2chまとめサイトモバイル
僧侶「ひのきのぼう……?」
Part8


294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 23:57:38.08 ID:JOtdaiZe0
――
【北の城>地下牢】
衛兵「ここでしばらく大人しくしてろ!」
ガシャン
僧侶「あいたた」
僧侶(……うーん。僕はオーブなんて盗んでないんだけどな)
僧侶(でもそれより、いいことを知ったぞ)
僧侶(【東の村】の村長さんが寝言で言ってたオーブは、多分これのことだ)
僧侶(【東の村】から少し西へ進んだ位置にほこらがあって、そこにオーブを持っていくんだ)
僧侶(そうしたら、魔の城へ続く道が開ける……多分、何かが起こるんだ)
僧侶(魔王城は山と海に囲まれてるから、多分この方法で乗り込めるんだ)
僧侶(勇者に会ったらすぐに伝えないと)
僧侶(……ここを出られたら、だけど。……いつ出してもらえるのかな……)
僧侶(……)
僧侶「」 Zzz…

295 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 23:58:14.60 ID:JOtdaiZe0
――
兵士B「ふい〜。オーブが見つかって良かった良かった」
兵士A「なあ兄弟」
兵士A「あのとき、尋問してた男の方の服は、まだ改めてなかったよな」
兵士B「そうだったか? まぁそんなこと覚えちゃいないが」
兵士A「オーブが見つかって俺も動転していたが、よくよく考えてみると」
兵士A「あの男がガキの方に無理矢理オーブを押し付けたってのも、普通に在り得るんじゃないか」
兵士B「さぁ、俺が知るもんか。オーブは見つかったんだ、あとは野となれ山となれだ」
兵士A「とはいっても、判決が下される際に、参考人として呼び出されるかもしれんぞ」
兵士B「ええ、面倒くさいなぁ」
兵士A「……ま。その時は俺たちが見たままのことを伝えればいい」
兵士A「『あの僧侶のポケットからオーブが出てきた』ってな」
兵士B「僧侶?」
兵士A「ああ。あいつは例の『ひのきのぼう』だよ。勇者様にリストラされた奴」
兵士A「身の程知らずに魔王討伐についていきやがって、俺は前から気に食わなかったんだ――」

296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 23:59:09.52 ID:5PcNNguw0
魔王はこの世界ゴールさせちゃってもいいよもう

297 : 【九電 73.8 %】 :2012/11/26(月) 23:59:15.13 ID:s2WOardC0
せちがらい世の中

301 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:00:06.68 ID:UW5dTRYB0
――
 
ガチャガチャ   ガシャン
衛兵「おい、起きろ」
僧侶「Zzz」
衛兵「……こいつ、よくこんな固い床で眠っていられるな……おい、起きろ!」
僧侶「ん……ふぁい?」
衛兵「沙汰が決まった。牢から出ろ」
僧侶「ふああ……ふぁい……」
衛兵「のんきなものだな。国宝窃取は大罪なのを分かっているのか?」
衛兵「場合によっては、明日の日の目はもう拝めないかもしれんのだぞ」
僧侶「そうは言っても、僕は盗んでないですし……」
衛兵「まぁいい。早く立て、これからお前を王の間に連れていく」
僧侶「王の間……?」
衛兵「そうだ。盗品が盗品だからな。国王みずから直々に判決を下すとのお達しだ――」

302 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:00:13.28 ID:NCp5f3r80
うあああああああやめろおおおおお

304 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:00:36.78 ID:6Tz4x5X80
魔王、構わん。この世界を滅ぼせ

306 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:01:41.92 ID:UW5dTRYB0
【北の城>王の間】
 ――ザッ!
衛兵「ただいま容疑の者をお連れしました!」
国王「よい。下がれ」
衛兵「はっ」
僧侶「……王様、お久しぶりです。お腰の具合はいかがですか」
大臣「し、痴れ者め! 貴様のようなみすぼらしい小僧に、王は出会ってなど――」
国王「よい。声を荒げるでない」
大臣「ぬ、ぬう……しかし……」
国王「……さて。余は確かに、その不思議な眼差しには見覚えがある。どこであったか……」
僧侶「はい。僕は以前、勇者のパーティーにいました」
僧侶「そのとき一度だけ、王様に謁見したことがあります」
国王「おおそうか、あの時の少年か。勇者の影にはあったが、余はその目をよく覚えているぞ」
僧侶「ありがとうございます」
国王「しかし……それがこの度はなにゆえ、実に憂うべき所業に走ったのか……」

310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:02:15.07 ID:6XOzluBV0
僧侶幸せになってくれよ…

311 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:02:15.40 ID:UW5dTRYB0
僧侶「僕はオーブを盗んではいません。本当です」
国王「ふむ。だがその言葉だけを鵜呑みにしては、この場を設けた意味はなかろう」
国王「では衛兵」
衛兵「はっ。ご報告いたします」
衛兵「この僧侶は今からひと月ほど前、賢者の村にて勇者一行から離脱した模様」
衛兵「その後ここ王都に帰郷し、城下町の住まいで数日過ごしていたとのことですが」
衛兵「出自が孤児であったこともあり、生活は非常に困窮していたものと思われます」
衛兵「ちまたでは『ひのきのぼう』と称せられるほど、貧しい日々を送っていたとか」
大臣「ぷっ」
兵士「くくっ」
僧侶「……」
衛兵「以上のことから、国宝を横流しし、生活の安定を図ろうとした可能性は十分考えられます」
国王「私見は交えなくてよい」
衛兵「し、失礼致しました!」
国王「続けよ」

312 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:02:19.61 ID:tA9QuMLr0
お、国王はいいひとそうだぞ

315 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:02:32.52 ID:iaOODT0Y0
王様はいい人っぽいな

318 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:03:01.91 ID:UW5dTRYB0
衛兵「はっ。オーブが戻った今、もはや内密にする必要もありませんが――」
衛兵「今から七日前、王宮に忍び込んだ何者かに、オーブを奪われる事件が発生しました」
衛兵「犯人と思しき人物は、当日中に城下町に雲隠れしたとの情報を受け」
衛兵「ただちに多数の城兵を捜索に送り、昨日までの連日、昼夜ともに網を敷いていたのですが」
衛兵「ようやく昨晩、巡回中の兵士が、夜間に町を出歩いていた怪しき二人を捕らえました」
衛兵「うち一名はこの後、この場に呼ぶ予定ですが――」
衛兵「先に『ポケットにオーブを隠し持っていた』とされる人物から引き立てた次第です」
国王「ふむ……そこまででよい。あとは余が直に問いただそう」
国王「僧侶よ。そなたは何故、夜中に城下町を出歩いていたのだ?」
僧侶「はい。夜中に、外から騒ぎ声が聞こえたからです」
僧侶「出てみると、男の人と兵士の人たちが言い争いをしていたので、止めに入りました」
僧侶「けんかはつまらないから、やめよう、と」
国王「そなたは、夜間の出入り禁止令を知らなかったのか?」
僧侶「はい。ここ数日はずっと小屋の周りで過ごしていたので、あまり町中には入らなくて――」
僧侶「だからそういうものが出ていたなんて、今はじめて知りました」

320 : 【九電 73.8 %】 :2012/11/27(火) 00:03:47.12 ID:2NGELKxy0
王様さすがっす

321 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:04:10.67 ID:JcECeVI40
面白いぞ
支援

322 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:04:12.31 ID:6QqBxmOI0
だてに年とってないな

323 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:04:31.66 ID:UW5dTRYB0
国王「懐にオーブを忍ばせていたという話は?」
僧侶「あれは、言い争いをしていた男の人が、僕のポケットに入れたんです」
僧侶「でもそのとき明かりも無かったので、兵士の人たちには勘違いされやすかったと思います」
国王「ふむ……あい分かった」
国王「実はな。余がそなたに問答をかけたのは、その眼に虚実をはかりたかったためじゃ」
国王「そなたの眼は、嘘は言っておらんように見える……この限りでは、余は無罪を言い渡すところだ」
僧侶「本当ですか?」
国王「だが、今回は極めて有力な証人がおってな。その判断にて、判決を下そうと思う」
僧侶「証人?」
国王「そうじゃ。オーブが奪われた当日、偶然にも賊の姿を目撃した者が城内にいた」
国王「我が妃じゃ。では、兵士よ」
兵士「はっ。王妃様のおなーりぃー!」
 
侍女「さ、王妃様、足元にお気をつけ下さいませ」
王妃「……」

324 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:04:44.65 ID:enfpJzWi0
唯一マトモなのが王様と勇者と俺か

332 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:05:53.21 ID:IDYDfpNT0
>>324
お前何者だよ

333 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:05:58.17 ID:bDAy0wX80
クズ王妃きたぞー

338 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:06:52.58 ID:6QqBxmOI0
ままままままだ王妃がクズだって決まったわけじゃないし!

339 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:07:15.92 ID:/P/EBFpX0
クズ王妃死ねええええええええええええええええええ

340 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:07:19.82 ID:yCBqjWY+0
この王様の目にかなった人なんだ
きっと素晴らしい人のはず

342 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:07:31.65 ID:UW5dTRYB0
僧侶(王妃様だ。初めて見た。きれいな人だなぁ)
国王「王妃よ。顔を上げよ」
王妃「……」
国王「ふむ。宮中の者は知ってのとおり、王妃は当日に目にした賊の姿をたいそう怖がってな」
国王「また城内を荒らされるのではないかと、余りの恐怖にすっかり塞ぎこんでしまった」
国王「だが、そんな日々に終止符を打つためにも、王妃よ。ここは協力してくれ」
王妃「……わらわは、賊の顔など見とうない」
国王「まだ賊だと決まったわけではない。決めるのはそちじゃ、頼む」
王妃「……」
僧侶「……王妃様」
王妃「!」
僧侶「怖いときは、どくけしそうを少しダシた温かいスープを、ゆっくり飲むといいですよ」
僧侶「体内から『怖い』という毒素が抜け出て、そのうえ身体も芯から温まるんです」
王妃「…………」
王妃は ゆっくりと かおを あげた! ▼

345 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:08:21.54 ID:UW5dTRYB0
王妃「!!」
王妃「おお、この童じゃ!!」
国王「!?」
僧侶「えっ?」
王妃「間違いないわ、この童が国宝を奪ったのじゃ!」
僧侶「僕は盗んだりしません」
王妃「この薄汚い童が、あの時わらわの目の前を横切ったのじゃ! 忘れもせんわ!」
国王「王妃よ、間違いないのか?」
王妃「おお、我が夫よ、なにゆえ賊を野放しにおくのです! 早う、早う地下牢へ!」
王妃「おお恐ろしや、あの時の賊がなにゆえ王の間に……正気の沙汰では……ああ……」 ガクッ
侍女「お、王妃様!!」
国王「ど、導師を呼べ! 王妃は丁重に連れていくのだ!」
兵士「は、はっ!!」 ドタバタ
大臣「は、早くその罪人を取り押さえろ!」
僧侶「……どうして……」

348 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:08:45.20 ID:5uVfMh+40
うわあああああ

350 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:08:57.20 ID:NCp5f3r80
あああっわわああああああああああああああああっっわっわああああああああ

351 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:09:00.51 ID:tA9QuMLr0
やっぱりか、くそっ

352 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:09:22.04 ID:1xbep2zb0
クズがああ!

353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:09:33.83 ID:UW5dTRYB0
国王「……どうやら余の人を見る眼も、年をとるごとに曇ってきたらしい」
国王「先の一連の証言で、事件は解決したものとする」
僧侶「王様、僕は」
大臣「控えよ、盗っ人風情が!」
国王「……国宝を盗んだことは、大罪である」
国王「だがこの罪人はまだ成人しておらず、身寄りもない貧しき暮らしをしておった」
国王「また少ない間ながら、勇者を支え、打倒魔王に貢献したことも考慮したい」
国王「従って極刑は避ける代わりに、この城下より永久追放の刑とする」
僧侶「……王様! 一つだけ申し上げたいことが」
大臣「黙れ! 王の寛容極まる判決に、不服があるというのか!」
僧侶「そうじゃありません。僕は追放で構いません、でもたった一つだけ」
衛兵「この!」 ギリリ
国王「よい。放してやれ」
国王「そこまで言うならば、最後に聞いておこう」
僧侶「いたた……はい。ありがとうございます」

360 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:10:07.89 ID:UW5dTRYB0
僧侶「もし勇者が一度この町に戻ってきたなら、そのオーブを渡してあげて下さい」
僧侶「そしてそのまま【東の村】に行くように伝えてください」
大臣「貴様ァ言いたいことが二つになってるぞ!」
僧侶「それだけです。どうかお願いします」
国王「ほう……なるほど。【東の村】か……」
国王「しかと聞き届けた。勇者が戻った際は、考えておこう」
僧侶「ありがとうございます」
国王「……では……」
衛兵「はっ。おい、立て! 行くぞ!」
 
大臣「……よろしいのですか、あんな子供の戯れ言を真に受けて」
国王「ふむ。あの話には多少心当たりがあってな」
大臣「心当たり?」
国王「確かオーブにまつわる言い伝えがあったはずだ……早急に文献を調べよ」
大臣「ははっ」

367 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:11:15.52 ID:UW5dTRYB0
――
【城下町】
衛兵A「さぁ、自分の住まいまで歩け」
衛兵B「荷の整理だけは許されている。もっとも、内容は改めさせてもらうがな」
僧侶「ありがとうございます。あ、いたた」
衛兵A「きびきび歩け!」
 
町民A「あ、おい見ろ、『ひのきのぼう』だ!」
町民B「なんだ? アイツついに何かやらかしたのか?」
町民C「ねぇ、もしかして、最近ウワサになってた国宝ドロボーの犯人って」
町民A「そういえばこの間の晩、アイツが連れてかれるのを見たって奴がいたぞ」
町民B「うへえ、頭がおかしいたぁ思ってたが、またとんでもねぇコトやらかしたもんだな」
町民C「怖いわねぇ。捕まって良かったわ」
町民A「あれでも元は勇者のパーティーにいたんだろ。勇者にとっちゃとんだ恥さらしだな」
町民B「まったく、この町の恥だ!」

379 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:13:28.52 ID:UW5dTRYB0
僧侶「――ここです」
衛兵A「こんなところに小屋があったのか。なるほど、家主に似て貧しさが滲み出ているな」
僧侶「僕は、自分が特別貧しいだなんて、思ったことはありませんよ」
衛兵A「いいから荷造りをしろ。あまり時間をかけるなよ」
僧侶「はい」 ガチャ…
 
衛兵A「……ふう。あの小僧も不憫なもんだな」ボソ
衛兵B「何がだ?」ボソ
衛兵A「例の件の判決だよ。王妃様は、あの通り怖がりだろ?」
衛兵A「誰でもいいから、とっとと犯人を決めてしまいたかったんだろうぜ」
衛兵A「あそこで違うと言ってしまえば、まだ犯人が捕まってないってことになるからな」
衛兵B「ははぁなるほど。王妃様の性格じゃ、在り得る話だな」
衛兵A「容疑をかけられた者が二人いるって話も、果たして耳に届いていたかどうか」
衛兵B「でもって普段は頼もしい国王様も、王妃様にはトコトン弱いからな」
衛兵A「ああ。あの小僧が本当は無実だったら、トコトンついてない話さ」

383 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 00:14:56.16 ID:UW5dTRYB0
――
ガチャ
僧侶「支度が終わりました」
衛兵A「ん、早いな。どれ、荷を確認させろ」
衛兵A「なになに。装備品はかわのぼうしに……ふっ、代名詞のひのきのぼうか」
衛兵B「あとは少ない食糧に、全財産400ゴールド足らず……えっ? 終わりか?」
衛兵A「おい、本当にこれだけなんだろうな」
僧侶「はい」
衛兵B「まぁこんな有り様でもなきゃ、国宝を奪おうだなんて思わんだろうさ」
僧侶「僕はオーブを盗んではいません」
衛兵A「黙れ、頭を上げろ」
僧侶「はい?」
衛兵Aは 僧侶に 魔法の烙印を きざみつけた! ▼
僧侶「いたたオデコが……」
衛兵A「追放者の証だ。それがある限り、この町へは永久に門前払いというわけだ」