祖父が死ぬ三ヶ月前にまともになった話
Part5
115 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:11:18 ID:X3u
その日は、祖父は家族で美味いものを食べてくれとお願いしてきた。
祖父は「出前だ出前だ!寿司でも蕎麦でも取れ!
豪華で美味いものを家族で食べている様子が見たい!」と。
もちろん、その準備はしていた。馴染みの寿司屋に電話を掛けた。
その馴染みの寿司屋は大層驚いた様子で、家に来て祖父に挨拶した。
祖父に弟子を紹介していた。そして弟子が握った物なので、コチラ私が握った物を……と、
結構お寿司をオマケしてくれた。
馴染みとは言えここ数年は読んでもいなかったのに、気前よく大将は来てくれた。
医者には止められていたと断ったあと、祖父はおちょこをしっかり握って「乾杯〜」と声を上げた。
その後、下でペロッと舐めた。「くぅ、これだ!」という笑顔は忘れられない。
その後祖父はドリンク剤を飲んでいたが、ガマン鳴らずマグロの切り身を一切れ食べていた。
またしても「これだ!」という顔していた。幸せそうだった。
翌日は、取れなかった蕎麦の出前を取った。
蕎麦屋の出前は年末やお盆によく取っていたので仲は良かったが、
よっこらしょっ、どっこらしょ、ともう御年90を超える元女将がやってきて祖父に挨拶していった。
祖父は「えらくBBAになったじゃないか!」と言うと、
女将は「アンタに言われたくないわよ、オバケ!」と言い返してたw
その日は、麺つゆをチロッと舐めながら、祖父はニコニコとしていた。
3日目の朝、祖父は家を出た。
名残惜しそうに家の中を周り、迎えが来る前に近所を周り。
顔を焦る人みんなが驚く中、「バケテでたぞー」とイタズラしてた。
鼻に管は衝撃的だったらしく近所の子は泣いていた。
大分自分の中と、ボケていた時の記憶にあった、町並みと変わっていたらしく
祖父は「あー、時間が流れたんだなー」と言っていた。
116 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:20:44 ID:X3u
病院に戻ると祖父は「あー、家がどっちだか分からね」と言っていた。
俺が「家はアッチだよ」と言うと、祖父は「家の方角はコッチだぞ〜?」とニヤニヤしてた。
その後、また病室に戻ると「本当にどっちだか分からねーな。俺もボケてんな」と言ってた。
戻ってしばらくして、早速散歩をしていた時。
祖父はあの桜の木の前で桜を見上げていた。
俺は「あと二三ヶ月すれば桜が咲くっぽいよ」と話をすると、
祖父は「長いなぁ。待ち遠しいなぁ。みたいなぁ」と弱音を履いていた。
多分、ちゃんと祖母→母→父→俺で順番に、四日掛けて散歩した次の日。
祖父は再び意識を失った。
最後に俺と散歩した時は
「仕事がんばれよー、俺がいなくてもがんばれよ〜、
お前も男になって俺の代わりしてくれよー、庭もうちょい掃除してくれなー」と、やけに念押しされていた。
もちろん仕事の件も「あの先輩さんとは仲良くしとけ」とも言ってた。
祖母たち、他の人も似たようなこと言われていたらしく、全員心構えはできていた。
そんな中、「ふー、ちょっと疲れた」と言って眠った。その時父親はいなかった。
意識がないのが気がついたのは、その夜だった。
その日は、不思議な話だけどいつものようにお酒を飲もうとした時、
ビールは手から滑り落ちて飲めなくなるわ、他を冷やしていないのでしょうがない日本酒だ、
と思ったら、ビンのフタを明けたのに酒の匂いがせず、なんか気味悪がって俺も祖母も飲まずにいた。
医者から急いで来てくれとの一報。
父親は何の障害もなく会社を抜け出れて、俺らは誰も飲んでいないので車で急いで向かった。
117 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:26:24 ID:eEc
ドキドキ(゚A゚;)
118 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:28:58 ID:X3u
いつものように祖父は寝ていた。
度々目撃していた昼寝をしている祖父の姿まんまだった。
大体俺らの気配に気がついて「お、よく来たな」と眠たそうに言うのだが、その時は何も言わなかった。
どんなに揺すっても、声をかけても、祖父は目を覚まさなかった。
先生はすぐに「もうすぐ」と気が付き電話したそうだ。
医者はすごいと思った。その日の内に様態は急変した。
そして、祖父はあえなく逝ってしまった。
本当に死んでしまう寸前、ヒョコッと目を開けて何をを伝えたいような目をした後、
安心したのか、幸せそうだったのか、それとも何か別のことを考えていたのか。
やけに落ち着いた表情で、祖母の手や母の手を一通り、人差し指で撫でた後。
祖父は死んだ。享年98。
俺は誕生日から日も経ってないのに、という心境だった。
その後、祖父が選んだ親戚たちの中だけで、慎ましく葬式は執り行われた。
慎ましくなのか、微妙だが。
火葬も済み、先祖代々の墓に祖父が収まった時、祖父が妙に小さく思えた時の光景を思い出した。
ちょうどボケが直る前だ。それを思うと、またひょっこり現れる気がした。
残念ながらなにもなく、怪奇現象も何も起こらなかった。
火葬が済み「さー、後片付けかー」となった頃、参拝者として来ていた弁護士さんが封筒を持ってきた。
ミミズのように汚い文字で『遺言』と書かれていた。
すぐにそれが祖父が一生懸命に書いたものだと分かった。
119 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:37:18 ID:X3u
遺言は数行にわたって書かれていた。
ただ達筆という訳じゃないが、本当に字が読めなかった。
たぶん頑張って書いたのだろう。弁護士が言うには両手で書いていたそうだ。
「まあ、読めないということは祖父さんもおっしゃっていまして、コチラも預かっています」
弁護士さんはiPhoneを再生した。
祖父『字が汚いから声も残しておく』と、祖父の声が流れた。
そして最初に遺言の内容を読み上げた。
祖父『今までお前らには苦労をかけた。
もう残せるものはなにもなく、大体財産も(父親)さんに渡っていることも聞いた。
だから話す内容には期待しないよーに。
……俺を捨てずに大切にしてくれてありがとうございました。
俺は本当に幸せ者だった。
それなのに俺はお前らに沢山迷惑を掛けてすまなかった。許してほしい。
○○(祖母)、顔を叩いてすまなかった。そして俺と長く付き添ってくれて、本当にありがとう。
○○(母親)、家のために俺に代わって責任を継いでくれてすまなかった。お前は俺のいい娘だった!
○○(父親)、お前は次の大黒柱だ。絶対に負けるな。安心しろ俺が認めた息子だ!
○○(オレ)、お前はいつまでも俺の可愛い孫だ。死んでも孫だ。ありがとう。』
録音はこれだけではなかった。
120 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:40:45 ID:nug
(´;ω;`)ブワッ
121 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:45:35 ID:X3u
弁護士『まだ録音できますよ?』
祖父『お、そうか……、途中で書くの大変で書かなかった。
正直、ボケていた時の出来事を少しは覚えている。
お前らが時々漏らしていたグチや、俺がしてしまったこともな。
でだ、俺も自分でも最初訳がわからなかった。
ついこないだまで平然とやっていた事を、急に理解出来た時はなにが起きたかと思った。
……ああ、これがボケなのか、老いなのか、情けないと思った。
俺はなんの罰当たりに最後に、こんな目にあわなきゃいけないと思った。
そして俺は怖かった。
俺がまともだと分かったら報復されるんじゃないかと。
あの時は思わず電話したが、後から怖くて怖くてしょうがなかった。
ところが、お前らは明るく俺を迎え入れてくれた。
俺が呼んだ手前、堂々とはしていたが、怖かったんだぞ。
だがけど、お前らは俺が思っているより優しかった。ずーっと俺の家族だった』
ここから祖父の声がかすれ始める。泣いてもいた。
祖父『そんなに俺を最後まで大切にしてくれてありがとう。
いや、ありがとうございました。
○○ ○○は、日本で一番の幸せ者だろうと思います。
いや、幸せ者だ。間違いなく
……まだ生きているのに、こんなこと言うと恥ずかしくてしゃーないな』
そこで録音は終わっていた。
122 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:50:48 ID:o30
泣いた
123 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:54:39 ID:X3u
駄目だ、その後泣いたことしか覚えていない。
とりあえず、俺は今元気に働いているし、父親ももちろん元気だし、
祖母も母も元気だよ、ぐらいしか書くことがないな……
よし、此処らへんで切り上げる。区切り悪くてゴメン。
二日と長々数時間、お付き合いありがとうございました。
124 :◆Zl0mWdgUwY :2016/01/15(金)15:55:14 ID:X3u
一応、コテ残ししておくよ。
あと簡単に質問に答えます。
125 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:56:09 ID:eEc
感動した!最後まで書いてくれてありがとう!!
126 :◆Zl0mWdgUwY :2016/01/15(金)15:58:13 ID:X3u
>>125
感動なのか、それとも悲しい話なのか。
でも読んでくれていてありがとうございました。
昨日は居なくなってすまない。本当にすまない。
127 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)16:07:52 ID:RxR
昨晩から見てたけど>>1乙
128 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)16:53:09 ID:AKj
書いてくれてありがとう
何か質問をと思ったが泣けて思いうかばない
130 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)19:22:01 ID:6rg
話を聞かせてくれてありがとう!
大事な事を教わった気がする
難しいことだけど逆境でも人を思いやれる人間でありたいね
131 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)19:34:27 ID:eFK
乙でした!
本当に人は素晴らしいな
俺も今生きている家族や周りの人を大切にしようと思う
132 :◆Zl0mWdgUwY :2016/01/15(金)19:44:19 ID:X3u
思っていた以上に非難がなくて驚いた。
それに読んでくれていた人も結構いたんだな……
明日から仕事の日々に戻るのでまともなスレ返信できないと思う。
なので今日限りで受付は取りやめる事にするよ。
毎日コテつけて降臨も気持ち悪いのもありますし。
仕事がなけれな無くて辛くて、あったらあったで辛いんだよな……なんだこれ。
>>128
急に言われて思いつくものではないしな。
>>130-131
でも、老人介護はマジで限界あるからな。
無理して自分が潰れてもしょうがないので、自分のキャパがゆる範囲で、
全力で大切や思いやって行くのが良いと思うよ。
マジで介護には心の限界が浮き彫りになる。
133 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)19:51:24 ID:6rg
>>132
心の準備はしておくよ
134 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)20:17:09 ID:3tC
泣いた
庭掃除します
135 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)20:22:47 ID:S34
乙!
ぼけてるときの頭で考えてる状況というか、
思考回路がどうなってたかとかお祖父さんから聞かなかった?
自分がぼけるって想像できないんだ・・・。
136 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)20:30:49 ID:hgb
乙です!
自分の祖父が亡くなった時のことを思いながらよんでいたよ。といっても無くなる前、半年くらいだけど。
無くなる前、急にしっかりするのはうちの場合もそうで、あなたの文章の良さと相まって本気泣きしてしまいました。
あなたと、あなたが大事な人々に幸あれ!
138 :◆Zl0mWdgUwY :2016/01/15(金)20:56:21 ID:X3u
>>135
祖父自身も上手く言葉をまとめられていなかったから、
俺も上手くまとめる自信はないけど、
ボケていた時のことは、寝ている時に見る夢の様に覚えているとは言っていました。
だから全部を全部覚えている訳じゃない、とも言っていました。
祖父は「別の誰かの記憶を見ている様な感じ」とも言っていましたね。
とにかく夢のような感じだ、と結論づけていました。
>>136
ご冥福をお祈りします。
そして、亡くなる前に急にしっかりしていましたか。
まあ先生(医者)の話でも、よくあることとは言っていましたからね。
ただ祖父のように長生きしたのと、本当にボケが治ったのは初めてのことだったそうです。
そして相まってしまいましたか……、そちらも大変だったようで。
よくプレゼンの司会進行資料作成において、日頃から目が滑る言われていたので心配していました。
139 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)21:07:49 ID:BxS
>>138
心が温かくなったよ!
140 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)21:31:09 ID:by5
じいさん粋な人だな
ご冥福をお祈りします
141 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)23:09:22 ID:FEF
じいさん、伝えたいことが伝わって良かったね
その日は、祖父は家族で美味いものを食べてくれとお願いしてきた。
祖父は「出前だ出前だ!寿司でも蕎麦でも取れ!
豪華で美味いものを家族で食べている様子が見たい!」と。
もちろん、その準備はしていた。馴染みの寿司屋に電話を掛けた。
その馴染みの寿司屋は大層驚いた様子で、家に来て祖父に挨拶した。
祖父に弟子を紹介していた。そして弟子が握った物なので、コチラ私が握った物を……と、
結構お寿司をオマケしてくれた。
馴染みとは言えここ数年は読んでもいなかったのに、気前よく大将は来てくれた。
医者には止められていたと断ったあと、祖父はおちょこをしっかり握って「乾杯〜」と声を上げた。
その後、下でペロッと舐めた。「くぅ、これだ!」という笑顔は忘れられない。
その後祖父はドリンク剤を飲んでいたが、ガマン鳴らずマグロの切り身を一切れ食べていた。
またしても「これだ!」という顔していた。幸せそうだった。
翌日は、取れなかった蕎麦の出前を取った。
蕎麦屋の出前は年末やお盆によく取っていたので仲は良かったが、
よっこらしょっ、どっこらしょ、ともう御年90を超える元女将がやってきて祖父に挨拶していった。
祖父は「えらくBBAになったじゃないか!」と言うと、
女将は「アンタに言われたくないわよ、オバケ!」と言い返してたw
その日は、麺つゆをチロッと舐めながら、祖父はニコニコとしていた。
3日目の朝、祖父は家を出た。
名残惜しそうに家の中を周り、迎えが来る前に近所を周り。
顔を焦る人みんなが驚く中、「バケテでたぞー」とイタズラしてた。
鼻に管は衝撃的だったらしく近所の子は泣いていた。
大分自分の中と、ボケていた時の記憶にあった、町並みと変わっていたらしく
祖父は「あー、時間が流れたんだなー」と言っていた。
116 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:20:44 ID:X3u
病院に戻ると祖父は「あー、家がどっちだか分からね」と言っていた。
俺が「家はアッチだよ」と言うと、祖父は「家の方角はコッチだぞ〜?」とニヤニヤしてた。
その後、また病室に戻ると「本当にどっちだか分からねーな。俺もボケてんな」と言ってた。
戻ってしばらくして、早速散歩をしていた時。
祖父はあの桜の木の前で桜を見上げていた。
俺は「あと二三ヶ月すれば桜が咲くっぽいよ」と話をすると、
祖父は「長いなぁ。待ち遠しいなぁ。みたいなぁ」と弱音を履いていた。
多分、ちゃんと祖母→母→父→俺で順番に、四日掛けて散歩した次の日。
祖父は再び意識を失った。
最後に俺と散歩した時は
「仕事がんばれよー、俺がいなくてもがんばれよ〜、
お前も男になって俺の代わりしてくれよー、庭もうちょい掃除してくれなー」と、やけに念押しされていた。
もちろん仕事の件も「あの先輩さんとは仲良くしとけ」とも言ってた。
祖母たち、他の人も似たようなこと言われていたらしく、全員心構えはできていた。
そんな中、「ふー、ちょっと疲れた」と言って眠った。その時父親はいなかった。
意識がないのが気がついたのは、その夜だった。
その日は、不思議な話だけどいつものようにお酒を飲もうとした時、
ビールは手から滑り落ちて飲めなくなるわ、他を冷やしていないのでしょうがない日本酒だ、
と思ったら、ビンのフタを明けたのに酒の匂いがせず、なんか気味悪がって俺も祖母も飲まずにいた。
医者から急いで来てくれとの一報。
父親は何の障害もなく会社を抜け出れて、俺らは誰も飲んでいないので車で急いで向かった。
117 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:26:24 ID:eEc
ドキドキ(゚A゚;)
118 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:28:58 ID:X3u
いつものように祖父は寝ていた。
度々目撃していた昼寝をしている祖父の姿まんまだった。
大体俺らの気配に気がついて「お、よく来たな」と眠たそうに言うのだが、その時は何も言わなかった。
どんなに揺すっても、声をかけても、祖父は目を覚まさなかった。
先生はすぐに「もうすぐ」と気が付き電話したそうだ。
医者はすごいと思った。その日の内に様態は急変した。
そして、祖父はあえなく逝ってしまった。
本当に死んでしまう寸前、ヒョコッと目を開けて何をを伝えたいような目をした後、
安心したのか、幸せそうだったのか、それとも何か別のことを考えていたのか。
やけに落ち着いた表情で、祖母の手や母の手を一通り、人差し指で撫でた後。
祖父は死んだ。享年98。
俺は誕生日から日も経ってないのに、という心境だった。
その後、祖父が選んだ親戚たちの中だけで、慎ましく葬式は執り行われた。
慎ましくなのか、微妙だが。
火葬も済み、先祖代々の墓に祖父が収まった時、祖父が妙に小さく思えた時の光景を思い出した。
ちょうどボケが直る前だ。それを思うと、またひょっこり現れる気がした。
残念ながらなにもなく、怪奇現象も何も起こらなかった。
火葬が済み「さー、後片付けかー」となった頃、参拝者として来ていた弁護士さんが封筒を持ってきた。
ミミズのように汚い文字で『遺言』と書かれていた。
すぐにそれが祖父が一生懸命に書いたものだと分かった。
119 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:37:18 ID:X3u
遺言は数行にわたって書かれていた。
ただ達筆という訳じゃないが、本当に字が読めなかった。
たぶん頑張って書いたのだろう。弁護士が言うには両手で書いていたそうだ。
「まあ、読めないということは祖父さんもおっしゃっていまして、コチラも預かっています」
弁護士さんはiPhoneを再生した。
祖父『字が汚いから声も残しておく』と、祖父の声が流れた。
そして最初に遺言の内容を読み上げた。
祖父『今までお前らには苦労をかけた。
もう残せるものはなにもなく、大体財産も(父親)さんに渡っていることも聞いた。
だから話す内容には期待しないよーに。
……俺を捨てずに大切にしてくれてありがとうございました。
俺は本当に幸せ者だった。
それなのに俺はお前らに沢山迷惑を掛けてすまなかった。許してほしい。
○○(祖母)、顔を叩いてすまなかった。そして俺と長く付き添ってくれて、本当にありがとう。
○○(母親)、家のために俺に代わって責任を継いでくれてすまなかった。お前は俺のいい娘だった!
○○(父親)、お前は次の大黒柱だ。絶対に負けるな。安心しろ俺が認めた息子だ!
○○(オレ)、お前はいつまでも俺の可愛い孫だ。死んでも孫だ。ありがとう。』
録音はこれだけではなかった。
(´;ω;`)ブワッ
121 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:45:35 ID:X3u
弁護士『まだ録音できますよ?』
祖父『お、そうか……、途中で書くの大変で書かなかった。
正直、ボケていた時の出来事を少しは覚えている。
お前らが時々漏らしていたグチや、俺がしてしまったこともな。
でだ、俺も自分でも最初訳がわからなかった。
ついこないだまで平然とやっていた事を、急に理解出来た時はなにが起きたかと思った。
……ああ、これがボケなのか、老いなのか、情けないと思った。
俺はなんの罰当たりに最後に、こんな目にあわなきゃいけないと思った。
そして俺は怖かった。
俺がまともだと分かったら報復されるんじゃないかと。
あの時は思わず電話したが、後から怖くて怖くてしょうがなかった。
ところが、お前らは明るく俺を迎え入れてくれた。
俺が呼んだ手前、堂々とはしていたが、怖かったんだぞ。
だがけど、お前らは俺が思っているより優しかった。ずーっと俺の家族だった』
ここから祖父の声がかすれ始める。泣いてもいた。
祖父『そんなに俺を最後まで大切にしてくれてありがとう。
いや、ありがとうございました。
○○ ○○は、日本で一番の幸せ者だろうと思います。
いや、幸せ者だ。間違いなく
……まだ生きているのに、こんなこと言うと恥ずかしくてしゃーないな』
そこで録音は終わっていた。
122 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:50:48 ID:o30
泣いた
123 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:54:39 ID:X3u
駄目だ、その後泣いたことしか覚えていない。
とりあえず、俺は今元気に働いているし、父親ももちろん元気だし、
祖母も母も元気だよ、ぐらいしか書くことがないな……
よし、此処らへんで切り上げる。区切り悪くてゴメン。
二日と長々数時間、お付き合いありがとうございました。
124 :◆Zl0mWdgUwY :2016/01/15(金)15:55:14 ID:X3u
一応、コテ残ししておくよ。
あと簡単に質問に答えます。
125 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)15:56:09 ID:eEc
感動した!最後まで書いてくれてありがとう!!
126 :◆Zl0mWdgUwY :2016/01/15(金)15:58:13 ID:X3u
>>125
感動なのか、それとも悲しい話なのか。
でも読んでくれていてありがとうございました。
昨日は居なくなってすまない。本当にすまない。
127 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)16:07:52 ID:RxR
昨晩から見てたけど>>1乙
128 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)16:53:09 ID:AKj
書いてくれてありがとう
何か質問をと思ったが泣けて思いうかばない
130 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)19:22:01 ID:6rg
話を聞かせてくれてありがとう!
大事な事を教わった気がする
難しいことだけど逆境でも人を思いやれる人間でありたいね
131 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)19:34:27 ID:eFK
乙でした!
本当に人は素晴らしいな
俺も今生きている家族や周りの人を大切にしようと思う
132 :◆Zl0mWdgUwY :2016/01/15(金)19:44:19 ID:X3u
思っていた以上に非難がなくて驚いた。
それに読んでくれていた人も結構いたんだな……
明日から仕事の日々に戻るのでまともなスレ返信できないと思う。
なので今日限りで受付は取りやめる事にするよ。
毎日コテつけて降臨も気持ち悪いのもありますし。
仕事がなけれな無くて辛くて、あったらあったで辛いんだよな……なんだこれ。
>>128
急に言われて思いつくものではないしな。
>>130-131
でも、老人介護はマジで限界あるからな。
無理して自分が潰れてもしょうがないので、自分のキャパがゆる範囲で、
全力で大切や思いやって行くのが良いと思うよ。
マジで介護には心の限界が浮き彫りになる。
133 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)19:51:24 ID:6rg
>>132
心の準備はしておくよ
134 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)20:17:09 ID:3tC
泣いた
庭掃除します
135 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)20:22:47 ID:S34
乙!
ぼけてるときの頭で考えてる状況というか、
思考回路がどうなってたかとかお祖父さんから聞かなかった?
自分がぼけるって想像できないんだ・・・。
乙です!
自分の祖父が亡くなった時のことを思いながらよんでいたよ。といっても無くなる前、半年くらいだけど。
無くなる前、急にしっかりするのはうちの場合もそうで、あなたの文章の良さと相まって本気泣きしてしまいました。
あなたと、あなたが大事な人々に幸あれ!
138 :◆Zl0mWdgUwY :2016/01/15(金)20:56:21 ID:X3u
>>135
祖父自身も上手く言葉をまとめられていなかったから、
俺も上手くまとめる自信はないけど、
ボケていた時のことは、寝ている時に見る夢の様に覚えているとは言っていました。
だから全部を全部覚えている訳じゃない、とも言っていました。
祖父は「別の誰かの記憶を見ている様な感じ」とも言っていましたね。
とにかく夢のような感じだ、と結論づけていました。
>>136
ご冥福をお祈りします。
そして、亡くなる前に急にしっかりしていましたか。
まあ先生(医者)の話でも、よくあることとは言っていましたからね。
ただ祖父のように長生きしたのと、本当にボケが治ったのは初めてのことだったそうです。
そして相まってしまいましたか……、そちらも大変だったようで。
よくプレゼンの司会進行資料作成において、日頃から目が滑る言われていたので心配していました。
139 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)21:07:49 ID:BxS
>>138
心が温かくなったよ!
140 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)21:31:09 ID:by5
じいさん粋な人だな
ご冥福をお祈りします
141 :名無しさん@おーぷん :2016/01/15(金)23:09:22 ID:FEF
じいさん、伝えたいことが伝わって良かったね
感動系の人気記事
感動・ほっこり短編シリーズ
→記事を読む
あは。いっぱいします?
貧しくツラい環境の中でも健気に前向きに暮らす彼女と、その彼女を時には兄のように時には彼氏として温かく包み込むように支える主人公。次々におこる悲しい出来事を乗り越える度に2人の絆は深まっていき…、読んでいくと悲しくて、嬉しくて、涙が滲み出てくるお話しです。
→記事を読む
クズの俺が父親になった話
結婚して子供が生まれても、働かずに遊び回り家にも帰らない、絵に描いたようなクズっぷりの>>1。しかし、ある日のこと、子供を保育園に迎えに行かなければならない事情を抱えるところから全てが始まる……。親と子とは何か? その本質を教えてくれるノンフィクション
→記事を読む
今から何十年も開かずの間だった蔵を探索する
よくある実況スレかと思いきや、蔵からはとんでもない貴重なお宝が…!誠実な>>1と彼を巡る奇跡のような縁の数々。人の縁、運命、命について考えさせられ、思わず涙するスレです
→記事を読む
妹の結婚が決まった
両親を亡くし、男手一つで妹を育て上げてきた兄。ついに妹が結婚し、一安心したところに突然義母から「元々妹なんて存在しなかったと思ってくれ」という連絡を受けてしまう。失意のどん底に居た兄を救う為、スレ民が立ち上がる!
→記事を読む
急に色々気づいたら、死にたいって思った
積もり積もって七転び八起き◆3iQ.E2Pax2Ivがふと考えついたのが 「死にたい」 という気持ち。そんな中、一つのスレが唯一の光を導き出してくれた。書き込みしてくれる奥様方、なにより飼い猫のチャムちゃん。最後にはー‥七転び八起きとはまさにこのこと。
→記事を読む
番外編「I Love World」
→記事を読む
昨日、嫁の墓参りに行ってきた
>>1と亡き嫁、そして幼馴染みの優しい三角関係。周りの人々に支えられながら、家族は前に進む。
→記事を読む
介護の仕事をしていた俺が精神崩壊した話
介護とは何か。人を支えるとは何か。支えられるとは何か。色々考えさせるスレでした。
→記事を読む
過去の自分に一通だけメールを送れるとしたら
永遠に戻ってくれない時間。それでも、、
→記事を読む