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狙撃手「観測手ってレズなの?」 観測手「ふっへっへ」
Part3


36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 07:52:34.25 ID:SY3twoiK0
観測手「……団長さんは?」
獣人兵「やつらが、やつらが……」ブツブツ
観測手「団長さんは、どうしたんですか」
獣人兵「……だ、だんちょう?」
観測手「はい、貴方達の団長さんはどうしたんですか」
獣人兵「……団長は」
獣人兵「我々を逃がす為の囮に……」
観測手「……」
獣人兵「生き延びて、この事を王に伝えろと……」
観測手「……そう、ですか」
獣人兵「そう、そうだ、私は悪くない、私は言われた事をしただけ、そうだ、悪くない」ブツブツ
狙撃手「……」
観測手「……」

37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 08:06:48.76 ID:SY3twoiK0
観測手「あの小動物達は、アンデッドだったんです」
「12時方向、距離200、高度0、犬型2体、人型1体、誤差左に0.6、撃て」
「確認」
観測手「恐らく帝国に死霊術師がいるのでしょうね」
「9時方向、距離300、高度20に鳥型1体、高度0に人型3体、誤差なし、撃て」
「確認」
観測手「北側森林地帯には戦死した帝国兵が大量に放置してありましたし、それを利用したのでしょう」
「14時方向、距離250、高度0、人型6体、誤差右上に1.2、撃て」
「確認」
「再調整、誤差右に0.2、撃て」
観測手「ここ最近無茶な用兵をしていたのはこれが目的だったのかもしれません」
「10時方向、距離500、高度0、人型2体、誤差左に0.4、撃て」
「確認」
観測手「あるいは5年前の開戦当時からこの状況を作る為に動いていたのかもしれません」
「再度12時方向、高度0、獣人……白い……」

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 08:07:40.31 ID:SY3twoiK0
 
「まるで機械仕掛けのような、冷たく恐ろしい……」
「……けれど、美しい眼でした」
「魅入られるかのような」
「……だから」
「……今でも彼女の眼は、まっすぐ見る事ができません」

39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 08:11:40.51 ID:SY3twoiK0
観測手「……白い兎の獣人1体、誤差なし、撃て」
狙撃手「……けど、あれは」
観測手「撃って下さい」
狙撃手「……確認」
ドシュッ
狙撃手「……」
観測手「……ああきっと」
観測手「きっと私は、今……」
観測手「……彼女が言ったような眼をしているんでしょうね」

40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 08:20:57.80 ID:SY3twoiK0
「死体達は森から続々とやってくる」
「私は観測手の指示の元、それらを撃ち殺した」
「やつらは頭を撃たないと動き続ける」
「精密な射撃が必要だ」
「余計な事を考えている余裕はない」
「10体、20体、30体を撃ち殺した」
「100体、200体、300体を撃ち殺した」
「キリがないように思えてくる」
「けれど、観測手の声は止まない」
「彼女の声が続く限り、私も撃ち続けないと」
「……ああ、それでもまだ状況はマシなほうだったんだ」
「外敵にだけ気を向けていれば良かったんだから」
「けれど」

41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 08:30:27.20 ID:SY3twoiK0
ハーピー「はーい、お昼ごはんの時間っすよー……」バッサバッサ
観測手「11時方向、距離100、高度0、獣人型4体、修正左上に0.3、撃て」
狙撃手「確認」
バシュッ
ハーピー「スルーっすか……いやあ、きついっすわぁ……」
観測手「……ハーピー、さん?」
ハーピー「はいはい、ハーピーさんっすよ……えっと伝令もあるっす……」
狙撃手「……貴女、怪我を?」
ハーピー「……王様が死んだっす」
狙撃手「……え?」
観測手「死ん、だ?」
ハーピー「ほら、撤退してきた獣人兵達がいた、じゃないっすか……」
ハーピー「あいつら、アンデッド達に噛まれてたみたいなんっすよね……」
ハーピー「しばらくは大丈夫、だったんっすけど……なんか、突然……」
ハーピー「あいつらも、アンデッドになって……周りの兵に噛みつき始めて……」
ハーピー「王様も、その時……」
ハーピー「いやあ、あっけない、もんっすわ……」

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 08:42:57.02 ID:SY3twoiK0
観測手「そう、ですか……」
狙撃手「……ハーピー、貴女もしかして」
ハーピー「あははは、私もちょっと王様助けようとしてドジって噛まれてしまったっすよー……」
観測手「……」
狙撃手「……じゃあ、貴女も」
ハーピー「……はい、アンデッドに、なると思います」
狙撃手「……そ、そんな、何か、何か治す方法は」
狙撃手「……そうだ、魔術兵団なら、もしかしたら治療法を探ってるかも」
ハーピー「いやあ、あるかもしんないっすけど、時間ないと思うっす……」
ハーピー「もう城の中で誰が生き残ってるかもわからない状態っすし……」
観測手「……」
ハーピー「高所から飛び降りて死のうかとも思ったんすけど……」
ハーピー「打ち所が良くて死に切れなかったら、辛いっすよね……」
ハーピー「けど、狙撃手さんと観測手さんなら……」
ハーピー「上手く仕留めてくれるかなって……あ、あははは……」

43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 08:58:15.14 ID:SY3twoiK0
観測手「判りました」
狙撃手「……けど、けどハーピーはまだ生きてる!生きてるのに!」
ハーピー「いやあ、たスかるっす……おんにキるっすよ……」
観測手「12時方向、距離0、高度0」
狙撃手「……!」
観測手「……狙撃手さん」
狙撃手「だ、だめだ、こんなの……」
観測手「……大丈夫です、狙撃手さん」
狙撃手「な、なにが……?」
観測手「嫌な事は、見なくてもいいです」
観測手「怖い事は、目を背けていいです」
観測手「辛い事は、考えなくてもいいです」
観測手「全部、全部私がシテあげますから」
観測手「だから、狙撃手さんは私の声だけを聞いていればいいんです」
狙撃手「……声、だけ……」
観測手「はい」

44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 09:08:07.23 ID:SY3twoiK0
「……観測手と狙撃手は」
「……え?」
「二人で一つのユニットです……」
「……うん、まあ、そうだね」
「もし狙撃手さんがいなければ、私の観測は無意味なものとなります」
「……正しい認識だね」
「その逆もまた真なり、です」
「……うんうん」
「これは人生においても同じです」
「……うんう……ん?」
「狙撃手さんが一人道に迷い立ち止まってしまった時は、私が道を照らす義務があります」
「……そう、かな?」
「そうです!」
「……まあ、そう言って貰えるのは嬉しいけど」
「はい、ですから狙撃手さん」
「うん」
「12時方向、距離0、高度0、誤差なし、撃て」
「確認」
ドュシュッ

45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 09:14:51.46 ID:SY3twoiK0
狙撃手「……」
観測手「……」
狙撃手「……ん、あれ、私寝てた?」
観測手「はい、ぐっすり眠ってましたね」
狙撃手「……ごめん、任務中なのに」
観測手「いえいえ、狙撃手さんも疲れてらしたようですし」
狙撃手「……確かに、沢山撃ったしなあ」
観測手「もう少し、休憩しますか?」
狙撃手「……いや、いいよ、それより弾ってどれくらい残ってたっけ」
観測手「大丈夫、いっぱいありますよ」
狙撃手「……そっか」
観測手「またやりますか?」
狙撃手「……うん、やろうか」

46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 09:22:23.74 ID:SY3twoiK0
「彼女の声に従い、引き金を引く」
「そうすると、パッと赤い花が咲く」
「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ」
「沢山の花が咲く」
「そうすると、また彼女の声が聞こえる」
「私を包み込むような声が」
「また花が咲く」
「何も考えなくていい」
「何も想わなくていい」
「何も観なくてもいい」
「まるで彼女と一体になったかのような感覚」
「ああ、凄く安心する」
「私はこれを望んでいたんだ」
「ずっと望んでいたんだ」

47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 09:27:14.14 ID:SY3twoiK0
「好きでした」
「ずっと好きでした」
「言いだせずにいたけれど」
「パートナーになった時からずっと」
「貴女の声が好きでした」
「貴女の仕草が好きでした」
「貴女の香りが好きでした」
「貴女が他の人を好きだとわかっても」
「ずっと貴女が好きでした」
「好きでした」
「好きでした……」

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 09:38:02.68 ID:SY3twoiK0
〜1週間後〜
〜国境〜
幼女「はい、終了れす」パンパン
将校「は?」
幼女「お城で生きてる人、みんないなくなったれす」
将校「そ、それは……素晴らしいお手並みで」
幼女「まあ、私の死霊術にかかればこんなもんれす」ピョン
将校「あ、お、お待ちください、どちらに行かれるので?」
幼女「そりゃあ、お城に行くに決まってるのれす」
幼女「私が行かないと、城を制圧する帝国兵達までゾンビに食われてしまうれすよ」
将校「し、しかしまだ危険があるかもしれませんし」
幼女「あ?生きてる奴が一人もいないのに危険も何もないれすよ」
幼女「それとも、私の感知能力疑うれすか?」
将校「い、いえ、そういうわけでは……」
幼女「なら黙ってついてくるれす」
将校「はっ!」

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 09:45:45.08 ID:SY3twoiK0
〜城門前〜
幼女「うわあ……予想以上に酷い有様れす……ドロドロれす……」
将校「ここ数日は雨がひどかったですからね……」
幼女「もう、靴下までドロドロになったれす、とっとと城の中に……」
ドシュッ
幼女「あ……」ブシュッ
将校「え……」
幼女「……」ガクッ
将校「死霊術師様!?」
将校「う、うわあああ!死霊術師様の頭が撃ち抜かれて……!」
ドシュッ
将校「がっ……」プシュー
将校「……」ガクッ

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 10:00:21.63 ID:SY3twoiK0
「彼女の声が聞こえた」
「細い、風のような声」
「もう人の言葉を成さない声」
「その声に導かれるように」
「私は銃身を動かす」
「何時ものように」
「狙って撃つ」
「何度も繰り返した動作」
「もう意識しなくてもできる」
「ああ、きっと今の私は」
「彼女と同じように」
「機械仕掛けのような、冷たく恐ろしい眼をしているのだろう」
「それは、きっと、とても幸せな事」
「ずっと望んでいた事」
「私は忘れない」
「この感覚を」
「このまま死んでしまっても」
「人でなくなってしまったとしても」
「きっと繰り返す」
「彼女と一緒に」
「ずっと」
「ずっと」
「ずっと」

51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 10:20:45.39 ID:SY3twoiK0
終わり!

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 10:21:40.66 ID:6BAvrVltO


55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 10:42:46.31 ID:/KUB7VyZ0
凄く好きな雰囲気だった
乙!!

56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/08(日) 11:28:35.47 ID:41kcmAB00
乙!面白かった

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/10(火) 12:49:36.79 ID:HPzs13yA0
こんな結末になるとわ………乙!