Part22
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 23:03:08.00 ID:
DNFeLLI1O
男「………」ストン
叔母「戯れが過ぎた、私としても後悔してる」
受付「急にどうしちゃったんスか、ねえ男くん? ちょっと…」チラ
受付「あ……えっと、あはは〜……そ、そっか〜…」
男「……」
叔母「煙草吸ってくる」パタン
受付「えっとぉ、お姉ちゃんも久しぶりにぃ? 男性と触れ合ったから、ソーイウの忘れっちゃってたってかー」
男「……」
受付「……」
受付「───ごめんネ! お詫びにオカズにしていいよ、さっきの感触!」くるっ ダダッ!!
パタン
男「………ううっ…するかアホ……」シクシク
〜〜〜
受付「ま。お姉さんもキミも恥かしい所を見られた、お相子ってことでね!」
男「モウイイデス。サキ、ハナシススメテクダサイ」
受付「うぐっ! オーナーどうかフォローを!」
叔母「予想以上に立派だった」コクコク
男「身体つきですか!? そういうことですよね!? あぁもう、ありがとうございました!」
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 23:04:43.56 ID:
DNFeLLI1O
叔母(感謝された…)ホワホワ
受付「取り敢えずごちそうさまでした、っと。美味しかったよー今日もー」
男「あれだけ騒いでて食べるもんは食べましたね…」カチャカチャ
受付「そりゃあ食べれる機会も相当無いだろうしさ」エヘヘー
男「味わって食べてくれましたか?」
受付「もちのロンよ〜」フリフリ
男「…お粗末さまでした。叔母さんはおかわり入ります?」
叔母「いや、私もこれで」スッ
男「はい。わかりました」
カチャカチャ ジャー
叔母「……」
受付「……終わりッスね」
叔母「ん? ああ、そうだな」
受付「満足できたッスか?」
叔母「……。どう思うかは彼の方だろう、私は関係無い」
受付「本当にそう思います?」
叔母「……」
受付「ウチ思うんスよ。多分、彼って知り合い殆どに言われてるって」
受付「───本当に、それでいいのかって」
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 23:06:28.88 ID:
DNFeLLI1O
叔母「フン。お前もか?」
受付「ウチはほら〜こんなんッスから、何をどう言っても響かないっていうか〜」
受付「──でも、残念がってるのは見せましたよ、ちゃんと」ニッ
叔母「……」
受付「あーあ、誰だろうなぁー? 最後の最後まで、いい人ぶり醸し出してるのって〜」ゴロン
叔母「…お前なぁ」
受付「良いじゃないッスか。ワガママ、意地っ張り、子供っぷり」
叔母「責任者として面倒を見る。私の立場はそこまでだ」
受付「誰に見せるんですか、それ」
叔母「誰にって…」
受付「誰に、大人ぶりを見せて満足できてるんですか?」
叔母「………」
受付「よいしょっと。ま! 部外者のウチがどーのこーの言ってもアレですしネ!」ピカリン☆
受付「結局はそう、誰だって我儘言ってから考え始めても間違いじゃないって、想いますよ?」クル
シャアアア キュッキュッ
男「…あれ? もう行くんですか?」
受付「アパート戻って寝るよー! じゃ、明日のお別れ会でね〜」フリフリ
男「あ、はい。おやすみなさい、受付さん」
受付「おやすー」パタン
366 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 23:07:26.44 ID:
DNFeLLI1O
男「さて…」
叔母「……」
男「あの、まさかですけど、この部屋で寝るとか言い出しませんよね?」
叔母「ちゃんと帰るよ。キミも荷物整理あるだろうから」スッ
男「もう終わらせましたよ。後は調理器具等をダンボールに詰めるだけです」
叔母「…手早いね」
男「ええ、普段から気を配ってますし」フキフキ
叔母「普段から? 転校は多かったと耳にしてたけど、一度も住居は変わらなかったのに?」
男「変なこと知ってますね……まあ、親がコロコロと学校変えてましたけど…」
男「まあ。そういうこともあって、私物を持たないようにしてたんです」
叔母「───……」
男「余分でしょう? 必需品だけ持ってれば簡単に動けるし、手間がかからない」
男「いちいち手順が嵩むものは省いて来たんです。今まで、ずっと」ニコ
叔母「………」
男「だから、ここに着た時は、すごく新鮮だった」
趣味で日本に来た人。物を片付けられない人。私物が部屋にごった返す人。
男「…みんな自分のモノで溢れかえってた。まあ、整理整頓はやってほしいですけどね」
男「だけど、いい経験が出来たと思います。自分には無いものを、沢山知れました」
男「だから……」
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 23:08:24.94 ID:
DNFeLLI1O
ぎゅっ
男「おっふ!」
叔母「……」ギュッ
男「んっ、んぐっ、んもーまたですかっ? ハグする前に確認取って欲しいと…!」
男「ってか!? 水着のまんまでやらないでくださいよ!? 見た目やばいやばい!」
叔母「…男くん」
男「え、はい?」
叔母「キミをここに住まわせた理由、知りたいかい」
男「……え、なんですか、それ? 理由、あったんですか?」
叔母「ん」
男「単に煙草とお部屋のせいかと思ってたんですけど…」
叔母「違うよ。……私は以前から思っていたんだ」
叔母「──キミが、いつでも切り捨てられる部屋を与えたかったと」
男「……」ピク
叔母「そう。何時でも何処にでも飛び出せる、そんな環境を作りたかった」
男「…なぜ?」
叔母「ラブホテルはね、その場限りで楽しむ楽園地なんだよ」
叔母「旅館ともビジネスホテルとも違う。一晩だけ【楽しい記憶】を補助する場所」
叔母「それ故に、どう一夜過ごすとも誰も咎めやしない。自由な空間なんだ」
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 23:10:56.81 ID:
DNFeLLI1O
男「…随分と洒落た場所ですね、ここ」
叔母「勿論。私はそれに生き甲斐を感じてるところもある」
男(妙にカッコイイ理由だな……)
叔母「私はキミに、どんな理由があっても抜け出せるよう整えていたつもりだった」
叔母「そして、その機会がやっぱり訪れた。明日にはもう出ていこうとしている、君がいる」
男「……そう、ですけど」
叔母「………」ギュッ
男(叔母さん…?)チラ
叔母「だから、ラブホテルはキミにとって幸せだったろう? 居心地が良かっただろう?」
叔母「余計な思い出を残したくないキミにとって、住み心地が良かっただろう?」
男「………」
叔母「言わなくていい。けれど、私は同時に望んでいたんだ」
叔母「──ここに残りたいと、ここに、私の部屋で住みたいと、望むぐらいに」
男「…叔母さんの部屋に…?」
叔母「ん」ナデナデ
男「あの…部屋に……あはは、無いなぁそれは…」
叔母「汚いもんね」
男「そうですよ! だって、幾ら片付けても難度だって汚れるし…」ギュッ
男「……どんなに片付けても、俺が必要と、されちゃって……」
369 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 23:12:37.73 ID:
DNFeLLI1O
叔母「………」ナデナデ
男「俺なんて片付けとか料理とか、お節介ぐらいしか脳がないのに…」
男「沢山…沢山…色んな人から求められて、優しくされて、溢れかえってて……」
叔母「うん」
男「今まで、誰にだって褒められたこと無くて、俺、責任感とかまったくないのに…」
男「…凄く、居心地が良かったです。このラブホテル、…いつだって逃げられると思ったから」
男「そんないい人ばっかりの中から、そんな期待から、逃げられると思ったから」
叔母「そっか」
男「叔母さん。俺、なんでこうなんですかね? どうして、自分に自身がないんですかね…?」
男「…どれだけ頑張れ、言われても、全然思えないんです。俺なんて、とか思っちゃうんですよ…」
男「……俺のこと、誰一人、必要としてくれてなかったのに……」
男「──俺は、こんな一時的な楽しい記憶を残して、外国なんて行けない」
スッ トン
叔母「…………」パッ
男「ありがとうございます。今まで、いっぱいいっぱいの楽しい日々、感謝しています」
叔母「うん」
男「…怒りますか?」
叔母「まさか。怒らないよ、私こそなにも出来なかったんだ、キミにね」
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 23:14:33.33 ID:
DNFeLLI1O
男「それこそ、まさか。ですよ、叔母さんのお陰で楽しい数ヶ月でした」
叔母「本当に?」
男「本当です」
叔母「………」スッ
男「……」
シュボッ
叔母「すぅー…」
男「……………」
叔母「はぁ、…うん、そっか」フゥー
男「…はい」
叔母「なら、お別れだね」ポンポン
男「そうですね」ニコ
叔母「うん」ニッ
男「……。じゃ、着替えてくださいよ叔母さん。風引いちゃいますよ」
叔母「そうだね」ゴソゴソ スッ グリグリ
ジュウウウ…
叔母「それじゃ、さよなら」
男「ええ。さよなら」
371 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/13(土) 23:15:16.23 ID:
DNFeLLI1O
第十一話 終
明日にノシ
372 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/14(日) 07:02:01.43 ID:HWbD07320
おつ
373 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/15(月) 00:01:42.71 ID:KqttNjsNO
明日とは
374 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/15(月) 10:26:52.92 ID:Mx7kb4hHO
たしか男は叔母さんさんの写真隠し持ってたよな……
今夜はそれ見ながらシコシコタイムか
375 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/22(月) 06:13:39.19 ID:
Wv+sfgKlO
44号室
叔母「それでは」
叔母「男くんの安泰な外国進出を願って、かんぱーい」
受付「かんぱーーーい!」
清掃「Cheers! カンパーイ!」
女「乾杯!」
女姉「…乾杯」
男「か、乾杯…」
ガヤガヤ ガヤガヤ
男(今日はいろんな人が集まったな…)チラ
女姉「ねえ」スッ
男「はいッ? あ、先生…今日はありがとうございます、来てくれて」
女姉「お礼なんて結構よ。先輩に無理やり連れてこられたようなものだし」
女姉「それより、気になってることがあるんだけど…」
男「はい?」
女姉「私だけ、どうしてジュースなの?」チャポ
男「……教師が酔っ払っては、体裁が悪いでしょうから」
女姉「な、なるほど…! 確かに…!」ハッ
376 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/22(月) 06:14:29.49 ID:
Wv+sfgKlO
男(ファミレスでのあの惨状を覚えていないのか……)
男「えーっと、その、仕事の方は大丈夫なんですか?」
女姉「もちろん。むしろ貴方がどうなのかしら。現状をきちんと把握できてる?」
男「え、ええ…まあある程度は…」フィ
女姉「あら。初めてみるわね、貴方の不安そうな顔」
男「転校に関して多少は自信があったんですが…つもり、のようだったようで…」
女姉「へえ…」マジマジ
男「な、なんです? そんな言うほど珍しいですか、俺の不安そうなトコロ」
女姉「そうね…」
女姉「国境を跨いで転校に教師として何も言えない……だから、私はきっと、貴方を信用しすぎてるのよ」
男「あの、結構意味が汲み取りにくいんですけど、つまりどういう…?」
女姉「ひっく」
男「───誰だァ! 先生に飲ませたのー!!」
女姉「えっ? ちょ、違う違う、今のただのしゃっくり…!」
受付「え、飲んだの? いつ!?」ビクッ
叔母「待ってろ後輩、一発でゲロってみせるから」スッ
女「いやぁー! もうあんなお姉ちゃん見たくないのにぃ!!」ササッ
男「とにかく俺の側から離してくれ! 誰か壁を! どうか壁役なってください!」ダッ
女姉「!?」
377 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/22(月) 06:15:05.79 ID:
Wv+sfgKlO
叔母「なんだ、ただのジュースじゃないか。びっくりした」ホッ
女姉「私は皆のリアクションに唖然としたままですけど……」ズーン
女「ち、違うのよお姉ちゃん? 私、ああでもきっと大好きだから!」
女姉「じゃあ私は一体貴女になにをしたのよ…?」チラ
女「ひっ! あ、ごめっ」ササッ
女姉「今、距離を取ったわよね? 怯えてたわよね? どういうことよー!!」
女「待って! 急に顔が近づいたからびっくりしちゃったというか!」
受付「待ち給え」スッ
女姉「う、受付さん…! 貴女ならきっと教えてくれますよね…!?」
受付「ウチと二人っきりのときならね?」ポン
女姉「やっ……ヤダー! そんなのヤダヤダ! なんで皆教えてくれないの!? なに!? 私なにしたの!?」
男「これはもう教えたほうが良いんじゃないんですか…」
叔母「言っても無駄だろう、あっちが信じない」
男「…そういや44号室の幽霊もそうでしたっけ」
叔母「ん。意固地というより、己の過ちを認めたくないんだろうね」
男(どっちにしろ意固地だ…)
叔母「おい、後輩。今日はお前の話をする為に呼んだんじゃないぞ」
女姉「わっ、わかってますって!」