Part15
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 22:57:19.20 ID:
QbgMpNKJO
男「そっか。でもね、そんなに悲しくないんだ、俺個人としてはさ」
清掃「どうして?! 大事な家族がばらばらになっちゃうんだよ!?」ガタッ
男「おぉう!? ーーそうだね、でも悲しくなんかない、これっぽっちも」
男「悲しくなんて、なってやらないんだ」
清掃「……?」
男「子が親をわかったように言うのも気分が悪いけど、この際ハッキリぶっちゃけるけども」
男「ーーーー笑っちゃうぐらい、ほんっっと身勝手な人たち過ぎるんだよなァ…!?」ギラァッ
清掃(ヤダ! 普段オトコがしたこと無い顔よ! こわい!)ガクガクガク
男「両親共働きでろくに朝昼晩と一緒に飯喰ったことないし、まあそれは良いよ。こっちの我が儘だ」
男「でも、子供がせっせと努力を重ねて勝ち取った学年一位と最優秀生徒やら何やら!」
男「普段あっちがブツクサと人の上立てと要求する癖に、いざ取ったら取ったでまったくの無関心!」
男「かァーッ! ほんっとマジで子供のこと単なる跡継ぎでしか想ってないんじゃ無いの!?」
男「と、中学の頃は本気でそう思ってました」スッキリ
清掃「ハ、ハイ」
男「……。でもね、最近は違うんだ、そうとも思えなくなってきてる」
清掃「? どうして?」
257 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 22:58:11.83 ID:
QbgMpNKJO
男「…離婚の話がちらほら見え始めたとき、珍しく両親が家で揃ったんだ」
男「あれは中学卒業の…半年前かな、もうとっくに互いに愛想を尽かしてたんだろうけど」
【その日。生まれて初めて両親の夫婦喧嘩を見た】
【熱くて、目を開けてられないぐらいのドロドロとした、異様な光景】
【それをドアの隙間から覗いていた俺は、驚いたと同時に、ただ一つだけ思ったんだ】
男「どうして【今まで誰にも言わなかったんだろう?】 いつから誰一人信頼せず独り抱え込んで来たんだろうって」
男「…それぐらいしょーもない喧嘩内容だったから」
男(でも、それが普通なんだと今では分かる。両親は一般人と変わらない、ただの人間だと)
男「ただただ、俺の両親の周りは、本音を言えない人たちばっかりだったんだなぁっと…」
男「もうちょっと自分らしく居られる場所があれば…きっと…」ハッ
清掃「………」ジッ
男「ご、ごめん。話が少し断線してた、うん、ごめん」ポリポリ
清掃「いいよ。聞いてる、ケルケル聞いてるから」クイッ
清掃「ラストまで話して、オトコ」
男「あ、ありがと」テレ
男「だからね、ケル君。離婚で悲しい思いなんて絶対しない。そんなの自業自得だってさ」
258 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:00:16.63 ID:
QbgMpNKJO
男「あの人たちは他人に、近しい人に、自分の想いを伝えることを怠った」
男「…自分の悩みを家族に言わなかった、独り抱えて黙ってた。それは駄目だと…」チラ
清掃「!」
男「そうだよ、ケル君が俺に言ってくれただろ? バイク二人乗りの時にさ」ニコ
清掃「…うん、言った…言ってたよケルケル…っ」ギュッ
男「相手を深く知らずいるのは楽だし、一人で生きた方がきっと穏やかだろうね」
男「…でも」
『おかえり』
『…た、ただいま』
男「ーーー素直に言葉を言ったり言われたりとか、そっちのほうが凄く楽しいじゃん?」
清掃「そう、そうだよオトコ! ボクも素直に言ったほうが好き!」フンスーッ
男「そうそう。だから君のお父さんにもハッキリ言った方が良い、じゃないかな…」
男「じゃなかったら、ケル君に電話なんてしないよ。否定される可能性を敢えてやってるんだからさ」
清掃「ザッツライ! ダディって小心者? みたいなけつ穴ちいせぇー男だもん!」フンフンッ
男「うん。あとでその言葉教えたであろう受付さん怒っておくね」
清掃「な、なんだか…なんだかケルケル超元気でてきたんですけど!? ナニコレ!? why!?」
男「おお…! 確かに、何時ものパワフルなケル君に見えなくもない…!」
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:01:02.43 ID:
QbgMpNKJO
清掃「Powerfulkerukeru!? なにそれテラつよそう! ふんぬぅうぅぅうぅぅ〜〜っ!!」グググ
パァンッ!
清掃「決めた! 今からダディに電話する! やっぱいっぱい怒る! 直接こいって文句いう!」
男「おう! 行ってこいケル君!」ニッ
清掃「ありがとオトコ! もう、なんだろっ、愛してる! ラブユーチュッチュ!」シュバァッ!
男「………」フリフリ
パタン
男(なんて、わかったような事をよくもまあ言えるな、俺も)スッ…
【壊れていく家族をそのままに、本音を語れなかったのは俺自身なのに】
【子供に何が出来る。離婚を引き留めるなど無理だ。そんな力は俺には無いと】
男(だって、最初から期待されてないんじゃどうしようもないだろ)
男(…ああ、寒気がする。頭が痛い。数十分間の俺を消し去りたい、嫌だ、もう嫌だ)
【何を努力しても、想像しても、他人から期待される人間になんてなれやしないのに】
男(浮かれるな。偶然上手くいっただけ。何度も続かない。自信をつけるな)
260 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:01:43.45 ID:
QbgMpNKJO
男(お前は人の悩みを聞ける大した人間か? 違う、その逆だ。教養の無いちっぽけな人間だろ)
男(ああ、恥ずかしい。自分を殴りたい。もう二度と自分を期待するな…次はきっと大失敗するんじゃないかーー)
「ありがとう、男君」
男「ーーえっ?」バッ
叔母「ん? だから、ありがとうと言ったんだけど…?」
男「………」ボーゼン
叔母「……」キョトン
男「…なぜ、叔母さんがここに…?」ダラダラダラダラ
叔母「え? さっきから居たんだが、…もしかしてずっと無視されてた?」
男(ええッッ!? 完ッ全ッに自分の世界入ってた…!? こりゃ恥っずぅーーー!!)カァァァァ
叔母「…じゃあ出直すか」スタ
男「いや良いですってば!? 全然ここ居てくださいよ!!」
叔母「本当に?」チラ
男「まったくもってかまいません! それでッ!? ありがとうとはどういったことで!?」
叔母「う、うん。ケルケル君のことだよ、さっき廊下で元気に走り抜けていく姿を見たから」
叔母「ああ、君が上手くやってくれたんだなと。だからお礼。ありがとうって、君にね」
261 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:02:33.71 ID:
QbgMpNKJO
男「お、俺はそんな大したことなんて…単に話を聞いて、思ったことを言っただけで…」
叔母「……、煙草すう? 最後の一本だけど…」ヒョイ
男「は、はい?」
叔母「やっぱり吸わないか。いやなんとなく君らしくないなぁと、ふと思ったから」シュボッ
男「………」
叔母「ほら君らしくない。君の部屋で煙草吸ってることに何も言わない」グリグリ
シュウウウ…
男「…俺らしさって、なんですか」ボソリ
叔母「ん。そうだなあ、私が知っている男くんはとにかく…うん…とにかく小姑っぽい?」
男「………」ズーン
叔母「ほ、褒めてるからっ。でもごめん! 気に障ったのなら謝るから!」
男「い、いえ、別に…」
叔母「うーん…」ポリポリ
叔母「…君は年齢しては落ち着きもあるし、よく考えて行動してるから偉いと思う」
叔母「私よりもきっと大人に近い大人なんだろうと、常々思うんだ」
男「は、はあ…ありがとうございます…」
叔母「でも子供だろ?」スッパリ
男「…………」ピク
叔母「君はまだ成人もしてない。大人っぽいけど大人じゃない、だから…」
叔母「人から期待されて、それを達成できたら嬉しがらないとダメだってば」
262 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:03:11.10 ID:
QbgMpNKJO
男「喜ばないと、ダメ?」
叔母「期待されたら喜ばないとね」
男「そっ、そんな期待されて喜ぶ人間ですかね俺…!?」
叔母「料理を作る君は凄く楽しそう見えるけど」
男「うぐッ」
叔母「ケルケル君だって受付だって、君の世話焼きっぷりには凄く期待してる。だからケルケル君も、素直に悩みを打ち明けるんだと思う」
叔母「それに、私も」スッ
ぽんぽん
叔母「もう一度言うよ。ーーありがとう、君は本当に凄い、私の自慢の甥っ子だ」ナデナデ
男「……」
ぶるっ
叔母「それが君に対する私の素直な感想だよ」
男(あぁ…この人は、本当に…)ギュッ
【どうして何時も、こんな恥ずかしい言葉をさらっと言うのだろう】
【どうして何時も、こんなにも欲しかった言葉を言ってくれるのだろう】
【………。やだ! 泣きそう! やだやだ待て待て待てッ! 堪えろ俺ぇーッ!】
男「…叔母さん」
叔母「ん?」
男「煙草、買ってきますから…お金ください…今から行ってきますから…」
叔母「ん。そっか」
叔母「ありがと」ニッ
男「はい…っ!」ニッ
263 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:04:32.88 ID:
QbgMpNKJO
〜〜〜
受付「へっ?」
男「えっ?」
叔母「………」ポトリ
清掃「エ? 言った、よね? 新しいお母さん、は【ダディがなるマミィだって】」
男「ちょッ、ちょっと待って! えっ、なにっ、お父さんがお母さんてどいうことッ!?」
受付「あぁ〜〜〜なる、ほど〜〜〜……」
叔母「世界は広いな…」しんみり
男「俺だけ理解置いてかれてる! わかんないわかんない! 理屈意味不明ですけど!」
受付「ウン。つまり、ケルケル君のお父さんは…」
叔母「性転換手術でお母さんになる、と」フゥー
清掃「ダディ悩んでたのケルケルもう知ってたけどタイヘンな手術なのに一人で決めてー!」プンプン
男「……………………」(思考停止)
受付「ありゃ、キャパ超えちゃったか。言うてもここのラブホの客にだって居るよ?」
叔母「ああ、彼らンンッ! 彼女らは、非常に清潔に部屋を使ってくれる上客だ」
受付「もしかして酔っ払ったとき、メイド服だったのもアレ?」
清掃「ザッツライ! どんな気持ちか確かめたかったの!」
叔母「それで? 少しは分かった?」
清掃「ウーン……ケルケルおっぱい大きい人好きだから……うーん……」
264 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:05:03.22 ID:
QbgMpNKJO
受付「やっぱそうだよネ! んな簡単にセクシャリティ変わっちゃ全国の男みんなホモだ!」スタスタ
叔母「しかしそれじゃお前は一生モテないな…」スタスタ
受付「唐突に暴言吐かれて戸惑う私なんですけど!?」
叔母「ケルケル君に酒飲ませたのお前だろ。しかも部屋のビールという話を聞いた」
受付「巫女さんの仕事いってきまぁーーががががががが!?」
男「………」チーン
「オトコ、オトコ」つんつん
男「はっっっ!??!」
清掃「大丈夫? ヘイキ? 気分悪い?」
男「えっ!? いやっ、うん! 大丈夫だよ…全然…ちょっと気を失ってただけだから…」
清掃「そんなにショックだった? ケルケルのダディ、女の人になるの?」
男「ちょ、ちょっとね…衝撃が凄いというか…ケルケル君はヘイキなの…?」
清掃「タイの友達にいるから! えーとえと、ひぃふぅ…みぃ…? たくさん!」ニッコニコ
男(なんたる…これがカルチャーショック…)
清掃「…ダディ、やさしい人よ? 嫌いならないでほしいよ…」シュン
男「も、もちろん! ケル君の家族が悪い人なわけがない! でしょ!?」
265 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:06:12.30 ID:
QbgMpNKJO
清掃「うん!」ニコ
男「あ、あと…それと、おめでとう。ちゃんと話できたみたいで、こっちも嬉しいよ」
清掃「………」じぃー
男「ケル君?」
清掃「ケルケルね、本当はダディの手術反対するつもりだったの」
『《すっ、好きな人できちゃったんだよなぁ!? こんな話ケルディにしか出来ないよ!》』
『《反対なら言ってくれ…でも、パパ…この年で恋しちゃってぇ…えへへ…ムゴォホン! だから!》』
『《好きな人の為に、素直な自分を出すために、…まずお前に一番相談したかったんだよォ…っ》』
清掃「だってさ! ケラケラケラ! ほんとダディちっさいよねー!」ケタケタ
男(ほんっと凄いなケル君の懐の深さは…)
清掃「そうまで言われたらケルケルも認めなきゃ。マミィも居なくなってたくさん時間たったし」
清掃「オトコが言ってくれた、素直に、我慢しない。そう言ってくれたから、もういいの」ニコ
男「…そっか」
清掃「うん! あのねあのね、そういえばケルケルの質問してないの覚えてる?」
男「え? ああ、確かに。俺の話で終わっちゃってたな、そういや…」
清掃「なら今してもオッケ?」キラキラキラ
男「今に?! ま、まあ別にかまわないけど…」
266 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:06:40.33 ID:
QbgMpNKJO
清掃「わー! よかった、じゃあ今からするね!」スッ
男(一体どんな質問を…)ドキドキ
ぎゅっ
男「………えっ?」
清掃「んん〜〜〜」ぎゅううっ
男「ケル君!? これは何っ!? 一体…!?」
清掃「どお? なにか感じる? ハグって恥ずかしい? 特別なキモチ沸いちゃう?」
男「わっ沸かないよ全然!? それが聞きたいことなの!?」
清掃「そうよ!」ニッ
清掃「ありとあらゆる方法でダディの気持ち知る為よ! 情け容赦ないね、ケルケルは!」
男「…ほんっとケル君は凄いよ…」トホホ
清掃「よっと。ありがとねオトコ! そのオトコらしさに完敗よ!」パッ
男「そう、お役に立てたようで…それで、お父さんの気持ちって理解できた…?」
清掃「んーーー…」
清掃「ちょっぴりだけ!」ビシッ
男「そっか。なら良かった、……ん?」
清掃「んじゃケルケル仕事あるからバーイ! 漫画の感想あとでねー!」
男「あ、うん! あとでまた…!」
267 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:07:28.19 ID:
QbgMpNKJO
ポツーン
男「り、理解できたって話だよな、うん。それだけって話だろう…」
清掃「♪」ヒョコ
男「うおっ?」びくっ
清掃「んふふーオットコ〜! またねー!」フリフリ
ヒョイ
男「…多分…そう、だよね…?」
第七話 終
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:09:01.62 ID:
QbgMpNKJO
一週間以内に… 次は叔母さんメインで
ではではノシ
269 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/21(土) 23:26:13.79 ID:fTQZTeSAo
久しぶりー
また濃厚な…乙です
270 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/22(日) 07:05:56.60 ID:/J/Rm1bz0
良かった続くのか
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/22(日) 15:47:42.47 ID:xKdZj1qYO
てっきり女装に目覚めて実は男性が好きだったみたいな話だと思ったら…
性転換は予想つかないは…濃厚すぎる…けど嫌いじゃない