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魔王「何で女の子が一人もいないんだよ!」
[8] -25 -50 

1:🎏 :2011/9/14(水) 23:03:02 ID:8OHTIHnybw
初めてSSを書かせていただきます。
ギャグ物にしようと思ってまして、そのせいで世界観を無視した発言や行動が多くなると思います。
あと、最終的にはスレタイ詐欺のような展開になるかもしれません。今のところ、そのように予定しています。
以上のような感じで書き進めていこうと思ってます。
問題ないという方は、よければ最後までお付き合いください。
よろしくおねがいします。

※長いため、携帯から読むと途中から読めなくなる可能性があります。読めなくなった場合、こちらから読んでみてください→>>887-891


604:🎏 :2011/11/2(水) 00:14:19 ID:eWaKiw9z.2
僧侶の小話※女僧侶じゃないよ!

戦いは終わった。
長年続いた魔物との争いは和平という形で決着がつき、時代は動き出した。
そしてそれは勇者の役割が終わったことも意味しており、俺達の旅も終りを告げた。

和平といっても人々の心からわだかまりが完全に消えたわけではない。
王都の人間以外は未だ魔物を憎む者も多く、そんな人達の気持ちを突き動かさんとするのが勇者の新たな役割となった。
うちの勇者も一緒だ。あの魔王が目指さんとするこれからの魔界を理解してもらおうと、世界のあちこちを回っている。
手伝おうか?って言ってみたが、責任感の強いあいつは自分一人で頑張る道を選んだ。
今まで十分に協力してもらった、戦う必要がなくなった今は各々のやるべきことがあるだろうから、だとさ。
そんな勇者の優しさに甘えて、俺は以前の生活に戻った。教会で、人々を導く生活に。

……ただ、俺のやりたいことは、実はそれだけじゃなかったりする。
605:🎏 :2011/11/2(水) 00:14:58 ID:eWaKiw9z.2
俺は王都の図書館へと歩を進めた。
目的は読書……だけではない。少し邪だが、本以外にも目的があったりする。

それはここの図書館に勤めている女性だ。
正直な話、惚れてる。落ち着いた性格に、本と向き合う時の真剣な眼差し、そして時折見せる微笑み。
それらは的確に俺の心を撃ち抜いた。全てを知ってるわけでもないが、これだけは言える。彼女こそ、俺の運命の人だと。
そして願わくは俺の横に彼女がいる光景こそが在るべき世界であってほしい。

そんなわけで、ただ読書するだけなら家に大量に本がある環境でありながら、この図書館に通っているのだ。
本を読むスピードには自信があるが、ここだと少し遅い。本と彼女を交互に見るからだ。
606:🎏 :2011/11/2(水) 00:15:44 ID:eWaKiw9z.2
手持ちの本そっちのけで彼女の方を見ていると、目が合ってしまった。
気まずい。俺は慌てて本で自らの顔を隠した。
それによって上級魔法を生み出した魔法使いについての記述が目の前に並んだが、俺の気持ちは既にそこにはない。
……大丈夫だろうか?図書館にまで来て本を持ちながら人間観察に精を出す変な人、だとか思われてないだろうか?
言いようのない不安に駆られながら、しかし俺には閉館時間まで本と向き合うことしかできなかった。

辺りはけっこう暗くなっていた。
日が落ちると何だか不安になる。些細なことだが、太陽のありがたみが身に沁みる瞬間である。
そんな暗闇の中で立ち往生する義務などどこにもない。早々と我が家を目指して歩を進めようとした。
607:🎏 :2011/11/2(水) 00:16:17 ID:eWaKiw9z.2
その時だった。後方から声がした。高い、女性の声である。
振り返る。そこには意中の女性の姿があった。
心臓が飛び出すってのは、まさにこの瞬間のための言葉だろう。それほどまで意外で驚くほかない出来事だった。

「よかった、やっぱり僧侶様でしたね」

そう言って彼女は微笑む。暗闇の中でわずかに輝きを放った気がする、と言ったら大げさだろうか?
しかし本気でそう思えるほどに彼女の笑顔は魅力的だった。

「そうですけど、俺に何か用ですか?」

上ずった声にならないよう、気を付けながら返事をする。

「あの……どうしてもお礼が言いたくって」
608:🎏 :2011/11/2(水) 00:16:47 ID:eWaKiw9z.2
お礼が言いたい。彼女は確かにそう言った。
向こうから話しかけてくれてこっちがお礼を言いたいくらいなのに、と思いつつ記憶を辿ってみる。
はて、彼女からお礼を言われるようなことをしただろうか。考えて俺はひとつの記憶を呼び起こした。

龍人と呼ばれる半人半龍の魔物が避難地まで攻めてきた時のこと。
奴は王都の人々に攻撃魔法を撃ちこんできた。
その残虐な攻撃の最初のターゲットとなってしまった女性を俺は身を呈して守った。
……そう、その女性こそ、図書館に勤める彼女だったのだ。俺はその時を思い出した。>>414

普段は彼女目当てで図書館に通うという、むしろこちらが謝罪しなければならないことをしてるのだ。
とすれば、感謝に思い当たる出来事はこれしかない。俺はそう確信した。
609:🎏 :2011/11/2(水) 00:17:37 ID:eWaKiw9z.2
「いいんですよ。勇者の一味として人を守るのは当然のことですから」

俺はそう答えた。これはまぎれもない俺の本音だ。
勇者パーティの一員として、人のために戦うのは当然のことだ。ましてや彼女に危機が及ぶのなら命をかけるべきだ。それはこの世の理だ。
こちらとしてはむしろまともに戦えもせず盾にしかなれなかったことを悔やんでる。そのせいで多くの人に……彼女に不安を与えてしまった。

しかし彼女はそうは思ってなかったようだ。

「そんなことはありません!私は僧侶様の勇気ある行動のおかげで、今を生きてます」
「どれほど感謝の言葉を連ねても足りないくらいです」
「僧侶様のおかげで、この図書館に……僧侶様と一緒の空間に戻ってこれました」
「僧侶様、私の幸せを守ってくださって、本当にありがとうございました!」

彼女は一気に言葉を発した。俺の行動で彼女に喜んでもらえたのなら、俺は幸せだ。勇者の一味として仕事を全うできてよかった。
610:🎏 :2011/11/2(水) 00:18:34 ID:eWaKiw9z.2
彼女に喜んでもらえた幸せをかみしめていた俺だったが、彼女の発言でひとつ引っかかる部分があったことに気付いた。
「僧侶様と一緒の空間に戻ってこれた」……これじゃ俺と一緒にいるのが幸せみたいじゃないか。
言い間違いか何かかと思って確認しようと俺は彼女の方を見る。
彼女は少しうつむいていた。辺りが暗いから、その表情は見えない。
話しかけようとした瞬間、

「と、とにかくお礼が言いたかったんです!それだけですからね……失礼します!」

急に大声をあげると、そのまま俺を置いて走っていってしまった。

夜道は危険です、家まで送りますよ。彼女の後姿目掛けて俺はこう言った。
家が近くなんです、一人で大丈夫です。走るのをやめることなく彼女はそう言った。

どんどんと彼女は遠ざかり、やがてその姿は暗闇に溶けていった。
急に走りだして、どうしたというのだろうか。急用でも思い出したのだろうか。
しかし何だか俺から逃げるようにも感じた。嫌われてるということだろうか。ショックだな、それ。
611:🎏 今日はここまで!:2011/11/2(水) 00:19:31 ID:eWaKiw9z.2
暗闇の中で再び一人となった俺は、今度こそ自宅を目指して歩き出す。
今日は彼女と話ができた。素晴らしき日だったな、少なくとも俺にとっては。
そしてそれが彼女にとっても同じ意味を持つ出来事になってくれたらいいな、と思いながら俺は帰りゆくのだった。



戦いは終わった。
長年続いた魔物との争いは和平という形で決着がつき、時代は動き出した。
同時に俺の恋愛も動き出したというべきか。
ただ、こっちは戦いがこれから始まるんだけどな。
いつか彼女と並んで笑いあえる日が来ると信じて、俺は俺の戦いを続けるとしよう。
とりあえず、明日も図書館へ行ってみるか。彼女の笑顔でも見にいくとしよう。
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