Part8
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:50:50.32 ID:
t4eqgCHaO
〜〜〜
叔母「私は怒っているよ。珍しく君にね」
叔母「──居もしない幽霊で周りを騒ぎ立てて、経営に支障が出たらどうするつもり?」
男「で、でも…っ」
叔母「話を聞く限りじゃ、水漏れ程度で騒いでたらしいじゃないか」
叔母「ケルケル君だって「ナニモミテナイヨ」と断言していたし」
男(忘れてたいんだろうなあ…深く追求するのは可愛そうだから良いけども…)
叔母「いい加減にこれっきりにして、二度と騒がないように。良いね?」
男「わかり、ました。本当にすみませんでした…」ペコリ
叔母「素直に謝るのは良いことだ。許そう」ウム
男「…ありがとう、ございます…」ションボリ
叔母「まあ、あのさ。君がこの部屋が嫌なのは別にかまわない」
男「……」
叔母「今日から私と一緒に住めば良いと思うんだけど、どうかな…って」チラ
男「あの。ちょっと良いですか?」
叔母「何?」キラリン
男「少し気になってることがあって。ごめんなさい、もう一回だけ幽霊の話題を掘り下げさせて下さい」
叔母「…………、どうぞ」ムスッ
男(ううっ、やはり機嫌を悪くさせてしまったか。けど気になってる「あの現象」は追求しておきたい)
男「叔母さんは一度も、幽霊的な現象を見たことないんですよね?」
叔母「いないよ、そんなモノは」
男「…そうですか、だから気になったことが一つだけ」
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:51:28.67 ID:
t4eqgCHaO
男「音が、鳴り止んだんですよ。叔母さんが44号室に訪れた途端に」
叔母「水漏れが収まったって? へぇ、それが何?」
男「ほぼ、毎日ラブホに来てるハズの叔母さんが幽霊未経験で、なのに受付さんやケル君は少しばかり経験してる」
男「つまり、これらに繋がりがあるとは思えませんか?」
叔母「まったく感じない」フリフリ
男「です、よね。こじつけにも程があるし、それじゃあまるで怖がっているのは【幽霊のほう】になるし…」
叔母「……」ぴくっ
男「そんな馬鹿げた話あるわけないっすよね、ごめんなさい」ペコ
叔母「……………」
男「……、ん? え?? ある、んですか…? その可能性…が…?」
叔母「……………、無い!」
男「うそつき! 叔母さんの嘘つき! 可能性感じちゃってる顔してた絶対! 絶対に絶対に!」ビシッビシッ
叔母「あれ…おかしいな…胸ポケットに入れた煙草がなくなってるなぁ……」キョドキョド
男「年がら年中タンクトップだろうに!」ジトー
叔母「いやっ違う、だってあり得ないからっ、そんなことっ」
男「何を隠そうとしてるんですか」じぃー
叔母「……………」ダラダラダラ
男「本当は幽霊が実際に居ることを隠してるんじゃ…」
叔母「それは本当に知らない! 私は…っ」
男「──それは?」
叔母「あが、ぱく、うぅ〜〜っ……はぁ〜〜……っ」カックシ
従業員室
男「──幽霊じゃない…? それどういう意味ですか…?」
叔母「私が知ってることは一つ、過去に、悲惨な目にあった女性が居たってことだけ」
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:52:36.74 ID:
t4eqgCHaO
男「44号室で、ですか?」
叔母「今からだいたい十数年前に、とある学生カップルがラブホテルを使用したんだ」シュボッ
叔母「二人ともラブホテルは初体験らしくって、そりゃもう楽しみ半分緊張半分で44号室に訪れたらしい」
ふぅー
叔母「そして悲劇が起こったんだ…」
男「いきなり!? い、一体どんな悲劇が…!?」
叔母「うん。フられたの」コクコク
男「…はいっ?」
叔母「彼女のほうが、ココに来ていきなりフられた。実は彼氏のほうが常々鬱憤が溜まってたらしくて…」
叔母「ラブホテルまで着といて、彼女がうにゃむにゃ難癖付け始めたんだ。やっぱり私たちには早いよ、みたいな感じで」
男「それで呆れた彼氏さんが、その彼女さんをフったと…? ここまで来ておいて…?」
叔母「結果論だけど、どっちもどっちだよね」
男「いやっ、まあ確かに悲劇的っちゃあ悲劇ですけどその別れ話がどう幽霊騒動と繋がってくるんですかっ?」
叔母「この話には続きがあって、フられた方の彼女が周りに自慢してたんだ。とうとう彼氏が出来た、今度ラブホテルに行っちゃうって」
男(女子って自慢するんだ、そんなこと)
叔母「でも結果があれだったことで失墜したまた呆然と44号室に佇んでた彼女さんの所に…」
叔母「──当時、彼女の先輩で、極秘バイト中だった私が掃除にやってきた」
男「うわあぁぁ〜〜……」
叔母「あのときの、彼女の顔は忘れようにも忘れられない」フゥー
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:55:03.31 ID:
t4eqgCHaO
男「……。え、えっと、もしかしてその…?」
叔母「それからだったね。幽霊騒ぎが出始めたのって」
叔母「そう、その時の彼女のショックもとい【怨念】が44号室に染み着いたと言っても過言じゃないんだ」グリグリ
叔母「特に私が来たら超常現象が収まる、ってところが関連性が見受けられるし」
男「んな馬鹿な話が…」
叔母「馬鹿な話なんだよ。でも原因を突き詰めると必ず、あの日からでしか考えられない」
男(そりゃ叔母さんも認めないよなあ…)
叔母「ちなみに、そのフられた彼女である私の後輩は元気だから安心して」
男「あ、そうなんですか…生き霊って奴なんですかね、よくわからないですけども、生きてるならよかったです…」ホッ
叔母「というか君の学校の教師だけれども」
男「ぐッ……ここにきてまさか聞かなきゃ良かったと思わされるとは……ッ!!」
叔母「後輩と色々話してみたけど、全く認めないしむしろしつこいと、嫌われちゃったしさ」
叔母「出来ればこの話はもう金輪際したくないんだ、個人的に」
男「…はい、わかりました。でも原因だけでも知れて良かったです」
叔母(これは一緒に住むと言われる流れかな?)わくわく
男「でもやっと安心しました、ならここで住み続けても平気ですね!」
叔母「今日は記念にぱーっと出前を──うん?」
男「ただの怨念程度で起こる現象なら、なにも怖くない。俺が一番怖いのは正体不明なことなんで」ニコニコ
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:56:00.90 ID:
t4eqgCHaO
叔母「え、え、えっ? あれ? あの、でも超常現象は起こっちゃうかもだよ…?」
男「でも叔母さんの後輩が原因なんでしょう?」キョトン
叔母(え、なに言ってんだこの子?)
男「というか実家の方がやばかったですよ、ガチもんでしたもん」
男「夜に誰もいないのハズの庭から酒盛りする声聞こえたりして。あと確実に戦時中の若い兵士っぽい会話だったり」
男「後で調べ尽くして、近所に特攻隊の基地があったのが分かって安心しましたけどね」
叔母「…ぇぇぇ…」ドンビキ
男「あ、そうだ。後輩さんのことも調べないとダメな流れかなコレ、こうしちゃいられない。明日から備えないとな」バッ
男「それじゃあ叔母さん、言い辛い事情話させてしまってすみませんでした! もう金輪際しませんので! ではっ!」
パタン
叔母「……うん」スッ
叔母「やっぱ、あの子すごいな」
【叔母は深く考えるのをやめた】
第五話 上編 終
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:58:19.64 ID:
t4eqgCHaO
学校 教室 放課後
男「……」
女「……」
男「あの、女さん? 出来ればクラス委員長として意見を頂きたいんだけど…?」
女「ふん。貴方の好きにしたら良いでしょ、私のような不出来な人間の言葉より、貴方の意見のほうが通りやすいわよ」
女「…きっとねっ」キッ
男「そう、言われても。今回は委員長二人で今月のクラス目標決めるって話だったじゃないか」
女「なによ、不良のくせに優等生ぶっちゃって」
男「だからそれは誤解だ!」
女「なーにが誤解よばーかばーか! 日本全国どこ探しても、入学式当日に原チャリでぶっ転ける奴がいますってーの!」
バン!
女「なのにっ…誰一人信用しないどころか、私が何故か変な奴だと周りから思われる始末…!」ぶるぶるぶる
男「う、うん、えと大丈夫? 手痛くない?」
女「うっさいッ! なんでよ…なんでこうなるのよっ、どうして貴方が一年代表の最優秀生徒なのよ…っ!」
男「またその話か…」ハァ
女「このインテリ不良! 人を騙して悦を得る変態男子ぃー!」
男「ちょっと!? あんまり大声だすなってば…!」
女「なによ! 触らないでよっ!」バッ
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 17:59:39.34 ID:
t4eqgCHaO
男「いや、あんまり騒いでるとまた変人だと思われるんじゃないかなってさ…」
女「おぐッ」
男「あのね、入学式の日に一緒に謝られなかったのは本当に申し訳ないと思ってるよ。許してくれとまでは言わないから」
男「騒ぐのだけはやめとこう。お互いのために、俺は俺で君の手助けができればそれでいいよ」
女「…なによ、まったく」ブツブツブツ
男「…というか、君まで委員長になる必要あった?」
女「はぁっ!? そりゃあるに決まってるじゃない!」
男「てっきり面倒な仕事は全部、俺がやれってことかと思って」セイセイ
女「だって委員長って優等生っぽいじゃない…! なって損なんて考えられないし! 格好いいと思うの!」
男「……あぁ〜、そういう…」
女「今ッ、アホっぽい理由だと思ったでしょ…ッ!」ブルブル
男「いやっ!? 無い無い無い! まったくもって!」ブンブン
女「──私はならなくちゃダメなの、優等生に。ダメな大人にならないよう、これからずっと頑張らなきゃいけないのよ」
男「志は素晴らしいと、思う。それを初っぱなから挫かせてしまったのも申し訳ないと思ってます…!」
女「本当にその通りよ全く…」ハァ
男「なら、頑張って考えないと。今月の目標をさ、格好いい委員長としての最初の仕事なんだし」
女「元気な挨拶ぐらいで良いじゃないの」
男「言う割にはテキトウに決めるね、君。もっとこう他にある気がしない?」
女「じゃ貴方のほうには良い案があるってわけっ?」
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:01:22.47 ID:
t4eqgCHaO
男「……。この前、男子グループと女子グループが衝突した雰囲気があった」
女(え、全然知らないんだけど…)
男「周りは今後一切、その事は触れないでおこうって空気だけど、少し気になるし、仲直りを促す的なものにすれば…」
サラサラ
男「うん。これでどーだろう?」
女「『男女で挨拶を心がける』…えぇ〜? こんなの明らかに意識してますってアピールしてるようなもんじゃない」
男「…やっぱそうなるか」シュン
女「はぁーん、優等生不良は同級生間での雰囲気把握は苦手なようね、良いこと知ったわ」クスクス
男「………」
女「な、なによ? 急に黙って」
男「優等生不良ってどういう意味?」
女「私も知るかんなモン! 目標なんてちゃっちゃと決めて、雰囲気変えたいならもっと現実的なことしなさいよ!」
女「今月クラス目標なんて誰も気にしない。高校生にもなって小学生な無垢さ持ってるワケないじゃない!」
男「へぇー、じゃあ例えば何をすれば良いと?」ジトー
女「え、ぇえと、そりゃ考えてるわよ、勿論」
女「……。クラスの男女仲が悪いなら、代表的な男女が仲良くしていけば──どうのこうの上手く影響が広まったりとか?」
男「代表的な男女って?」
女「え? そりゃ君と私になるけど…」
男「……」
女「……」
女(あれ、突然なにを言い出したんだろ、私)ドキ
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:02:02.96 ID:
t4eqgCHaO
男「確かに良い案かも知れないな…」
女「…マジで言ってるのそれ?」
男「他に思いつく案があるわけでもない。よし、それでいこう」ガタ
女「ちょ、ちょっと本気なの!? わ、私と貴方と二人で、率先して仲良くするってことよそれ!?」
男「良いじゃないか、むしろ望んでた機会だと思ってるし」
女(な、なによその行動力は)
男「? なにしてるの? 早く一緒に帰ろう、確か同じ方向の駅だったよね」がらり
女「へっ?」
男「早いうちから始めていこうじゃないか、仲直り作戦って奴」
女「……あ、うん…」ぽかん
数日後
女(──うそでしょ、本当に?)キョロ
わいわい がやがや
女(たった数日で、確かにギスってた雰囲気が収まった気がする。これも作戦のお陰…?)
「ねえねえ女さん。ちょっといい?」
「あの噂ほんとっ?」
女「へいっ!? な、なんのことかしら…っ?」
「委員長二人がつき合ってるって話だよ〜」
「よく一緒に帰宅してるの、見てる人多いよ〜?」
女「──…ハァッッ!? んなワケ、もがぐごっ」ぐいっ
男「すぐ大声出すのは悪い癖だよ、女さん」しぃー
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:04:24.97 ID:
t4eqgCHaO
女「けほこほっ、貴方ねえちょっと力加減考えなさいよ!? 死ぬかと思ったじゃない!」
男「あ、ごめん。でも、いつも女さんは唐突に騒ぐし…この前も…」
女「あーっ!? ゲーセンの時のやつまだ言ってるの!? クレーンゲームで景品とれて騒がない方がばかじゃない!」
くすくす
女「そればっかりは貴方が納得するまで言い続け──…え、何よ?」
「ねー、やっぱ付き合ってるよねww」
「お幸せにー」フリフリ
女「なぬッ!? なにを馬鹿なことを言って…! かふッ!」グイッ
男「…ちょっとこっち来て」ズリズリ
廊下
男「否定しても良い、けど必死になって騒ぐのはダメ。わかった?」
女「必死に否定しなきゃ勝手に勘違いされるでしょ…!? さっきみたいに!」
男「だったら言われる度に否定すればいい、躍起になって作戦内容を暴露しない自信あるの、女さん」
女「……、何気に私の扱い方わかってきてるわね、貴方」
男「自分で言うな。ほらそーいうところだ、この数日で君がどれほど率直に物事をぶっちゃけるかを身を持って理解したんだ」
男「もう少しだけ我慢して。嫌だろうけど、あとちょっとで今の雰囲気なまま定着しそうな感じはするから」
女「う、うす…」コ、コクコク
男「後で散々に俺のこと罵倒してくれ良いから、それじゃあね」フリ
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:04:54.11 ID:
t4eqgCHaO
スタスタ…
女「ま、待ちなさいよっ。 …貴方の方はそれで良いの? 周りから勘違いされたままでも」
男「自分は平気。慣れてるから」
女「…変な返事しないでよ、不安になるじゃない」
男「うーん、でも、嫌な気はしないよ? だって女の子と付き合ってると噂されるのは男として悪くないし」ポリ
男「あとで散々ボロクソに言われる前提だったとしてもね、うん」ニッ
男「じゃあ、また放課後で」フリフリ
女「………」ムスッ
女(なによそれ、変に意識してるの私だけみたいじゃないっ)プンスカプン
女(フン! 良いわよ、だったら私なりのやり方で楽しんで行こうじゃない。始めはそうね、貴方の余裕綽々の顔剥いでやったるわ!)
〜〜〜
男「どうしたの? 急に自転車で帰ろうって」
女「送って行きなさいよ、私のこと」
女「それぐらいお手のモンでしょー? 原付で二人乗りしてた奴が、規則が〜〜なんて生っちょろいこと言わないでよね」ぷいっ
男「これ、荷台無いけど大丈夫?」
女「え”?」
男「流石に後ろをスカートで立ち乗りは辛いと思うけど…?」
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/22(土) 18:06:39.09 ID:
t4eqgCHaO
ギィ ギィギィ…
女「ふぬりゅうううううー!!」ギィコギィコ
男「アンタ本当にガッツというか諦め悪さ凄いよね…」グラグラ
女「やるといったらッ、やるッ、んのよぅ! どうッ!? 参ったかしら!?」ブモモォーッ
男「う、うん、今ちょっと女子としてやらかした顔してるけど概ねオッケーです」コクコク
〜〜
女「ん」グイッ
男「え、何? 弁当箱? これ、くれるの?」
女「作ってきたわ、超! 完璧にね、代わりにアンタの食べさせなさいよ」
男「……」スッ
女「どうも。じゃない! ふん! 有り難く思いなさいよね! …どれどれ…」シュルシュル
ぺかー!
女「え…超綺麗…」ぽけー
男「がりぼりがりっ、すげぇ…全部の卵焼きの中に巨大殻入ってるんですケド…カルシウムばっちし…」
女「くッ! いいわよもうッ、交換は無し! ハイ終わり!」ササッ
男「あ。でもご飯の炊き方は凄い好みだ、いいよね固めに炊くの」のほほん
女「あぐっ…あ、ういッ…いいわよね、固い方が口触りいいし…お姉ちゃんもそっち好きでさ…」モジモジ
男「うんうん。どうせなら二人の弁当分のオカズ合わせて食べようか?」
女「…うん」コク
〜〜
女「──…」ボォー
女(今日は何をしよう。一昨日はカラオケで点数超えてやったし、中間テストの見直しもやっちゃったし)
女(あ。そうだ、まだケータイのアドレス知らないじゃない)ハッ
女「くくく、さすれば機会が多く訪れるというものよ…」ケケケ