Part10
166 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:45:54.83 ID:
m7QS7m8KO
『ええっ!? な、なりゆきですっ! 誤解ですってば!』
女姉「君、嘘が露骨に声に出るわね。電話越しでも動揺顔が手に取るようにわかるわよ」
『…はあ、まさかの予想外。でも、作戦は上手くいったみたいで安心しました』
女姉「作戦ですって?」
『ええ、クラス男女仲を良くする為に。仲の悪いと噂される二人が率先して一緒に帰宅すれば変わるかもと』
女姉「思い切ったことするものね。君からの提案かしら?」
『違いますよ、妹さんです。…煽ったのは俺ですけど、まあ、女姉先生から彼女の性格はよく聞いてましたし』
女姉「そう、なら油断しないことね。妹はどこで感情を爆発させるかわかったもんじゃないの、注意を怠らないように」
『あの、遅いですその助言…この数日でいやと言うほどわからされましたけどね…』
『──ぅーん、あ! こりゃナオンと電話中デショ! んな雰囲気だしてるー!──』
『ワオ! オトコってば手がはやーい──ちょっとお姉さんに変わってみ? 働け──ゴキィイインッ』
女姉「どうしたの? こんな夜中に騒がしいわね」
『ちょ、電話中だって言ったでしょさっき!? シッシッ! …い、いや、その親戚の人がお酒飲んで騒いでまして…』
女姉「? そう、なにか骨が折れた音も聞こえたような…」
女姉「まあいいわ。それよりも明日も学校なのだから早く寝なさい。良いわね」
『わかりました。では、これで』ピッ
女姉(順調そうでなにより。けど、まさか妹のほうから彼に提案するなんて少し変わったのかしら、あの子も)
167 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:47:20.82 ID:
m7QS7m8KO
〜〜
女「……」ザッザッ…
女(ふぅー、目についたから気まぐれに掃除してみたものの)キョロ
女「…ヤバイわね、コレ、今日中に終わるのかしら」ズーン
男「大丈夫。終わらせよう」
女「おわーっ!? びっくりした!」
男「おわーってアンタ…もう少し繊細な驚き方が出来ないのか…」
女「う、うるさいわね! 良いでしょ別に、つか驚き方まで口出すんじゃない!」
男「はいはい。口うるさくてすみませんね」ザッザッ
女「…っ…な、なによ、一緒にしてくれるのっ?」チラリ
男「素直に手伝うと言えば怒るだろうから、勝手に始めただけだよ」
女「分かってるなら口に出・す・な!」ガァンッ
男「だァー!? なにも集めたゴミを蹴ることないだろ!」
女「いちいち突っかかってくるなら手伝わなくて良いわよ馬鹿!」
男「説明しないならしないで、意味がわからないからキレ始めるだろアンタは!」
女「きぃ〜〜〜!! 腹が立つ、なによわかったようなこと言って! ええそのとおりよバカ!」
ギャーギャー ワーワー
女姉「…ハァ…」
〜〜
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:48:13.29 ID:
m7QS7m8KO
女姉「もう少し静かに活動できないかしら…人払いできるタイミングも限られてるのよ、私でも」
男「うぐ…すみません、どうにも彼女相手だと口が止まらないようで…」
女姉「相性が良いのか悪いのか、とんとわかりづらいわね貴方達」
男「相性、良いですか俺ら?」
女姉「あの娘相手に上手くやれてる方よ。…勘違いしないように、交友関係であって交際関係では無いから」ジィー
男「まだ疑ってるんですね…」ハァ
女姉「勿論。私の監視下である限り、そのような自体は認められないわ」
男「それ、妹さんを想っての発言ですか?」
女姉「変なことを聞くのね。どうしてそう思う?」
男「…いえ、なんとなくただ、」
男「──女さんと女姉先生が話してる姿が、全然思い浮かばなくて」
女姉「そう、私もそう思うわ」スッ
男「えっ?」
女姉「でも良いのよ別に。妹にとって私は壁でいい、辛い存在で良いの。私も望んでも居ないし、彼女だって望んでいないでしょう」
男「……」
女姉「今日はここまで。遅くなりそうなら車で送っていくけれど?」
男「い、いえっ、電車はまだあるので大丈夫です! それでは…」ガララ
女姉「そう。じゃあまた明日」
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:49:15.33 ID:
m7QS7m8KO
女姉(…そう、私は厳しい姉として居ればいいだけ)
〜〜
「女姉先生。おはようございます」
女姉「! 校長、おはようございます!」サッ
「いえいえ。そう堅くならず、私も少々言い過ぎたと反省しておるのですよ」
女姉「仰る意味が…」
「目まぐるしいばかりではないですか、妹さんのご活躍は私の耳にも届いてますよ」
「率先してでの委員長立候、風紀委員で自らゴミ拾いをし、挨拶運動にも自主的に取り組んでいると」
女姉「……。それは嬉しい限りですが、彼女が起こした問題が決して無かったことになるとは思いません」
「お厳しい言葉で。ですが、過ちもまた成長。何時かの機会に妹さんへ言葉を投げかけてみては如何でしょう」
女姉(…言葉を、投げかける)
第四講義室
女姉(甘い言葉なんて必要ない。私は妹にとって厳しく、現実を突きつける嫌な姉で良いのよ)
女姉(今更彼女に優しい言葉なんて──)
ガララ
女姉「ん、来たわね。今日は遅かったじゃない」
男「少し私用な用事があって、もう終わったので安心して下さい」
パタン
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:49:50.73 ID:
m7QS7m8KO
女姉「? そう、ならいいわ。では早速始めましょう。今日は私の方から君へのお返しする件について──」
男「……そのことなんですが」
男「『あの件の願い』は撤回したいと思って、ここに来ました」
女姉「撤回…? 急にどうして…」
男「やはり自分の力で彼女が受けている誤解を解こうかと。その道も何とか見えてきましたし、わざわざ先生の力を借りなくても…」
女姉「……」
男「あ。でも、先生との取引は続けるつもりです。まあ、公私混同なことになりますけど…」
女姉「君は…」
女姉「ハア、なんというかお人好しという部類に入る人間ね」
男「です、かね」ポリポリ
女姉「敢えて私から言わせてもらうけれど、君がやってきたことは私の要望でもあったのよ。そして君もそれを受け入れた」
女姉「その結果、私の要望を限りなく成功させたのが君。それが事実」
男「でも…」
女姉「でもじゃない、あのね? 私が一人で成し遂げるべき私用に他人を巻き込むだけじゃなく、生徒一人を使ってやり遂げたの」
女姉「本来なら教えとくべき立場の君に、……無様にすがりついた」
女姉「こんな体たらくぶり許されるわけがない。なのに今まで嘆かず突き通せたのは、君へのお返しがあったからこそ」
女姉「それを今更になって要らないと言われたら、私はどう自分に落とし前をつけたらいいのよ」
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:50:47.63 ID:
m7QS7m8KO
男「どうといわれましても…」
女姉「勝手なことを言ってるのはわかってる。けど、君はそれだけの仕事をこなした、だったら見返りある報酬を受け取るべき」
男「仕事、なんですか?」
女姉「…!」
男「俺思ったんです。俺は報酬を受け取るから女さんと仲良くなったのかって、始まりはそうでも…今は違うと思ってます」
男「誤解を生んでしまったのは俺の責任です。解く方法があるならきちんとやり遂げるべきだとわかっているつもりです」
男「でも、こうじゃないって思ってしまって…結局、自分は最初から最後まで女さんを騙してるんじゃないかって…」
女姉(騙して、る…)ズキン
男「俺、ちゃんとやります」
男「先生との約束は守りますが結果としてそうなってるだけで、ちゃんと俺の意志で仲良くやっていきます」
男「だから報酬なんてものも要りません。でも、そうであっても先生が納得しないなら…」
男「…どうか女さんに一言あげてください。頑張ってるって、よくやってるねって」
女姉「な、なぜ、そんなことを私が…」
男「彼女が言ってくれたんです。頑張る理由が、駄目な大人にならない為には、」
『私、お姉ちゃんみたいにカッコいい女性になりたいの』
男「だから、どうか一言で良いので褒めて下さい。彼女を…」
男「もっと近くで見てあげて下さい。それが、俺の今の願いです」ペコリ
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:51:31.44 ID:
m7QS7m8KO
〜〜
女姉(もっと近くに居て、褒めてあげて下さい。なんて、元より求められてなかったらどうするのよ)
女姉「……、ハァ…もう腹をくくろう」がらり
女「! ばかねっ、この私を待たせるなんて良い度胸じゃない!」バッ
女「今日という今日は堪忍袋の尾が切れたわ! 駅前クレープおごりジャンケン、受けて立ってもらうわよ──」チラ
女姉(…………。この子は本当に…)ズーン
女姉「ずいぶん楽しそうね、貴女」
女「──おね、ちゃ!?」サァーー
女姉「失言よ、それ。学校では絶対に姉と呼ばないよう散々注意したのに、まだ理解できてないの?」
女姉「ちゃんと先生と呼びなさい。良いわね」
女「ご、ごめんなさい先生…」シュン
女姉(どうしようもない娘ね、本当に。何度教えても覚えない、何度壁を作っても挫折する。なのに結局諦めない根性っぷり…)
女姉「もういいわ。無駄に残ってないで早く帰りなさい、折角、私が親に掛け合って塾を免除させてあげたのに」ハァ
女「…はい…」
女姉「貴女が自主勉強を頑張ると言い切ったの、忘れたのわけじゃないでしょうね」
女「……」コクリ
女姉(ああ、ほんとうに昔の私を見ているようで嫌になるわ。頑張れば報われるなんてそうあることではないのに)
173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:52:15.13 ID:
m7QS7m8KO
女姉(でも…)
女姉「──でも、今回の中間テストは良かった」
女「えっ?」
女姉「勉強したのね、ちゃんと。しかしまだ甘い、ニアミスの酷さが教員連中で話題のネタになるぐらい酷かったわ」
女「…ウッス…」
女姉(きちんと言うべきことは言う、厳しいことだけを見せつけても駄目。わかってる、そんなことは)
女姉(しかし、私はそうして失敗してきた)
女姉(成功だけに取り憑かれ、失敗を恐れなかった。過去に経験した苦い思い出を彼女にさせたくない)
女姉(──でもこの子にとっては大切な【今】じゃない)
女姉「けれど個人的に評価してあげる。貴女の頑張りは認めるわ。きっと良い──」
女姉「──良い、クラスメイトが居たのね」フッ
女「……!」
女姉「暗くなる前に帰りなさい。良いわね、絶対よ」
女「あ、おね、えぇと先生…!」
女姉「なに?」クル
女「あ…その…えと…これからも、頑張りますっ」ピシッ
女姉「くす。ええ、勿論。だって期待の妹ですから」ニコ
ガラリ パタン
174 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:53:03.62 ID:
m7QS7m8KO
女姉(フゥー、慣れないことするもんじゃないわ。顔、熱い)パタパタ
女姉(これでよかったのか教えてほしいものだわ。はっ、教師が聞いて呆れる。心の折り合いをご教授願うなんて完璧主義者にもほど遠い、)チラ
男「……えっと〜」ポリポリ
女姉「趣味が悪いわね、覗き見? それとも聞き耳?」
男「ふっ、不可抗力です! というか教室にカバン置きっ放しですし!」ブンブン
女姉「認めないわよ。…だから、少し付き合いなさい」ツカツカ…
男「えぇっ?」
女姉「大人の私をここまで辱めた責任を取って」じぃー
男「えぇッ!? 言い方悪くないっすかそれッ!?」
〜〜
男(コーヒー奢り程度で良かったんだ。安心した…)ズズズ
女姉「……」コロコロ
男「あの、飲まないんですか?」
女姉「飲むと吸いたくなるのよ、煙草」
男「え、吸うんですか? なんだか意外ですね」
女姉「昔、煙草を格好良く吸う先輩に憧れて始めたの。まあその程度だったから、ぱったり止めれたりもできたんだけど…」
カシュッ
女姉「ふぅ、今日は色々と当時を思い出したから。コーヒー程度で吸いたくなりそうよ」ニコ
男「そ、そうっすか」ドキ
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:54:06.24 ID:
m7QS7m8KO
女姉「ねえ、質問があるのだけれど。いいかしら」
男「…どうぞ?」コク
女姉「じゃあ遠慮なく。君、まったく大人を信用してないでしょう?」
男「ぶほぉっ!? けほ、こほっ、一体なにを急に…!?」
女姉「最初に私が聞いた君の相談、あれ、前提から教師の『公式発表なし』という言質を取るためだけに出向いてきたんでしょうし、」
女姉「他にも色々と、大人を行動基準に入れずに考えた末に出た答えが、見え隠れしているもの」
男「そんなワケ、」
女姉「じゃあ今回で私の報酬を要らない、と言い切った君なりの意見は?」
男「それ、は」
女「大人がやることを信頼してないからでしょう? だから良い落とし所を考えて私に提案した。まあ、穿った見方をすればね」
女姉「聞かせて。どうして、そこまで大人を信用出来ないのかしら?」
男「違いますよ、それは…」チャポ
男「信用してないとかじゃなく、俺に出来ることと大人が出来ることを把握してるだけです」
男「やれないことは俺にもあるし、むしろ子供の俺のほうが多いでしょう」
女姉「そう、そうなのね」
女姉「信頼してないじゃなく、大人を期待してないのね。貴方は」
男「…………」
176 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:55:40.62 ID:
m7QS7m8KO
女姉「そっちのほうが問題だわ。子供らしくない、まるで大人以上に未来に道がないと言わんばかりじゃない」
男「だって、あーしてくれこーしてくれと嘆いたってしょうがないじゃないですか」
男「大人だって暇じゃない、例え先生でも生徒一人一人の都合に合わせられるわけじゃないし」
男「だから頑張るんです。無理してるなんて言われても、俺のために無理して他人を付き合わせるほうがもっと面倒くさい」
女姉「君…」
男「──先生。俺は期待するより期待される人間に成りたいんです、きっと」ニコ
女姉「……! ねえ、本当に願いは無いの?」
男「えっ? な、なんですか急にっ?」
女姉「良いから言いなさい、馬鹿ね、そんな苦労は大人になってから考えれば良いの」
男「こ、高校生も既に大人の仲間入りなんじゃ…」
女姉「それ以前の問題」
女姉(一人でなんでも出来るか、なんて大人になっても望むかどうか)
女姉(完璧主義者をうたう私であっても、他人の大切は痛感している)
女姉(この子こそ誰よりも『認めてくれる人』が必要じゃない。なのに、これ以上誰かに認められようとしてるなんて)
男「せ、先生…?」
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:56:38.58 ID:
m7QS7m8KO
女姉「決めた。妹を褒めるという願いの件、やっぱ無しよ。君への報酬にはならないわ」
男「はいっ!? でもこれ以上俺が女姉先生に叶えて欲しいのなんてっ」
女姉「どんなことだって良い。私という人間が出来ること、なんだってするわ」
男「ちょっ、これ他の人に聴かれたらやばいんじゃ…」ソワソワ
女姉「どうなの? 無いの? あるの? 考えつかないなら私が考えるわよ?」
男「うぐッ、マズイ本気ですね先生…ッ! うーッん、えっとぉ〜…ッ」
女姉(やっぱり無いのね。ここまで言えば邪な望みぐらいでると思ったのだけれど、まあ私の考えすぎか…)
男「───…実はありました」ダラダラ
女姉「え? ある、の?」
男「だめでしょうか…?」
女姉「い、いえ、駄目じゃない、全然駄目じゃないわ。ドンときなさい、私を期待して」
男「わ、わかりました! じゃあ早速ながら今日にお願いしたいんですけど…」
男「今から俺とラブホテル行ってもらえません、か?」
第五話 中編 2/2 終
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 17:57:05.65 ID:
m7QS7m8KO
四日後にノシ
179 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 18:57:41.52 ID:4PQ3fwqp0
ワロタwwwwww
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/25(火) 19:33:05.00 ID:ZvQ5pRzMO
確かに家はラブホテルだが言い方ww
181 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/26(水) 13:11:53.79 ID:CD3OrBfR0
うん?男も根っこは馬鹿だったねw