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女「こっち見んな」
Paer1


1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 14:28:02.27 ID:/+GFJXapP
( ゚д゚ )

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 14:28:44.11 ID:S3ZgwM/E0
゚д゚ )

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 14:29:08.09 ID:+TLcBfZ00
д゚ )

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 14:49:58.61 ID:qZlnnbvI0
゚)

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 14:56:47.61 ID:TNK7SYbCO
)

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:15:18.97 ID:+f4lxBXV0
女「見んなっつってんだろ」
男「……えーと」
女「きょろきょろすんなうっぜえ」
男「あ、ご、ごめんなさい……」
女「……チッ」
男「あ、あの〜」
女「っんだよ」
男「ひぃ!す、すいません!」
女「びくびくしてんじゃねえ!言いたい事があるならさっさと言いやがれ」
男「あ、あの……ここは、どこですか?」
女「ここは坂だよ。見てわかんねえのか?」
男「坂ってより禿山の中腹みたいな感じですけど……」
女「どっちでもいいだろ、んなこと」
男「は、はい。すんません……」
女「……チッ」

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:17:28.07 ID:+f4lxBXV0
男「えーと……」
女「今度はなんだよ」
男「あ、あの〜僕は何でこんなところにいるのですかね?」
女「私が知るかよ、んなこと……」
男「そ、そうですよね……はは」
女「へらへらしてんなうっぜえ」
男「」ビク
女「……チッ」
男「あ、あの〜……」
女「女だ」
男「はい?」
女「私の名前はあの〜でもその〜でもシーブックでもねえ。女って呼べ」
男「は、はい。女……さん」
女「……チッ」

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:20:58.34 ID:+f4lxBXV0
女「お前は?」
男「は、はい?」
女「お 前 の 名 前 は !?」
男「は、はいっ僕は、えーと……」
男「……えーと?」
女「あ?」
男「あ、あの……どうも思い出せないんですけれど……」
女「はああ?何それ記憶喪失ってやつ?めんどくさ」
女「じゃあお前のことは……男って呼ぶわ。いいだろ?」
男「は、はい……あの〜」
女「あ、何?何か文句でもあんの?」
男「あ〜いや!そういう事でなく……なんか女さん、手慣れてるって言うか、
  あんまり驚かないんですね、記憶喪失の事」
女「は。別に。ここじゃよくあることだし」
男「良くあること……ですか」
女「そうそ。全く、めんどくさ」

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:23:42.88 ID:+f4lxBXV0
男「それで……ここは一体どこなんでしょう?自分ではここに来た記憶なんて全くないんですけど……」
女「記憶がないって、そもそもあんたが記憶喪失じゃんか」
男「あーいや、それはそうなんですけどね……」
女「まあ、ここに来た記憶がないってのは仕方ないかな。ここはそういうものらしいし」
女「突然ぽんとね、湧いて出るみたいにここに来る人、多いよ。
  来たところを見た人なんてどこにもいない。もちろん私も。どう来たかなんて覚えてないし、人が現れたところも見たことない」
女「大抵あんたみたいに気づいたら居るパターンが多いかな。あと少数派で、向こうの頂上から降りてくる人もいるっちゃいるけれど」
男「……頂上の向こうはどうなっているんですか?」
女「ここと変わらないよ。禿山で、霧で向こうまで見通せなくて、辛うじて下のほうに川があるのが見えるだけ」
男「女さんはずっとここにいるのですか?」
女「そうだねー、時間の感覚はないけど。ずっとここにいるかな」
男「川まで降りてみようとは、思わないんですか?」
女「……一回降りた事があるけれど、もう二度と降りようとは思わないな」
女「ましてや、川を渡るなんて、まっぴらだ」
男「そうなんですか……」

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:26:40.31 ID:+f4lxBXV0
女「……あんたさー」
男「はい?」
女「記憶、取り戻したいと思う?」
男「え……そりゃあ、まぁ……」
女「すっげーきつい記憶かもしれないよ?それでも?」
男「……それでも、取り戻したいと、思います」
男「このままここに居ちゃいけないと思うんです。
  早く帰らなくちゃ……妹が、待ってる」
男「……妹?」
女「ふぅん。妹がいるのか?」
男「えっと……はい、多分……」
女「聞かせてみろよ、妹の話。思い出せるんだろ?」
男「妹……妹と、僕は……」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:29:58.13 ID:+f4lxBXV0
妹『おにい、起きて!あさだよー!』
男『ん……ふうああ、おはよう、妹……』
妹『おはよ、おにい。朝ご飯出来てるから、食べたら食器はちゃんと水に浸けといてね』
男『何だ、今日はずいぶん早く学校に行くのな?』
妹『大会近いって言ったでしょ?レギュラー取れたら見に来てね!』
男『ん、行くよ。お父さんとお母さんも連れてく』
妹『うん、じゃあ、がんばってくるね』
男『車とかに気をつけるんだぞ。帰りが遅くなるようならちゃんと連絡しろよな』
妹『ん、分かってる。いってきまーす』
男『いってらっしゃい』
  バタ……ン
男『……お父さん、お母さん』
男『妹は、健やかに育っていますよ……』カタ

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:32:52.26 ID:+f4lxBXV0
男「二人暮らし、だったみたい、ですね」
女「はぁ?それなんてエロゲ?」
男「いやだって、ホントにそうなんですもん!
  妹が朝の支度してくれて、それを食べたら大学に通ってバイトして」
女「もしかして妹なんて存在しないのでは」
男「いやいやいやいや!それはないです、僕記憶喪失だけどこれだけは絶対です!」
女「……チッ」
男「なんで女さんが僻んでんですか……」
女「ああ!?僻んでなんかねーっつの!調子くれてんなよ!?」
男「ひぃぃ!?」
女「……んじゃあ向こうにゃ妹さんが一人でいるってことかよ……めんどくせえ」
男「向こう……って?」
女「お前にゃまだはえー」
男「……何ですそれ」
女「とにもかくにも、まずは記憶を取り戻してからだろうが」
男「それは、そうかも知れませんけれど……」

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:35:12.37 ID:+f4lxBXV0
女「妹さんのほかには?何か思い出さねえか?」
男「えーっと……」
妹『もう、本当におにいは優しいね。
  おにいみたいな彼氏が居る彼女さんがうらやましいなぁ』
男「……僕には彼女が居るみたいですね」
女「そおい!」ゲシッ
男「あいたあっ!?何で蹴るんですか!?」
女「料理の支度をしてくれる妹が居て、その上彼女まで居るリア充に天誅!」
男「リア充って……」
女「お前絶対自分の都合のいいように記憶改ざんしてるね。
  だってそんな都合のいい人生あるわけねえもん」
男「そ、そこまで言われると自信無くなってきました……」
女「もうお前帰れよ。お前の居場所はここにはねえよ」ゲシゲシ
男「帰れたら帰ってますって!いたっ!痛いから蹴るのやめて!」

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:38:22.54 ID:+f4lxBXV0
女「なんかもうだるくなってきたわ。お前と話すのやめてい?」
男「ひど!明らかに態度変えるのやめましょうよ〜」
女「話しかけんなリア充がうつる」
男「い、いいじゃないですか!一緒に充実しましょうよ!」
女「お前ぜってえ妹さんと彼女さんとの痴情のもつれで死ぬよな」
男「そ、そんなことありませんって!ないですって!」
女「誠ってよんでいい?」
男「いやです!何だかわからないけど最高に嫌です!」

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:41:04.63 ID:+f4lxBXV0
男「でも真剣にここから出る方法も探さなくっちゃですよね……」
女「探して見つかるかどうかは置いといて、
  これ以上リア充自慢を聞かされなくて済むならそっちに話題を移すこともやぶさかではないな」
男「ひ、ひどい……それで、僕ちょっと山の頂上のほうに登ってみようと思うんですけど」
女「さっき何もねえって言ったじゃん」
男「んーでもまあ、自分の眼でも見て確かめたいので」
女「はーほーふーん、流石はリア充様。
  私みてえな非リアの言うことは信用できないってわけだ」
男「本当にひどいな……違いますって……」
女「ま、好きにしなよ。私はずっとここにいるから一人で回ってきな。そのまま帰ってこなくてもいいよ」
男「またそんな……」
女「あと、もうひとつだけ」
女「妹さんや彼女さんにもう一度会いたいのなら、麓の川だけには近づくなよ」
男「川?……に何か、あるんですか?」
女「うるせえ、私が言うのはこんだけだ。さっさといっちまえ」
男「……じゃあ、行ってきます」サク……

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:43:15.80 ID:+f4lxBXV0
男「本当に、何もないな」サクサク
男「砂利で滑って転ばないように気をつけないと」サクサク
男「空は曇っているし、浅く霧も出ているから、
  見通しも最初の印象より良くはないんだな……」サクサク
男「ん」サク
老人「やあ」
男「あ、こ、こんにちわ……」
老人「君のような若い子もここにはいるんだね」
男「あ、えっと、僕は今さっき来たばかりなんです」
老人「そうか……うん」
男「あの、お爺さんは、ここがどこだかわかるのですか?」
老人「なんとなくね。君は?」
男「僕は記憶喪失で、自分の事もよくわかんなくって……はは、おかしいですよね」
老人「そうか、うん。そういうことも、あるのかもしれないね」
男「……?」

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:45:42.45 ID:+f4lxBXV0
老人「ここがどこかは、きっと追々わかるだろう。
   自分の事と一緒に焦らずにゆっくり考えたまえ」
男「……はぁ」
老人「では、私はもう行かなくては」サク
男「どこにですか?」
老人「あそこに見える川を渡るのさ。きっと、そういうことだ」
男「川……でも、女さんは……
  あー、いや、ここにずっといるって言う女性は、川は渡ってはいけないと……」
老人「ここにずっといる人もいるのか……いや、そういうこともあるのかな……
   でも、私はこれがあるから大丈夫。心配してくれてありがとう」チャリ
男「これは……お金?日本円ですか?」
老人「そう。私の家族が持たせてくれた清いお金だよ」ニコニコ
男「……あの?」
老人「では、私はこれで。君はもう少しここにいた方が良い。
   さっき言っていた女性の言ったとおりに、川には近づかずにね」サクサク
男「……えとあの……では」
老人「うん、さようなら」サクサク……

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:48:14.02 ID:+f4lxBXV0
男「感じの良い、上品なご老人だったな」サクサク
男「僕の両親も、生きていたらあんな感じだったのだろうか」サクサク
男「……そうか、僕には両親が、いなかったのか」サクサク
男「だから、妹と二人暮らしだったんだな」サクサク
男「女さんは、これでもリア充って言って蹴るのかな」サクサク
男「いや、これだと、不幸自慢うっぜえ!とか言って蹴られそうだな……はは」サクサク
男「ん」サク
少女「……」
男「こんにちわ」
少女「……」ペコ

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:50:34.16 ID:+f4lxBXV0
男「あの、ちょっとお話、いいかな」
少女「……?」
男「あー、えと、僕は男って呼ばれてます。
  変なナンパとかじゃないから警戒しないでくれるとうれしいんだけど……」
少女「……こんなところまできて、ナンパなんて、無いと思いますけれど」
男「! そ、それもそう……なのかな?
  あーいや、実は僕記憶喪失で、ここがどこだかもわからないんだよねえ……はは」
少女「……」
男「え、えと、君は、どうやってここに来たのか覚えてる?」
少女「……言いたく、ありません」
男「そ、そっか……ならいいや、仕方ないかな……はは」

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:52:45.63 ID:+f4lxBXV0
少女「……男さんは」
男「え、な、なに……かな?」
少女「男さんは良く笑うのですね」
男「そ、そうかな。
  ある人にはへらへらしてんなって怒られちゃったんだけれど」
少女「……いいえ。笑ってた方がいいです、きっと」
少女「男さんみたいな笑顔に出会っていたら、
   私ももっと違ったのかも、しれない、です、ね……」ギュッ
男「……えと」
少女「……少女、です。少しの間で良ければ、お話付き合わせてください」
男「あ、えと。あ、ありがとう」
少女「……いえ」

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:55:25.15 ID:+f4lxBXV0
少女「……」
男「あー、そうだな……少女ちゃんは、いま何年生?」
少女「中学三年生でした」
男「中三か。僕にも妹が居てね、ちょうど同じくらいかな」
少女「妹さん……ですか」
男「正確には高校一年生なんだだけれどね。
  素直だけどちょっと生意気盛りで、明るい子だったよ」
少女「それは、いいですね。きっと男さんがいいお兄さんだったからですよ」
男「そうかな……って言ってもよく覚えていないんだけどね」
少女「私は一人っ子だったから、兄弟って憧れてました」
男「んー、そんなに良い事ばっかりでもないんだけれどね」
少女「でも、悪い事ばかりでもないでしょう?」
男「……それは」
少女「一人ぼっちじゃあ、なかったでしょう?」

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 17:57:55.83 ID:+f4lxBXV0
男「少女ちゃんは……」
少女「……こんなところまで来てせっかく男さんみたいな人に会えたのに、
   こんなに辛気臭い話をしてももったいないですよね」
少女「何か楽しい話……そうだ、男さんの妹さんの話、もっと聞かせてください」
男「う、うん。いいよ、がんばって思い出してみる。えーと、ね……」
少女「妹さん、何か趣味とか無かったのですか?」
男「あー、妹はね、部活で陸上をしていたっけな。一番道具が安くつきそうって言って。
  最悪シューズさえあれば走れるからって」
少女「へぇ……スポーツ少女だったのですね」
男「お転婆だったのかもね。んで、次の大会でレギュラーがとれるかもしれないって、
  朝から張り切ってたのは覚えてる」
少女「それで、妹さんはレギュラーとれたのですか?」
男「それは……ん、どうなんだろう」
少女「?」
男「ごめん、覚えていないみたいだ……いや、もしかしたら知らないのかもしれない」
男「結果を聞く前に……ここに来たのかも……」

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 18:00:26.38 ID:+f4lxBXV0
少女「……そうですか」
男「ごめんね、あんまり盛り上がらなくって」
少女「いいえ、そんなことありません。
   最後に男さんと話せて楽しかったです。良かったです」ギュゥ
男「……左手、どうかしたの?」
少女「え?」
男「あ、いや……さっきからひどく手首を握っているから……どうしたのかな、と」
少女「……いいえ、なんでも、ありません」ギュッ
少女「……私、そろそろ、行きますね」サク
男「……君も、川に向かうの?」
少女「そうですね……私は、渡れないと思いますけれど」
男「じゃあ、また会えるかな?」
少女「それは……どうでしょうね……」
男「……じゃあ、最後に、一つだけ」クルリ
少女「……?」

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 18:04:12.97 ID:+f4lxBXV0
男「ふぉい!ひぇんにゃかお〜」ばあ!
少女「ぶっ!?」
少女「あはっ!あはははははっ!
   おっ、男さっ!?何をとつぜっひゃはっあっはははは!!」ケラケラ
男「いやあ、最後に少女ちゃんの笑った顔が見たいと思ってね……
  でも、体張るのはやっぱり恥ずかしいものだね」かああ
少女「はは……あーもう、突然ひどいです……あーお腹痛い……あっはは」
男「うん、やっぱり、笑うと可愛いね。
  少女ちゃんは、笑っていた方がいいよ、絶対に」
少女「男さん……」
少女「ありがとうございます……やっぱり私、男さんに会えてよかった」ニコッ
男「僕も、君に会えてよかったよ、少女ちゃん」

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 18:07:40.43 ID:+f4lxBXV0
男「少女ちゃんも、麓に向かって歩いて行った」サクサク
男「少女ちゃんの手首にあったのは、きっとリストカットの痕だ」サクサク
男「あんなに良い子なのに……
  少女ちゃんにこれからいっぱい、いっぱい笑っていられるような幸せが、
  待っていればいいのだけれど……」サクサク
男「ん」サク
女「……よう、どうだった?」
男「……あれ?僕、頂上に向かって登っていたはずなんですけれど」
女「だから言ったじゃん。ここも頂上も変わんねえって」
男「いや、だから頂上に……ええ?」
女「同じような景色と霧のせいで方向感覚が狂っちまったとでも思っとけ。
  考えても仕方のねえ事だらけだよ、ここは」
男「うう〜ん……でも……おっかしいなあ……あ、そうだ」
男「ここをですね、老人と女の子が通りませんでしたか?」
男「僕が迷ったってことは彼らも迷っているかも……」
女「……いいや、通ってねえよ。ここに来たのはお前だけだ」
男「あれ……う〜ん、まあ、それならそれでいいんですけれど……」

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 18:10:41.79 ID:+f4lxBXV0
女「老人と女の子、ね。会ったのか?」
男「ええ、会って少し話をさせてもらったのですけれど」
男「二人とも、川に向かって降りて行きました。
  お爺さんはお金を持って川を渡るって言っていて、
  女の子は、きっと自分は川を渡れないだろうと……それでも川に向かって行きました」
女「ふぅん……」
女「まあ、その人たちは多分、お前みたいに迷ったりはしないよ。
  必ず川に辿りつくだろうさ」
男「なんで、そう、言いきれるんですか?
  あの川は一体、なんなのですか?」
女「まあ大体の見当はついてるが、それは私の口からは言うことではないよ」
女「それに、今の私では、麓の川には辿りつけないと思うよ。
  今はそこそこ調子がいいみたいだからね」
男「……よく、分かりません」
女「ま、その前にお前は自分の事を思い出さなきゃな」
男「……はい」

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 18:12:56.21 ID:+f4lxBXV0
男「そうだ。女の子……少女ちゃんや、お爺さんとお話していくつか思い出した事があるんです」
女「へえ、よかったじゃんか」
男「ですから、女さんとももう少しお話すればもっと記憶が戻るかも」
女「……まーたリア充の自慢を聞かなきゃなんねえのか?」
男「いえ、出来れば次は、女さんのお話を聞かせていただけないかと」
女「……私の、話?」
男「ええ、何でもいいんです。ここでの出来事でも、なんでも」
女「そうくるか……でも、私なんてこっちでもあっちでも、特に何にもねえんだが」
男「非リア話でもいいんで!」
女「てめえ調子乗ってんじゃねえぞ」ゲシッ
男「ああっ!あんまり時間が経ってないのに何か懐かし、いたたっ!」

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 18:15:13.11 ID:+f4lxBXV0
女「仕方ねえな……んじゃあ、今まで出会った中で一番怖い人間の話をしてやろう」
男「一番、怖い人……ですか?」
女「そう、そいつは何を隠そう、人殺しの罪人だったのさ……」
女『よう』
罪『ああ?てめえ何者だ?化け物か?ははは!』
女『ああ、化け物かもな。ならお前だってそうだろう?』
罪『そうさ、てめえみてえな女よか俺のほうがよっぽど化け物だ!
  なんせ俺ぁ人殺しだからな!ぐわははは!』
女『……ふうん、そ』
罪『何だ、驚かねえな、つまらねえ』
女『こんなところだ。何が現れたって驚いちゃいられないでしょうよ』
罪『違いねえ!ぐわははは!』
女『うっはははは!』

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 18:16:32.24 ID:/5M1xy+nO
くそっ…蹴られてぇ…!!

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/18(日) 18:20:55.00 ID:+f4lxBXV0
男「あの〜……」
女「そして罪人は……ん、なに?」
男「怖い話という割には、当時の女さん自身があまり怖がっていないような」
女「何言ってんのよ、こんな華奢な美女をつかまえて。
  私が内心どんだけ恐れおののいていたかもしらないでさ」
男「あ〜いや、そういうことでしたら……
  話の腰を折って申し訳ない、続けてください」
女「んじゃ、続けるよ。そうして罪人は、こう続けたのさ……」
罪人『ところでよ、俺ァ出来る事なら試してえと思ってた事が一つあるんだな』
女『ふうん、興味ないけど、聞いてあげようか』
罪人『ありがてえ、それはな……
   こっちの世界でも、人を殺してみるってえ事さ』
女『……それは、面白そうだね』
罪人『そうだろう、そうだろう。で、お前はどうなると、思う?』ニィ