Part9
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:08:14.96 ID:
t4eqgCHaO
カァーカァー
女「…遅いなぁ、アイツ…」ボソリ
女(何してるんだろ、この時間帯いつもならすぐに教室に来るのに)
がらり
女「! ばかねっ、この私を待たせるなんて良い度胸じゃない!」バッ
女「今日という今日は堪忍袋の尾が切れたわ! 駅前クレープおごりジャンケン、受けて立ってもらうわよ──」チラ
女姉「ずいぶん楽しそうね、貴女」
女「──おね、ちゃ!?」サァーー
女姉「失言よ、それ。学校では絶対に姉と呼ばないよう散々注意したのに、まだ理解できてないの?」
女姉「ちゃんと先生と呼びなさい。良いわね」
女「ご、ごめんなさい先生…」シュン
女姉「もういいわ。無駄に残ってないで早く帰りなさい、折角、私が親に掛け合って塾を免除させてあげたのに」ハァ
女「…はい…」
女姉「貴女が自主勉強を頑張ると言い切ったの、忘れたのわけじゃないでしょうね」
女「……」コクリ
女姉「──でも、今回の中間テストは良かった」
女「えっ?」
女姉「勉強したのね、ちゃんと。しかしまだ甘い、ニアミスの酷さが教員連中で話題のネタになるぐらい酷かったわ」
女「…ウッス…」
女姉「けれど個人的に評価してあげる。貴女の頑張りは認めるわ。きっと良い──」
女姉「──良い、クラスメイトが居たのね」フッ
女「……!」
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:08:46.67 ID:
t4eqgCHaO
女姉「暗くなる前に帰りなさい。良いわね、絶対よ」
女「あ、おね、えぇと先生…!」
女姉「なに?」クル
女「あ…その…えと…これからも、頑張りますっ」ピシッ
女姉「くす。ええ、勿論。だって期待の妹ですから」ニコ
電車内
女(えへへ、お姉ちゃんに褒められちゃった)デュフフ
女(しばらく嬉しさに呆然としちゃってて、さらに帰宅時間が遅くなったのは我ながらアホっぽいけど…)
すたすた
女「頑張ったね、だって…期待の妹ですから、だって…んふふ〜」ニヨニヨ
女(でも、あれかしら。認めるのは癪だけど、ほんの数歩は貴方のお陰って考慮しても良いかもね)クス
がたんことーん がたんことーん
女「……今日のこと報告したら、なんて言うかしらアイツってば」
女(なーんてね、お姉ちゃんのことも知らないだろうし、言っても意味不明だけだろうし)
女「ってあれ!? 既に降りる駅通り過ぎてない私!?」ガバァッ
ぷしゅー
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:10:03.68 ID:
t4eqgCHaO
女(やばいやばい! これ以上遅くなったらお姉ちゃんが先に家に着いちゃう! 早く対向車線に乗り換えないと…!)
女「はやくはやく───」ダダッ
女姉「……」
男「……」
女「───…ぇ…」
女「お姉ちゃん、に。どうして隣に、貴方が居て…」ピタ
女姉「…」スタスタ
男「…」スタスタ
女(そのまま駅を降りていく…? こんないかがわしい繁華街しかない駅で、二人でっ、どうして…!?)
女「…っ…」ゴクリ すた、すたすた…
〜〜〜
女(どこまで行くんだろう、というか二人は知り合いだった? 二人で一緒に出歩くぐらいに? いつのまにっ?)スタ…
女(いや、待って、でも確かに)
『──良い、クラスメイトが居たのね』
女(──お姉ちゃん笑ってた、あんまし人を評価しないで普段もピクリとも揺るがない鉄仮面お姉ちゃんが…)
女(知ってた、の? 誰に教わってたのか、一体誰が良いクラスメイトだったって…)
女「あ! 見逃してしまった…!?」キョロキョロ
たったったったっ
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:11:28.82 ID:
t4eqgCHaO
女(やだ、なんかやだ、こんなの嫌だ…っ)ドッドッドッドッ
女(これ以上追いかけたら駄目な気がするのに、でも、足は止められない───)
ババッ
女「………」ドサリ
『スィート・ラブホテル』
女「…あ…」
女姉「…っ…」スタ、スタスタ…
男「………」スタスタ…
女「…嘘、あはは…そんなの、だって…っ」
女「ッ…!!」くるっ ばっっ!
たったったったっ……
第五話 中編 終
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:11:55.52 ID:
t4eqgCHaO
三日後ノシ
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 19:04:09.02 ID:MkT9wMmMO
まだ読んでる途中なんだが一言いいたい
スレタイで敬遠してたがメッチャ面白いんだけど
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 19:41:15.72 ID:sw2l5ml40
続きが気になる。
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/23(日) 02:03:01.35 ID:A9ZYyl18o
超待ってた
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/23(日) 04:56:19.09 ID:38V5B8E7O
どんだけ待ったと思ってるんだよ!
エタってなくてよかった
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/23(日) 10:49:41.49 ID:+gGjxSgpo
おおっ!!来てる!!
待ってなんか居なかったけどスレ覗いたら更新が!!
叔母さんと一緒に住む流れに見せ掛けてわくわくさせたのは許さん
責任持って叔母さんルートも書きたまえ
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:40:18.51 ID:
m7QS7m8KO
【今から時は遡り…『入学式前日』】
女姉「……」スタスタ
「今日も凛々しいよな、女姉先生」
「もう歩く姿も完璧すぎて笑える」
「大学生の頃にいかがわしいサークルを何件もぶっ潰したらしいぜ」
女姉(まったく、噂をするなら耳に届かない範囲でしなさいよ。まる聞こえじゃない)フゥ
女姉(まあ…悪い気はしないけれど、せっかくのプラス評価に水を差すきはさらさらないわ)スタスタ
「女姉先生。今日も一段と歩き方が美しいですねえ」
女姉「それ、軽度のセクハラですよ校長。おはようございます」ペコ
「これはこれは手厳しい。おはようございます」
女姉「それで、何かご用でも?」
「ええ、明日は新入生の入学式ですから。確か貴女の妹さんが入学されるとか…」
女姉「はい。不出来な妹ですが」
「またまたご謙遜を。期待していますよ」
159 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:40:45.38 ID:
m7QS7m8KO
女姉(……、そうだ。あの子がとうとう入学する──中学で問題ばかり起こしていた妹が、私が教鞭を執る学校へ…)
女姉「けれど…」
女姉(大丈夫よ、私。この私が居る限り、妹には決して問題行動を起こさせたりしないわ)
〜〜〜
「おい!? 聞いたか、入学早々に一年女子が一年男子に喧嘩ふっかけたらしいぜ!?」
「ああ、しかも周りに舐められんようにと、目立とうとして救急車を体育館に呼び込んだんだろ…!?」
「やべえなマジでやべぇの来ちゃったよ一年坊…」
女姉「……………」
「…聞いた話によると女姉先生の妹らしいぜ…」
「まだ騒いでるって、一年女子。凄い気迫で喚いてるらしい」
「先生が完璧主義者なのって、妹さんを更正させる為らしいぞ」
女姉「………………………」ピクピクピクピクビクビクッッッ
「女姉先生」ニコニコ
女姉「こ、校長…! 今回の不祥事、教員立場という以前に姉として──」
「ええ、ええ、わかっていますよ」ニコ
女姉「え、いや、あの、…一体なにを?」
「私の【期待】、裏切らないようお願いしますねえ」ニッゴリィ
女姉「……ハイ……」ダラダラダラ
160 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:41:44.58 ID:
m7QS7m8KO
〜〜
女姉(これじゃあ私の完璧な人生設計に傷、いや罅、ううんそれ以上の影響が出てしまう…)ギリッ
女姉(妹に、あの騒動の理由を問いつめても意味不明なことばかりいう。なによ、復活の呪文で起きあがったってッ!)
ダァンッ!
女姉「──私はいつだって完璧じゃないと駄目なのよッ!」
女姉(なんとしてでも、今後の妹の問題の芽を潰す手段を考えないと…)グググ
ガラララ
女姉(…! こんな時間に生徒っ? しまった、さっきの殴打を聞かれた可能性が──)
男「あの、すみません…」コソ
女姉「──君、一年代表に選ばれた生徒よね?」
男「え、あっ、はいっ! 覚えていただいてたなんて嬉しいです!」
女姉(忘れるわけがないでしょう! 馬鹿妹が喧嘩ふっかけた張本人、ただの生徒ならここまで問題にならなかったというのに…!)
男「その、えーっと…」キョロキョロ
女姉「君、もう下校時刻はとっくに過ぎているのよ」
男「す、すみません! 実は部活動の勧誘を遅くまで受けてまして…断るに断りきれずこの時間帯に…」
161 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:42:20.38 ID:
m7QS7m8KO
女姉(うぐッ、超良い子そう。まったまったくあの子はなんでまた、こんな子に喧嘩売ったわけ…?!)
男「その〜無理を承知でここに来たんです。実は個人的なことで先生に相談がありまして〜…」チラ
女姉「個人的相談?」
〜〜
男「──というワケなんです、ええ」シュン
女姉(嘘、まさか本当にこの子が原付二人乗り事故を? あの子が言っていた通りの展開が起こってた…?)
男「今更、周りに真実を話しても信じてもらえずに、むしろ庇ってあげる必要ないと言われる始末でして…」
男「だから、こうなったらもう公式的に教師の方々から俺が起こした真実を発表してもらいたいんです!」
女姉「……」
男「どうにか出来ないでしょうか? このままじゃ彼女が可愛そうで…」
女姉(──駄目だわ、学校側が認めた代表一年が起こした不祥事を発表するなんて認めるわけがない)
女姉(こうなってしまえば話は別。むしろ妹が話題を肩代わりしてくれて有り難いと言わんばかり)
女姉(それにしてもこの子。わざわざそれを教師に提案しに来るなんて、ただのお人好しにしては…不可解ね)
男「あの? 先生…?」
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:43:15.22 ID:
m7QS7m8KO
女姉「……。君は彼女に謝罪がしたいのかしら、それとも周りの誤解を解きたいのかしら」
男「…どちらもです」
女姉「賢明な判断ね。けれど、良心の呵責から出た行動だとしても【学校側はなにもしない】が私の見解よ」
男「っ!? ど、どうしてですか…!?」
女姉「【君がそういう立場だから】。わかるでしょう? 君が起こした罪は簡単に周囲は認知できない、してはならない」
男「……」
女姉「だから──どうしたの?」
男「そう、ですか」スッ
男「有り難うございます。教師として、言いにくいこと敢えて言ってもらえて、改めてふんぎりがつきました」
女姉「私は…」
男「──一人で、頑張ってみます。何とか誤解が解けるように」ニコ
女姉(この子…まさか、始めからそのつもりで…?)ハッ
女姉(これ、は。決まったわ、今さっき咄嗟に浮かんだ名案が。きっとこの子ならやり遂げてくれるかも知れない──)
男「では、これで…」ガタ
女姉「待ちなさい! ううん、待って…! どうか最後まで私の話を、いや願いを聞いてほしいの…!」
男「願い…?」
女姉「そう、お願い。貴方でしかきっと出来ない、やり遂げられないことを教師として、一人の人間として…ううん」
女姉「──一人の姉としてお願いしたい
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:44:04.80 ID:
m7QS7m8KO
数日後
「えー、今日はこのクラスでの委員長二人決める。誰か立候補、また推奨する者はいるか」
女「は、はいっ! 私が委員長に立候補します!」バッ
ヒソヒソ ザワザワ
「え、あっいやぁーそのだね、君は…」
男「自分も委員長に立候補します」ガタ
「えぇっ? し、しかし、でも君は…」チラ
女「……っ」ビクッ
男「他に誰か立候補する人も、推薦する者も居ないみたいですし。どうでしょう、このまま決めてしまっては」
「ふぇぇ…?」
男「──何か問題でも?」
「そうだそうだー早く帰りたいつーの」
「先生ぇも中間テストの範囲決めで忙しいっしょー?」
キーンコーンカーンコーン
女姉「……」スタスタ チラリ
女「っ〜〜〜! 〜〜!?」
男「……、…、……」
女姉(無事に二人、どうやら委員長になれたようね。これからも頼んだわよ、男くん)スッ
164 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:44:54.35 ID:
m7QS7m8KO
女姉(彼には妹の面倒を直で見てもらう。担任じゃない私では介入に限界がある、だから同士を見繕う必要性があった)
女姉「でも、よくこんな願いすぐさま承諾してくれたわね…」ハァ
女姉(──彼の謝罪と真実の露見、この件のお返しに私が手助けするとは言ったけど…彼にも無理に近いことは理解してるはず)
『もし、仮に君の願いが叶えられなかったら。また異なった願いを言って頂戴、出来る限りのことはするつもり』
『大人がそういうこと言わないで下さいよ。期待してます、先生』
女姉(大人、か。私もまだまだね、子供に諭されるなんて完璧主義者が聞いて呆れるわ)フッ
女姉「今更かもしれないけれど、立派な大人として、彼に良いところを見せなければ…」ツカツカ
〜〜
「聞きましたよ先生、あの問題の二人が委員長って話」
「ええ、今から胃がキリキリと…」
「やっかいごとは増やさないで欲しいもんですなあ。ただえさえ問題児が多い学校と噂されとるのに」
「過去にもいましたねぇ、繁華街のホテルで無断にバイトする生徒がおったりして」
「──まったく、学校にまで持ち込んで欲しくないもんですよ」
女姉「……」
165 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:45:22.18 ID:
m7QS7m8KO
〜〜
「女姉せんせーおはようございまーす」
女姉「あら。どうしたのかしら、今日は一段と良い挨拶ね」
「へへ、あのね? 一昨日からカレシと仲直り出来たんだぁ」
女姉「へぇ…」
「クラス中巻き込んでさ、変なフンイキになっちゃってたんだけど──ここだけの秘密だよ?」コソコソ
女姉「? なにかしら?」
(実はウチのクラスの委員長二人、付き合ってる噂で持ちきりなの。先生の妹さんでしょ? それって?)
女姉「え、あ、うん…?」
「あの仲悪い二人がそっこーで仲良くなってる姿みたらさぁ、ウチも喧嘩してたのばからしくなっちゃってww」
「──だから先生もはやく、良い人みつけなよー?」
女姉「馬鹿ね。大人を心配する暇があったら将来を悩みなさい、今度の中間テスト期待してるわよ」
女姉「……」
女姉(……。そこまで近づけとは言ってないのだけど、私は)
〜〜