まあまあとぼけないでよ。従者くん」

従者「御意」ガシッ

姫「え?何?なんで私が捕まってるの?ちょ、従者ー!」ガッチリ
243: 名無しさん@読者の声:2011/11/28(月) 21:22:57 ID:nqXimMOCzg
>>240
従者が…京都の人に…
244: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/29(火) 20:19:19 ID:BD5gqboGtA
>>243
  ( ゚д゚)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/   /
     ̄ ̄ ̄

  (゚д゚)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/   /
     ̄ ̄ ̄

  ( ゚д゚)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/   /
     ̄ ̄ ̄

  (゚д゚)
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/   /
     ̄ ̄ ̄
誤字ェ……すいませんありがとうございます痛恨のミス!(ノд`)゚.・。
でも方言好きだからおk(`・ω・´)

今日の投下は、日付変わる前には来ますね(*゚ω゚)ノシ
245: 名無しさん@読者の声:2011/11/29(火) 21:14:25 ID:gdsRLqBUn.
>>244
こっちみんな
こっちみんなwww

見つけたときちょっと萌えたし笑ったよw

待ってるお!C
246: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/29(火) 23:31:57 ID:BD5gqboGtA
>>245
笑える誤字なら結果オーライ……か?w
支援ありがとうございました!ヽ(´∀`*)ノ

では投下していきますねヾ(`・ω・´)ノ
247: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/29(火) 23:33:47 ID:/h1J5f9sxg
王「今回こそ!みっちり踊りの練習をしてからパーティーに臨んでもらうからね!」ドヤァ

姫「はあ!?冗談じゃありませんよ何でそんなこと!」ジタバタ

従者「毎回の踊りが酷いからじゃないですか」ガッチリ

姫「あんたも共犯か!」
248: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/29(火) 23:34:29 ID:/h1J5f9sxg
姫「だって下手なものは下手なんだから仕方ないじゃないですか」

王「練習次第でどうにでもなるよ?」

姫「費用削減に忙しいんです、練習してる暇なんてありません!」

従者「俺がお手伝いしてるじゃないですか。さあ行きますよ」ズルズル

姫「いーやー!無理ー!!」ズルズルズルズル
249: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/29(火) 23:35:30 ID:VwxIAK9LCQ
姫「ううっ、酷いわ騙すなんて」

従者「たまには王様の言うこともお聞きになったらいかがですか」

姫「そんなあ。折角料理長さんのところに釘刺しに行こうと思ってたのに」

従者「俺が代わりに行ってきますよ」

舞踏家「まあまあ姫様、上達したらすぐに解放して差し上げますから」

姫「……仕方ないわ」
250: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/30(水) 22:36:11 ID:TKQezqcdlg
勇者「うー、いつ来ても城って桁違いに大きいよな」

料理長「おお?そこにいるのは勇者くんじゃないか?」

勇者「あっ、料理長のおじさん久しぶり。相変わらず良いお腹してんねー」

料理長「はっはっは、それほどでも」
251: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/30(水) 22:37:49 ID:cdu7xIBYa.
料理長「いやはや、それにしても勇者くん、今日はどうしたんだい?」

勇者「あーなんかさ?姫が色々やってるらしいから、様子見に」

料理長「ああ、私のところにもいらしたよ。お陰で価値観が一気に変わったね」フフン

勇者「何やったんだ姫のやつ」
252: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/30(水) 22:38:25 ID:cdu7xIBYa.
勇者「そうだおじさん、ちょっと小腹が空いててさ、何か余ってたら分けてよ」

料理長「懐かしいことを言うね。カップケーキか何かで良いかい?」

勇者「やった、ありがとう」

料理長「よし、じゃあ厨房だな。勇者くんも来るだろう?」

勇者「もち」
253: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/30(水) 22:38:55 ID:cdu7xIBYa.
勇者「それにしても、そんな懐かしいこと言ったか?」

料理長「ああ懐かしいさ!姫様とふたりで、よくおやつをねだりに来ただろう」

勇者「そういえばなんとなく……」

料理長「勇者くんも小さい頃は可愛かったなあ」

勇者「おじさんショタコン?」

料理長「どうしてそうなった」
254: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/11/30(水) 22:39:35 ID:cdu7xIBYa.
勇者「あ、そうだ姫!俺、姫に会いに来たんだよ」

料理長「忘れてたのかい」

勇者「おじさん、姫どこにいるか知らねえ?」

従者「姫様なら広間にいらっしゃいますよ」

勇者「うお、従者さん」

料理長「気配がなかった……」
255: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/1(木) 22:58:28 ID:4SVeeV6rxk
従者「すみません、姫様をお探しだということでしたから」

料理長「でも、従者さんがこちらにいらっしゃるのも珍しい」

従者「ああ、そのことなんですが、姫様から料理長さんにお願いが」

勇者「姫が?」

従者「はい」
256: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/1(木) 23:01:54 ID:B7K.t.o2jo
従者「パーティーでの料理は、どうか来客数に見合った常識的な量にして貰いたいと」

料理長「ああ、そういうことなら問題ありませんよ。元からそのつもりです」

勇者「え、まじで?おじさんが?」

料理長「勇者くん、料理に大切なのは量やインパクトではない。美しさだよ」ドヤァ

従者(よく言うよ)
257: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/1(木) 23:02:26 ID:B7K.t.o2jo
従者「では、よろしくお願い致します」

勇者「あ、従者さん姫のとこに帰るの?俺もついてっていい?」

従者「構いませんが、姫様は踊りの練習中ですよ」

勇者「踊りぃ?あいつが?」ププッ

従者「お気持ちはものすごく分かりますが笑わないで差し上げましょうよ」
258: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/2(金) 21:33:12 ID:/5FRZFy.DE
料理長「勇者くん、姫様のところに行くなら差し入れ持ってきな」

勇者「そうだ、カップケーキ!」

料理長「従者さんもどうですか?」

従者「ありがとうございます」

料理長「今包むからな、待ってろよー」

勇者「はーい」
259: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/2(金) 21:34:01 ID:/5FRZFy.DE
勇者「勇者はカップケーキをてにいれた!」ドヤッ

従者「良かったですね」

勇者「従者さんノリ悪くね?」

従者「突っ込み担当ですから」

勇者「えっ」

従者「えっ」
260: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/2(金) 21:34:28 ID:/5FRZFy.DE
勇者「にしても、何でいきなり練習?いっつも逃げててぶっつけ本番だったじゃん」

従者「見かねた王様が強制連行なさったんですよ」

勇者「へ?あの温厚な王様が」

従者「正確に言いますと俺ですが」

勇者「はあ」
261: 名無しさん@読者の声:2011/12/2(金) 21:49:43 ID:UDMvEll2x.
頑張って(^^)

支援
(*´∇`*)つC
262: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/3(土) 14:36:55 ID:XXnWtGX0ys
>>261
書き溜めがみるみるうちに消えてますが、頑張りまつ(`・ω・´)
支援ありがとうございました!ヽ(´∀`*)ノ
263: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/3(土) 14:38:29 ID:/UGBUXLJ6g
従者「こちらの広間ですね」

勇者「さんくす従者さん。姫ー……」カチャ

姫「あああごめんなさい大丈夫!?」

舞踏家「いえ……これしきで……」ジンジン

姫「足が結構腫れてるわよ!?」

舞踏家「さあ姫様……続きを……」ジンジン

勇者「やっぱり」
264: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/3(土) 14:39:06 ID:/UGBUXLJ6g
勇者「ひーめー」

姫「あれ勇者?従者と一緒だったの?」

従者「姫様をお探しでしたのでお連れしました」

勇者「とりあえず休憩にしねえ?舞踏家さんも疲れてるっぽいし」

舞踏家「」ゲッソリ

姫「ごめんなさい……」シュン
265: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/3(土) 14:40:05 ID:/UGBUXLJ6g
勇者「料理長のおじさんからカップケーキ貰ったよー」

姫「わあ本当?ねえ舞踏家さん、いいかしら」

舞踏家「召し上がったらまた続きにしますが、よろしいですね?」

従者「ビシバシ鍛えてやってください」

姫「うるさい元凶め」
266: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/3(土) 14:40:40 ID:/UGBUXLJ6g
姫「染み渡る……」ジーン

勇者「やっぱ美味いよなあ」モキュモキュ

舞踏家「自分まで頂いてしまって良かったのでしょうか」モグモグ

従者「良いんじゃないですか。あ、姫様2個目取ってください」

勇者「従者さんかっけー」

姫「あんたは遠慮を覚えなさい」
267: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/4(日) 20:06:26 ID:7l16fIcLfY
舞踏家「それにしても、長年やってらっしゃるのに、どうして姫様は上達なさらないんでしょうか」

従者「姫様は異常にどんくさいですから」

勇者「木登りとかは上手かったのに、謎だよなあ」

舞踏家「木登り……?」

姫「気にしないでちょうだい」
268: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/4(日) 20:06:59 ID:7l16fIcLfY
姫「でも勇者と踊るときは私もなかなかよね?」

舞踏家「そうなんですか?」

勇者「あー……あれは何て言うか、ちょっと違うと思うんだけど」

姫「どこが違うのよ、足も踏まないし転ばないじゃない」

従者「それは少し見てみたいですね」

姫「望む所よ!ちょっと見せてやりましょう勇者!」

勇者「俺とばっちり?」
269: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/4(日) 20:07:22 ID:7l16fIcLfY
勇者「はい、いくよー。じゃあせーのっ」

姫「」コケッ

勇者「」サッ

姫「」カクン

勇者「」グイッ

舞踏家「踏まれそうになる足をことごとく直前で避けてらっしゃる……!?」

従者「転びそうになる姫様の体勢まで立て直してますね」
270: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/4(日) 20:07:43 ID:7l16fIcLfY
舞踏家「確かに足も踏んでませんし転んでませんが……」

従者「勇者さんが上手いだけですね」

舞踏家「いえ、どちらかと言うと勇者様は慣れと先読みと反射神経でなさっているような……」

従者「ほとんどスポーツですか」
271: 名無しさん@読者の声:2011/12/5(月) 21:53:38 ID:X7SBxhlvQ.
(´∀`)っC
272: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/5(月) 23:20:16 ID:YW2VpLC90c
>>271

(´∀`)っ【ありがとう】トスッ

(っ´∀`)ゴソゴソ

(´∀`)っ【>>1からの愛】ソッ…
273: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/5(月) 23:21:30 ID:YW2VpLC90c
姫「どうよ!」ゼエハア

従者「姫様はどや顔できませんからね」

勇者「全くだよ……」ハァ

舞踏家「勇者様、お見事でした」

姫「何よ、私じゃないの?」

従者「当たり前です」
274: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/5(月) 23:22:14 ID:YW2VpLC90c
従者「これを王様に報告しなければいけないんですか……」

姫「待って、そんな話聞いてないわよ」

従者「言ってませんもん」

姫「そんなあ!お父様にこんな恥さらしをするなんて……」

舞踏家「あ、自覚してらしたんですね」

勇者「今なにげ酷いこと言った!」
275: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/5(月) 23:23:36 ID:4SVeeV6rxk
姫「こうなったら何か打開策を……!」

従者「そんなのあるんですか」

姫「考えるのよ!」

勇者「練習した方が早いんじゃないの」

姫「何年やっててこれだと思ってるの」

勇者「あ……そうだったな……」
276: 名無しさん@読者の声:2011/12/6(火) 00:30:11 ID:A1Mh8IgM/w
姫可愛い……
しえん!・ω・´
277: 名無しさん@読者の声:2011/12/6(火) 15:30:10 ID:3EPWydNmto
これはやっぱり面白いな。

つC
278: 1 ◆xXC7.dNnEA:2011/12/8(木) 07:33:21 ID:4SVeeV6rxk
ご無沙汰してます、すみません(´・ω・`)
ちょっと暫く来られなくなります。
支援頂いた矢先に申し訳ない。
諸々が片付いたらまた再開して、ちゃんと毎日更新に戻りますので、どうか暫くお待ちください……m(_ _*)m

>>276
かか可愛いですって(゚Д゚*≡*゚д゚)
ありがとうございます、姫も喜んでると思いますツンデレしながら(ぇ
支援感謝です(´∀`*)

>>277
なんて光栄なお言葉……(`;ω;´)ブワッ
更新再開したら、ご期待に沿えるようまた頑張っていきますね(´ω`*)
支援ありがとうございました!
279: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/12(月) 22:26:47 ID:/5FRZFy.DE
更新再開あげ!ヽ(`Д´メ)ノヤッタルデー

暫くお休みしてしまって、大変失礼致しました……m(*。 。)m
今日はちょっと多めに更新していきます(´∀`*)
280: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/12(月) 22:28:54 ID:YW2VpLC90c
舞踏家「では、勇者様に手伝って頂いたらいかがでしょう」

勇者「俺が?」

舞踏家「はい、姫様の癖をよくご存知なようでしたから……」

姫「それ良いわね。お願い勇者!」

勇者「一応聞くけど拒否権は?」

姫「ない!」
281: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/12(月) 22:30:30 ID:/UGBUXLJ6g
勇者「全くもーしょーがないなー」

従者「何だかんだやるんですね」

勇者「姫に逆らうと怖いからねー。あ、普通にさっきのやればいいの?」

舞踏家「色々とお聞きすることになりますが」

姫「よし勇者やるわよ!」

従者「…………」
282: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/12(月) 22:33:09 ID:YW2VpLC90c
従者「それでは、俺は一旦失礼してもよろしいですか?」

姫「ええ、構わないわ。いても何にもならないし」

勇者「従者さん帰っちゃうの?薄情者ー」

姫「私がたっぷり相手してあげるわよ」

勇者「いや、どっちかって言うと相手してあげるの俺だからね?何で上から目線?」

従者「また後で伺いますから」
283: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/12(月) 22:36:27 ID:/5FRZFy.DE
従者「えっと、帳簿帳簿……っと」

従者「まーた姫様机の上に放り出したままで……」

従者「……じゃなかった。早く目を通さないと」ハッ

従者「姫様は目の付け所が甘過ぎますよ……」パラパラ
284: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/12(月) 22:39:04 ID:zfaQV.HN9M
姫「おーわったーっ!!」

舞踏家「お疲れ様でした」

勇者「何で姫より俺が疲れてんだろう」グッタリ

舞踏家「本当にお疲れ様でした……!」ウルウル
285: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/12(月) 22:44:37 ID:4SVeeV6rxk
姫「あーもう何でいきなり……」

勇者「それはこっちの台詞だよ!」

舞踏家「ええ、確かに姫様はずっと練習を逃げてらしたのに」

姫「逃げられなかったのよ……」

勇者「年貢の納め時って?」ニヤニヤ

姫「知らないわよ」
286: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/12(月) 22:46:25 ID:zfaQV.HN9M
従者「お疲れ様です、姫様」

姫「従者。遅いわよ来るのが」

従者「すみません、あまりに休憩所のソファの寝心地がよかったものですから」

姫「本当にいい身分だこと」

従者「それほどでも」
287: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/12(月) 22:47:54 ID:zfaQV.HN9M
姫「まあいいわ、従者、勇者を送ってあげて」

従者「御意」

勇者「え?いいって別にそんな」

姫「むしろ屋敷まで持ち帰ってやって」

勇者「やだよ俺そんな趣味ないもん」

従者「俺にもありませんよ」
288: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/12(月) 22:50:31 ID:agmpcxXNZc
姫「私は舞踏家さんと先に戻ってるから!」

舞踏家「ええっ、私ですか?」

従者「はあ、道順的な」

勇者「ああ、的な」

姫「ちちち違うわよ別に!もういいわ、行きましょ舞踏家さん」クルッ

舞踏家「では、ご一緒させて頂きます」ペコリ
289: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/13(火) 16:39:25 ID:7l16fIcLfY
勇者「本当に姫はどんくさいからなあ」

従者「上達しませんか」

勇者「まあね。俺の避けるスキルが上がるくらい」

従者「全く、姫様はほんとにもー……」

勇者「従者さんお母さんみたい」

従者「どこがですか」
290: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/13(火) 16:39:51 ID:7l16fIcLfY
勇者「姫は、頑張ってる?」

従者「今日ご覧になった通りですが」

勇者「またまたぼかしちゃってー。色々やってるって聞いたよ?」

従者「やってると言えばやってますよね。先日も城中を駆け回って」

勇者「主に迷子で?」クスリ

従者「分かってらっしゃるじゃないですか」
291: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/13(火) 16:40:13 ID:7l16fIcLfY
従者「まあ、結果が出るのは1年後の話ですから」

勇者「長いな」

従者「いいえ、短いですよ。残酷なほどに」

勇者「……そっか。そうだよなあ、うん」

勇者「従者さん、姫によろしくね」

従者「了解しました」
292: 名無しさん@読者の声:2011/12/14(水) 00:01:28 ID:ZE4udjmZ36
支援ー
293: 削除:あぼーん
削除されますた
294: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/14(水) 17:57:52 ID:7cMpp1kMaE
>>292
支援ありがとうございますー(´ω`*)
295: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/14(水) 17:59:08 ID:zfaQV.HN9M
姫「疲れたわ……」

従者「聞き飽きました」

姫「だって疲れたんだもの」

従者「知ってますよ」
296: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/14(水) 17:59:45 ID:zfaQV.HN9M
姫「もう今日は一歩も動かないわ」

従者「では姫様、一歩も動かずにできることをしましょうか」ドサドサ

姫「え?ちょっ、何これ帳簿?一体何冊あるのよ」ガバッ

従者「過去の舞踏会の詳細をとりあえずこれだけ」

姫「とりあえずじゃないわよ!」
297: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/14(水) 18:00:26 ID:zfaQV.HN9M
姫「で、これを読めと」

従者「1年分だけ目を通したところで何にもなりません」

姫「成る程ね、色んな年のを比較して無駄を探すの」

従者「分からなかったことも見えてくるでしょうね」

姫「……あんたやけに協力的ね?なんか怪しい」

従者「俺を何だと思ってるんですか」
298: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/14(水) 18:01:10 ID:zfaQV.HN9M
従者「ああ、それと姫様。パーティーと直接の関係はありませんが」

姫「うん?何この書類」

従者「先例がありましたので」

姫「先例?何かしら」

姫「あ……これ…………」
299: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/15(木) 22:04:25 ID:zfaQV.HN9M
王子「これで今日は終わりだな。明日はどこの家だっけ」

宰相「お疲れですね」

王子「まあ、否定はしないよ」ニコリ

宰相「王子、やはりこのようなことは、おやめになった方が……」

王子「……良いんだよ。付き合わせてごめんな、俺が手伝うって言ったのに」

宰相「いえ」
300: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/15(木) 22:04:53 ID:zfaQV.HN9M
王子「俺のこと、馬鹿だと思う?」

宰相「率直に言わせて頂きますと――ええ。愚直なまでに」

王子「ははっ、それは誉め言葉だよ」

王子「ずっとそうではいられなくても、今はまだ」

宰相「……貴方はきっと、良い王になりますよ」

王子「その時に国がまだあれば、だけどな」
301: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/15(木) 22:05:22 ID:zfaQV.HN9M
料理長「これでよし……と」

姫「こんにちは料理長さん、調子はどうかしら」ヒョコッ

料理長「これは姫様!こちらは順調ですよ」

姫「あら、これがお客様に振る舞う料理?すごく綺麗だわ……」

料理長「皆さんに、目でも楽しんで頂けるようにしましたからね」ドヤッ
302: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/15(木) 22:05:48 ID:zfaQV.HN9M
姫「お疲れ様、私たちの料理も楽しみにしているからね」

料理長「ええ、お任せください」

姫「じゃあまた今度、頑張ってね!」

料理長「姫様もご健闘を!」
303: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/15(木) 22:06:13 ID:zfaQV.HN9M
従者「……これであらかた見回りましたね」

姫「ええ。後は私たちも準備して、始まりの時間を待つだけよ」

従者「自信の程は?」

姫「できることはやったわ」
304: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/15(木) 22:06:44 ID:zfaQV.HN9M
姫「城内での開催には費用が掛かりすぎる」

姫「庭園を開放して、開始時間を繰り上げて、照明を減らした」

姫「カーテンやクロスの新調は見送って、装飾も庭園の花で足らす」

姫「見世物は減らすけれど、代わりに私たちが皆さんと話せばいい」

姫「他にも色々、躍りの練習の合間を縫っては無駄を探したわ」

姫「どれだけ費用を削れたか、結果が出るのは今日が終わってから」

姫「――さあ、パーティーの始まりよ」
305: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/16(金) 22:22:51 ID:IZAkWz/mtQ
王「あれ、もう話していいの?うわー恥ずかしい。じゃあいくよ」

王「えーと、お集まりの皆さん!本日は王子くんの帰還記念のパーティーに来てくれてありがとう!」

王妃「久々の催し事ですし、皆さん思い切りお楽しみくださいね」

王「まあ長々とした話も退屈だろうし、始めちゃっていいかな?」

王妃「まあ、構わないんじゃないかしら」

王「ではパーティーの、始まり始まりー!」
306: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/16(金) 22:23:18 ID:IZAkWz/mtQ
娘1「あーっ、王子様!」

娘2「ねえどうしましょう、こちらにいらっしゃるわ……!」

王子「皆さんこんにちは。今日は来てくださってありがとうございます」ニコリ

娘1「いえ!ていうか直接お話できるなんて感激です!」キャッキャ

娘2「わ、私もです……!」カアァッ
307: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/16(金) 22:23:50 ID:IZAkWz/mtQ
王「やほー、みんな元気だった?」ヒョコッ

酒屋「おっ王様じゃん、最近来てくんねえけどどうしたんだ?」

王「勘弁してよお、本当に抜け出すの難しいんだから」

村人「そりゃあ参ったな!」

町人「まあ王様だもんな、仕方ねえ」

宰相(……何このフレンドリーさ)ニコニコ
308: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/16(金) 22:24:17 ID:IZAkWz/mtQ
貴族「姫様。ご機嫌麗しゅうございます」

姫「こんにちは、楽しんで貰えてるかしら」

貴族「ええ、とても。屋外での開催は久しぶりですから」

貴族「それにしても、何故急に庭園で?」

姫「あ、あはははは……」ギクッ
309: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/16(金) 22:24:46 ID:IZAkWz/mtQ
姫「……予想以上に疲れるわ」ゲッソリ

従者「頬が引きつってますよ」

姫「こんなに愛想笑いフル活用したの初めてよ」

従者「ああいつも怒鳴ってばかりですもんね」

姫「誰のせいだと」
310: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/17(土) 23:16:10 ID:/5FRZFy.DE
勇者「姫ー、ご機嫌麗しゅー」

姫「はいはい麗しゅーございますよお陰様で」

勇者「あれ?もう営業スマイルは終わりなんだ?」

従者「休憩中だそうで」

姫「勇者に営業しても仕方ないわよ」
311: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/17(土) 23:16:45 ID:/5FRZFy.DE
勇者「じゃあさ、休憩中なら芸術家さんの作品見に行かない?姫見てないだろ」

姫「あー、そんなのあったわねえ」

従者「忘れてたんですか」

姫「だってあれは解決済みだもの……ていうか腰が痛いわ」

勇者「お婆ちゃんみたいなこと言うなって……なあ良いだろ従者さん」

従者「少しでしたら」

姫「えー……」
312: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/17(土) 23:17:32 ID:/5FRZFy.DE
勇者「よし決まり!行くよ姫!」ズルズル

姫「きゃー助けて拉致られるー」ズルズル

従者「そんなやる気ない声で叫んでも微笑ましいだけですよ」

姫「どこが微笑ましいと」

勇者「西棟前の丘にあったよ!」

従者「行ってらっしゃいませ」
313: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/18(日) 23:50:39 ID:A1avxOZkx2
勇者「……なあ、姫。西棟のあの木を覚えてる?」

姫「え?小さい頃よく登った、あの大きな木かしら」

勇者「そうそう、少し前に病気で枯れちゃったやつ」

姫「切り倒されちゃったのよね。で、それが?」

勇者「寂しい?」

姫「まあ、それは」

勇者「だから連れてきたんだよ」
314: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/18(日) 23:51:23 ID:A1avxOZkx2
勇者「絶対見てみるべきだって」

勇者「西棟前の丘の、あの木があった場所にさ」

勇者「あるんだよ、同じ色に染まった、夕暮れ空に溶け込んで」

勇者「ほら、もうすぐ見えてくるよ」

勇者「あかあかと燃えるあの大きな木が」
315: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/18(日) 23:51:50 ID:A1avxOZkx2
姫「赤い木……?これ、あの木なの?」

勇者「うん、そう」

勇者「芸術家さんがね、切り倒した木を貰って行ったらしいんだ」

勇者「使わせて貰えないか、って」

姫「綺麗……」
316: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/18(日) 23:52:15 ID:A1avxOZkx2
芸術家「……気に入って頂けたようで、ありがとうございます」ニコニコ

姫「芸術家さん。来ていたの」

芸術家「あはは、やはり皆さんの感想は、僕も気になりますから」

勇者「そっかあ」

芸術家「……結局、部屋にあるものだけではできませんでしたが」

姫「費用無しでしょう、上出来よ」
317: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/19(月) 23:15:47 ID:4SVeeV6rxk
姫「正直に言うと意外だったわ。いつもはもっと、豪華で派手なものを、こう、どばーんと置いてあったんだもの」

姫「でもこの木は目立たないし、圧倒するような迫力もない。代わりに素朴で優しくて、すごく温かい感じがする」

姫「もしかしたら、お父様の好みには合わないかもしれないわね。でも」

姫「私はすごく、好きだと思うわ」
318: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/19(月) 23:16:39 ID:4SVeeV6rxk
芸術家「……最高の誉め言葉を、ありがとうございます」

勇者「お、芸術家さん照れてる?」

芸術家「いや、そんなことは!」

姫「あらそんなに嬉しかった?もっと言おうかしら」

芸術家「ひ、姫様ぁ」タジッ
319: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/19(月) 23:19:24 ID:7l16fIcLfY
芸術家「あ、そうだそうだ。これを見て頂けませんか」

勇者「何これ、この木の葉っぱ?」

姫「何か書いてあるわよ」

芸術家「これはね、紙を加工してできてるんですよ。少しずつ色や形を変えて、針金を仕込んで」

勇者「へえ、本物みたいに作るなあ」

芸術家「あはは、これでも僕、芸術家ですから」
320: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/19(月) 23:20:08 ID:7l16fIcLfY
芸術家「で、紙ですから、文字が書けますよね」

姫「まあ、書けるわね」

芸術家「ということで、実はね、見に来てくださった皆さんに、願い事を書いて貰ってるんですよ」

勇者「……願い事?」
321: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/19(月) 23:20:41 ID:7l16fIcLfY
芸術家「東洋にはね、七夕という風習があるらしいんですよ」

芸術家「一年に一度、笹の枝に、紙で作った飾りと、願い事を書いた紙を吊るすと、願いが叶うんです」

姫「面白いわね、それが今日?」

芸術家「いえ」キパッ

姫「えっ」

芸術家「いや、素敵な風習なんでパクってきちゃいました。あはは」
322: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/19(月) 23:21:11 ID:7l16fIcLfY
姫「そんな適当でいいのね……」

勇者「まあまあ、楽しそうだしいいじゃん」

芸術家「あはは、まあそういう訳で、おふたりもいかがですか」

勇者「やる!」

姫「まあ、折角だし」

芸術家「はい、ではどうぞ」
323: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/20(火) 23:04:41 ID:XaSSnJluPk
勇者「魔王討伐に行きたい……っと」カキカキ

姫「あんた根にもつわねえ」

勇者「だって行きたいし。行かせてくれないの、割と残念だし」

勇者「あーあ、早く節約生活終わんないかなあ」

姫「……ふぅん。」
324: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/20(火) 23:05:09 ID:XaSSnJluPk
勇者「姫は?」

姫「無事に財政を立て直せますように」

勇者「うわ、普通」

姫「今はこれ以外にないわよ、切実に」

姫「念を込めたら叶いやすくなるかしら……」ズモモモモ

勇者「姫ー、顔怖いよ顔」
325: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/20(火) 23:05:36 ID:XaSSnJluPk
芸術家「では、僕が木のほうにお掛けしておきますね」

勇者「よろしくー」

姫「ああ、もしかしてあの梯子はそのために……」

芸術家「いや、梯子って難しいですね。僕もう何度落ちたか分かりませんよ」

勇者「それ多分芸術家さんだけだよ」

姫「言わないであげましょうよ」
326: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/20(火) 23:06:03 ID:XaSSnJluPk
従者「姫様!」

姫「あれ従者、あんたもこっち来たの?」

従者「来たの?じゃありませんよこのどアホ!どんだけ休憩する気ですか!」スパーンッ

姫「痛ったあ、何すんの……ってちょ、やめ……」ズルズル

従者「挨拶回りはまだ残ってますよ」ズルズル

勇者「……いってらー。」ヒラヒラ
327: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/21(水) 22:56:59 ID:IZAkWz/mtQ
仕立屋「あっ姫様、ドレスの具合はいかがでしょうか」

姫「仕立屋さん。お陰様で丁度よ、気に入ったわ」

仕立屋「ふふ、それは仕立て直した甲斐があるというものです」

従者「本当に別物ですね……」

仕立屋「私の手にかかればこんなものです」ドヤッ
328: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/21(水) 22:57:22 ID:IZAkWz/mtQ
仕立屋「姫様はサイズが変わってらっしゃらないので、私も仕立てやすかったんですよ」

従者「ああ、胸のサイズも」

姫「あんたそれセクハラよ?」

姫「ともかく、それじゃ、お兄様なんて大変だったでしょう。すごく背も伸びてらして」

仕立屋「まあ、頑張りましたわ。特に王子様には見返りがありましたし……」キラーン

従者「なんか怖い」
329: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/21(水) 22:57:42 ID:IZAkWz/mtQ
姫「あら、何かしら」

仕立屋「私の口からは申し上げられませんねえ」

姫「もう……」

従者「姫様、そろそろ次の方に」

仕立屋「あらすみません、つい話が長くなってしまって」

姫「良いのよ、仕立て直せだなんてお願い、聞いてくれてありがとうね」

仕立屋「いいえ、これからも何なりと」
330: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/22(木) 23:03:47 ID:/UGBUXLJ6g
王「姫ちゃん姫ちゃん、ちょっとこっち来てー」

姫「お父様?あら、そちらの方は……」

青年「初めまして、貴女のお父様の知人ですよ」

王「えっ」

姫「あら、それは失礼しました。初めまして、娘の姫です」
331: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/22(木) 23:05:30 ID:XXnWtGX0ys
青年「一曲いかがでしょう、お相手願えますか?」

姫「え、いやその、お父様が何て言うか……」チラッ

王「……姫ちゃん、行っておいで」

姫「嘘っ!?」

青年「面白いお嬢さんですね」クスクス
332: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/22(木) 23:07:26 ID:zfaQV.HN9M
従者「うーわー、姫様踊ってますよ、見知らぬイケメンと」

王子「え?まさか姫がそんな……って、本当だ。まずいんじゃないか」

宰相「いえ、でも姫様も必死で練習なさっていたそうですし」

従者「ていうか、何で俺らが一緒にいるんですか」

宰相「作者の趣味らしいですよ」

従者「いきなりメタ的な発言」

王子「迷惑極まりない」
333: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/22(木) 23:08:05 ID:zfaQV.HN9M
宰相「でも足元を見なければ姫様も中々頑張ってらして……」

従者「足元を見れば酷いものですがね」

王子「あ、また踏んだ」

従者「踊りながら平謝りですよ、姫様も」

宰相「ああっ姫様謝ってないで足元に集中なさらないと!」
334: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/22(木) 23:08:38 ID:zfaQV.HN9M
従者「上達しませんでしたねえ」

王子「本当に練習させたのか?」

従者「させてあれですよ、失礼な」

王子「父上が仰ったとはいえお前が仕組んだことだ、信用ならん」

従者「これはまた素晴らしく独断と偏見に満ち溢れたご意見をありがとうございます」

宰相「結局喧嘩するんですね……」

宰相(それにしても、あの男性、どこかで……)
335: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/23(金) 23:28:55 ID:YW2VpLC90c
姫「ああああのっ、本っ当にごめんなさいっ」ガクブル

青年「いえいえ、お気になさらず」ニコニコ

姫「すみません本当、もっとゆっくりした曲ならまだましなのだけれど……」

青年「試しましょうか?」

姫「申し訳ないです!」
336: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/23(金) 23:29:25 ID:YW2VpLC90c
青年「可愛らしい反応をなさいますね」

姫「おかしなことを言わないで、って、わ」コケッ

青年「いいえ、思ったことを申し上げたまでですよ」グイッ

姫「……お口が上手で」カアァ

青年「よく言われます」
337: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/23(金) 23:29:53 ID:YW2VpLC90c
姫「貴方は今日、どちらから?」

青年「良いんですか、足元を気になさらないで」

姫「失礼なことを言いますね、少しくらい大丈」ズルッ

青年「……大丈夫ではなさそうですが」

姫「ごめんなさい……」
338: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/23(金) 23:30:18 ID:YW2VpLC90c
青年「姫様に一度、お会いしてみたく思いまして」

姫「私はそんな価値のある人間かしら」

青年「ええ、とてもからかい甲斐があって」

姫「ちょっと」

青年「冗談ですよ」

姫「仮にも一国の姫に……随分と不敵なものね」

青年「それはどうも」
339: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/25(日) 21:16:20 ID:XaSSnJluPk
昨日の更新を素で忘れていた1です(´・ω・`)すみませんでした
今から投下いきますよぉい
340: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/25(日) 21:17:48 ID:A1avxOZkx2
王「……あれ、もう帰ってきたの?」

青年「申し訳ありません、知人だなんておこがましい嘘を」

王「それは構わないけど、姫ちゃんはもういいのかい?」

青年「ええ、あれ以上は自分でもちょっと……」

王「ちょっと?」

青年「一曲で足が腫れたのは初めてですよ」クスクス

王「練習させたんだけどねえ……」ハァ
341: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/25(日) 21:18:25 ID:A1avxOZkx2
青年「驚きました」

王「何にだい?」

青年「普通の、女の子で」

王「姫ちゃんは普通の女の子だよ」

青年「普通の女の子が、城内の収支を取り仕切りますか?」

王「そう言われるとねえ」クスクス
342: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/25(日) 21:20:38 ID:A1avxOZkx2
青年「でも、興味深い方ですね。……これで、父上への土産話も出来ました」

王「帝国は遠かったろう、はるばるご苦労様」

青年「無理を言って来た甲斐がありましたよ」

王「本当にびっくりしたよ、こんな小王国に、大帝国の皇太子様が来るなんて」

皇子「まあ、そうですよね」
343: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/26(月) 23:21:25 ID:YW2VpLC90c
王「皇帝さんには良い報告ができそうかい?」

皇子「正直に言って構わないのか測りかねます」

王「酷いな、これでも頑張ってるんだよ?主に姫ちゃん達が」

皇子「風の噂で来てみたものの、本当に任せきりとは思いませんでしたよ」

王「君は、お父さんの手伝いはしないの?」

皇子「……あまり。羨ましいです」
344: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/26(月) 23:21:56 ID:YW2VpLC90c
王「うんまあ、各家庭の教育方針があるからねえ」

皇子「国政を教育方針で片付ける方は初めて見ました」

王「そうかな?まあ、そうなんだろうけどね、うん、気にしない」

皇子「はあ」
345: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/26(月) 23:22:21 ID:YW2VpLC90c
皇子「……良いんですか、そんな様子で」

王「どういう意味だい?」

皇子「政治は部下に任せきり、財政はまだ若い子供達に丸投げ」

皇子「自分が言うのもおかしいでしょうが、国の危機にこんな状態で構わないんですか」

王「……これで、いいんだよ」ニコッ
346: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/26(月) 23:22:46 ID:YW2VpLC90c
王「さあさあ、君のとこに比べたらちっちゃいパーティーだろうけど、折角来たんだから楽しんでおいでよ」グイグイ

皇子「うあ、ちょ、押さないでください!」

王「若いのに隅っこから眺めてるばっかじゃいけないぞー」

皇子「分かりましたから!」
347: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/27(火) 23:46:46 ID:7cMpp1kMaE
宰相「お二方……その、そんな隅っこで眺めてらっしゃるばかりで良いんですか……?」

王子「おい、姫の踊りが終わったようだが側にいなくていいのか」

従者「王子こそ、本日の主役を国民がお待ちのようですが」

王子「お前が先に行くべきだろう、俺は休憩中なんだ」

宰相(もうやだこの人達)ハァ
348: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/27(火) 23:47:17 ID:7cMpp1kMaE
娘3「あのっ、王子様……」モジモジ

娘4「少しお話よろしいですかっ!」

王子「」チッ

王子「はい、俺に何でしょうか」キラッ

従者(舌打ちしましたね)ヒソヒソ

宰相(ええ、確実になさいましたね)コソッ
349: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/27(火) 23:47:37 ID:7cMpp1kMaE
娘4「きゃー、もうすっごくお会いしたかったんです!」

娘3「はい、ずっと憧れで……お写真も素敵でした」

王子「……写真、ですか?」

娘3「ええ……あの、お召し物に、とても恥ずかしそうにしてらっしゃる」

娘4「めっちゃ萌えました!!」キャーッ

王子「仕立屋め……」クラッ
350: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/27(火) 23:48:02 ID:7cMpp1kMaE
従者「一体、どんな写真を?」ヒョコッ

王子「わっ馬鹿、お前は聞かなくていい!」

娘4「王子様がタメ口に!うっは従者×王子ktkrwww」

娘3「だ、駄目だよ口調崩しちゃ……あのですね、仕立屋さんのお店の広告に」

王子「言わなくていい!」
351: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/28(水) 22:56:43 ID:XaSSnJluPk
ギャアギャア…

姫「なんだか向こうが騒がしいわね」

勇者「そうだねえ、俺らも見に行ってみる?」

姫「面倒事に巻き込まれるのは嫌よ」

勇者「なんか宰相さんの叫び声が」

姫「まあ、あの人も何だかんだ打たれ強そうだし」

勇者「ああ納得」
352: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/28(水) 22:57:12 ID:XaSSnJluPk
姫「そんなことよりお腹が減っちゃって減っちゃって」モグモグ

勇者「またそんな肉ばっかり」

姫「今日くらい食べ過ぎたって罰は当たらないはずよ」

勇者「姫君としての品位は?」

姫「お母様のお腹の中に」

勇者「生まれ直してこい」
353: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/28(水) 22:57:37 ID:XaSSnJluPk
勇者「ていうかさあ、忘れてない?」

姫「何を?」

勇者「他の人とは踊ったのにさあ」

姫「何のことかしら」ニヤニヤ

勇者「分かって言ってるだろ」

姫「言ってくれなきゃ分からないわ」

勇者「ったく」

勇者「……姫様、一曲お相手願えますか?」
354: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/28(水) 22:57:58 ID:XaSSnJluPk
姫「どーしよっかなー」モグモグ

勇者「おい」

姫「冗談よ。……ゆっくりした曲になったらね」

勇者「普段はそんなの気にしないのに」

姫「いいから!」
355: 名無しさん@読者の声:2011/12/29(木) 06:12:36 ID:A1Mh8IgM/w
ふおお勇者……!
しえん!・ω・´
356: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/29(木) 23:43:26 ID:YW2VpLC90c
>>355
支援ありがとうございます!(*゚∀゚)=3
もうすぐ勇者のターンが来るかもしれなくもないですw
357: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/29(木) 23:44:45 ID:YW2VpLC90c
王妃「……あら、姫ちゃんが踊るみたいね」

王「母さん本当!?どこどこ?」ガバッ

王妃「ほら、あそこよ。勇者くんと一緒に」

王「あー本当、相変わらず仲良いなあ」

王妃「ふふ、そうねえ」
358: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/29(木) 23:45:16 ID:YW2VpLC90c
王妃「姫ちゃんも、すっかり大きくなったわねえ」

王「うんうん、女の子らしくなっちゃってもう」

王妃「お婿さんを貰う日も近いかしら」

王「多分勇者くん、になるのかな?うーん、父さんはまだあげたくないけど」

王妃「あなた、いつかそうなるんだから。姫ちゃんがお城を出ないだけ幸せでしょう」

王「だってえ……」
359: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/29(木) 23:45:44 ID:YW2VpLC90c
王妃「まあ、何にせよ今は無理かしら」

王「姫ちゃん忙しいもんねえ」

王妃「あなたのせいでしょう、主に」

王「ごめんごめん」
360: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/29(木) 23:46:13 ID:YW2VpLC90c
王「……何やっても、自分じゃ上手くいかなかったからねえ」

王「国の存亡がかかってるのに、子供達を見守りたいんだ」

王「こんな父さん、情けないかなあ」

王妃「そうねえ」

王妃「でも、大好きよ、あなた」

王「……いい妻を持って幸せだよ」

王妃「ふふ、今頃気付いたのかしら」
361: 名無しさん@読者の声:2011/12/30(金) 00:22:28 ID:kHGiBv2CBo
いい夫婦や…
C
362: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/30(金) 22:58:02 ID:B7K.t.o2jo
>>361
羨ましい限りですねえ……w
支援ありがとうございました!
363: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/30(金) 23:01:18 ID:agmpcxXNZc
姫「」クシュン

勇者「どしたの、風邪?また転ぶよ?」

姫「や、風邪じゃないけど……」

勇者「でも最近、あんまり寝てなかったんだろう?明日から休めよ」

姫「あー、確かに練習はキツかったわねえ」

勇者「でも上手くなった」

姫「本当に?」

勇者「うん、すごーく微妙に」
364: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/30(金) 23:01:51 ID:agmpcxXNZc
姫「それなら続けてみようかしら」

勇者「いや、周囲のためにやめた方が」

姫「どういう意味よ!」

勇者「冗談だって。俺も何か始めよっかな、暇になっちゃうし」

姫「…………」

姫「……あのね、勇者。」

姫「魔王討伐、行っていいよ」
365: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/30(金) 23:02:24 ID:agmpcxXNZc
勇者「……え?」キョトン

姫「だから、行っていいって言ったのよ」

勇者「何でいきなり、どういう心境の変化?」

姫「何も変わってないわ」

勇者「だって、お金かかるんだろ」

姫「それがね、先例を見つけたのよ」
366: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/30(金) 23:03:19 ID:agmpcxXNZc
姫「王が発行した特許状を、持って行ってもらうの」

姫「国が援助していますから、待遇を良くしてくださいって」

姫「その代わり国は、何もしない」

勇者「いいじゃん」

姫「本当に?」
367: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/30(金) 23:03:49 ID:agmpcxXNZc
姫「失くしたら一巻の終わりだし、盗まれたら確実に悪用される」

姫「影響が行き届かない地域や、お父様を良く思っていない人には、効かないどころか痛い目に遭うかもしれない」

姫「実際大変だったらしくて、それ以来実施されてないわ」

姫「それでも、行きたい?」

勇者「……うん。」
368: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/30(金) 23:04:53 ID:B7K.t.o2jo
勇者「それで怖じ気づくと思った?」

姫「分かってたけど……」

勇者「うん、俺は行くよ。行かせてほしい」

勇者「……何、そんな顔してんの」

姫「べつに、……」
369: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/30(金) 23:05:21 ID:B7K.t.o2jo
勇者「姫だって、何だかんだで寂しいんじゃん」ニヤニヤ

姫「ばっ、かじゃないの何でそーゆう結論に辿り着くのよ、ってうわ、」コケッ

勇者「あーまた転んで……本当に俺がいないとしょーもないんだから」

姫「……いなくたって、平気よ」
370: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/30(金) 23:05:47 ID:B7K.t.o2jo
勇者「随分と寂しいこと言うね」

姫「だって、帰ってくるんでしょう」

勇者「けっこう時間、かかると思うけど」

姫「でも帰ってくる」

勇者「うん、俺のこと待っててくれる?」

姫「何を今更」ドヤッ

勇者「ですよねー」
371: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/30(金) 23:06:40 ID:B7K.t.o2jo
勇者「それじゃ、待っててな」

姫「うん」

勇者「手紙送るし」

姫「女々しいわね」

勇者「いきなり暴言」

姫「でも待ってる」

姫「いってらっしゃい」

勇者「うん」

勇者「……いってきます」
372: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/31(土) 23:31:54 ID:zfaQV.HN9M
今年最後の更新になります。
皆様どうかよいお年を!(*´∀`)ノシ
373: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/31(土) 23:32:26 ID:zfaQV.HN9M
従者「あれから一週間」

従者「まーだパーティーの余韻に浸ってるんですか」

姫「そんな訳ないでしょ、休憩よ休憩」

従者「その割には元気なさそうですが」

姫「休憩中もテンション高かったら逆に怖いわよ」
374: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/31(土) 23:33:04 ID:zfaQV.HN9M
姫「パーティーが終わってから、帳簿を見てもなかなか捗らないわ」

姫「そろそろもう、削るとこないもの」

従者「勇者さんの送別式も、随分と簡素なものでしたからね」チラッ

姫「何か言いたそうね?」ジロッ

従者「いや別に、本当に落ち込んでる理由が再建策が進まないだけなのかとか気になってませんから」

姫「言ってる言ってる」
375: 1
◆xXC7.dNnEA:2011/12/31(土) 23:33:32 ID:zfaQV.HN9M
従者「そのしょぼくれた姿、勇者さんに見せて差し上げたいです」

姫「あんたしつこいわよ」

従者「では話題を変えましょう。……ご存知ですか、芸術家さんの話」

姫「知らない、どうしたの?」

従者「この城を、出て行くそうですよ」
376: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/1(日) 23:39:41 ID:SclZQjm4pU
姫「……え?」

従者「何でも王様に挨拶に行ったとか」

姫「待って、何でいきなり?」

従者「詳しいことは俺も知りませんが」

従者「パーティーの後辺りから、思い詰めている様子だったらしいです」

姫「そんな……」
377: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/1(日) 23:40:23 ID:SclZQjm4pU
姫「もしかして、私のせい?」

従者「何でそうなるんですか」

姫「だって、私が無茶なお願いをしたから」

従者「乗り気でしたけどね」

姫「確かに、パーティーで話したときは満足そうだったけれど……でも」

従者「姫様」
378: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/1(日) 23:40:49 ID:SclZQjm4pU
従者「落ち着いてください」

従者「姫様が取り乱してどうするんですか」

従者「あくまで噂です、迂闊にお話しした俺も俺ですが」

姫「……そうね。確認を、取らなきゃ」

姫「まずは芸術家さんの部屋に行くわ、話はそれからよ」

従者「御意」
379: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/2(月) 22:50:57 ID:c.gYySYfy6
姫「芸術家さん?いるかしら?」コンコン

芸術家「はーい、ただ今……ってへぷっ」ガンッドサバサグシャッ

姫「…………」

従者「……相変わらずですね」

姫「ちょっと安心したわ」

従者「それはそれは」
380: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/2(月) 22:51:35 ID:c.gYySYfy6
芸術家「あははは、すみません毎度毎度」ボロッ

姫「いいえ、構わないけれど……どうしたの、この部屋」

姫「あんなに散らかっていたのに、急に荷物なんて纏めて」

従者「一部雪崩を起こしてますがね」

姫「本当に、城を出ていくの?」

芸術家「……、はい。」ニコリ
381: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/2(月) 22:52:09 ID:c.gYySYfy6
芸術家「すみません、突然のことで、姫様にご挨拶もできずに」

姫「そんなのはいいのよ、でもどうして?私が何かしてしまった?」

芸術家「いいえ、姫様が心配なさることは何も」

従者「パーティーでの作品に、何かあったんですか?」

芸術家「確かに切っ掛けのひとつではありますけれど、僕が自分で考えて、王様にお許し頂いたことです」
382: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/2(月) 22:52:31 ID:c.gYySYfy6
芸術家「僕ね、環境に恵まれていたでしょう」

従者「まあ、国王直々の保護を受けてましたもんね」

姫「そのことに、何か不満が?」

芸術家「いいえ、滅相もない」

芸術家「ただ少し、試してみたくなったんです」
383: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/4(水) 18:26:45 ID:tbpDYj2bNQ
毎日更新だけが取り柄なのに昨日更新できなかった1ですすみません(・ω・`)
今日こそ後で必ず……必ず……
384: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/4(水) 22:57:30 ID:RGDdi1MlWM
芸術家「姫様が材料を買わないようおっしゃったとき、最初は苦労しましたよ」

芸術家「作りたいものを作りたいだけ、無心に作ることができない」

芸術家「でもね、それを工夫するのが、途中から楽しく思えてきたんです」

姫「そんなことが……」

芸術家「はい。だから試してみたくなった」
385: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/4(水) 22:58:01 ID:RGDdi1MlWM
芸術家「僕はひとりになっても、果たしてやっていけるのか」

芸術家「王様がいなくても、外で暮らしていけるのか」

芸術家「他の、普通の芸術家と同じように、小さな街の片隅で」
386: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/4(水) 22:58:28 ID:RGDdi1MlWM
芸術家「……折角、僕のことを認めて頂いて、この城に置いて頂いてるのに」

従者「それでも、行かれるんですか」

芸術家「はい」

姫「……そう、なの」
387: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/4(水) 22:59:00 ID:RGDdi1MlWM
姫「お父様は何て?」

芸術家「王様は、応援してくださいました」

従者「良かったじゃないですか」

芸術家「あは、そうですね」

姫「…………」

芸術家「……、姫様」
388: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/4(水) 22:59:27 ID:RGDdi1MlWM
芸術家「姫様どうか、お気を落とさないでください」

芸術家「これは僕の我が儘で、姫様は何も悪くないんです」

芸術家「最後にパーティーで作品を作らせて頂けて、とても幸せでした」

芸術家「これからは外で、頑張ってみたいんです」

芸術家「ただ、それだけなんですよ」
389: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/4(水) 22:59:56 ID:RGDdi1MlWM
姫「でも……」

芸術家「……僕にとっては喜ばしい門出なんですけど、姫様は祝ってくださらないんですか?」

姫「そんなことは、」

芸術家「姫様」

姫「……そうね」

姫「おめでとう、芸術家さん。新しい場所でも、お元気で」

芸術家「ありがとう、ございます」
390: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/5(木) 22:27:40 ID:SclZQjm4pU
従者「勇者さんに芸術家さん」

従者「続けて別れがあったからって、なーに落ち込んでるんですか」

姫「だって……」

従者「逆にうざいですよ」

姫「あんた言葉を選びなさいよ」
391: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/5(木) 22:28:10 ID:SclZQjm4pU
姫「だって、私が追い出したようなものだわ」

従者「違うって言ってたじゃないですか」

姫「そういうことじゃない」

姫「……私は、やりすぎていたのかもしれないわ」

従者「間接的リストラ、とでも?」

姫「そこまでかは分からないけれど」
392: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/5(木) 22:28:41 ID:SclZQjm4pU
姫「私は本当に、今まで通りでいいのかしら」

姫「必死になりすぎて、変えてはいけないことまで変えてはいないかしら」

従者「いつも周りが、諫めてくれるじゃないですか」

姫「だからこそ、それがないときは分からないでしょう」

従者「……つくづく、真面目ですねえ」
393: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/5(木) 22:29:08 ID:SclZQjm4pU
従者「そんな姫様にプレゼントです」スッ

姫「え、何これ手紙?」

従者「勇者さんからですよ」

姫「まじで送ってきやがったわ……」

従者「似た者同士、勇者さんも意外と真面目ですからねえ」

姫「誰が似た者同士よ」
394: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/6(金) 23:43:05 ID:2ho66zkJlw
従者「……では、俺はこれで」

姫「あんた手紙届けに来ただけ?」

従者「いえ、姫様の愚痴を聞きに」

姫「質問に答えただけよ」

従者「……ご自分の発言を振り返ってからおっしゃってください」ハァ

姫「え、何その私が理不尽みたいな」
395: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/6(金) 23:43:36 ID:2ho66zkJlw
姫「全く、私だってどうしたら良いのか……」

姫「ううん、考えても仕方ないわ。気分を切り替えましょう」

姫「勇者からの手紙でも読んで……ええと」ガサゴソ

勇者『姫へ(はぁと』

姫「」イラッ
396: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/6(金) 23:44:03 ID:2ho66zkJlw
勇者『まず破らずに読んでください』

姫「何で破り捨てようとしてるのわかったのかしら」

姫「まあいいわ、続き続き……」

勇者『俺は今、王都の外れの街まで来ています』

勇者『旅はわりかし順調です。思ってたよりはね』
397: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/6(金) 23:44:24 ID:2ho66zkJlw
勇者『旅の仲間もいいやつで、今のところは困ったこともありません』

勇者『俺の目下の心配事は、むしろ姫のことかな?』

姫「……私?」

姫「ていうか、どんな口説き文句よこれ」

姫「ええと、続きは……」
398: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/6(金) 23:44:49 ID:2ho66zkJlw
勇者『城の財政を任されて張り切っていた姫だけど、正直ちょっと心配でした』

勇者『姫は昔から、突っ走って頑張りすぎるところがあるから』

勇者『俺も自分のペースで頑張るから、姫もあんまり無理しないでください』

姫「…………、もう」

姫「分かったようなこと、言ってるんじゃないわよ」クスッ
399: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/8(日) 00:06:59 ID:2ho66zkJlw
姫「従者ぁ、宰相さんのとこ行くわよ」

従者「おや回復なさいましたか」

姫「回復も何もへこんでないわ。とにかく行くから付き合って頂戴」

従者「構いませんが、一体何をなさるんですか?」

姫「決まってるでしょ、相談よ」

従者「御意」
400: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/8(日) 00:07:27 ID:2ho66zkJlw
姫「すみませーん、宰相さん」コンコン

宰相「ああ姫様、ちょうど良かったです」ガチャ

従者「宰相さんも何かあるんですか?」

宰相「いえ、先日のパーティーを含めた収支の、諸々の結果が出ましたのでお伝えしようと」

姫「見るわ!」
401: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/8(日) 00:07:52 ID:2ho66zkJlw
宰相「それが、こちらの表ですね」

姫「ええと……うわっ随分減ったわね」

従者「今までどれだけ使ってたんだって話ですよ」

姫「でも足りない。そうでしょう、宰相さん」

宰相「おっしゃる通りです」
402: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/8(日) 00:08:16 ID:2ho66zkJlw
宰相「今日はそのことで伺おうと思っていたのですが……」

姫「何かしら」

宰相「ええと、姫様に」チラッ

従者「では、俺は控えておきますね」

宰相「すみません、ありがとうございます」
403: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/9(月) 01:15:02 ID:99nh8st8DU
姫「……どうして、私だけ?」

宰相「どうしても姫様の、率直なご意見がお聞きしたくて」

宰相「一年の猶予で払うためには、足りません、まだ」

姫「減らすべきところは減らしているのに」

宰相「ですから、こうなっては収入を増やすしかありません」
404: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/9(月) 01:15:31 ID:wKwNii9EEI
姫「……今日は、そういう提案?」

宰相「相談です。王子にもお聞きしましたが」

宰相「姫様、正直にお答えくださって結構です」

宰相「増税について、どのようにお考えですか」
405: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/9(月) 01:16:30 ID:aLkl3hdfUg
姫「……宰相さんは、どう思うの」

宰相「僕の考えはどうか、お気になさらず」

姫「必要だと、思っているの?」

宰相「必要か不必要かということでしたら、必要ではあるかと」

姫「そう」
406: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/9(月) 01:16:58 ID:aLkl3hdfUg
姫「私は、……やっぱり嫌だわ」

宰相「!」
407: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/9(月) 01:17:35 ID:aLkl3hdfUg
姫「そりゃあ必要だろうし、侵略されるのも嫌だけれど、だからって国民に私たちの始末を押し付けるのも……」

姫「あっ別に国が崩壊する方がマシって言ってる訳じゃないのよ!絶対に嫌よそんなの」

姫「必要ならやらなきゃいけないのは分かってるけれど、国民の生活が大変なのも知ってるしこれ以上はちょっと」

姫「ああでもこれって綺麗事かしら……でも正直な意見って言われたらどうしても」

宰相「」プッ

姫「真面目に聞いてよ!?」
408: 名無しさん@読者の声:2012/1/9(月) 02:20:51 ID:cQXdx1LMH.
おくればせながら、明けましておめでとう(^^)
相変わらず面白い。
お年玉代わりに、支援。
(・∀・)っC
409: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/9(月) 22:50:45 ID:YMPC7wApis
>>408
あけましておめでとうございます(´ω`*)
嬉しいお言葉とお年玉頂きましたー!ヽ(`Д´*)ノCヤッター
ありがとうございます、今年も何卒よろしくお願いします……m(_ _*)m
410: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/9(月) 22:54:06 ID:tbpDYj2bNQ
宰相「す、すみません」クスクス

姫「宰相さんにまで笑われるなんて!」

宰相「いえ、本当に申し訳ありません、あまりに同じことをおっしゃるので」

姫「え、お兄様も?」

宰相「はい。以前こんな会話を……」
411: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/9(月) 22:54:50 ID:tbpDYj2bNQ
王子「それでも俺、増税は嫌だな」

王子「気持ちの問題だからさ、嫌だとか言っちゃいけないのかもしれないけど」

宰相「そう、ですね」

王子「将来国政を担うかもしれない者として、俺に落胆した?」

宰相「……いいえ、ご立派です」

宰相「あなたが王になっても、きっとついて行きますよ」ニコリ
412: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/9(月) 22:55:30 ID:tbpDYj2bNQ
王子「なんか照れるな」

宰相「辺境に行かれてから、心身共に成長なさったのではありませんか?」

王子「そうかな、なんか宰相は小さくなった?」

宰相「ちちち縮んでません!」ガタンッ

王子「ごめん、地味に気にしてたんだな……」
413: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/9(月) 22:55:57 ID:tbpDYj2bNQ
宰相「」イラッ

姫「宰相さーん?回想終了してるわよ、戻ってきてー」

宰相「はっ、すみません僕としたことがつい」

姫「構わないけれど……それで、どうするの?」

宰相「はい、そのことなんですがね」
414: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/10(火) 23:17:40 ID:aLkl3hdfUg
宰相「実はしているんですよ、増税」

姫「えっ」

宰相「一般庶民の方々はそのまま、貴族層だけですけれど」

姫「そんなこと……いつの間に?」

宰相「王子がお考えになりましてね」
415: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/10(火) 23:18:12 ID:aLkl3hdfUg
宰相「それでも、一方的に税率を引き上げてしまえば対立は避けられない」

宰相「ただでさえ我が国は累進課税が激しいですから、大幅に上げることもできない」

姫「問題だらけじゃない」

宰相「ええ、ですから王子が奔走してらしてらして……」

宰相「最近は、有力貴族の皆さんの屋敷にまで、一件ずつ交渉なさってるんです」
416: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/10(火) 23:18:41 ID:aLkl3hdfUg
姫「屋敷に?城に呼ぶんじゃなくて?」

宰相「やっぱり姫様もそう思われますよね……」ハァ

姫「だって、いつもそうしてきたじゃない」

宰相「はい、僕も最初はおやめになるよう申し上げたんですが、曰く」
417: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/10(火) 23:19:05 ID:aLkl3hdfUg
宰相「こうなってしまったのは俺らの責任だ」

宰相「後始末を手伝わせてしまうのに上から一方的になんてできない、と」

姫「それは、そうだけれど」

宰相「王家の威信に関わります、と申し上げたのですが」

姫「お兄様ってば本当に……」

宰相「でも、頑張ってらっしゃいます」

姫「……うん」
418: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/11(水) 22:46:51 ID:VMnJaffQ7E
姫「それで最近、忙しそうにしてらしたのね」

宰相「はい、毎日お疲れのようです」

姫「……上手く、いってる?」

宰相「思ったよりは」

宰相「本当ですよ、姫様」

姫「でも増税なんて、誰でも嫌だわ」
419: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/11(水) 22:47:27 ID:VMnJaffQ7E
宰相「……そもそも我が国には貴族層の人数が少ないのですが、理由はご存知ですか?」

姫「いいえ、土地柄?」

宰相「税を逃れて、帝国の方に移住してしまったんですよ」

姫「ええっ?」

宰相「まあ、向こうの方が富裕層に優しい政治ですから……」

姫「そんなに厳しかったのかしら……」ズーン
420: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/11(水) 22:47:51 ID:VMnJaffQ7E
姫「待ってそれじゃあ、その上増税なんてしたら」

宰相「あ、そこは大丈夫です!」

宰相「大貴族や財産を重視する方々はすっかり移住してしまったので、国内の貴族はその、何と言うか」

姫「お金を気にしない変わり者ばっかり?」

宰相「ざっくり言ってしまえば」

姫「勇者の家もそうだったわね……」
421: 2日分(´・ω・`)
◆xXC7.dNnEA:2012/1/13(金) 08:53:48 ID:ogjb0kC5Sw
宰相「反発が少ないだろうとはいえ、小規模な家が点在するのみです」

宰相「収入が増えると言っても、たかが知れています」

姫「まだ足りないのね」

宰相「はい」
422: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/13(金) 08:54:27 ID:ogjb0kC5Sw
姫「……宰相さん。教えて、私は何をすればいい?」

宰相「正直に申し上げて、僕にも分かりません」

姫「やっぱりお父様の絵画をこっそり売り払って……」

宰相「それは王様が発狂なさいます!」サアッ

姫「」チッ
423: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/13(金) 08:54:53 ID:ogjb0kC5Sw
姫「ともかく、ありがとう。色々教えてくれて」

宰相「いえ、こちらこそご意見ありがとうございました」

姫「従者に話してもいい?」

宰相「構いませんよ、姫様おひとりのお考えを聞きたかっただけですから」

従者「もう聞いてますしね」ヒョコ

姫「あんた何処から……!?」
424: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/13(金) 08:55:25 ID:ogjb0kC5Sw
宰相「追い払うような真似をしてしまって申し訳ありませんでした、従者さん」

従者「平気ですよ、普段もっと酷い扱い受けてますから」

姫「私が何をしたって言うのよ」

従者「いや、フォローが入るだけ良いっていうか本当」

姫「無視!?」
425: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/13(金) 08:55:47 ID:ogjb0kC5Sw
宰相「では、とにかくよろしくお願いいたします」ペコリ

姫「分かったわ、行くわよ従者」

従者「御意」

姫「じゃあ宰相さんありがとう、失礼するわ」

宰相「はい、お気をつけて」
426: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/13(金) 08:56:16 ID:ogjb0kC5Sw
姫「稼ぐ方法……ねえ」

従者「いっそ商売でも始めますか?」

姫「こうなったら金目のものを片っ端から売り払って」

従者「だから生活レベルを落とすのはやめて下さいとあれほど」

姫「ああなんかこのやり取り前にもした気がするわ」クラッ

従者「堂々巡りですね」ハァ
427: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/13(金) 08:56:40 ID:ogjb0kC5Sw
姫「一体私たちに何ができるかしら」

従者「何か考え出さないと、動きようがありませんね」

姫「もどかしい……」

従者「下手なことをされて悪化させるよりはマシです」

姫「でもこのままじゃ、期限が迫るばかりよ」

従者「そう、ですが」
428: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/13(金) 08:57:03 ID:ogjb0kC5Sw
従者「とにかく今は、策をお考えになるのが先です」

姫「ええ、分かったわ。そのためには……」

従者「もう一度城内でもお探しになってはいかがでしょう」

姫「そうね……散歩でもしてみましょうか」

従者「御意」
429: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/13(金) 09:08:14 ID:YMPC7wApis
物語もきりの良いところなので、お知らせです。

毎日更新が厳しくなってきました。
更新頻度が下がり気味なのを見ればお分かりかもしれませんが、最近あまり書けていません。
書き溜めは僅かながらありますので、多分完全に停滞することはないと思いますが、それでも数日に一回になりそうです。

忙しい時期が終われば、また毎日更新に戻す予定です。
読んでくださってる方には申し訳ありませんが、どうかお許しください。
430: 名無しさん@読者の声:2012/1/14(土) 21:35:42 ID:i/du9aJa.s
いつまでも待ってます



支援
431: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/16(月) 23:01:32 ID:YMPC7wApis
>>430
とてつもなく嬉しい言葉をありがとうございます……!
ゆっくりですが、きちんと続けてゆけるように努力しますね。支援ありがとうございました(`・ω・´)

今日は投下します。お時間貰った割にちょびっとで申し訳ないです。
432: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/16(月) 23:05:58 ID:RGDdi1MlWM
姫「と言っても、何も思いつかない訳で……」テクテク

姫「大体おかしいわよ、こんな風に歩いててアイデアが降ってくれば苦労しないわ」

姫「城の中じゃあ気分転換にもなりゃしないし……」

姫「て、いうか」ピタッ

姫「……ここは何処?」
433: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/16(月) 23:06:37 ID:RGDdi1MlWM
姫「……いやいやいや、ないない」

姫「道の分かる範囲を歩いていたはずなのにいつの間にか迷い込んじゃったとか、普通にない」

姫「いくら従者がいないからって……うん、そこまで箱入り娘でもないわよ私」

姫「きっと気のせいよ、落ち着きましょう」

姫「あっ、ほら見覚えのある人が向こうから!」

料理長「おや、姫様奇遇ですね」

姫「よかったああああああ」
434: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/16(月) 23:07:05 ID:RGDdi1MlWM
料理長「今日はどうなさったんですか、珍しい」

姫「ええと……そう、気まぐれで散歩してたのよ」

料理長「おや、私はてっきりまた何か思いつかれたのかと」

姫「だったら良かったんだけどねえ……」
435: 1
◆xXC7.dNnEA:2012/1/16(月) 23:07:32 ID:RGDdi1MlWM
料理長「あれ、何かお悩みですか?」

姫「ちょっとだけね、行き詰まってしまって」

料理長「私でよければお聞きしますよ」

姫「うーん……」

姫「……料理長さん、商売したことある?」

料理長「はあ?」
436: 名無しさん@読者の声:2012/1/19(木) 08:13:20 ID:FWX/XpCc76
支援
437: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/19(木) 17:38:04 ID:wKwNii9EEI
>>436
支援ありがとうございます!がんばります(´∀`*)
438: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/19(木) 17:38:38 ID:wKwNii9EEI
姫「普通にないわよねえ」ハァ

料理長「そりゃあ城勤めですから……って、それと財政再建に何の関係が」

姫「そうよ!そもそも城の人間が税金以外の収入を得ようなんて、いきなり難しすぎるわ!」

料理長「はあ、なるほど」
439: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/19(木) 17:39:01 ID:wKwNii9EEI
姫「それにしても、料理長さん。それじゃあここに来る前、何をしていたの?」

料理長「城に入る前も、私は勤め仕事でしたよ」

姫「お店とか、持ってなかったの?」

料理長「あの頃は私も、まだ若かったからねえ」

姫「ああ、そっか……」
440: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/19(木) 17:39:32 ID:wKwNii9EEI
料理長「そういう訳で城に仕えて、昇進して、今に至るんですよ」

姫「そういえば料理長さん、私が小さい頃からいるものねえ」

料理長「ええ、かなり長くお仕えしています」ドヤァ

姫「他の場所で働きたいとか、思ったことはないの?」

料理長「あまり」キパッ

姫「あっ、そう……」
441: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/19(木) 17:39:53 ID:wKwNii9EEI
料理長「とても良くして頂いてますからねあまり不満に思ったことはありませんよ」

姫「そう、良かったわ」

料理長「ああ、でも……」

姫「うん?」

料理長「一度自分の店を持ちたいと、思わなくもありませんがね……」ハァ

姫「自分の店……」
442: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/19(木) 17:40:22 ID:wKwNii9EEI
料理長「まあ、贅沢すぎますかね。はっはっは」

姫「掛け持ちとか、無理なの?」

料理長「城と店を行き来するのはね、さすがに私でも」

姫「…………」

姫「いいこと、考えたかもしれないわ」
443: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/19(木) 17:40:54 ID:wKwNii9EEI
料理長「いいこと、とは?」

姫「ええとね、まず行き来が大変なんでしょう」

料理長「はあ、それはまあ」

姫「じゃあいっそ、城の中にお店を作ってしまえばいいんじゃない?」

料理長「姫様まさか……」

姫「ええ、そうよ」

姫「王立レストランを開きます!」
444: 名無しさん@読者の声:2012/1/22(日) 12:55:24 ID:8ckXx7ZQKk
今現行してるスレで一番大好きです、これからもまったり頑張ってください!

超支援⊃CCCCC
445: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/23(月) 23:00:00 ID:tbpDYj2bNQ
>>444
もったいなさ過ぎるお言葉ありがとうございます……!
停滞気味でお恥ずかしい限りですが、そう言って頂けると気が楽になります(*・ω・)
もう暫くまったりさせて頂きますね(*´ω`*)支援ありがとうございました!
446: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/23(月) 23:01:20 ID:wKwNii9EEI
従者「却下」

姫「ええー」
447: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/23(月) 23:01:44 ID:wKwNii9EEI
姫「なかなかいい案を出したと思ったんだけれど」

従者「城内に作るとか何ですか、どんだけ費用かける気ですか!」

姫「いらない客間とか食堂とかたくさんあるじゃない」

従者「それにしたって安全面が……」

姫「そんなに心配?」

従者「当然です」
448: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/23(月) 23:02:36 ID:99nh8st8DU
従者「だって城って姫様含め王族の住まいですよ、国の最高権力者ですよ!」

従者「政治も経済も何もかもが集まってる場所なんですから」

従者「そんな場所に部外者をほいほい入れようだなんて……自覚が足りなさすぎます」

姫「そうかしら」ムッ

従者「ええ、全く」ムスー
449: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/23(月) 23:03:03 ID:99nh8st8DU
姫「城内だって、衛兵が常にいるわよ」

従者「警備が足りるとでも?」

姫「パーティーのときも国民が大勢来てたわ」

従者「あれは増員してたでしょう」

姫「裏門の衛兵が見張りをサボってお父様とお酒を飲んでたけど、何も起こらなかったわ」

従者「そんなことがあったんですか」
450: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/23(月) 23:04:08 ID:RGDdi1MlWM
従者「ともかく、危険すぎます」ゴホン

姫「でも、他に収入源のあてはあるの?」

従者「それとこれとは別です!」

姫「ふうん……従者は危険だからやめるべきって思ってるのね?なるほどなるほど」

従者「……どういう意味ですか?」
451: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/23(月) 23:04:31 ID:RGDdi1MlWM
姫「従者がそう思うのは分かったわ」

姫「という訳で、別の人の意見も聞いてみましょう」

従者「と言いますと?」

姫「お父様」ドヤァ

従者「権力を味方につける気か……!」
452: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/23(月) 23:04:52 ID:RGDdi1MlWM
姫「何とでも言いなさい!王族なんて権力のカタマリよ!」

従者「その権力で危険を招く真似すんなって言ってるんです!」

姫「だってせっかく思い付いたのに却下するの悔しいじゃない」

従者「結局それか」

姫「お父様ー、お話ししたいことがー」

従者「ああもう分かりましたよ……」
453: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/26(木) 19:10:58 ID:V5t1TG2Qic
王「いいんじゃない?」

姫「ほらあ」

従者「話にならない」
454: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/26(木) 19:11:26 ID:V5t1TG2Qic
従者「不審者が紛れ込んだらどうするんですか」

王「いないよ、そんな人」

姫「こんな平和ぼけした国だものねえ」

従者「それは認めますが、何かあってからじゃ遅いですよ」

王「うんうん、従者くんはしっかりしてるねえ」

従者「他人事みたいに!」
455: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/26(木) 19:11:55 ID:V5t1TG2Qic
王「まあまあ、試しに一回やってみたら?」

王「国民のみんなも、喜ぶんじゃないかなあ」

姫「じゃあ決定ね!」

従者「仕方ない……」

王「応援してるよー、ところで姫ちゃん」

王「それ、父さんも食べに行けるの?」

従者「それが目当てですか」
456: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/30(月) 22:08:31 ID:ogjb0kC5Sw
従者「という訳で実際にやってみることになりました」

姫「お客さんを入れるなら南棟がいいわね、厨房も近いし」

従者「離れはどうですか、城の方は立ち入り禁止にして」

姫「あー見栄え的に?」

従者「防犯的に」

姫「まあどっちでも構わないわ」

従者「なんか姫様最近適当になりましたね」
457: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/30(月) 22:09:02 ID:ogjb0kC5Sw
姫「適当……かしらねえ」

従者「王様に似てきたんじゃないですか」

姫「え、待ってそれ年頃の乙女に言う?」

従者「風格出てますよ、王家の」

姫「お父様には威厳がないって言ってなかったかしら」

従者「忘れました」

姫「あんたは前から適当だったわね」
458: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/30(月) 22:09:23 ID:ogjb0kC5Sw
従者「料理長さんの要望で、完全予約制のコース料理」

姫「なるほど、私たちが食べてるのと同じものを出すのね」

従者「負担が増えて、本業がおろそかになっては困るということですので」

姫「プレミア感も出るかしら」

従者「出るっちゃ出るんじゃないですか」
459: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/30(月) 22:11:04 ID:tbpDYj2bNQ
従者「さて、肝心の価格設定ですが」

姫「できるだけ安くしましょうよ」

従者「……収入を増やすための策じゃなかったんですか?」

姫「でも、高かったら来られない人もいるわ」

従者「そうですけど……」
460: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/30(月) 22:11:26 ID:tbpDYj2bNQ
姫「ええと、メニューは全部城の食事と一緒でしょ」

姫「おなじ品目を増やすだけならあんまりコストも掛からないようだし」パラパラ

従者「何ですかその本」

姫「厨房の収支明細表。資料室の帳簿より詳しいからって、料理長さんが」

従者「それはそれは」
461: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/30(月) 22:11:47 ID:tbpDYj2bNQ
姫「見る?」ヒョイ

従者「どうも。確かにそれなら結構いけますね」

従者「どのくらい値段下げます?」

姫「うーん……街の人が、娘の誕生日に奮発して家族で食事できるくらい」

従者「まあ常識的な回答で良かったです……となると」カリカリ

従者「このくらいでどうでしょう」ペラッ
462: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/1/30(月) 22:12:09 ID:tbpDYj2bNQ
姫「ちょっと高くない?」

従者「これ以上値切ったら収入大して変わりませんよ」

姫「世知辛い世の中ねえ」

従者「あなたがそれを言いますか」

姫「よし決定!大体これで纏めて、料理長さんに相談に行きましょう!」

従者「御意」
463: 名無しさん@読者の声:2012/2/1(水) 19:23:40 ID:PVr34oZfRs
初めから読んできた
読みやすい文だや
CCCC
464: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/4(土) 23:21:09 ID:wPFCMzneoQ
>>463
初めからとはお疲れ様です……w
すごく嬉しいです。支援ありがとうございます!(´∀`*)
465: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/4(土) 23:22:42 ID:YEY72tQYGM
王子「姫」

姫「あら、お兄様」

王子「なんだか最近、面白そうなことをやってるじゃないか」

姫「ふふふ、やりがいあるわよ。ただ経費削減するより」

王子「楽しそうで何よりだよ……」
466: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/4(土) 23:23:05 ID:YEY72tQYGM
宰相「上手く行くといいですね」

姫「ええ、本当に」

王子「その、水を差したい訳じゃないんだが、姫」

王子「小麦の供給は、きちんと安定しているのかい?」
467: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/4(土) 23:23:30 ID:YEY72tQYGM
姫「ええ、城のものを使うから、大丈夫だと思うのだけれど……」

宰相「……今は、ですね。もし不作が続いたら、そんなことも言ってはいられなくなります」

王子「やっぱりか……下手をすれば大赤字だ」

姫「え、待って。原因は冷害だったわよね、まさか続くの?」

宰相「自然現象ですから、はっきりとしたことは言えませんけれど、気温は例年より低いままです」
468: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/4(土) 23:23:53 ID:YEY72tQYGM
姫「そもそも、どうして不作があったのに供給が割と安定しているのかしら」

王子「価格は上がり気味だけどな」

宰相「備蓄がありましたし、人口も少ない国ですから、今年の分は西の島国からの輸入で賄えました」

姫「親交があって良かったわね……」

王子「それでも小麦に頼っていた輸出がなくなって、財政難と」

宰相「ええ」
469: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/4(土) 23:24:13 ID:YEY72tQYGM
姫「それじゃあ、備蓄ってことは」

宰相「ええ、不作が続けば対処しきれません」

王子「正直賭けだな」

姫「そんな……」

宰相「もっと他に、特産品があればよかったんですが」
470: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/4(土) 23:24:31 ID:YEY72tQYGM
姫「じゃあ、王立レストランの計画は?」

王子「何もやめなくてもいいんじゃないか」

宰相「はい、僕もそう思います」

宰相「せっかく姫様がお考えになったんですから、しっかり運営して頂いて」

宰相「ただ、駄目になったときのため、他にも何か策が必要かと思われます」

姫「策……」
471: 名無しさん@読者の声:2012/2/9(木) 07:28:09 ID:DSUxCDcptU
やっと追いついた!!!


支援です!!!!!!
472: 名無しさん@読者の声:2012/2/12(日) 17:28:46 ID:bIrhtTKJA6
三位おめです!

473: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/12(日) 22:51:03 ID:cdu7xIBYa.
こんばんは。自分の計り知れない場所で壮大な力が動いている気がしてならない1です。
なにこれこわい(((;゚Д゚))))

ランキング3位ということで、投票してくださった方ありがとうございました!
ご覧の通りの有り様で、更新率も落ちっ放しでお恥ずかしい限りですけれど、こんなに読んでくださってる方がいるならもっと頑張らなきゃと決意を新たにしております。

しかしまだ毎日更新は厳しい感じです。
この調子でまったり進めていきますので、気の向いたときにでも見て頂ければ幸いです。

では少しばかり投下してから失礼しますね(*゚ω゚)ノシ



>>471-472
支援とお祝いありがとうございます(´∀`*)
こんなゆっくりなのに見て頂けて有難いです。励みになりますw
474: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/12(日) 22:53:01 ID:1Mn.ULmtuc
姫「という訳なのだけど」

従者「やっぱり止めとくべきだったんじゃないですか」

姫「ううううるさいわね、大体従者も早く言ってくれれば良かったのに」

従者「はい?」

姫「どうせ気付いてたんでしょ、あんたのことだから」

従者「分かってるじゃないですか」
475: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/12(日) 22:53:30 ID:1Mn.ULmtuc
従者「北の穀倉地帯の不作」

従者「きっと帝国にも影響はあったでしょうね」

従者「でも我が国は、親交ある国との交易で事なきを得た……と」

姫「価格は上がったけれどね」

従者「でも奇跡的に僅かな幅でしょう」
476: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/12(日) 22:54:29 ID:YEY72tQYGM
従者「供給に関しては、今は安定してますし、まあ止めるほどの問題ではないと思いましたので」

姫「最初あんなに反対してたじゃない」

従者「察してくださいよ王様拗ねるじゃないですか」

姫「そこ!?」

従者「面倒事は嫌いです」キパッ

姫「国王を面倒事に入れやがったわこいつ」
477: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/12(日) 22:54:54 ID:YEY72tQYGM
姫「もう怒った」

従者「怒りましたか」

姫「ええ、仕返しにあんたを強硬突破してやるわ」

従者「と言いますと?」

姫「宰相さんが言ってた、他にも必要だという策……」

姫「こうなったら開き直って、やりたいようにやらせてもらうわ!」
478: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/12(日) 22:55:19 ID:YEY72tQYGM
姫「税金暮らしの私たちが、まともに商売やって儲かる訳がない」

姫「つまり利用できるものは利用するの」

姫「元手になるのは城よ!王族の権威と伝統、プレミア感なのよ!」

姫「その特権を最大限に利用するために……」

姫「城内見学ツアーを開きます!」バーン
479: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/12(日) 22:55:42 ID:YEY72tQYGM
従者「……はあ?」

姫「ふっふっふ。実はパーティーの頃から密かにやりたいと思ってたのよねえ」

姫「舞踏会の度に来ているとはいえ、国民の皆は城に興味津々だったわ」

姫「城に国民を招くとなれば、遊びに来たい人もいるはず……」

従者「そんなこと許せる訳ないじゃないですか!」

姫「ほらやっぱり」
480: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/12(日) 22:56:07 ID:YEY72tQYGM
従者「最初に城内で料理屋を開くっておっしゃったとき、俺、口を酸っぱくして言いましたよね」

姫「だからー、心配しすぎだってお父様も言ってたじゃない」

従者「このお気楽父娘めが」

姫「何とでもおっしゃい!今はお金が必要なのよ!」
481: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/12(日) 22:57:04 ID:YJIMGSU7Oo
姫「王立レストランに不安要素があるんだから、ますます他の策が必要になるわ」

従者「それには全面的に同意します」

従者「ですが、部外者を連れて城中ぞろぞろ連れ回すなんて……」

姫「でも、材料費も元手もいらない、こんなお得な計画を思い付いたのよ」

姫「誉めてほしいくらい」

従者「はいはい素晴らしいです」
482: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/12(日) 22:57:25 ID:YJIMGSU7Oo
姫「ともかく、色々並行して進める必要がありそうね」

従者「もう止めても聞かないんでしょうね……」ハァ

姫「当然。でも結局、手伝ってくれるんでしょう?」

従者「不本意ながら」
483: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/12(日) 22:57:50 ID:YJIMGSU7Oo
従者「約束の1年も、もう半分が過ぎてしまいました」

従者「残り半年で出来ることなんて限られて、利益もたかが知れています」

姫「でも、だからこそやらなくてはいけない」

従者「意識だけは素晴らしいというのに……」ホロリ

姫「何よちゃんとやってるわよ!」
484: 名無しさん@読者の声:2012/2/14(火) 01:39:28 ID:mjzUWfVgXI
3位入賞おめでとうございます(今更)
更新楽しみにしています(。-∀-)
しかし無理はなさらないで下さいね
[チョコ]ヽ(・∀・)ノC
485: 名無しさん@読者の声:2012/2/14(火) 08:02:19 ID:8ksx3rxlgY
追い付いた記念(^O^)/C
これからも頑張って下さい
486: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/16(木) 14:47:49 ID:TKQezqcdlg
>>484
支援とチョコとお祝いありがとうございます!
ゆっくりやらせて頂いてるので大丈夫なのですよ。お気遣い嬉しいです(*´ω`*)

>>485
追い付いてくださいましたか!(*゚ω゚)お疲れ様です。
支援ありがとうございます、頑張りますね(´∀`*)



今日は多分更新できるので後で来ますねノシ
487: 名無しさん@読者の声:2012/2/16(木) 18:42:01 ID:5RiZkxhOv2

追い付いたああ!
キャラみんな好きだぜ
(*^O^)ノCCCC

488: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/16(木) 22:26:21 ID:TKQezqcdlg
>>487
支援ありがとうございます!(*゚∀゚)
キャラ好きと言って貰えると嬉しいものですねw

ではぼちぼち投下します。
489: 引っ張った割に少しで申し訳ない ◆xXC7.dNnEA:2012/2/16(木) 22:28:38 ID:QZJczNwe4M
姫「という訳で王立レストラン開店の日になりました」

従者「展開早くないですか」

姫「メタ的発言禁止!」

料理長「いやあ、感慨深い。無事にこの日を迎えられて良かったですよ」

従者「大丈夫そうですか、準備の方は」

料理長「完璧です」ドヤァ
490: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/16(木) 22:29:06 ID:QZJczNwe4M
姫「ええと、ディナーの予約だったわよね。どのくらい入ったの?」

料理長「それがですねえ、見てくださいこの予約リスト!」ビッシリ

姫「うわ、結構いっぱい」

従者「なにこれこわい」

料理長「お陰様で開店前から大人気です」

姫「国民の皆さん、イベント好きだから……」

従者「そういう問題でしたっけ」
491: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/16(木) 22:29:24 ID:QZJczNwe4M
従者「これは相当忙しくなりますよ」

姫「本当に良かったの?お給料上乗せしなくて……」

料理長「ええ。密かにね、長年の夢でしたから」

料理長「叶えて頂いて、感謝してるくらいですよ」
492: 次は早めに来ます ◆xXC7.dNnEA:2012/2/16(木) 22:30:09 ID:QZJczNwe4M
従者「……ああ、ほら予約客の方がいらしたようですよ」

姫「あら本当、給仕の人も出てる」

料理長「では私はこれで!」

姫「あ、料理長さん」

姫「頑張ってね!」

料理長「はい!」
493: 名無しさん@読者の声:2012/2/19(日) 23:52:49 ID:Ou70Vp7aU.
追い付いた
面白いCCCC
494: 名無しさん@読者の声:2012/2/22(水) 12:16:54 ID:2D1tz6wMaE
面白いです‼
>>1さんがんばれ( ´ ▽ ` )ノCC

495: 名無しさん@読者の声:2012/2/22(水) 18:27:48 ID:nfXWrQKYlE
追いついた
置いときますね(´▽`)ノCCCC
496: 名無しさん@読者の声:2012/2/22(水) 23:29:07 ID:9.rARAXi9k
追いついたっ

支援!
497: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/24(金) 00:20:59 ID:wPFCMzneoQ
支援の多さに申し訳なさが半端ない1ですこんばんは!
結局一週間空いてしまいましたね……すみません(´・д・)
しかしリアルの方も落ち着きつつありますので、徐々に更新ペースを戻していけたらなあと思っています。

ということで、追い詰められないとやらない人なので宣言しときます。
そのうち毎日更新に戻す。
これでまた停滞してたら単なるサボりですから、どうか優しくプギャーしてやってくださいw

では久々の更新にいきます。



>>493-496
纏めてのお返事で失礼しますね。
最近追いつくのが流行ってるんでしょうか、嬉しいやら申し訳ないやらで……w
支援ありがとうございました!(´∀`*)
498: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/24(金) 00:22:34 ID:RXwsYJSRA.
父「うわっこれ美味しいなあ」モグモグ

娘「うん、本当に。見た目も綺麗ですごーい」

母「思い切って父さんのへそくりで来てみて良かったわねえ」

父「待ってくれ母さん、今何か不可解な単語が」

娘「何も不思議なことはないじゃない、ねえお母さん」

母「そうねえ、父さんも耳が悪くなったのかしら」

父「えっ」
499: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/24(金) 00:23:02 ID:RXwsYJSRA.
父「まあ構わないか、結婚記念日だし」

母「ふふ」

娘「記念日にへそくり使ってくれるなんて、お父さんやるぅー」

父「いやあのお金は欲しいワインがあってね」

母「やるぅー」

父「なんかもうそれでいいや」
500: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/24(金) 00:23:24 ID:RXwsYJSRA.
給仕「お客様。お食事中に失礼致します。お通ししたい方がいるのですが」

父「え、はい構いませんが……いいだろう?」

母「ええ大丈夫だけれど……どなたかしらねえ」

娘「王子様だったりして」クスッ

母「まさかまさか」クスクス

王子「突然お邪魔して申し訳ありません」

母娘(ええええええ)ビクッ
501: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/24(金) 00:23:42 ID:RXwsYJSRA.
娘「えっえっ王子様!?なんで?」ワタワタ

母「おおお落ち着きなさい大丈夫、そうよここはお城だから当然っちゃ当然」アワアワ

父「でっでも私達は何も聞いていないだろう?」

姫「ええ、突然だったもの」

娘「姫様まで!」
502: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/24(金) 00:24:01 ID:RXwsYJSRA.
王子(なあ姫、どうして俺まで)コソッ

姫(だってお店は最初の評判が肝心なんだもの、どうしても)コソコソ

王子(だからって俺まで引っ張り出さなくても)

姫(だってあの母娘ミーハーっぽいし)

母「まさかこんなお近くでお会いできるなんて……」

娘「夢みたいねお母さん!」

王子(まあそれは当たってるようだけど……)
503: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/24(金) 00:25:01 ID:cdu7xIBYa.
姫「どうだったかしら、食事の方は」

母「ええとても美味しくて。お陰様で最高の記念日です、ねえ父さん」

父「結婚20年なんですよ、節目の年が良い日になりました」

王子「そのお手伝いをできたなら、幸せです」ニコッ

娘「」クラッ
504: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/24(金) 00:25:20 ID:cdu7xIBYa.
姫「気に入って貰えたなら良かった。きっと料理長さんも喜ぶわ」

父「私たちも感謝ですよ、美味しいものを食べさせて頂けて」

娘「へそくりを使ってくれる、家族思いの良い父なんです」

父「何で嘘強調するかなあ」

姫「素敵なお父様ね」

父「姫様まで」
505: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/24(金) 00:25:52 ID:cdu7xIBYa.
王子「それにしても、よく予約を取られましたね」

母「久々にね、昔に戻ってみたかったんですよ」

母「貯蓄や将来のことも分からなかった時代は、週末にはちょっとした贅沢をしていたんです」

母「今は勿体なくて、到底そんなことはできませんけれど……」

母「少しくらいは、ね?」クスッ

王子「…………、」
506: 名無しさん@読者:2012/2/24(金) 02:17:26 ID:aDHqf8udzU
追い付いた
読みやすくていっきに読んじゃいました。続きがたのしみ!
C
507: 名無しさん@読者の声:2012/2/25(土) 00:25:54 ID:9b5/3BfUwM
サラサラ読めますね!読んでて気持ちいいです!
四円、置いておきます。
508: 名無しさん@読者の声:2012/2/26(日) 18:39:13 ID:6ryzL53E0I
私怨
509: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/26(日) 22:50:01 ID:CDn3vnH7O.
>>506-508
支援ありがとうございます(´∀`*)
皆さんのコメントが優しすぎて幸せですありがとうございます。

さてさて更新していきます\(`・ω・´)/シャキン
510: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/26(日) 22:51:16 ID:/h1J5f9sxg
姫「……帰ったわね」

王子「帰ったな」

姫「お兄様は手応え、あったと思う?」

王子「さあなあ」
511: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/26(日) 22:51:39 ID:/h1J5f9sxg
王子「でも、まあ喜んでたし」

母『家族揃って食事をできるって、とても幸せなことですね』

王子「……良かったんじゃ、ないかい」

姫「曖昧ね」

王子「いいだろう、別に」
512: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/26(日) 22:52:19 ID:/h1J5f9sxg
王子「さて姫、俺らも夕食にしようか」

姫「すっかり遅くなっちゃったわね」

王子「料理長さんが、俺らの分を取っておいてくれてるらしい」

従者「王様と王妃様もお待ちですよ」ヌッ

姫「あんた本当いきなり出るわね」
513: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/26(日) 22:52:49 ID:/h1J5f9sxg
王子「……って、父上と母上も?」

従者「ええ、特に王様は空腹と家族団欒を天秤にかけて葛藤なさってます」

姫「うわっ面倒臭い……急ぎましょうお兄様」

王子「分かっているよ」
514: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/26(日) 22:53:10 ID:/h1J5f9sxg
姫「あ、それとお兄様!」

王子「うん?」

姫「急に無理言ってごめんなさい。来てくれてありがとう!」

王子「……、こちらこそ」

母『どうか王族の皆さんも、幸せでありますように』

王子「さあ、夕食に急ごうか」
515: 名無しさん@読者の声:2012/2/28(火) 12:08:28 ID:peBMWugcX6
従者と王子の不仲コンビたまりません(o>ω<o)かわいい!
料理長と結婚したい(*゚∀゚)ニヤニヤ
姫ちゃんも>>1さんも頑張れー!!
支援っ!
516: 名無しさん@読者の声:2012/2/28(火) 13:42:17 ID:kl8E2gL2EM
追い付いてしまった支援
517: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/29(水) 22:18:46 ID:YJIMGSU7Oo
>>515-516
支援ありがとうございます!

また間が空いてしまったすみません……(ノ_・。)
更新にいきます。
518: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/29(水) 22:19:19 ID:YJIMGSU7Oo
勇者『風の噂で姫のことを聞きます』

勇者『相変わらず、面白そうなことをやってるみたいだね』

勇者『俺は至って順調です』

勇者『特許状を見せた途端に殴りかかられたり盗まれたり追い出されたり詐欺にあったりもしましたが』

勇者『傷薬をおまけして貰ったり料理屋のおばちゃんに唐揚げをサービスして貰ったり、悪いことばかりではありません』
519: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/29(水) 22:19:51 ID:YJIMGSU7Oo
姫「……ねえこれ、特許状持って行かない方が良かったんじゃないかしら」カサッ

従者「また勇者さんの手紙ですか」

姫「本当にまめよねえ」

従者「喜ばしいじゃないですか、遠距離で」

姫「何が遠距離よ」
520: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/29(水) 22:20:14 ID:YJIMGSU7Oo
姫「よし。勇者は心配いらないし、私たちは財政の心配をするだけね」

従者「レストランも普通に回ってますしね」

姫「ええ、慣れてきたから定員増やしても平気ですって、料理長さんが」

姫「価格低めでランチも始めたいそうよ」

従者「商魂たくましいですね」
521: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/2/29(水) 22:20:34 ID:YJIMGSU7Oo
従者「と、なりますと。次は城内見学ツアーですか」

従者「……本気でやるんですか?」

姫「往生際の悪い」ボソッ

従者「心配してるんです!」
522: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/1(木) 23:37:16 ID:e97/5BlBFw
姫「つべこべ言わずにプラン練るわよ」

従者「本当姫様こういう時だけ生き生きしますよね」

姫「客人用の城内案内は持ってきてくれた?」

従者「ええ、ここに」バサッ

姫「それなりに大きい冊子ね、少し取っつきにくい……」パラパラ

従者「城内を歩きながら捲るにはいささか無理がありますね」
523: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/1(木) 23:37:39 ID:e97/5BlBFw
姫「よし、じゃあ簡易版を複製して参加者に配りましょう」

従者「パンフレット的な感じですね?」

姫「察しがよろしい」

従者「当然です」フーン

姫「という訳で従者、作成よろしく」

従者「えっ」
524: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/1(木) 23:38:06 ID:e97/5BlBFw
姫「だって私こういうの作るの苦手だもの」

従者「確かに姫様にやらせたらそれはそれは酷い代物が出来上がるだろうことは分かりきってますがちょっと待ってください」

姫「そこ分からないで」

従者「まさか俺に丸投げという訳ではありませんよね?」

姫「え?駄目?」

従者「駄目です!」
525: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/1(木) 23:38:30 ID:e97/5BlBFw
従者「せめてメインに据えるものとかどこを回るかの詳細を決めて頂かないと」

姫「ほうほう。例えば」

従者「客人案内が既にこの厚さですよ、地味な場所はとばして見せる場所を厳選しないと」

姫「となると、ルートも考えなくちゃね……まあそれは後でも構わないわ」

従者「地図や挿絵のことも考えると、一刻も早く決めるべきですね」
526: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/1(木) 23:38:54 ID:e97/5BlBFw
姫「という訳で従者、城のどこが見所だと思う?」

従者「え、俺ですか?」

姫「色んな人に聞こうと思ったから、とりあえず目の前にいる従者に」

従者「そうですね……」
527: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/1(木) 23:39:19 ID:e97/5BlBFw
従者「薬草園はどうですか」

姫「あら、意外な選択」

従者「ガラス張りの温室になっていて綺麗ですよ。広さもありますから、見学には向いているかと」

姫「私はあんまり行かないわね……今度見てみようかしら」

従者「やめてください俺の癒しが」

姫「何それ私のどこが邪魔だって言うの!」

従者「強いて言うならそんなところが」
528: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/1(木) 23:39:45 ID:e97/5BlBFw
姫「ともかく、色んな人に聞きに行きましょう」

従者「城を回ってみますか」

姫「回ってみますわよ。ひとりじゃ到底思い付かないわ」

従者「御意」
529: 名無しさん@読者の声:2012/3/1(木) 23:49:45 ID:7/ngPJy5m.
やっと追いついた!
面白いから支援!!
530: 名無しさん@読者の声:2012/3/2(金) 11:41:34 ID:WM9IHNRxY2
つCCCCCCCC
531: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/4(日) 00:00:49 ID:xiBbhMcbRE
>>529-530
支援ありがとうございます(´∀`*)


また日数空けてしまいました……不覚。
更新に参ります。
532: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/4(日) 00:01:18 ID:xiBbhMcbRE
姫「という訳でまずはお父様とお母様からです」

姫「質問。この城の見所はどこですか」

王「何なに、何やってんの姫ちゃん。楽しそうなこと?」ワクテカ

姫「まあそんなとこ」シレッ

従者「姫様今めんどくさがりましたね」

王妃「まあ従者くん、黙っててあげましょうよ」
533: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/4(日) 00:01:35 ID:/a7K3kL86k
王「そうだなあ、やっぱりこの部屋じゃない?」

姫「って言うと、謁見の間?お父様、ツアーのお客さんに会ってくれるんですか?」

王「うん、父さんもみんなと話したいからねー。姫ちゃん連れてきてよ」

王妃「母さんも構いませんよ。姫ちゃんの頼みだったらね」

姫「ありがとう、お母様!」
534: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/4(日) 00:01:56 ID:/a7K3kL86k
姫「お父様にも会えるし、この部屋自体も一際豪華な装飾が施されているわ」

姫「名画にステンドグラスにシャンデリア……多分、なかなか楽しんで貰えるんじゃないかしら」

姫「いいわよね、従者」

従者「衛兵は倍にしてくださいよ」

姫「あら、止めないのね」

従者「諦めました」
535: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/4(日) 00:02:15 ID:/a7K3kL86k
姫「ともかくありがとうお父様、お母様!」

王「じゃあ姫ちゃんも頑張ってねー」ヒラヒラ

王妃「うふふ、従者くんもよろしくね」

従者「……御意」ハァ

姫「次行くわよ次!」
536: 名無しさん@読者の声:2012/3/4(日) 03:48:52 ID:Fw/mIP5nxE
支援w
537: 名無しさん@読者の声:2012/3/4(日) 18:25:55 ID:zJRVB2X7Ec
しえん( ̄∀ ̄)つC
538: 名無しさん@読者の声:2012/3/5(月) 01:06:54 ID:1buzyVW/1k
男は黙ってしえんCCCCCC
539: 名無しさん@読者の声:2012/3/5(月) 09:20:37 ID:wv80nK0IHs
>>1さんのせいで徹夜で読んで寝れなくなってしまったw
頑張って下さい(・ω・)
つCCCCCCCC
540: 名無しさん@読者の声:2012/3/6(火) 23:57:47 ID:LVeQmVhx2k
しえーん
541: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/3/8(木) 23:05:13 ID:PP9g2DsZ/6
更新再開と言った矢先にすみません。
当分書けそうにないので、中途半端なところではありますが未完庫に送らせて頂きます。

このままぐだぐだと停滞するよりは、少しお休みを頂いてある程度固まってから再開すべきだと思いました。
待っていてくださった方には本当に申し訳ないです。

すごく書きにくいけれど自分でも愛着はありますから、必ず完結はさせます。
そのうち再開したら、よかったらまた覗いてやってください。
542: 名無しさん@読者の声:2012/3/8(木) 23:54:15 ID:z89kPeOG5.
ゆっくりでいいよ!
待ってるから頑張れ(*^O^*)
CCCCCCCCCC
543: 名無しさん@読者の声:2012/3/9(金) 13:11:52 ID:Xluuudljj2
完結するまでずっと見るので待ってます!!(^-^)
CCCC
544: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
545: 真・スレッドスターター:再開
再開しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
546: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:02:56 ID:ZqWK54XFm6
お久しぶりの方も初めましての方もこんばんは、>>1です。
一度は未完庫に送らせて頂いたSSですが、また更新できるようになったので出して頂きました(´∀`*)
暖かい言葉をくださった方、本当にありがとうございました。励みになりました!

書き溜めもしっかりさせたので、今度こそ安定した更新で頑張ります。
ていうか猛スピードで完結させます。携帯のデータが飛ばない限り(`・ω・´)
よろしければ、また覗いていってください。

では早速投下しますね(*゚ω゚)ノシ
547: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:05:42 ID:DSgCxQqiRY
>>535の続き



王子「で、見所かい?」

姫「色んな人に聞いてるの。この城のどこが見所だと思う?」

王子「すぐには思い付かないな……宰相はどう思う?」

宰相「僕ですか?僕は……うーん、どうだろう。図書館は心が落ち着きますよね」

従者「図書館……資料室とは別の、あの大きな棟ですよね」

宰相「ええ」
548: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:06:08 ID:DSgCxQqiRY
宰相「城の東の外れにあって、静かで良い場所ですよ」

宰相「著名な建築家に建てさせたというだけあって、装飾も凝っています」

宰相「あそこなら機密文書もありませんから、一般国民を入れても大丈夫なはずです」

姫「なるほどね……」
549: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:06:27 ID:DSgCxQqiRY
王子「あ、思いついた」

王子「そういうことなら、乗馬場はどうだい?」

姫「乗馬場?お兄様は、確かよく練習に行ってるわよね」

王子「ああ。なかなか良いところだよ。きっと乗れなくても楽しめる」
550: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:06:48 ID:DSgCxQqiRY
王子「普段は騎馬兵の訓練に使ってる場所で、緑の丘が広がる良い場所だよ」

王子「何もないけど、訓練は見物だと思う。結構派手に走らせたり、隊列を組んだりしているから」

姫「それ、見られる?」

王子「馬小屋の番は調教師がしているんだが、いつも暇だって言ってるから実演してくれるかもしれない」
551: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:07:16 ID:DSgCxQqiRY
従者「だいたい良いですね」

姫「そうね、参考になったわ。ありがとう、ふたり共!」

従者「距離と時間の関係で、採用になるかは分かりませんが」

王子「何だ、なら早く言ってくれよ」

従者「まさかお気付きでなかった」

姫「はいストップー、次行きましょうさようなら!」

宰相「お気をつけて」
552: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:08:40 ID:c7b/jBefIw
姫「……と、いう訳なのだけれど」

姫「この城の見所はどこだと思う?」

舞踏家「その前に姫様、自分からも質問が」

舞踏家「私って捨てキャラじゃなかったんですか」

姫「作者に聞いて」
553: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:09:01 ID:c7b/jBefIw
従者「ともかく、色々な人に聞いて回っているんです。何かありませんか」

舞踏家「そうですね……自分は特に。城に来ることも多くはありませんから」

舞踏家「ああ、でも強いて言うなら、中庭はすごく好きです。いつも綺麗に手入れされてますよね」

姫「ああ、あそこ」
554: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:09:28 ID:c7b/jBefIw
姫「そういえば、舞踏家さん知ってる?中庭の薔薇の花壇はお父様が自ら手入れしているのよ」

舞踏家「え、そうなんですか!」

従者「流石に全部は無理ですからね、そこで妥協してるみたいです」

姫「本当は中庭に巨大迷路を作りたかったみたい」

舞踏家「へえ……」
555: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:09:49 ID:c7b/jBefIw
舞踏家「でも意外です。王様が直接城内のことをしてらしたなんて」

従者「結構多いですよ。ねえ姫様」

姫「そうね、皆知らないだけで割とたくさん……」ハッ

姫「もしかして、こういう裏情報を紹介する感じで説明したら良いのかしら」

従者「裏情報、ですか」

姫「ええ」
556: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:10:15 ID:c7b/jBefIw
姫「例えばお母様は乗馬がお上手とか」

姫「お兄様はピーマンが嫌いとか」

舞踏家「姫様は踊りが苦手でらっしゃる、とか?」

姫「そう!……って、え?」ヒヤッ
557: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:10:41 ID:c7b/jBefIw
舞踏家「せっかく少しだけ上達なさったのに、パーティー以来練習に来てくださいませんよね」ジリッ

姫「それはその、色々忙しくて」ジリッ

舞踏家「少し期間を空けるだけで、定着していない体はすぐに鈍ってしまうんですよ」

姫「あのっ舞踏家さん!私、他の人にも聞かなきゃいけないから!」

従者「逃げるんですか姫様」

姫「いいから行くわよ!舞踏家さんありがとう!じゃあさよならっ」ピュッ
558: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:12:05 ID:c7b/jBefIw
姫「危なかったわ……」

従者「素直に練習しておけば良かったものを」

姫「そうもいかないのよ。全く……」

姫「あら?向こうにいるのは、もしかして」

仕立屋「あ、姫様お久しぶりです!」パアッ
559: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:12:30 ID:c7b/jBefIw
姫「仕立屋さん!来てたのね」

仕立屋「はい、定期採寸の日ですから」

仕立屋「お城の使用人さん達の制服も、うちでお作りしているんですよ」フフン

従者「俺もお世話になってます」

姫「そういえばこいつ使用人だったわね」

従者「忘れてたんですか」
560: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:13:04 ID:c7b/jBefIw
姫「ちょうど良いわ。仕立屋さん、この城に何か見所ってないかしら」

仕立屋「見所、ですか?」

姫「ええ。実はかくかくしかじかという訳で」

仕立屋「かくかくしかじかじゃ分かりませんわ」

従者「使いたかっただけですよね」
561: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:13:25 ID:c7b/jBefIw
仕立屋「私がお勧めするなら、やっぱり何と言っても衣装部屋ですね!」

姫「え?でもあそこ、簡単に言うとクローゼットよ?」

仕立屋「クローゼットで良いんです。広さと中身と種類が凄いですから」

仕立屋「初めてお城にお呼ばれして衣装部屋に入ったとき、私、感動しましたわ」

仕立屋「あんなに色とりどりのお洋服に囲まれたの、生まれて初めてでしたもの……」ポワーン

従者「戻ってきてください」
562: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:13:51 ID:c7b/jBefIw
仕立屋「と、ともかく」コホン

仕立屋「男性は分かりませんけれど、女性には喜ばれるのではないでしょうか」

姫「なるほどね……考える価値はあるかしら」

従者「候補には入れて構いませんね」

姫「ありがとう、仕立屋さん。参考になったわ」

仕立屋「いいえ、また何かありましたら何なりと」
563: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:15:16 ID:yHuRSWudJ.
従者「……と、いう感じで色々話を聞いて回った後、姫様と相談して大体のルートを決めました」

従者「そうなると挿絵や案内図、地図が必要になってくるんですね」

従者「しかし、生憎と俺には絵心と言うものがありませんので」

芸術家「それで、僕のところに来てくださったんですね」ニコリ
564: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:15:41 ID:yHuRSWudJ.
芸術家「あ、すみませんお茶も出さず。今お持ちしますね」ガタッ

従者「いえお気になさらず」

芸術家「いえいえ、少々お待ちを」ズルッ

芸術家「」ベシャッ

芸術家「…………」ガツッ バサバサ

従者「……お気になさらず」
565: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:16:03 ID:yHuRSWudJ.
芸術家「あはは、引っ越してもあまり変わりませんね、お恥ずかしい」ボロッ

従者「逆に安心しましたよ」

芸術家「あ、そうですか?それは良かったです」

芸術家「僕も、意外と普通にやれてるみたいですから」

従者「はあ」
566: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:16:34 ID:yHuRSWudJ.
芸術家「僕が城を出てから、色々なことが変わりました」

芸術家「収入は僅かで、そのお金も生活費に消えてしまう」

芸術家「高額な画材は中々使えなくて、その分技術を磨き工夫を凝らしました」

芸術家「でもね、楽しいんですよ」

芸術家「僕は僕自身の力で生きられている」
567: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:16:55 ID:yHuRSWudJ.
芸術家「ようやく実力を、試すことができました」

従者「……本当に、そうでしょうか」

従者「実力なんて試すまでもなく、証明されていた」

従者「貴方が王様の保護を受けていたのも、貴方の実力で勝ち取った結果です」

従者「城を出る必要なんて、なかったんですよ」
568: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:17:21 ID:yHuRSWudJ.
芸術家「嬉しいことを、言ってくださるんですね」

従者「真実です」

芸術家「……僕はね、運が良かったんです」

芸術家「まだ目立った苦労もしないうちに王様に見初められて、助けて頂けた」

芸術家「僕よりも上手くて苦労している人なんて、まだたくさん」
569: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 00:17:48 ID:yHuRSWudJ.
従者「……そうですか」

芸術家「ああ、すみません。少しおかしな話になってしまいましたね、あはは」

芸術家「案内図の件、承りました。いつ頃までに仕上げれば良いでしょうか?」

従者「できるだけ早く。数日以内にできますか」

芸術家「ええ、勿論です。ご都合の良いときに取りにいらしてくださいね」

従者「分かりました」
570: 名無しさん@読者の声:2012/6/15(金) 01:28:57 ID:oI.61VwX9o
おかえり!待ってました!

こっそりと支援
571: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:05:55 ID:vmvtnDU2GI
>>570
支援ありがとうございます(´∀`*)
忘れ去られてたらどうしようと思ってましたw
ただいま!

では今日も投下していきますねー
572: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:08:48 ID:c7b/jBefIw
従者「完成しました」

姫「あら素敵」

従者「渾身の力作です。主に芸術家さんの」

姫「待って従者あんた芸術家さんに会ったのっ!?」ガターンッ

従者「それが何か」

姫「何かじゃないわよ!」
573: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:09:15 ID:c7b/jBefIw
姫「芸術家さん、どうだった?元気そうだった?」

従者「生き生きしてましたよ。毎日楽しいって」

姫「それなら良かったわ……心配してたんだから」

姫「従者も行くなら言ってよ」

従者「だって言ったら姫様ついて来るじゃないですか」

姫「うん」
574: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:09:39 ID:c7b/jBefIw
従者「駄目です」

姫「なんで」

従者「あんた一国の姫君なんです。ホイホイ連れ歩けません」

姫「人をペットのように」

従者「自覚を持ってください」

姫「すいません」
575: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:10:01 ID:c7b/jBefIw
従者「ともかく、これで大体の用意は整いましたか?」

姫「ええ。それぞれの管理の人達にも許可を取ったし、衛兵も動かして貰えるみたいだし」

姫「申し込み者の予約リストはこの通り」ズラッ

従者「何やったんすか姫様」

姫「強いて言うならフィクション的補正を」

従者「すごい今更なこと言いましたね」
576: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:10:25 ID:c7b/jBefIw
従者「えー、見学ツアーにご参加の皆さんはこちらにお集まりください」

従者「こちら東門前の集合場所にてチケットを拝見しまーす」

従者「ていうか受付なんてその辺の使用人にやらせればいいのに……」ハァ

村人「あのー、受付ここですか?」

従者「はい、本日はご参加頂きまして真にありがとうございます」ニコリ
577: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:10:49 ID:c7b/jBefIw
少年1「すげー!まじで城だ、でけー!」キラキラ

少年2「うははっあの銅像変な顔ー!」ギャハハハ

従者(既に頭痛い)ズキズキ

少女「ママぁほんとにお姫様がいるのー?」

母親「ええ、いるわよ。きっと素敵なお姫様がね」

従者(子供の夢を壊さなければいいんですが)ハァ
578: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:11:09 ID:c7b/jBefIw
姫「本日はお集まり頂きありがとうございます」

姫「国民の皆さんにも城のことを知って貰いたいと思って開いた催しなのだけれど……」

姫「こんなに皆さんが来てくださって喜ばしいわ」

姫「どうか今日は、楽しんで行ってくださいね」
579: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:12:44 ID:lcHbkP.jag
姫「では、まずお手元の案内をご覧ください」

村人「あー、これか?」ゴソゴソ

町人「やっぱり随分と広いもんだなあ」パラッ

姫「ええ、その通り。ですから今日は、その案内図の一部、庭を中心に東から南の辺りを見て頂くことになります」

姫「少し歩きますが……」

村人「問題ないですよ、なあ」

町人「折角のツアーだもんなあ」
580: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:13:07 ID:lcHbkP.jag
少年1「はいはい、しつもーん!」バッ

父親「あっこら失礼を、すみません姫様」アワアワ

姫「構いませんよ。何かな、君」

少年1「王様には会えますか!」

姫「会えます」キパッ

父親「会えるんですか!?」ギョッ
581: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:13:51 ID:w/4wt7Bbn.
姫「さらに王妃様や王子様にも会えます」

少年2「すげえええええ」

父親「なんて豪華な……お忙しいでしょうに、我々のために時間を割いてくださるなんて……!」

姫「え、ええ。まあ」

姫(言えない……全員嬉々として待ち構えてるなんて……)
582: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:14:18 ID:w/4wt7Bbn.
姫「何はともあれ出発です!」

従者「参加者の皆さんは自分についてきてください」

町人「あれ?姫様ではないんですか」

姫「ええ、皆さんとのお話を大切にしたいので」ニコリ

従者(嘘つけ)コソッ

姫(いいから黙って道案内しなさい)ゲスッ
583: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:14:42 ID:w/4wt7Bbn.
姫「えー、あちらに見えます尖塔の建物が図書館ですね」

姫「かの有名な建築家の某方が建てたとか建ててないとか」

従者「どっちですか」

姫「建てました」

従者「最初からそう言えば良いものを……」
584: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:15:15 ID:w/4wt7Bbn.
母親「それにしても広い……下手したら迷子になりそうね」

父親「姫様、よく覚えてらっしゃいますね」

従者「ええ本当は覚えてらっしゃらないですけど」

姫「黙んなさい」

従者「姫様、口調が崩れて」
585: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:15:43 ID:w/4wt7Bbn.
姫「こちらが図書館前の庭園ですね」

姫「あそこにあるのが、王室で保護していた芸術家が数年前に作ったオブジェで……」

子供1「すげー!何あれおもしれー!」

子供2「行ってみよーぜー!」ダッ

姫「あっ、こら皆待ちなさい!従者!」

従者「やっぱり俺が追いかけるんですね!」ダッ
586: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:17:24 ID:PjcZj3CCeQ
従者「こら!勝手に違う場所に行っちゃいけません!」バタバタ

子供2「追いかけてくるぜー」ケタケタ

子供1「逃げろー!」キャハハハ

従者「くっ……誰が好き好んで子供と鬼ごっこなんて……」ゼェハァ

従者「それにしても疲れる……年か……?」ゼェゼェ
587: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:17:49 ID:PjcZj3CCeQ
子供1「あっちにも何かあるぞー!」

子供2「まじか!どこ……ってうわっ」ドンッ

青年「捕まえた」ガシッ

子供2「やめろー!放せ不審者!」ジタバタ

青年「不審者とは心外だなあ。そっちの君も戻るよ」ヒョイッ

子供1「だ、抱っこすんな!だせえ!降ろせ!」バタバタ

青年「君らが逃げないならね」スタスタ
588: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:18:08 ID:PjcZj3CCeQ
青年「捕まえましたよ、どうぞ」

子供1「捕まったー」ブスッ

子供2「連れ戻されたー」ムスッ

従者「どうも……ありがとうございます」ゼェハァ

青年「従者さんも大変ですね」

従者「ええ、まあ……って、あれ?」
589: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:18:31 ID:PjcZj3CCeQ
従者「もしや、先日のパーティーで姫様と踊ってらした方ですか?」

青年「はい、先日は素敵な催しに参加させて頂きありがとうございました」

従者「それは姫様に……というか、失礼ですがどちらの方ですか」

青年「他国の者です。休みを利用してこの国を訪れたので、この機会に色々と」

従者「はあ……」ジロジロ
590: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:19:02 ID:c7b/jBefIw
青年「……自分の顔に何かついていますか?」

従者「いえ、失礼しました」

従者「ともかく、折角いらしたのですから楽しんでいってください」

従者「彼らにもきちんと言い聞かせますから」

子供1「話終わった?」

従者「終わりましたよ。さあ、戻りましょうか」
591: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:19:24 ID:c7b/jBefIw
姫「――という訳で、この中庭で見学箇所は最後になります」

姫「皆さん、長い間お疲れ様でした」

従者(本当に疲れましたよ……)

従者「では、これより出口までご案内しますので……」

姫「その前に」ニヤリ

従者「は?」
592: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:19:45 ID:c7b/jBefIw
姫「お待ちかねの自由時間です」

従者「聞いてませんよ!?」ガーン

姫「言ってませんもん」シレッ

村人「やったな、どこ行こうか」

町人「こっちの建物行ってみないか?」

姫「皆さん一時間後にここに集まってくださいねー!」

従者「ああもう手に負えない!」
593: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:21:15 ID:PjcZj3CCeQ
ワイワイ ガヤガヤ…

王「従者くんは正しかったねえ、ツアー客に異国の皇太子が紛れ込んでるんだから」

皇子「しかも普通に国王と対峙してますからね。これが暗殺者だったらどうするんでしょうか」

王「まあ、いないだろうけどね。だからこんなでもこの年まで生きてるよ」

皇子「まあ、かなり警戒はされましたけど……」
594: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:21:44 ID:PjcZj3CCeQ
皇子「……平和ですね。俺の国では考えられないくらい」

王「平和は嫌いかい?」

皇子「いいえ。とても尊いことだと思います」

皇子「ただ……それが束の間のものだと思うと」

王「まあねえ」
595: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:22:18 ID:PjcZj3CCeQ
皇子「冷害による小麦の不作……それは我ら帝国でも同じことです」

皇子「父上は焦っている」

皇子「財政を立て直すべきは、貴方の王国だけじゃありません」

王「……分かっているよ」

王「君のところも、他国にお金を貸してる場合じゃないだろうに」
596: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:22:40 ID:PjcZj3CCeQ
王「それにしても、よく遊びに来るね」

王「こっちは嬉しいけど、そんなに抜け出して良いものなのかい?」

皇子「暇ですから。……国のことなんて、何もやらせて貰えない」

王「勉強は?」

皇子「父上は、自分を学者にしたいのでしょうか」

王「そう言われてもねえ」
597: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:23:06 ID:PjcZj3CCeQ
王「言ってみればいいじゃない」

王「国政をやりたいです、って」

皇子「……許されることでしょうか」

王「君のお父さんは厳しいからね……でも、言ってみる価値はあるんじゃない」

皇子「鼻で笑われますよ」

皇子「父上はまだ、これっぽっちも政権を手放す気なんてない」
598: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:23:30 ID:PjcZj3CCeQ
王「……まあ、また嫌になったらおいでよ。話くらいは聞いてあげるからさ」

皇子「恐れ入ります」ペコリ

王「まあ、聞いてあげられるのもあと少しの間だけどね」クスクス

皇子「…………」
599: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:24:25 ID:PjcZj3CCeQ
皇子「……自分には、何もできません」

皇子「申し訳ない……!」

王「いいんだよ。ごめんね、気にしないでくれるかい」

王「元はといえば、全部自分が悪かっただけなんだ」

皇子「…………」

皇子「また、伺います」

王「うん。……またね」
600: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:25:33 ID:PKjewJBY12
従者「あ り え ま せ ん !」バーン

姫「何がよー、あー肩こった」トントン

従者「何がじゃないですよ何ですか自由時間って!」

姫「自由時間のないツアーなんて企画者の自己満よ自己満」

従者「だからって部外者野放しにするとか論外です論外」
601: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:26:29 ID:PKjewJBY12
姫「でも、皆喜んでたでしょ?」

姫「なら十分じゃない」

従者「それは……、まあ、」ハッ

従者「流されませんよそれとこれとは話が違います」

姫「ケツの穴小さい男……」フゥ

従者「一国の姫君がそんな言葉使っちゃいけません!」
602: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:26:58 ID:PKjewJBY12
姫「ともかく、見学ツアーが上手くいったから次も色々やるわよ」

姫「乗馬場と多目的ホールを有料で一般解放、衣装部屋も解放したら需要あるかしら?」

姫「図書館も一部の学者さんには使用料とって使わせていいかもしれないわね」

従者「それ全部王城開放系じゃないですか」

姫「だっていちばん儲かりそうなんだもの!」

従者「学習して下さい!」
603: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:27:32 ID:PKjewJBY12
王妃「姫ちゃん、色々やってるわね」

王「そうだね。でも……」

王「もう、駄目なんだろう?」

宰相「……ええ」
604: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/15(金) 22:28:00 ID:PKjewJBY12
宰相「リストラも大規模な増税もなしに収入を増やすなんて不可能です」

宰相「……間に合いません」

王「せめて、期限いっぱいまでは何も言わないでくれないかな」

宰相「はい。仰せの通りに」

宰相「あんなに、頑張ってらっしゃいましたもんね……」
605: 名無しさん@読者の声:2012/6/16(土) 11:41:00 ID:R8xU.AEHJM
再開まってたよぉ〜( ̄∀ ̄)

CCCC
606: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:48:57 ID:lcHbkP.jag
>>605
たいへんお待たせしちゃいました……(ノ∀`)
支援ありがとうございます!

では今日もさくさく参りますよ\(`・ω・´)/
607: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:50:16 ID:Ton..bW6Ps
勇者『もうすぐ期限が迫る頃ですね』

勇者『姫の節約が上手くいっていることを祈っています』

勇者『俺の方は至って順調で、もうすぐ目的地につきます』

勇者『無事に帰って来られたら、真っ先に会いに行くからよろしく』
608: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:50:41 ID:Ton..bW6Ps
従者「……お熱いことで」

姫「何勝手に見てるのよ、人の手紙を」

従者「驚きました。ここまで文通が続くとは思ってませんでしたよ」

姫「勇者もマメよねえ……ラスボス寸前だって言うのに」

従者「人のこと言えませんよ」
609: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:51:06 ID:Ton..bW6Ps
従者「王様がお呼びです」

姫「ついに来たわね」フゥ

従者「気が、進みませんか」

姫「いいえ。全力を尽くしたもの」

姫「……行きましょう」

従者「御意」
610: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:51:32 ID:Ton..bW6Ps
王「ふたり共、よく来たね」

王子「何を改まってるんですか、父上」

姫「そうよ、早く言ってもらって構いませんから」

姫「覚悟はできているもの」

王妃「……ですって。あなた」クスリ

王「そっかあ」ヘラッ
611: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:51:54 ID:Ton..bW6Ps
王「結論から言うと無理でした」

王「詳細は後で宰相くんから聞いてね」

王「そういう訳で、帝国にそのことを報告に行って貰いたいんだ」

姫「報告……?」
612: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:52:16 ID:Ton..bW6Ps
王「報告自体は使者でも送っちゃえば大丈夫なんだけど、誠意見せとかないと後々大変だし」

王「父さんが行く訳にはいかないからさ……」チェッ

王妃「当然ですよ」

王妃「猶予貰って無理でしたなんて言いにくいだろうけれど、ごめんなさいね」

王妃「王子くんにお願いしたいのだけれど、大丈夫かしら?」

王子「――はい」
613: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:52:36 ID:Ton..bW6Ps
王子「父上、母上」

王子「その役目、謹んでお受けします」

王「うん。頼んだよ」

王子「はい」

姫「――……、」
614: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:54:02 ID:lcHbkP.jag
姫「納得がいかない」

従者「仕方ないじゃないですか、間に合わなかったんだから」

姫「そうじゃなくて……帝国行きのことよ」

従者「はあ」
615: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:54:24 ID:lcHbkP.jag
姫「薄々感付いてたわ、小手先の節約だけじゃいけないことは」

姫「感付いていたのに、増税もリストラもしないと決めたのは、私」

従者「……王子も同じ決断をしました」

姫「でも、私もそう決めた」
616: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:54:48 ID:lcHbkP.jag
従者「あまり責めるものじゃありませんよ」

姫「責めてないわ」

姫「この結果は私の責任なのよ」

姫「その責任を報告するのに、私が行かないなんておかしい」
617: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:55:10 ID:lcHbkP.jag
従者「……なるほど、帝国行きにご同行なさるつもりですか」

姫「お父様が許してくれたらね」

従者「王位継承者がふたり揃って出払うとか、まずくないですか」

姫「じゃあ聞くけど、継承する王位はこの先あるのかしら?」

従者「それを言っちゃおしまいですよ……」
618: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:55:32 ID:lcHbkP.jag
姫「ちゃんと言えば許してくれるわ」

従者「ご立派です……」ハァ

姫「あんたも行くのよ?」

従者「ええ、勿論」

従者「俺は姫様付きの従者ですから」
619: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:55:52 ID:lcHbkP.jag
姫「という訳で私も行かせてください」

王「やっぱりか……」ハァ

王妃「あら、私の勝ちのようね」ニコリ

姫「と、言うと?」

王妃「姫ちゃんが行くって言い出すか、父さんと賭けてたのよ」

従者「王族が何やってんですか」
620: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:56:13 ID:lcHbkP.jag
姫「じゃあ……」

王妃「ええ。いいわよ、行って」

姫「ありがとうお母様!」

王妃「出発は明後日よ。姫ちゃんをよろしくね、従者くん」

従者「御意」

姫「そうと決まれば準備よ従者!」スタスタ

従者「はいはい御意御意」スタスタ
621: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:57:40 ID:Ton..bW6Ps
王「うん、それにしても」

王「父さんは反対したんだけどな……」

王妃「もう、あなたってば、心配性なんだから」

王「だって姫ちゃんまだ若いし女の子だし」

王妃「でもあなたより頼りになるわ」

王「」
622: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:58:02 ID:Ton..bW6Ps
王妃「まあ、それはともかく大丈夫よ、きっと」

王妃「王子くんや従者くんもいるわ」

王妃「私たちの娘でしょう?」

王「……うん」

王「とにかく、無事を祈ろう」
623: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:58:24 ID:Ton..bW6Ps
姫「そんなこんなで帝国に入りました」

王子「はしょったな」

従者「はしょりましたね」

宰相「いえ今のは必要な省略です」

姫「そうその通り!」キリッ
624: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:58:46 ID:Ton..bW6Ps
王子「宮殿はまだ先なのか?」

宰相「もうすぐです。そろそろ迎えが見える頃かと」

姫「振動でお尻痛い」

従者「馬車ですからねえ」

宰相「もうあと少しの辛抱ですよ」
625: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:59:06 ID:Ton..bW6Ps
姫「そういえば、宰相さんも一緒に来てたのね」

宰相「ええ、細かい事情を把握していたのは僕ですから」

王子「質問に答えられなかったら困るから、俺の付き人も兼ねてくれてる」

宰相「僭越ながら」ペコリ
626: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:59:31 ID:Ton..bW6Ps
姫「宰相さんはきちんとした人だものね」チラッ

従者「そんな目で見ても姫様の付き人は変わりませんよ」

姫「本当にあのお父様の下で頑張ってくれて……!」ウルッ

従者「振っといてスルーですか」
627: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 21:59:55 ID:Ton..bW6Ps
宰相「いえ、そんなことはありません」

宰相「そもそも、不作くらいで揺らぐような運営を続けてはいけなかったんです」

宰相「僕がもっと強く王様に申し上げていればこんなことには……」

王子「いや、無理だろう」

宰相「うう」
628: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 22:01:03 ID:PKjewJBY12
姫「ほっほら宰相さん迎えが!」

従者「あ、見えましたね。あれでしょうか」

王子「どれどれ、意外と丁重じゃないか」

従者「借金踏み倒してるのにですか」

王子「邪険にされるよりはいいだろ」

宰相「あれ、あのお方は……」
629: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 22:01:24 ID:PKjewJBY12
青年「お久しぶりです、姫様」

姫「あなた……もしかしてパーティーのときに」

青年「はい、お相手頂きました者です」ニコリ

宰相「あ!思い出しました」

王子「どうした?」
630: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 22:01:48 ID:PKjewJBY12
宰相「どこかでお顔を拝見したと思っていましたが」

宰相「咄嗟に出なかったのがお恥ずかしい」

宰相「この大帝国の、皇太子殿だったんですね……」

皇子「…………」ニコリ
631: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 22:02:07 ID:PKjewJBY12
皇子「皆様、我が帝国へようこそ」

皇子「帝国皇太子として、心より歓迎申し上げます」

姫「皇太子……!」

王子「……お会いできて光栄です」

皇子「ええ、こちらこそ」
632: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/16(土) 22:02:51 ID:PKjewJBY12
皇子「自分が父の元にご案内します」

宰相「ありがとうございます」

従者(随分と豪華な迎えですね……って、姫様?)

姫(私は……帝国の皇太子の足を踏みつけていたのね……)ガクブル

従者(ああなるほど)
633: 名無しさん@読者の声:2012/6/17(日) 17:17:45 ID:PNDZ3DGh8o
CCCC
C支援C
CCCC
634: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:15:35 ID:DSgCxQqiRY
>>633
支援ありがとうございます!
がんばります(*゚∀゚)
635: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:16:02 ID:DSgCxQqiRY
皇帝「遠いところをよく来られた」

王子「お目にかかれて光栄です」スッ

姫「」スッ

皇帝「ふむ、前に見たときより成長したな。父上は元気か」

王子「ええ、お陰様で」

姫「…………」
636: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:16:25 ID:DSgCxQqiRY
姫(王族とはいえ、私はあくまでお兄様のついで)

姫(皇帝さんに正面から話すべき人ではない)

姫(従者や宰相さんだって、きちんと後ろで控えている)

姫(余計な口を挟まないようにしないと……でも)

姫(私たちの国が……)
637: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:16:49 ID:DSgCxQqiRY
皇帝「早速本題に入るが、決めておいた額は揃えられたか」

王子「いいえ。……申し訳ない」

皇帝「まあいい、こちらも予想はしていた」

皇帝「1年待ったにも関わらず期限を破ったからには、どうなるか分からない訳ではあるまい」
638: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:17:10 ID:DSgCxQqiRY
皇帝「君たちの国は、我が帝国の統治下に入ってもらう」

王子「……属国、ですか」

皇帝「いや」

皇帝「併合だ」

姫「!」
639: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:17:36 ID:DSgCxQqiRY
皇子「父上、そこまでする必要は……」

皇帝「お前は黙っていろ」

皇子「しかし」

皇帝「口を出すなと言った」

皇子「っ」

王子「……、どうしても?」

皇帝「残念ながら拒否権はない」
640: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:17:59 ID:DSgCxQqiRY
皇帝「この状況になる前なら多少大目に見ることもできただろうが」

皇帝「我が国も小麦は被害に遭っている。北の穀倉地帯は大きい」

王子「存じております」

皇帝「なら君も分かるだろう」

皇帝「冷害が解決しない限り君たちの国に恩を売る余裕はない」
641: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:18:19 ID:DSgCxQqiRY
姫(……嫌、)

姫(分かっていたし覚悟もしてたけど)

姫(私たちの国が、なくなる?)

姫(そんなの嫌よ……!)

兵士「皇帝陛下!」バーン
642: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:19:47 ID:yHuRSWudJ.
皇帝「無礼者!客人の前だぞ」ガタッ

兵士「しかし陛下、何かがこちらにやって来ます!」

皇帝「何だと?」

兵士「何かが……謎の飛行物体がこちらに向かって!」

姫「え?」

?「うわああああぁぁぁぁぁぁ」パリーン
643: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:20:08 ID:yHuRSWudJ.
従者「姫様!」ガバッ

姫「きゃっ」

王子「ガラスを突き破って……!」

皇帝「ええい、何が起こった」

宰相「あれはもしや……」

皇子「……人?」
644: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:20:33 ID:DSgCxQqiRY
?「ばか何すんだよっ!ガラス割っちゃったじゃん!」

?「いいじゃないの〜、アタシのお陰で怪我ひとつしなかったでしょ?」

?「そういう問題じゃない!また姫に弁償させられ……」

姫「……勇者?」ポカン

勇者「あ、姫。久しぶり」ニカッ
645: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:21:05 ID:DSgCxQqiRY
姫「勇者?本当に勇者なの!?」

従者「姫様、迂闊に動くとガラスが」

勇者「あっそうだよガラス!お前のせいだよ、何とかしろよなっ」

?「ん〜しょうがないわね……」ポウッ

?「これでいい?」

王子「窓が直った……」
646: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:21:31 ID:DSgCxQqiRY
姫「今のは一体……」

勇者「あ、紹介するね。こちら俺が討伐に行った魔王さん」

姫「はあ!?」

勇者「魔王さん、これが姫」

魔王「あらあら可愛い」
647: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:21:57 ID:DSgCxQqiRY
魔王「魔王です〜よろしくぅ」

魔王「女同士仲良くしてね☆」

姫「いやでも見た目男性」

魔王「や〜んもう、お姉さんと思ってくれていいのよ?」

従者「オネエさんですか」

魔王「あら」
648: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:22:19 ID:DSgCxQqiRY
魔王「あなた可愛い顔してるじゃない」

従者「え、俺ですか」ギクリ

魔王「ん〜、その不憫そうな感じ、とってもタイプ。うちで働かない?」ジリッ

従者「結構です」ジリッ

魔王「サービスするわよ?」ジリッ

従者「間に合ってます」ジリッ
649: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:23:54 ID:B5M6CddzKk
姫「勇者、何でこの人と一緒に……」

勇者「ああ、なんかね、行き違いがあったみたいで」

勇者「魔王さん自身は人間に友好的なんだけど、底辺の方まで伝わらなくて」

勇者「それで今まで被害が出てたんだって」

魔王「そうなのよぅ」
650: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:24:15 ID:B5M6CddzKk
魔王「アタシは人間好きだし、カレシも人間なんだけど」

従者「恋人いるなら離してください」ゲッソリ

魔王「や〜よ。だから部下達のお詫びに、ちょっと言うこと聞いてあげたの」

勇者「で、城に帰りたいって頼んだんだけど……」キョロキョロ

勇者「……ここどこ?」
651: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:24:52 ID:B5M6CddzKk
魔王「あらアタシは間違ってないわよ」

勇者「え?でもここ、いつもの城じゃねーよ?」

魔王「アタシは『姫のいる場所へ』ってリクエストを聞いたもの」

姫「えっ」

勇者「やっべ」
652: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:25:17 ID:B5M6CddzKk
勇者「ところで姫、ここどこ?」

姫「ここは帝国の宮殿よ、お金の報告に……って」ハッ

皇帝「……随分と楽しそうに会話してたじゃないか」イラッ

姫(うわあ)
653: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:25:39 ID:B5M6CddzKk
皇帝「訳の分からない奴らが侵入してきたと思えば……」

皇帝「やたら無礼な知り合いだな?」ギロッ

姫「……あ、の」

皇子「父上、」

皇帝「黙っていろと言ったはずだ」
654: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:26:05 ID:B5M6CddzKk
勇者(なあこれどういう状況?)ヒソヒソ

魔王(知らないわよ〜アタシに聞かないでほしいわ)ヒソヒソ

宰相(お金が用意できませんでした。併合の危機です)

勇者(宰相さん)

魔王(あら何か不穏ねえ〜)
655: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:26:27 ID:B5M6CddzKk
皇帝「……まあいい。どうせ消滅する国だ」

皇帝「侵略しないだけ有り難く思え」

姫「っ……」

王子「……はい」

皇帝「残念だったな。北の冷害が解決し、君の友人がもっと常識を弁えていさえしたら……」

魔王「あっごめんそれ犯人アタシ」

従者「えっ」
656: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:27:25 ID:2Jn3tSEu0A
従者「ちょ、今何て言いました」

魔王「カレシと喧嘩したときに、怒って北の森まるごと凍らせちゃってねえ〜」

王子「北の穀倉地帯で、異常気象による冷害……まさか」

姫「真夏のダイヤモンドダストはそれか……!」
657: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/17(日) 22:27:47 ID:2Jn3tSEu0A
皇子「冷害が解決しない限り、君たちの国に恩を売る余裕はない」

皇子「これは父上が、先ほどおっしゃった言葉です」

皇帝「……ああ。言ったな」

皇子「では、もし冷害が解決したら?」

姫「…………!」ハッ
658: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:33:45 ID:B5M6CddzKk
姫「魔王さん!そんなこと、できる?」

魔王「え、ええ。できるわよう」

魔王「そもそもあれも、戻すのが面倒でそのままにしていただけだもの」

王子「国の存亡がそんな適当な理由にかかっていたなんて……」フラッ

宰相「王子、お気を確かに」
659: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:34:37 ID:B5M6CddzKk
従者「では、小麦の冷害を解決してくださるんですね?」

魔王「ん〜ど〜しよっかな」

魔王「ねえあなた本当にうち来ない?」

従者「ですから結構です」キパッ

魔王「やん、つれな〜い」キャアッ
660: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:35:01 ID:B5M6CddzKk
魔王「まあいいわ。アタシのせいだし戻してあげる」

皇帝「待て、何をするつもりだ!」

魔王「何って……森を元に戻してあげるわよ?」

皇子「父上、ご不満ですか?」

皇帝「そういう問題ではない!」
661: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:35:26 ID:B5M6CddzKk
皇帝「いきなり出てきて魔王だ何だ信用できるか!」

皇帝「それに冷害を治めるなど……怪しいことこの上ないだろう!」

皇帝「君たちの知り合いのようだからと思っていたが、こうも詐欺紛いのことを始めるとあれば話は別だ」

皇帝「衛兵!この者たちを捕らえろ」

魔王「――できると思ってんの?」
662: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:35:48 ID:B5M6CddzKk
衛兵1「っ、体が……」

衛兵2「動かない……陛下!」

魔王「あ〜やだやだテンション下がっちゃうわ。せっかく可愛い子見つけたのに」

従者「……、冷害の件は」

魔王「やるわよ。こいつら抑えながらで充分だわ」
663: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:36:15 ID:B5M6CddzKk
皇帝「くっ……待てと言っている!」

魔王「なんかアタシあなた嫌い。いくわよ」

魔王「え〜い」

皇帝「やめ……やめろおおおぉぉぉ」
664: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:36:40 ID:B5M6CddzKk
魔王「…………」

宰相「………………」

皇子「……………………」

姫「……何も起こらないわね」

魔王「あなた何期待したの?」
665: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:38:08 ID:2Jn3tSEu0A
魔王「だってアタシが戻したのは北の森よ〜」

魔王「こんな離れた場所で何かが起こる訳ないじゃない」

従者「それにしたってこう、眩い閃光ですとか」

魔王「お望みならいくらでも出すわよ〜」キャピキャピ

兵士「陛下!北の森から大量の水蒸気が……!」バーン

王子「本当だったのか……」
666: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:38:35 ID:2Jn3tSEu0A
魔王「これで多分元通りよ」

魔王「小麦だったかしら?来年にはたわわに実るはずね」

皇子「では、併合の件は……」

皇帝「…………」

皇帝「……いや、まだだ」
667: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:39:01 ID:2Jn3tSEu0A
皇帝「仮に今ので冷害が解決したとしても、すぐに我が国の経済が復活する訳ではない」

皇子「ですが、約束は」

皇帝「冷害が解決したら支払いを帳消しにする等と言った覚えはない」

皇帝「彼等が勝手に勘違いをしただけだ」

皇子「詭弁です!」
668: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:39:26 ID:2Jn3tSEu0A
皇帝「お前は事の深刻さを分かっていない!」

皇帝「これほどの帝国と言えど政情は不安定、少しの経済不安で民衆の不満は爆発する」

皇帝「金のない弱小国であれ、少しでも搾取して国を立て直さなければ」

皇子「これ以上小国を痛め付けて何の国利になると言うのです!」

皇帝「お前に口出しする権利はない!」
669: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:39:49 ID:2Jn3tSEu0A
皇帝「そんなことを言って私に逆らうつもりか……?」ピクリ

皇帝「反逆者とあらば私は、息子であろうと処刑するぞ」

皇子「そんなつもりで言ったのではありません……」

皇子「違います、自分は、」

皇子「俺はただ、父上のお力になりたくて……!」
670: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:40:13 ID:2Jn3tSEu0A
皇帝「…………」

皇帝「そんなことは、何とでも言える」

皇子「父上!」

皇帝「向こうの王と仲良くしていたそうじゃないか。情でも湧いて庇ったか」

皇帝「……誰が父親だと思っている」

皇子「え……?」
671: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:40:37 ID:2Jn3tSEu0A
姫(……つまり、)

姫(嫉妬、していたのかしら、お父様に)

姫(こんな立派な皇帝さんが)

皇帝「……お前とは、一度よく話し合う必要がありそうだ」

皇子「ええ。そう、思います」

皇帝「君たち」
672: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:43:23 ID:Ton..bW6Ps
皇帝「遠路はるばる来たところ申し訳ないが、今回は保留にしてくれ」

皇帝「今後のことは後日、君たちの父上と直接話し合って決める」

王子「了解しました」

皇帝「皇子、お送りしろ」

皇子「はい」
673: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:43:44 ID:Ton..bW6Ps
宰相「……構わなかったのですか」

皇子「ええ」ニコリ

皇子「父上との意見の衝突は、前々からのことでした」

皇子「むしろ感謝しているくらいです」

宰相「大変、ですね」
674: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:44:07 ID:Ton..bW6Ps
王子「国は、どうなるんだろうな」

皇子「大丈夫です、意地でも説得しますから」

皇子「代わりの政策は考えています。先程は言いそびれましたが」

王子「代わりですか」

皇子「勉強した甲斐がありました」ニコリ
675: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:44:31 ID:Ton..bW6Ps
姫「本当に、何とお礼を言ったらいいのか……」

皇子「いいんです。あなた方の父上にはお世話になりました」

皇子「どうかよろしくお伝えください」

姫「ええ、必ず」
676: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:44:53 ID:Ton..bW6Ps
勇者「……ねえ俺たちのこと忘れてない?」

姫「あっ」

魔王「酷いわあ。せっかく皆のピンチを救ってあげたのに〜」

従者「すみませんありがとうございました」

魔王「という訳でアタシと一緒に帰りましょ〜」

従者「結構です」

魔王「あなた結構不敵よね」
677: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:45:14 ID:Ton..bW6Ps
魔王「ま、いいわ。せいぜい元気でやりなさいよ」

魔王「じゃあね〜」フッ

勇者「あ!って、普通に消えるし……」

姫「まだお礼言ってないのに」

王子「ついて行かなくてよかったのか?」

従者「誰がですか」
678: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/18(月) 21:45:39 ID:Ton..bW6Ps
宰相「ふふ、まあ良いじゃないですか」

宰相「今できることは終わりました」

宰相「後は待つだけですよ」

姫「ええ」

姫「……帰りましょう、国へ」
679: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:33:59 ID:c7b/jBefIw
王「あー……」ウロウロ

王「ううーん……」ウロウロ

王妃「もう、何をやってるの、あなた」

王「だって、姫ちゃん達がもうすぐ帰ってくるって伝令が来たから!」

王妃「だからって、歩き回っていても時間は過ぎませんよ」
680: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:34:21 ID:c7b/jBefIw
王「父さんだって分かってるよ、でも……」

王妃「いてもたってもいられない、って言いたいんでしょう?」ニコリ

王「母さんだってそうじゃないのかい?」

王妃「あなたほどではないわ、それにしても……」

姫「ただ今戻りましたー!」ガチャ

王「あ、来た!」
681: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:34:40 ID:c7b/jBefIw
王「王子くん姫ちゃんお帰りー!」バタバタ

王子「父上!無事に帰還しました」

姫「お父様、お母様もお久しぶりです」

王妃「長旅お疲れ様。ふたりも付き添いをありがとう」

従者「いえ、それが仕事ですから」

宰相「おふたり共ご立派でしたよ」
682: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:35:01 ID:c7b/jBefIw
勇者「王様俺も俺も!」

王「うお勇者くんじゃないか!」

王「旅は終わったのかい?」

勇者「もち。魔王と話つけてついでに帝国とも話つけてきました!」

王「帝国と……」
683: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:35:24 ID:c7b/jBefIw
王「王子くん。早速聞いちゃうけど、帝国との話はどうだった?」

王子「保留、だそうです」

王子「帝国の方でよく話し合ってから、父上と直接相談したいと」

王子「併合の危機は免れました」

王「……っ」
684: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:35:48 ID:c7b/jBefIw
王「よかった――っ!!」ブワッ

姫「わ、お父様ったら、ってかやだちょっ、汚い」

王「真顔で言わないで感動の場面だから!」

王「だって、本当に国っ、なくなっちゃうと思って……!」グスッ

王妃「あなた……」
685: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:36:10 ID:c7b/jBefIw
王子「でも父上、きっと国はなくなりませんよ」

王「うん、そうだね」ズビッ

王「王子くん、姫ちゃん、みんな」

王「本当にお疲れ様。あと、ありがとう……!」

姫「お父様……」ニコリ






姫「殴っていいですか」

王「えっ」
686: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:38:31 ID:DSgCxQqiRY
姫「良い話に纏めたと思ってるみたいですけれど」

姫「そもそもお父様が無駄遣いしなければこんなことには……!」

王「ちょ、ちょっと待って姫ちゃん。そこは今更すぎないかい?」

姫「忘れたと思ってました?」
687: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:39:11 ID:DSgCxQqiRY
姫「いいですかお父様!」

姫「確かに国のピンチは脱出しました。でも!」バン

姫「財政はまだやばいんですからね!これからも節約は続けますよ!」

王「そんなあ、ちょっとくらいお祝いしても……」ボソ

姫「返事は」

王「はい!」ビクウッ
688: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:39:41 ID:DSgCxQqiRY
勇者「……何ていうかさ」

従者「元通り、ですね」

勇者「俺の帰還もお祝いしてくれないのかなー」

従者「気持ちはあるんじゃないですか」

勇者「やっぱり」ハァ

王子「いや、そうでもなさそうだ」
689: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:40:03 ID:DSgCxQqiRY
姫「いいですか、お父様がどうしてもお祝いをしてくださるというなら」

姫「国の存続と勇者の帰還を一緒に定期の舞踏会と兼ねて最小限の経費でささやかになさってください」

王「わ、分かったよう……」

姫「ほんとに分かってます?」
690: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:40:32 ID:PKjewJBY12
宰相「……お祝い自体はおやめにならないんですね」クスクス

王子「まあ、あれで柔らかくなったんだろうな」

宰相「姫様も成長なさって」

勇者「……ふぅん」
691: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:40:58 ID:PKjewJBY12
王妃「ねえ勇者くん、姫ちゃんとの婚儀はどうしましょうか」

勇者「えっ」

王妃「ちょうど良い時期じゃないかしら。あなたも旅から帰ってきたことだし」

王妃「あなたなら姫ちゃんも喜ぶわ」
692: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:41:26 ID:PKjewJBY12
勇者「いや無理!無理ですよ!」

王妃「どうして?」

勇者「だってあいつ、婚儀の費用が勿体ないって言い出しそうじゃないですか」

勇者「……そんな理由で振られたくないです、俺」

王妃「ふふ、確かにそうね」
693: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:42:25 ID:w/4wt7Bbn.
王妃「変なこと言ってごめんなさいね」

勇者「いいえ、俺こそせっかくのご提案を」

王妃「いいのよ。……姫ちゃんのところに行ってあげて」

王妃「あのままじゃ、父さんが私に泣き付いてきちゃうわ」

勇者「あはは」
694: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:42:55 ID:w/4wt7Bbn.
勇者「ひーめー」

姫「なに勇者!今お父様の根性を叩き直そうと必死で」

王「父さんの心が先に折れるよ!」

勇者「あー、それも良いけどさあ、みんなに挨拶行かない?」

姫「挨拶?」
695: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:43:19 ID:w/4wt7Bbn.
勇者「俺も色んな人にただいまって言ってきたいし」

勇者「節約するとき、姫もお世話になってたろ」

勇者「無事に何とかなりましたっていうのと、これからも節約するからよろしくお願いしますって」

姫「……そうね。そういうの、大事よね」
696: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/19(火) 21:43:55 ID:PjcZj3CCeQ
姫「という訳でいってきます!」

従者「行ってらっしゃいませ」

姫「あんたも行くのよ従者」

従者「まじですか」

勇者「従者さんもまだまだ振り回されそうだねえ」ニヤニヤ

姫「ええ、当然よ」

姫「この国はまだ終わらないんだから!」






姫「殴っていいですか」おわり。
697: 名無しさん@読者の声:2012/6/19(火) 21:56:57 ID:HX.2JE6GFc
怒涛の勢いで終わったねww

面白かったよ!お疲れさん!
698: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/20(水) 22:04:14 ID:vmvtnDU2GI
>>697
自身最大の黒歴史になったような気がしますが何はともあれ完結しました!
ありがとうございます!\(`・ω・´)/



更新ペースがまちまちだったり未完庫送っちゃったりと、読んでくださってる皆さんには大変ご迷惑をお掛けしました。
それにも関わらずここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

とりあえず何か恥ずかしくなってきたからスレ移動お願いしてきます(^ω^三^ω^)
けっこう頑張ったし保管庫でいいよね!いってきます!ノシ
699: 名無しさん@読者の声:2012/6/25(月) 23:45:17 ID:9r5CNHu8wc
久々に来たら終わってたけど最後まで見れてよかったです(´∀`*)
本当に乙でした
700: 1 ◆xXC7.dNnEA:2012/6/27(水) 15:08:45 ID:DSgCxQqiRY
>>699
お陰様で何とか最後まで到達できました(*・ω・`)
読んでくださって、ありがとうございました!
701: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
216.14 KBytes

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sage:


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