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のび太「ドラえもんが消えて、もう10年か……」

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Part2
72 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/10(日)23:58:50 ID:MOZaDl5ts
「え?えっと……しずかちゃんのこと?」
「……そうよ。その“しずかちゃん”のことよ」
彼女は目を伏せたまま、どこかふてくされたように言う。まるでおもちゃを買ってくれなかった子供のようにも見えた。
「ええと……しずかちゃんは、出木杉と同じ企業に勤めてて……」
「そういうのはいいの!のび太くんとの関係!」
「あ、ああ……しずかちゃんは、僕の小学校の時の同級生なんだよ。ーーあ、中学校も一緒だったか」
「ふ〜ん……それで仲がいいのね………で?付き合ってたの?」
「つ、付き合う!?」
「……その反応を見る限り、付き合ってはないみたいね……」
「………」
「……ホント、分かりやすい反応するのね……ボソッ」
「……え?何か言った?」
「なんでも。ーーそれより、ご飯食べに行きましょ。私、お腹空いちゃった」
そう言うと、彼女はまた前を向いて歩き始めた。
僕はそれ以上何も言えず、ただ彼女に付いて行くだけだった。

77 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)00:07:57 ID:urbDGZkm7
「ーーふ〜ん……出木杉となぁ……」
ジャイアンは、ソファーに座ったまま腕を組みながら声を漏らす。
ここはジャイアンの職場。つまりは、彼の会社。
彼の会社も僕の会社の取引先となっている。当然ながら、毎回商談は僕が駆り出されていたわけで、こうやって、たまに挨拶周りという名目で、話をしに来ていた。
「……そうなんだよ……」
「しかも、呼び捨て、と……」
「うん……」
「……出木杉の奴……それよりのび太、お前、それでいいのか?」
「え?」
「しずかちゃんのことだよ。お前だって分かってるだろ?ーー出木杉、しずかちゃんを狙ってるぞ?」
「………」
そんなこと、わかってるさ。分かってるけど……だけど……
「……僕、そろそろ戻るね……」
「お、おい!のび太!!」
ジャイアンの声に一度だけ足を止めたけど、そのまま会社を出ていった。何かから逃げるように。

78 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)00:08:05 ID:sjnqrZDE5
切ないな
ハッピーエンドになるのか不安

79 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)00:14:54 ID:urbDGZkm7
家に帰った後、いつものように畳に寝転がった僕は、ジャイアンの言葉を思い出す。
(……これでいいのか、か……)
いいはずなんてない。出木杉に取られてもいいはずなんてない。ずっと一緒にいたんだ。ずっと、一緒になると思ってたんだ。
……だけど、実際は違っていた。しずかちゃんが女子高に進学してから、連絡を取る回数も極端に減った。高校を卒業すると、彼女は大学へ、僕は会社にそれぞれ通うようになり、連絡すらとらなくなっていた。
ごくたまに買い物に出かけたりはしていたが、しずかちゃんの仕事が忙しくなってからは、会うことはもちろん、話すことすらなくなった。
考えてみれば、しずかちゃんと疎遠になったきっかけは、中学を卒業したころかもしれない。
(……そういえば、ドラえもんがいなくなったのも、あの頃だったな……)
僕の脳裏には、セピア色の情景が甦っていたーーー

80 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)00:24:44 ID:urbDGZkm7
ーーあの日僕は、進学先の調査票を片手に、家に急いで帰った。
『ドラえもん!!大変だよ!!しずかちゃんが女子高にーーー!!』
……だが、僕の部屋には、誰もいなかった。
その時はすぐに帰ってくると思ったけど、結局夜になっても、ドラえもんは帰ってこなかった。
スペアポケットを使ってどこに行ったのか調べようと思った僕は、ドラえもんの押入を開けた。でもそこも、もぬけの殻だった。
まさかと思い引き出しを開けたら、タイムマシンすらもなくなっていた。
慌てて父さんと母さん、ジャイアンとスネ夫、しずかちゃんと一緒になって街中を探したけど、結局ドラえもんは見つからなかった。
後で調べたら、ドラえもんが映っていた写真すらもなくなっていた。
まるで最初からいなかったかのように、ドラえもんは忽然と姿を消した。
残ったのは、記憶の中のドラえもんだけだった。


81 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)00:26:08 ID:G4rAg6KBP
とてもつらい

82 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)00:30:05 ID:sjnqrZDE5
日曜の夜になんてスレを開いてしまったんだ・・・

83 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)00:31:06 ID:urbDGZkm7
(……きっと、今の僕を見たら、キミは怒るだろうな……)
天上を見つめながら、ふと、そんなことを考えた。
僕だってしずかちゃんと結婚したい。だけど、僕なんかがしずかちゃんと結婚していいのだろうか。出木杉はとても立派になった。ジャイアンもスネ夫も、みんな自分で自分の人生を歩いている。
……それに比べて、僕はどうだろう。惰性に流され、ただ生きてるだけじゃないか。
こんな中途半端な僕と結婚しても、しずかちゃんはきっと幸せになれない。
……最近じゃ、こんなことまで考えている。
「……どこまでも、本当にダメな奴だな。僕は……これじゃキミも、愛想を尽かせるはずだな……」
気が付けば、失笑と共に、そんな言葉を呟いていた。

84 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)00:36:46 ID:G4rAg6KBP
のび太!もっと頑張れ!

85 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)00:42:03 ID:urbDGZkm7
ーーその時だった。
ーーカランッ
突然、玄関の郵便受けに、何かが投げ込まれる音が聞こえた。
「……ん?こんな時間に郵便?」
時間は夜遅い。普通なら、郵便なんて届く時間じゃない。不思議に思いながらも、玄関の郵便受けを開けてみた。
そこには、便箋が一通。宛名も、消印もない。
どうするか悩んだが、中を開けてみた。
そこには、一枚の手紙が入っていて、その手紙を手に取り、読んでみた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
のび太くんへ
今キミは、何かに悩んでいると思う。
のび太くん。キミは、きっと勘違いをしてるよ。
全部うまくいく人生なんてないんだ。
誰でも躓いて、悩んでいるんだ。
キミの周りにも、輝いている人がいるだろう?
その人達も、キミが知らないだけで、頑張ってるんだよ。
だから、頑張って、のび太くん。
キミは確かにドジだけど、キミにしかないいいところもたくさんあるんだ。
辛く苦しいかもしれないけど、とにかく、今自分に出来ることを一生懸命頑張ってね。
そうすれば、きっと道が開けるさ。
もう一度言うね。
頑張って、のび太くん。
僕はいつでも、キミを応援してるよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーーーこ、これは……この字は……!!」
目を疑った。信じられなかった。
ーーでも、見間違いようもなかった。
「この字は………ドラえもんの字だ……!!!」

86 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)00:44:01 ID:jj4lBmb42
ドラえもおおおおおおおおおおん

87 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)00:47:13 ID:G4rAg6KBP
ドラえもん…(泣)

88 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)00:48:47 ID:RU7fdRIgP
涙が溢れてきた

90 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)00:52:19 ID:urbDGZkm7
「ま、まさか……!!」
慌てて、裸足のまま外へと駆け出した。そして、アパートの周辺を走り回った。
「ドラえもん!!どらえもん!!!」
ずっと、名前を呼び続けた。
……でも、声が返ることはなかった。
しばらく探し回った後、一度家に帰る。そして、もう一度手紙を見てみた。
よく見れば、手紙はまだ新しい。まるで、つい最近書かれたかのようだった。
(どこかにいるんだ……ドラえもんが、どこかにいるんだ!!)
でもそれなら、どうして姿を見せないのだろう。何か理由でもあるのだろうか……
……考えても分からない。分からないーーーけど……
(……ドラえもんが、僕を見ている。ーー応援してくれてる!!)
ーー僕の中で、何かが芽生えた。それまで消えてしまっていた、何かとても大きなものが、確かに僕の心に溢れていた。

95 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)01:02:48 ID:urbDGZkm7
「ーー野比!!この書類だがーーー!!」
「ーーはい!!すぐ訂正します!!どこを直せばいいですか!?」
「お、おう……ええと……こ、ここをだな……」
「そこですね!?分かりました!!すぐ訂正します!!」
「あ、ああ……」
デスクに向かうと、すぐにパソコンのキーボードを叩き始める。カタカタと、キーを叩く音が軽快に、断続的に流れていた。
ーーふと、机の隅に置いた便箋に目をやる。
「………」
(……ドラえもん。僕、頑張るよ……!!)
そして、画面に視線を戻した。

96 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)01:03:22 ID:xt9ZKje1u
泣くわ

97 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)01:04:42 ID:QoX8DxHrU
感動

98 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)01:06:02 ID:RU7fdRIgP
この手紙無くさないかなー、と少し心配

99 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)01:11:34 ID:urbDGZkm7
「ーーのび太くん……今日はどうしたの?」
休憩時間にジュースを飲んでいると、咲子さんが聞いてきた。
「え?何が?」
「いやだって……なんか、いつもと全然違うし……」
「そうかなぁ……」
「うん!全然違う!なんかこう……生き生きしてる感じがする!」
「……まあ、がっかりさせないようにしないといけないしね」
「なんのこと?」
「……なんでもないよ。でも、そんなに変かな?」
「う、うんうん!全然変じゃない!むしろーーー!!」
そう言うと、咲子さんは固まってしまった。
なんか、目をパチクリさせてる。
「……?どうしたの?」
「な、なんでもない!!なんでもないから!!」
「え?でも、顔赤いよ?」
「〜〜〜ッ!!な、なんでもないの!!」
そして咲子さんは、そのままどこかへと走り去って行った……
「……なんなんだ?いったい……」

100 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)01:13:42 ID:QoX8DxHrU
咲子さんヤンデレ説


101 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)01:14:40 ID:G4rAg6KBP
咲子さん。。。のび太鈍感すぐる

102 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)01:17:59 ID:ER9fGjzug
寝られなくなっちまった

103 :名無しさん@おーぷん :2014/08/11(月)01:28:21 ID:G4rAg6KBP
続き楽しみ

104 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)01:34:12 ID:urbDGZkm7
仕事帰り、いつもの帰宅コースを大きく外れ、僕はいろんなところを通りながら歩いていた。
理由はもちろん、彼を探すためだ。
(……やっぱりいない、か……)
キョロキョロと付近を見渡しながら歩く姿は、もしかしたら不審者のように見えるかもしれないな。
やはり、何か姿を見せることが出来ない理由があるのだろうか……
気にはなったが、いくら考えても答えなんて出るはずもなかった。
それでもしばらく探し回って、家に帰った。

105 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)01:34:50 ID:urbDGZkm7
帰りつくと、家の郵便受けには、また、一通の便箋があった。
「ーーー!!ドラえもん!?」
慌てて家の中に家の中に駆け込み、鞄を放り投げて、立ったまま手紙を開く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
のび太くんへ
今日はどうだった?久々に充実しなかった?
それが、生きるってことなんだよ。
疲れたかもしれないけど、毎日を一生懸命過ごせば、毎日が輝くんだよ。
確かに、一生懸命頑張っても、叶わないこともある。
だけど、その途中で経験したことは、必ずキミの大きな財産になるんだ。
僕は、キミのことを手伝うことは出来ない。
だから、キミがやらなくちゃいけない。
そして何かあれば、責任も取らなくちゃいけない。
だけど、頑張っていれば、きっと誰かが助けてくれるから。
キミの頑張りを、きっと誰かが見てくれているから。
そこに、大きな意味があるんだよ。
頑張れ!のび太くん!
僕にはそれしか言えないけど、頑張れ!のび太くん!
頑張れ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……ドラ……えもん………ドラえもん……!」
ーー涙が、溢れて来た。
ドラえもんの言う通りだった。今日一日は、とても充実していた。
どうしようもなくて、毎日がつまらなくて、いつも周りに流されていた。
そんな僕を、彼は助けてくれた。
姿はなくても、声は聴けなくても、彼は、僕に手を差し出してくれた。
……それがとても嬉しくて、とても暖かくて、僕は、その場で何度も何度も手紙を読み返した。
気が付けば、手紙の文字は滲んでいた。だけど彼の言葉は、間違いなく僕の心に刻み込まれていた。

112 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)01:43:42 ID:urbDGZkm7
それから、定期的に手紙が届くようになった。
届くスパンには差があったが、いつも気が付いたら郵便受けに入っていた。
手紙は、いつも新しかった。
書き溜めをしていたとも思えない。
つまりドラえもんは、この時代に、僕の近くにいる。
ジャイアンとスネ夫にこのことを話すと、その次の休日に、三人で街中を探し回った。
……でも、やっぱりドラえもんの痕跡一つなかった。
誰かが、ドラえもんの代わりに手紙を書いてるのかもしれないとも思った。
でも、何度見ても、その字はドラえもんのものだった。

119 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)08:58:31 ID:Q3wyrm57M
「ーーじゃあ、その昔の友達から10年ぶりに手紙が来たのが、最近ののび太くんの変わり様の原因ってことか……」
街角のカフェで、コーヒーを飲みながら咲子さんは呟く。
今日僕達は、職場の備品を買いに来ている。前のしずかちゃん達と同じ状況だが……正直、大した買い物じゃない。仕事の途中で買うことも出来るレベルだった。
しかしまあ、咲子さんの強い要望(ほぼ強制)により、なぜだかこうして、休日に買いに来ていた。
そして、突然彼女は切り出してきた。
最近、何があったのかーー
なんとか誤魔化そうとしたが、彼女に圧倒された僕は、こうして、ことの顛末を説明したのだった。
「原因って……それと、友達って言うより、家族に近いよ」
「ふ〜ん……。でもその人、優しいね。姿は見せなくても、そうやってのび太くんを見守ってるし」
「……うん。とっても、優しいんだよ……」
「ーーまるで、のび太くんみたいね」
「……え?」
「のび太くんみたいに、とっても優しい」
「い、いや、僕は……」
「謙遜しなくていいのよ。だって、私は覚えてるもん。この会社に、入った時のこと……」

123 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)10:49:09 ID:p47Ruh7JC
覚えてる?私達が入社してすぐ、研修があったでしょ?
あの時、私、ドジしちゃって、研修で使う資料を忘れてたんだよね。
……まあ、普通なら言わないといけなかったんだけどね。
私、怒られるのが怖くて、どうしようか悩んでたんだ。
そしたら、のび太くんが私に話しかけてきたじゃない。
『ーーもしかして、忘れちゃったの?』
『ーーえ?』
『資料』
『……う、うん……きっと怒られるよね……』
『……』
のび太くん、何か考えてたよね。そして、言ったんだ。
『……もしかしたら、探せば見つかるかもしれないよ?』
『え?で、でも……バッグに入れた記憶がないし……』
『忘れてるだけかもよ?いいから。一緒に探してみようよ』
そう言って、一緒に探してくれた。そして……
『ーーあったよ!花賀さん!』
『え!?嘘!!』
『ほら、これ』
『バッグに……でも、さっきは確かになかったし……』
『慌ててたんでしょ。でも、これで安心だね』
『……うん!ありがとう!』
それから、私は研修を受けたんだけど……

124 :◆IAvTSYr7MA :2014/08/11(月)10:54:18 ID:p47Ruh7JC
『ーー野比!!資料を忘れるとはどういうつもりだ!』
『す、すみません……!!』
(あれ?あの人、資料忘れてたんだ……もう、私のことより自分のことをーー)
そして、気付いたんだ。もしかしたらって思って、資料をめくってみたら……あった。一番最後のページに、“野比のび太”って名前が……
すぐに言い出そうとしたけど、のび太くん、私の方を見て首を振ったよね。私、言い出せなかった。あの時は、本当にごめん……
そのあと、のび太くんに謝りに行ったら、のび太くん、笑いながら言ったよねーー
『いいんだよ。僕、怒られるのは慣れてるし』ーー

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