男娼「身請けしてくんない?」 少女「そんなお金ないですね」
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Part25
627 :
名無しさん@おーぷん :2015/06/27(土)09:24:06 ID:
DIs
男娼「…」
少女「お、怒る、って」
男娼「そりゃそうか」
少女「え」
男娼「僕なんか…汚いものね。どこの女を触ったかも分からない男娼だもの」ギシ
少女「…!」
男娼「悪かったよ。気分わるくさせて」
少女「な、なんでそんなこと言うんですかっ」
男娼「…」
少女「ち、違うの。そうじゃなくてっ」
男娼「…」
少女「そういう、ことじゃなくて…。ごめんなさい…」
男娼「どうして君が謝るの?」
少女「…」ギュ
男娼「僕は事実を言っただけだから。…君が謝る道理はないよね」
少女「だから、汚くないって言ったじゃないですか」
男娼「じゃあ、どうして僕をそんな目で見るのさ」
少女「…」
男娼「どうして怖がるの?僕、君を汚したいわけじゃないのに。やっと決心ついたのに。どうして」
628 :
名無しさん@おーぷん :2015/06/27(土)09:28:32 ID:
DIs
少女「…」
男娼「…」
男娼「僕のこといやらしい奴だって思ってるんでしょ」
少女「…」
男娼「答えてよ」
少女「…い、いいえ」
男娼「嘘ばっかり。君、表面だけ取り繕うのどうにかしなよ」
少女「本当のことなんか言ったら、あなたが傷つくじゃないですか」
男娼「…」
男娼「ああそう。じゃあ君は僕の傷つくようなことを、本心では考えているんだね」
少女「…っ」
男娼「ごめんね少女。不愉快だね、僕」
男娼「…ごめんね」キィ
少女「何処行くんですか」
男娼「…」
少女「も、戻ってきてください」
男娼「散歩いくだけだよ」
バタン
少女「…」
少女「…はぁ…」
629 :
名無しさん@おーぷん :2015/06/27(土)09:32:49 ID:
DIs
男娼「…」
「ねえねえ、今度一緒に旅行へ行こうよ」
「何か欲しいものあるか?」
「今日のご飯何がいい?ねえ、あんた」
男娼「…」プカ
男娼「ふー…」
「あらぁ?」
男娼「!」ビク
青年「ちょっとちょっと男娼じゃなぁい!どしたのさ」
男娼「げ。…どうも」
青年「あんた今、げって言ったわね。げって」
男娼「言ってないよ」プカ
青年「ふん。まぁいいわ…。ってか、もう夕暮れよ。こんな所で油売ってないで早くお帰りよ」
男娼「やだ」
青年「やだ、って…。少女ちゃんは?」
男娼「いない」
青年「じゃあなおのこと早く帰りなさいよ。心配してるわよ」
男娼「…」
630 :
名無しさん@おーぷん :2015/06/27(土)09:38:38 ID:
DIs
青年「あんた、煙草吸ってるの?」
男娼「…ん」プカ
青年「珍しいわね。止めたんじゃなかったの?」
男娼「…んー」
青年「…」
男娼「…」スゥ
青年「あんたらねぇ、せっかく恋人どうしになったんだから、仲良くやりなさいよ」
男娼「気持ち悪。なんで分かるの」
青年「だぁって、普通分かるでしょう!あんたが煙草やるのって思いつめてるときだし」
男娼「はぁ…」
青年「何、どうかしたの。どうせ襲って怒られたとかでしょ」
男娼「別に、無理矢理したわけじゃ」
青年「相手の同意がなきゃ無理矢理に決まってるでしょ、馬鹿ねぇ」ケラケラ
男娼「…」ムス
青年「んで、拒否されてスネてここにいるんだ。橋の上なんかで黄昏ちゃってさ」
男娼「どうとでも言いなよ」
青年「話してごらんなさいよ。何か力になれるかも」
男娼「君に?…」
青年「そおよ。少なくとも女側の気持ちには精通してるわよ」
男娼「…ふうん」プカ
631 :
名無しさん@おーぷん :2015/06/27(土)09:43:28 ID:
DIs
青年「火、くれる」
男娼「よしなよ、店に上がる前に匂いがついちゃうだろ」
青年「あんた引退したくせにそんな…。いいのよ、今日上がらないし」
男娼「…はい」
青年「どうも。…ふう」
男娼「…」
青年「綺麗ね、夕日」
男娼「ん」
青年「…」
男娼「…」
男娼「…なあ」
青年「うん?」
男娼「ここにいる恋人らはさぁ」
青年「ん。ああ…今から色町に行くのかしらね。あー、目に毒目に毒」
男娼「…満足してんのかな」
青年「うん?」
男娼「だからさ、満足なのかなって」
青年「…どういうこと?」
男娼「好き同士くっついて、一緒に過ごして、話して、寝て、…それで」
男娼「それで満足なのか」
青年「…ええ、そうでしょうよ」
男娼「…羨ましいな」
632 :
名無しさん@おーぷん :2015/06/27(土)09:49:24 ID:
DIs
青年「なに?あんたは満足じゃないの?」
男娼「ああ」
青年「ほおー」
男娼「僕、贅沢なのかもしれないけど」
男娼「駄目なんだ。いくら一緒にいても、全然足りない。まだもっと深いものが欲しい」
青年「それは、寝るってこと?」
男娼「…」
男娼「多分、違う」
青年「へえ?」
男娼「僕、彼女と関係を持ってもきっとまだ満足しないんだ」
男娼「例え。たとえだよ、夫婦になったとしても、多分。この先ずっとそうだ。終わりが見えないくらい、欲が深い」
青年「…欲、ねぇ。何の欲」
男娼「…僕が彼女の全てであってほしいっていう、欲」
青年「うわ重っ」
男娼「ま、…そうだね」プカ
男娼「言っておくけど、彼女は僕の全てだ。それなのに僕は彼女の全てじゃない。それって、すごく」
男娼「…」
青年「苦しい?」
男娼「そう。苦しいんだ、…すごく。死にたくなるくらい」
633 :
名無しさん@おーぷん :2015/06/27(土)09:52:29 ID:
DIs
青年「…」
男娼「僕は、こんな卑しい生まれで、人生で…。何もない。空っぽだ」
男娼「でも彼女は違う。色んな物で満たされてる。僕が全てになる空きなんか、最初からない」
男娼「…そんなの嫌だ。僕だけ、僕だけでいい」ギュ
青年「そう」
男娼「苦しい…」
青年「じゃあ、死になさいよ」
男娼「…は」
青年「この橋から飛び降りたら、死ねるでしょうよ。苦しいなら死んで楽になりなさいよ」
634 :
名無しさん@おーぷん :2015/06/27(土)11:29:54 ID:wBy
お、続ききてるううう
待ってました!
635 :
忍法帖【Lv=0,作成中..】 :2015/06/27(土)11:57:33 ID:xep
頑張って
636 :
名無しさん@おーぷん :2015/06/27(土)12:02:28 ID:sji
生まれる前から待ってましたぁ!!!
637 :
名無しさん@おーぷん :2015/06/27(土)12:46:23 ID:nsq
待ってたよぉぉぉぉ!!!!!!
638 :
名無しさん@おーぷん :2015/06/27(土)15:32:16 ID:Fs8
支援
643 :
名無しさん@おーぷん :2015/07/02(木)15:31:36 ID:
Xl5
男娼「…」
青年「あら、何。驚いたような顔して」
男娼「…君」
青年「だってそうじゃないの。死にたい者を止めることなんかできないわ」
青年「あんたは自由になったんだもの。もう好きになさいよ。死ぬも生きるもあんたの勝手よ」
男娼「…そうだね」
青年「…」
男娼「…」
青年「この」
男娼「ん」
青年「贅沢もんが!」バシッ
男娼「あだっ!?」
青年「なによなによ!店から出て自由に好きな女と生きれるようになったってのに、まだガキみたいな文句垂れてるわけ!?」ガクガク
男娼「ぐ、ちょ、やめっ」ガクガク
青年「腹立つのよ!あの子の気持ち、ちょっとくらい考えなさいよ!死ぬとか簡単に言うな!」
男娼「ぐ…んっ」
青年「誰も得なんかしやしないわよ!そんなことも分からないの、馬鹿っ」
男娼「…」
青年「あの子は、…あんたを大事に思ってるし、あんたもそうじゃない」
青年「満たされてないって感じるのは、あんたが幸せから必死に目を背けてるからなんだわ。皆、手を差し伸べてるのに」
男娼「…」
青年「あんたって昔からそうよね。いつまでたっても、自分が幸せになっちゃいけないと思ってるんだわ…」
644 :
名無しさん@おーぷん :2015/07/02(木)15:35:48 ID:
Xl5
青年「やっと不幸から解放されたんだもの」
男娼「…」
青年「いい加減、身の不幸を探すのをやめなさいよ」
男娼「…」
青年「あの子、待ってると思うわよ」
男娼「そう、かな」
青年「ええ」
男娼「僕のこと…嫌いになってない、かな」
青年「なるわけないじゃない。そういうの気にしないわよ、きっと」
男娼「…」ギュ
青年「あ、日が落ちる」
男娼「…」
青年「綺麗ね」
男娼「うん」
青年「…」
男娼「…」
男娼「帰る。お腹減った」
青年「おー。また今度、あの子も連れて遊びにおいでよ」
男娼「ん」
青年「ばいばい」
男娼「…」
男娼「ありがと」ボソ
青年「え?」
男娼「…」タタタ
646 :
名無しさん@おーぷん :2015/07/02(木)15:38:18 ID:
Xl5
少女「…」
弟「いい加減、中に入ったら?」
少女「…」
弟「寒くなってきたよ。風邪引くよ」
少女「先にご飯…食べてていいよ」
弟「あの人ならきっと、帰ってくるって」
少女「…」
弟「心配性なんだから」
少女「うるさいわね…」
男娼「…」ソロー
弟「あ」
男娼「…」
少女「あ」
男娼「…どーも」
647 :
名無しさん@おーぷん :2015/07/02(木)15:41:15 ID:
Xl5
少女「…」
弟「お帰り男娼。僕、ご飯の準備しとく」ガチャ
少女「え、ちょ」
バタン
少女「げ…」
男娼「…」
少女「あ、…」
男娼「…」
少女「お、お帰り。ご飯できてるから…入ったら?」
男娼「少女」
少女「は、はい?」
男娼「ごめんなさい」ペコ
少女「え」
男娼「意地悪ばっかり言ってた。ごめん。謝る」
少女「…な」
男娼「許してくれる?」
少女「…」
少女「あ、当たり前でしょう。こっちこそ、…誤解させてごめんなさい」ペコ
648 :
名無しさん@おーぷん :2015/07/02(木)15:45:50 ID:
Xl5
少女(…なんだ、拍子抜けしたな。謝らないかと思ってたのに)
男娼「あー、お腹減った」スタスタ
少女(いつもの調子かい…)
男娼「ねえねえ今日のご飯なにー」
少女「ん。…煮物」
男娼「お、僕の好物にしてくれたの?」
少女「べ、別に…いや、そういうわけじゃないけど」
男娼「ありがとう、少女」
少女「う…」
男娼「…少女」
少女「な、何」
男娼「僕、幸せだよ」ニコ
少女「…」
男娼「君は?」
少女「…」
少女(…何だかんだで、素直な男なんだな)
少女「…私もだよ、男娼」
おわり
649 :
名無しさん@おーぷん :2015/07/02(木)16:18:46 ID:jPD
終わっちゃったのか
寂しいなぁ…
650 :
名無しさん@おーぷん :2015/07/03(金)01:36:01 ID:ZRH
乙!
素敵な作品をありがとう
続編でも次作でも何でもいいから期待してるよ
651 :
名無しさん@おーぷん :2015/07/03(金)02:27:38 ID:3jr
さっき見つけてここまで2時間ぶっ通しで読んだ
最高の作品でした!ありがとう!
652 :
名無しさん@おーぷん :2015/07/03(金)02:41:11 ID:H2b
面白かった!ありがとうございます!
653 :
名無しさん@おーぷん :2015/07/03(金)20:02:18 ID:phg
乙!
面白かったよ!
654 :
名無しさん@おーぷん :2015/07/04(土)11:44:45 ID:EJl
乙!
655 :
名無しさん@おーぷん :2015/07/05(日)06:36:53 ID:mO3
乙です!
これで終わりなのが寂しいですが、めっちゃ楽しませてもらいました!