Part2
19 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 12:29:25.08 ID:KLK+D78IO
( ゚д゚ )「Feuer!!」
『ァッ、アアアアアアアアアアッ!!!!?』
二度目の一斉射。爆発音に混じり、肉が裂ける生々しい音を確かに聞いた。
一度目の砲撃の時よりも遙かに巨大な断末魔を上げて、ホ級が左腕────正確には、先ほどまで左腕があった場所を押さえて悶絶する。
( <●><●>)「ホ級の左腕、欠損。攻撃が効いているのは解ってます」
船でいえば“中破”といったところか。いずれにせよ、これでホ級の脅威は大きく軽減された。
_
(;゚∀゚)「! イ級二体、攻撃態勢に移行!!」
(;'A`)「クソッ!!」
が、あちらさんも流石に全くの無抵抗で殴られ続けてくれるわけではないらしい。無論両側のイ級二体に関しても独仏の小銃が全力で鉛弾をプレゼントしていたが、いくら百数十丁とはいえ“陸を歩く軍艦”に対しては役者不足にもほどがある。
( <●><●>)「イ級、砲撃態勢に移行」
(;'A`)「見りゃ解るよ!!」
イ級の、魚でいえば口にあたる部分が開く。中から、黒光りする砲口が顔を覗かせた。
( ゚д゚ )「Feuer!!」
瞬間、ミルナ中尉が号令する。第二次斉射の時に砲撃に参加しなかった五門のパンツァーファウスト3が咆哮、ロケット弾が向かって右手のイ級の口の中に次々と飛び込んでいく。
イ級が一瞬眼を見開いたような気がした。閃光が迸り、今までで一番の轟音が大気を震わせる。
体内からの誘爆によって頭部……どころか身体の七割ほどを吹き飛ばされ、主を失った脚部がしばしの制止の後横倒しになる。
(*><)「イ級ダウン、イ級ダウン!!!」
( <●><●>)「ミルナ中尉の戦略眼が素晴らしいのは解っていました」
_
(#゚∀゚)「喜んでる場合か!!」
(;'A`)「もう1体だ!もう1体の方も止めろ!!」
手放しで歓声を上げようとした奴らも、俺とジョルジュの叫びに慌てて再び銃口を構える。もう1体、右手のイ級は味方のよもやの轟沈に呆然としたのかしばらく制止していたが、我に返り口を開けて砲をこちらに向ける。
20 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 12:34:46.01 ID:KLK+D78IO
『──────ァアアアアアアアアアアアッ!!!?』
だが、砲声の代わりに響いたのは苦悶の声。背面に突如飛来した砲撃を食らい、イ級が激しくのけぞり蹈鞴を踏んだ。
『ア゛ァ゛ッ!!?』
次いで、ホ級の顔面(?)に砲弾が何発か叩き込まれる。片腕を失いバランス感覚を失っていたホ級は、あごにフックを食らったボクサーのようによろめき地響きを立てて転倒する。
「プラゼーレス墓地のポルトガル戦車隊より入電!弾着視認、効果の程を求むとのことです!」
( ゚д゚ )「“効果絶大、引き続き砲撃されたし”と返せ」
……なるほど、後方待機していたポルトガル軍の砲撃か。攻撃開始と同時にホ級達の位置情報を戦車隊にも共有していたのだろう。
勿論支援火力への情報提供は当然のことだ。が、実際の火力投入のタイミングが絶妙という他ない。
完全にこちらの攻撃に注意を引きつけられていたホ級とイ級は、予期せぬ方面からの砲火の雨に為す術が無くなった。
『アッ、アアッ、アアアアァァ………』
ポルトガル軍の砲撃はなおも続く。ホ級は残った右手を何かに助けを求めるかのようにしばらく虚空にさまよわせ、十何発目かの砲弾に頭を吹き飛ばされて沈黙した。
『ァアアアアアアアアアアア……』
もう1体のイ級も既に虫の息だ。巨体のあちこちに痛々しく穴が開き、その穴からは黒煙が噴出している。
それでも口を開いてなんとか砲の照準をこちらに併せようとする敢闘精神には感服するが、間もなく無駄な努力となることは明白だ。
(#><)「ホ級、沈黙!!残るイ級も大破状態です!!」
( ゚д゚ )「油断するな、一気に仕留めろ!!総員、射撃翌用意!!」
「「「Jawohl!!」」」
('A`)「Jawohl!!」
────戦争なんてのは神の次に嫌いな代物だ、ましてや愛着も何もない外国でくたばるなんざ御免被る。
そんな俺でもやはり、今度ばかりは興奮を抑えられぬ声でミルナ中尉の号令に応える。
21 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 12:36:49.70 ID:KLK+D78IO
かつては人類を海洋から駆逐しかけた化け物を、艦娘の力を借りずにただの人間達がなぎ倒す。それも、全く損害を受けず事実上の完封勝利(なお、ポルトガル全域の戦況については考えないものとする)。
こんなもの、エクスタシーを感じずにいられるだろうか。「流石に気分が高翌揚します」という奴だ。
はやる気持ちを抑え、小銃の弾倉を取り替える。そして、今にも倒れそうなイ級に銃口を向け、奴にトドメを刺すべく引き金を────
「敵機直上、急降下ーーーーーーーーーーー!!!!!!」
22 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 12:37:47.40 ID:KLK+D78IO
('A`)「え?」
誰かの叫び声が聞こえ、上から何かが落ちてきた。
一拍間を置いて、爆発音。エクレール戦車が一台、一瞬で炎に包まれる。
「対空警戒、対空警戒!!【Helm】来襲、数は目算で20〜30!!」
(;'A`)「………!!」
また別の誰かが叫び、その声につられて俺は上空を見上げる。
程なくして見つけた。あの忌々しい深海棲艦の艦載機が、我が物顔で空を飛んでいる様を。
(;'A`)「っ!!」
ふと、奴らの一部の姿が揺らいだ気がした。ただの見間違いか目の錯覚だったのかも知れないが、俺にはそれが奴らの次の攻撃の予兆に見え思わず小銃を空へと向ける。
(;゚д゚ )「攻撃やめるな!!まだイ級は生きてるぞ!!」
それが間違いだった。
(;゚д゚ )「っ、イ級発砲────
衝撃と、今日二度目の浮翌遊感を味わいながら、俺の意識は闇に落ちた。
23 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 14:13:54.02 ID:KLK+D78IO
…………激しく揺られた脳はただでさえ低い機能を更にグレードダウンさせたらしく、眼が覚めた瞬間俺はつかの間自分が誰であるのかすら忘れていた。
自分がドク=マントイフェルという冴えない名前であることを思い出し、ついで少しずつ正常に稼働し始めた眼が自身が五体満足であることを確認して安堵の息を漏らす。
(メA`)「………」
いや待て安堵って何だ。四肢が着いているのは当たり前、別に着いてるから安心する必要があるものじゃない。一体俺の身に何が起きた?
(メA`)「……あ」
そこまで考えて、俺は自分が弛緩した身体を誰かに引きずられていることに気づいた。
24 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 14:15:14.46 ID:KLK+D78IO
(メメ<●><●>)「おや少尉、案外お早いお目覚めですね。もう1時間ほど寝るつもりかと思っていました」
頬の切り傷から血を流しつつ、ティーマスが覗き込んできたことで俺はようやく現状を思い出した。
ここはポルトガルリスボン、アルカンタラマール駅前、インド通り。
深海棲艦と交戦中だった俺は、上空に現れた深海棲艦の戦闘機に気をとられた挙げ句死にかけていたイ級の砲撃を食らって吹っ飛ばされた。
(メA`)「……ティーマス=ワーカー軍曹、状況の報告を頼む」
(メメ<●><●>)「ようやく脳みそも機能を取り戻したようで何よりです」
(メA`)「あとお前のフルネームを初めて呼んだ気がする」
(メメ<●><●>)「一体貴方は何を言ってるんですか?」
いかん、また意識が。
25 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 14:16:20.68 ID:KLK+D78IO
(メ#゚д゚)「隊列は崩すな!歩兵は相互にカバーしつつ弾幕射撃で対空牽制!!三個分隊、戦車の護衛につけ!」
(;><)「ルクレール、2両目撃破されたんです!!」
(;メ゚д゚)「っ、なら二個分隊でいい!戦車隊はイ級に早くトドメを、ポルトガル軍はどうした!?」
_
(;メ゚∀゚)「【Ball】、【Helm】の攻撃を受けて混乱状態みたいです。まともに通信が繋がりません」
(;メ゚д゚)「……クソッタレが!!」
(メA`)「………」
(メメ<●><●>)「貴方がイ級の砲撃で間抜け面をさらしつつ吹っ飛ばされた直後、敵航空隊の攻撃が本格化しました」
戦線を立て直すため必死に指揮を続けるミルナ中尉を、どことなく他人事のように眺める。阿鼻叫喚の中俺を物陰……俺が吹き飛ばされる前に破壊された元ルクレール戦車の陰に引きずり込みつつ、ティーマスが淡々と状況を説明してくれた。
(メメ<●><●>)「敵の中核艦隊旗艦、装甲空母姫より【Ball】が多数発艦。アルマダ、カシュカイシュ、そしてリスボンに来襲。
同時に、アルマダに上陸していた空母ヲ級からも追加の【Helm】40余機がここへ向けて発艦。
戦爆連合の猛攻を受け、現在アルカンタラマール防衛線は瓦解状態です。立て直しが不可能なのは解ってます」
(メA`)「……まぁ、そうだろうな」
26 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 14:36:49.54 ID:KLK+D78IO
中世の騎士が使った兜を思わせる形状の、一般的な深海棲艦の戦闘機として知られる【Helm】。
白色の球体という形状を基本形とし、flagship級や姫、鬼といった上級の深海空母が使うことが多いとされる【Ball】。
どちらも装甲は薄く、Helmの方に至っては通常種ならH&K MP5一連射で火を噴く“ワンショットライター”だ。加えて速力も400km/h程度が限界と、人類側の使う戦闘機とは性能面で雲泥の差がある。
だが、奴等は最大でも1m20cm程度と深海棲艦本体に輪をかけて小さい。ロックオン不可能という問題がここでも立ち塞がり、かといって有視界でバルカンによる撃墜など更なる無理難題だ。
そのくせ向こうの爆弾や機銃は、大して此方の戦闘機のものと威力に差が無いと来ている。
「あああああぁあっ!!?腕が、俺の腕がぁあああああ!!!?」
「こっちにも負傷者だ!衛生兵を!衛生兵を呼んでくれぇ!!」
………そんなものが、ほぼ唯一の対抗手段である艦娘のない軍に襲いかかればどうなるか。
結果はご覧の有様だ。
27 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 14:38:11.64 ID:KLK+D78IO
「…ぁ……ぁぅ……ぐ……」
ずるずると、下半身を吹き飛ばされたドイツ兵が一人目の前を張っていく。最早死が免れないのは傍目にも明らかだが、そいつは声にならない声を上げながら必死にこの場を逃れようとしていた。
《タスケテ!!※※※※!!
タスケテ!!※※※※!!》
燃え上がる三台目のルクレール戦車の中から、フランス語とドイツ語で交互に助けを求める女の声が聞こえてくる。
ガンガンと装甲を内側から叩く音が狂ったように、そして徐々に勢いを失いながら喧噪の中で響く。
「※※※※!!!」
『────ォオオオオオオッ!!!』
狂乱状態のフランス兵が一人、そこかしこに転がる死体を蹴散らしながら俺たちの傍を駆け抜けていった。助けの言葉か悪態かを叫んでいたが、その叫び声はイ級が下腹部から機銃を放ったところで途切れる。
(メ#゚д゚)「せめて、せめてイ級をここで仕留める!!総員残存火力を集中!!目標、正面イ級!!」
「「「Jawohl!!」」」
この期に及んでも、まだミルナ中尉は任務を遂行しようとしていた。ジョルジュ、ビロードを中心に敗残兵が集まり、向かってくるイ級に向けて引き金を引く。
『アアアアァァアアアア!!!』
(;><)「ダメなんです!ターゲットにダメージありません!!」
(;メ゚д゚)「あきらめるな!撃ち続けろ!!」
……でも、大破しているとはいえ奴等は“船”だ。相次ぐ爆撃でパンツァーファウストもほとんど失逸している今、たかが十数挺のアサルトライフルごときではトドメを刺すにはほど遠い。
(メA`)「…ティーマス、煙草持ってたりする?」
(メメ<●><●>)「あいにく健康志向なので」
(メA`)「そうだったね」
クソッタレ。
28 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 18:00:36.10 ID:KLK+D78IO
_
(メ;゚∀゚)「アルカンタラマール防衛線よりHQ、深海棲艦機の猛攻を受けて戦線の維持が難しい!後退、もしくは艦娘の派遣を求む!!」
《此方HQ、艦娘の派遣は不可能だ。深海棲艦の攻撃は広域に及んでいる、外洋の主力艦隊の救出から優先しなければならない。
また、後退は許可できない。抜かれればポルトガル防衛線全体が崩壊する、死守せよ》
_
(メ#゚∀゚)「ならせめて対空砲の派遣を要請する!艦娘とまでは行かないから対空弾幕射撃が可能な車両を寄越せ!!」
《……此方HQ、大局的に鑑みて、要請は許可できない。アウト》
_
(#メ゚Д゚)「…ッオオオオオオオオオッ!!!!」
がつんと音を立てて、ジョルジュが通信機を地面にたたきつけている。
……まぁ、ほとんど死ねと言われたも同然だからな。あいつが怒り狂うとしても仕方ない。
(メA`)「……」
(メメ<●><●>)「……少尉、反撃は?」
(メA`)「マンドクセ……とも、言ってられんよなぁ」
ミルナ中尉は作戦の直前、俺たちには“神の加護”がついていると言った。だが、神の加護がついた結果、俺たちは今死にかけている。
(メA`)「………ティーマス」
この結果が、中尉の信仰不足故なのか、深海棲艦に神をも凌駕する力があるのか、そもそも加護自体を必要としないのかは解らない。
だが、一つだけはっきりしたとH&K MP5を構えつつ俺は思う。
(メA`)「援護しろ」
(メメ<●><●>)「Ich verstehe」
やっぱり、神なんて信じるものじゃない。
29 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 18:04:45.21 ID:KLK+D78IO
(#'A`)「っ!」
通りに飛び出すと同時に、小銃の引き金を引く。ただし目標はイ級でもないし、そもそも当てるつもりもあまりない。
『……!』
『!?』
生き残った最後の一両であるルクレール戦車の真上、徐々に高度を下げつつ飛び回っていた【Helm】の一群に向けてばらまくように弾幕を放つ。
勿論当たってくれるのが最良だったが、近代戦闘機に比べて遅いというだけで時速400kmは地上から狙い撃つには十分高速だ。
とはいえ最低限の目的は果たした。俺はなおも照準を上空に向けて【Helm】共を牽制しつつ、困惑したように右往左往している車体を駆け上がると上部ハッチを激しく蹴飛ばし始めた。
(#'A`)「オラァ!!出てこい蛙野郎!!」
正確には戦車に乗っている人間なんだから“野郎”の可能性は極めて低いか。だが今はそんなことどうでもいい。そもそも上品なおフランス野郎にドイツのジャガイモくさい言葉が解るとも思わない。
(メメ<●><●>)「っ」
この間はティーマスが変わってHelm共の軌道を遮る形で弾幕を張る。あちらは有効射程圏の遙か圏外まで退避しているが、動きさえ牽制できるなら今はこれでいい。
それにしてもどこから軽機関銃など調達したのか……。変な奴だが、やっぱり優秀であるには違いない。
(#<●>∀<●>)「フウハハハハハハァーーーーー!!!!汚物と深海棲艦は消毒DAAAAAAAAAA!!!!!」
いかん、変なスイッチが入った。
30 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 19:29:07.67 ID:KLK+D78IO
(メ;'A`)「ええ……部下兼友人がガチモンのトリガーハッピーだった…長いつきあいで初めて知ったんだけど」
ξ;゚听)ξ
('A`;)「ってうおっ!?」
自分の部下が明後日の方向へと旅立ってしまった瞬間を目撃して呆然としていたら、いつの間にか足下のハッチが開いていた。
車内から顔を覗かせるのは、いかにもフランス女な金髪巻き毛。
ただ、存外年は若い。俺と同い年か、下手したら更に下か。友軍車両の全滅でパニックにでも陥っていたのか、眼は泣きはらしたように赤い。
フランス軍が絶望的に人材不足なのか、或いはこいつが飛び抜けて優秀だったのか。
できれば後者を希望するが今は贅沢を言ってられない。
(#メ'A`)<アンタ英語は出来るか!?>
ξ;゚听)ξ<す、少しなら>
(#メ'A`)<前方のイ級を仕留めたい!協力してくれ!!>
ξ;゚听)ξ<……解ったわ>
少しだけ間はあったが、まさかの二つ返事とはさい先がいい。今は本当に1秒でも時間が惜しい。
('A`)<名前は>
ξ゚听)ξ<ツン。ツン=デレ>
('A`)<ツン、車内で機銃手は?>
ξ゚听)ξ<……さっき深海棲艦機の機銃掃射で死んだわ>
('A`)<解った。俺が動かす>
ξ゚听)ξ<任せた>
双方最低限の単語を使っての会話だったというのもあるが、期待以上に迅速に決めごとが済んだのは僥倖だ。俺は機銃座に座りながら手招きでティーマスを呼ぶ。
( <●><●>)「貴方が随伴歩兵を集めるように言うと解ってました」
('A`)「………中尉経由で昇給を交渉してみるよ」
生き残っていた20名ほどのドイツ兵を連れて戦車の傍についた友人兼部下を前に、俺はそう言って肩を竦めるしか無かった。
31 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 20:18:06.35 ID:3Rgr7MqQ0
(#'A`)「Panzer vor!!」
号令一過、戦車のエンジンが唸り震動が身体に伝わる。フランス語の戦車用語なんざそもそも知らなかったが、ドイツ語でも意味は通じたようだ。
『─────ゥオオオオオオオオ!!』
('A`)「Feuer!!」
向かってきた戦車への威嚇のつもりだったのか、大破状態のイ級は咆哮した。間抜けに開いた口の中に、主砲弾をぶち込む。
『』
( <●><●>)「イ級沈黙です」
凸('A`)凸「バーカ」
弱点をぶち抜かれて昏倒したイ級に向けて思い切り下品に中指を突き立てる。“誇り高きドイツ軍人”にあるまじき行動かも知れないが、これぐらいは勘弁願いたいものだ。
('A`)「っと。歩兵隊、対空警戒!艦載機の爆撃に備えろ!」
「「「Jawohl!!」」」
(;メ゚д゚)「ドク……すまん、助かった」
('A`)「中尉、感謝はありがたいですが今は時間がありません。通信機を貸して下さい」
(メ゚д゚ )「……解った。ジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「はっ」
中尉相手といえど、時間が惜しいことに変わりは無い。とっとと話を切り上げ通信機を本部へとつなぐ。
('A`)「アルカンタラマール防衛線よりHQ。進撃してきたホ級1、イ級2の撃破を完了。されど制空権を掌握され、戦力は過半を損失。継戦不可能、後退の許可を求む」
《此方HQ、何度も繰り返しているが後退は許可できない。アルカンタラマール駅を死守せよ、オーバー》
('A`)「HQ、リスボン死守にアルカンタラマール失陥の回避が必須なのは解っている。ただしそれは、艦娘を中核とする“海上戦力の帰還が敵のリスボン侵入までになされなかった場合”だと思われる」
《……その通りだ》
('A`)「この点について、HQ。あくまでも推測だが、深海棲艦側はおそらくこれ以上此方の海上打撃群を抑えきるだけの戦力を有していない。後は十中八九時間との闘いだ」
《………何故そう言いきれる?》
('A`)「敵が損耗を恐れている」
32 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 20:22:29.81 ID:3Rgr7MqQ0
違和感を感じたのは、HelmとBallの動きだった。
先ほど言ったとおり、この2種類の深海棲艦機はどちらもほとんど艦娘ありきでなければまともな対策が打てない存在だ。単に厄介というだけでなく、攻撃能力も十二分に備わっている。
つまり、併せて100を優に超える敵航空戦力が居ながら、俺たちがまだ“半壊で済んでいる”というのは明らかな異常事態だ。
('A`)「奴等は今、損害を出すことを病的に恐れている。おそらく海上打撃群がポルトガル近海まで帰還した際に、艦娘や連合艦隊を迎撃できる戦力を可能な限り減らしたくないからだ。
逆説的に言えば、奴等は海上打撃群に関しては“撃破が出来ない、足止めが精一杯だ”と考えている。
時間さえかければ、ビスマルク達が戻ってこれる公算は大いにある」
アルマダやカシュカイシュにおいても既に相当数の深海棲艦が上陸しているが、その進軍の足は極めて鈍い。
特に、強化種たる“elite”の進軍の遅さは目につく。
おそらく内陸部への浸透強襲に際し、高い戦闘能力を誇るelite種が何かの手違いで孤立・各個撃破されることを防ぐための処置。
もう一つ推察するなら、“できるだけ早くリスボンを制圧するための配慮”という一面もあるのではないか。どんなに高い攻撃力と射程を誇っていても、深海棲艦は陸に上がれば鈍重だ。高速侵攻には速力面で艦載機戦力が不可欠。
無論あくまで推測に過ぎないが、疑問点を口に出しながら整理していく内にこの推測が真実に近いという確信が生まれた。
現に、今この瞬間もHelmとBallは上空を旋回するのみで総攻撃に移らない。あくまで“素振り”を見せるのみで、随伴歩兵────中でも、有効射程距離が長い狙撃銃の持ち主達が迎撃の構えを見せると傍観へと姿勢を戻している。
33 :
◆vVnRDWXUNzh3 :2017/03/18(土) 20:34:25.68 ID:3Rgr7MqQ0
('A`)「よってHQ、“遅滞戦闘を行い打撃を与えつつの後退”ならば問題ないと提言する。要は、海上打撃群が妨害部隊を殲滅し中核部隊、並びに上陸している深海棲艦部隊を俺たちと挟撃できればいいんだ。
遅滞戦闘を行う俺たちにありったけの戦力と火力をつぎ込め。そうすれば後は俺たちが、俺たちの仕事をやる」
《………》
('A`)「HQ、もうこれ以上話し合いに時間は割きたくない。こうしている間に向こうが多少の損害度外視しての攻撃に踏み切れば、俺たちはおろかリスボンの壊滅も視野に入るぞ」
《………貴官の名を、改めて聞いておきたい》
('A`)「ドク=マントイフェル少尉だ」
《…………》
《HQより全リスボン防衛戦力に告ぐ、アルカンタラマールを中心にポルトガル西海岸方面へ至急急行せよ。陸、空を問わず全物資・全戦力を迎撃線の構築に回せ》
('A`)「HQ、理解を示して貰い感謝する。最善を尽くす、オーバー」