Part22
814:
1:2012/08/23 00:20:02.17 ID:q5pwSgPAO
魔王「――お」
国王「?」
魔王「明るくなるにつれて、色んな気配がしてきたな」
国王「分かるのか…?魔力封じられているのに」
魔王「こんなもん魔力を使うまででもない。生まれつきだ」
国王「……」
魔王「ふん。さて、おれを助けにきてくれる者はいるのかどうか」
魔王「それに誰が勝者となるのか――楽しみだな」ニィ
国王「」ゾク
魔王「あ、いてっ。頬が腫れてるんだった」
国王「………………」
815:
1:2012/08/23 00:25:31.83 ID:q5pwSgPAO
――城の前
僧侶「夜明けですね……」
剣士「長い戦いになるぞ」
偵察「たたたた、大変だーーっ!!」
剣士「なんだどうした」
偵察「あ、あああああっちの向こうから、向こうから!」
マスター「落ち着け。向こうからなんだって?」
偵察「魔物が!戦の恰好をした魔物達が近づいてくる!」
マスター「」
剣士「」
僧侶「」
816:
1:2012/08/23 00:30:33.13 ID:q5pwSgPAO
――城の前付近、魔物側
ザッザッ
側近「?何故人間が」
ミノタウロス「あちらさんも同じ事情なんじゃ?」
魔大臣「なるほど。国王が云々とか言っていたな」
ミノタウロス「大臣ってやつは凄いなまったく。馬鹿か天才か」
側近「むぅ、上手く手を組めないものか。さすがに二つと争うのは厳しい」
魔大臣「それはあちらさんの出方によるだろうな」
トロール「脅しで攻撃すル?」
魔大臣「しない。静観だ」
ミノタウロス「果たして人間側に静観する余裕はあるかどうか…」
817:
1:2012/08/23 00:33:57.40 ID:q5pwSgPAO
――城内、どこか
大臣「始まるぞ!私の記念すべき日が!」
大臣「魔物も人間も入り乱れて争うがいい!」
大臣「お前達の王は私だ!」
大臣「踊れ!歌え!そして手のひらで転がり続けていればいい!」
818:
1:2012/08/23 00:34:34.07 ID:q5pwSgPAO
そして日が昇った。
824:
1:2012/08/23 21:11:58.99 ID:q5pwSgPAO
――城門前
ヒュオオオオ…
側近(城の護りは固い。恐らく我々が飛んでも打ち落とされる)
側近(なんとかあの護りを破れば中へ入れるんだろうが)
側近(そこまでに被害は出したくないな)
側近(しかし、目下問題は)
側近(百、二百メートルそばに人間がいるってこれどんな状況だ)
トロール「近いなア」
ミノタウロス「おかげで硬直状態が続いているんだけどな」
魔大臣「これじゃ日が暮れてしまうぞ」
ミノタウロス「昇ったばかりなのに?」
825:
1:2012/08/23 21:14:21.83 ID:q5pwSgPAO
ヒュオオオオ…
剣士(ある意味、今日一日が全てを決めるだろう)
剣士(ぐずぐずしてられない。ただ――警備が固すぎる)
剣士(ここで兵を減らすのは避けたいところだ)
剣士(しかし……)
僧侶「こ、こんな近くにたくさん魔物がいますよ…」
マスター「妙な緊張感があるな…」
剣士「ああもうどうすれば!!」
826:
1:2012/08/23 21:18:12.72 ID:q5pwSgPAO
人間と魔物は相容れない。
側近「……」
だが、協力を申し出たいし、協力をしてほしい。
剣士「……」
少なくとも自分たちだけで勝てるような相手ではない。
魔大臣「……」
大臣派には人間と魔物が入り交じっていると聞く。
僧侶「……」
共に戦った方がよいに決まっている。
ミノタウロス「……」
だが、長年の確執が交渉を邪魔していた。
マスター「……」
827:
1:2012/08/23 21:27:36.54 ID:q5pwSgPAO
ふと、剣士と側近両者は後ろのほうが騒がしくなったことに気づいた。
緊張感を持てと剣士が怒鳴る。後ろまで聞こるたかはともかく。
同じように側近も怒鳴ろうとしたが、声が出なかった。
おぞましいほどの魔力を感じたからだ。
魔大臣「な、なんだ――この魔力は」
ミノタウロス「でかすぎる!なにが来るんだよ!?」
トロール「……」
側近「……鳩、誰がいるか、分かるか」
鳩「クルッポー」バサッ
側近「そうか……来たのか」
828:
1:2012/08/23 21:31:33.42 ID:q5pwSgPAO
ざわざわとした声は前へと移動してくる。
人間と魔物の間にできた道を歩いてきているようだ。
ミノタウロス「攻撃は?」
側近「やめろ。絶対にだ!」
ミノタウロス「あ、ああ……」
人影が見える。
端がボロボロになったローブ。
短髪。
そして、背には大きな翼。
魔大臣「……混血か?」
側近「鷲族唯一の生き残りだ」
魔大臣「なっ!?」
側近「安心しろ、あいつは我々の味方となってくれる」
側近(目的は――やはり魔王さまか?)
829:
1:2012/08/23 21:34:23.45 ID:q5pwSgPAO
剣士「なんだあれ……混血か?」
マスター「みたいだな。しかし何故ここに…」
人間兵「攻撃体制は整っております!」
剣士「まだ攻撃をするな。このまま様子見だ」
人間兵「はっ」
僧侶「……」
剣士「僧侶?」
僧侶「あれ……もしかして!」ダッ
剣士「あっ、僧侶!?」ダッ
マスター「…知り合いか?いやまさかな…」
830:
1:2012/08/23 21:54:24.36 ID:q5pwSgPAO
……
側近「やはり小娘か」バサッ
魔法使い「側近さん」
側近「なんだその有り様は…何があった?」
魔法使い「なんでもありません」
側近「…見たところ傷は治ってるようだから追求はしないが」
魔法使い「助かります。ところで魔王は、あの中ですか」
側近「そうだ」
ダダダダッ
側近「!?」
魔法使い「……僧侶」
僧侶「勇者パーティの時のか」
魔法使い「はい。……こんな姿をみせてしまうのか」
側近「……」
831:
1:2012/08/23 21:59:48.14 ID:q5pwSgPAO
僧侶「はっ、はぁっ……きゃあっ!?」ガンッ
魔法使いまであと僅か、というところで僧侶はつまずいた。
そのまま重力に引っ張られ地面とご対面になるところで、ふわりと支えられる。
魔法使い「…こんなとこで怪我を作るなよ」
僧侶「す、すいません…じゃなくて!」
黄色がかかった目、首や手首から生える羽毛、そして翼。
それらを見て、最後に魔法使いの顔を見て僧侶は笑った。
僧侶「魔法使いさん!」ギュッ
魔法使い「私だと…分かるのか?」
僧侶「もちろんですよ!」
832:
1:2012/08/23 22:05:19.38 ID:q5pwSgPAO
魔法使い「僧侶」
僧侶「はい」
魔法使い「私は、混血なんだ」
僧侶「そうみたいですね」
魔法使い「化物だぞ。それでも以前のように話してくれるのか」
僧侶「関係ありません。魔法使いさんは魔法使いさんですから」
魔法使い「…ありがとう」
僧侶「いいえ。――着ているものが汚れていますが、どうしたんですか?」
魔法使い「ちょっと色々ね。僧侶、傷の様子は?」
僧侶「片腕にもだいぶ慣れました。利き手じゃなくて良かったですよ」
魔法使い「そうか。強いな」
僧侶「えへへ」
833:
1:2012/08/23 22:10:57.91 ID:q5pwSgPAO
剣士「……僧侶!」
僧侶がこけ、混血に抱き止められた時に剣士は声を出していた。
剣士「僧侶から手をはな――」
側近「やめんか」
いつのまにか側にきていた鷹の魔物に翼で叩かれた。
剣士「な、なんだ魔物!やるか!?」
側近「おちつけ餓鬼」
剣士「餓鬼…」
側近「よく顔を見ろ。見覚えがあるんじゃないのか?」
剣士「見覚えって――魔法使い!?」
側近「このアホタレ。仲間の顔すら忘れていたのか」
剣士(気づかなくて悪かったけど、なんで魔物に説教されてんだろ)
834:
1:2012/08/23 22:15:23.93 ID:q5pwSgPAO
側近「それに、軽々しく小娘に混血というな。あいつ気にするから」
剣士「小娘?誰が?」
側近「魔法使いのことだが」
剣士「」
側近「そうか、ずっと男として通してきたんだったか」
側近「…本人の口からのほうが良かったか?」
剣士「う、嘘だ……」
側近「?」
剣士「あんなツルペタなやつが女なわけないじゃないかー!!」
直後、剣士の足下が軽く爆発を起こした。
836:
1:2012/08/23 22:42:27.32 ID:q5pwSgPAO
僧侶「ま、魔法使いさん!?」
魔法使い「悪い、つい反応してしまった」
僧侶「何にですか?」タユン
魔法使い「……なんでもないよ」
剣士「お、おらー!魔法使い!なにすんじゃ!」
魔法使い「すまない」
剣士「すまないですんだら憲兵隊いらぬわ!」
側近「そろそろ話を進めないか」
837:
1:2012/08/23 22:54:51.94 ID:q5pwSgPAO
魔物側からは側近、魔大臣。
人間側からは剣士、僧侶。
そして――どちらでもあって、どちらでもない側の魔法使い。
五人が円となり座った。
側近「攻撃は?」
魔法使い「まだのようです。恐らく、兵全体が動いたら攻撃するかと」
剣士「で、どーすんだ?」
魔法使い「僧侶、城について説明してくれないか。魔物は知らないんだ」
僧侶「は、はい」
僧侶が説明を始める。
838:
1:2012/08/23 22:56:14.54 ID:q5pwSgPAO
まず城門を入ると大きな出入り口が。そこをとおると中庭がある。
右にいけば王室と謁見室、左にいけば客間。正面は次の中庭へと。
階は不明だが、五、六階以上はあるはず。
そして地下もある。
魔大臣「正直、人間と組ませた方が早いかもな」
僧侶「でしょうね。複雑ですから」
剣士「……それを連中が納得してくれるかどうか」
魔法使い「納得させるしか、ない」
剣士「……だな」
側近「今は、魔物だから人間だからと言っている場合じゃないからな」
839:
1:2012/08/23 23:04:40.43 ID:q5pwSgPAO
魔法使い「じゃあ、頼んだ。側近さんと剣士が言ってくれ」
剣士「オレの声届くかな」
魔法使い「ん、ちょっと待て――よし。しばらくは大声になる」パァ
側近「こちらは大丈夫だ。じゃあまずは……」
バサリ、と側近は飛び魔王軍を見下ろす。
側近「聞け!」
側近「今、我々は人間と手を組まなければ勝てない!」
ざわざわ。
側近「我らだけでは不十分で――人間だけでも不十分だ!」
側近「一時、力を貸してやってくれ!しばらくは因縁なんかは無しだ!」
……。
側近「嫌なら帰れ。魔王さまに忠誠を誓いたいなら、残れ!!」
ウオオッ――!と魔物が吠えた。
去るものはいなかった。
840:
1:2012/08/23 23:09:03.29 ID:q5pwSgPAO
剣士「さぁ国王軍ども!よく聞け!」
剣士「まず――わりぃ、魔物が攻めてるのは嘘な!」
えええーっとブーイング。
しかし誰かがばらしていたのかそこまで混乱はなかった。
剣士「今から向かうはなんか勘違いした大臣のところだ!」
剣士「そいつに国王さまは捕まった!」
剣士「しかもだ!やつは人間と魔物がごっちゃな軍を作ってるらしい!」
剣士「ならこちらも人間と魔物で行くぞ!」
剣士「倒せ!救え!」
剣士「少しだけでいい、魔物と手を組むんだ!そして、共に戦え!」
剣士「誰も死ぬなよ!以上!」
割れるような歓声。
841:
1:2012/08/23 23:12:53.07 ID:q5pwSgPAO
僧侶「……すごいですね」
魔法使い「ああ」
魔大臣「さすが側近といったところか」
魔法使い「すごくスムーズに行くってわけじゃないが…勝ち目はある」スッ
魔大臣「…どこにいく、混血」
魔法使い「混血は嫌いか?」
魔大臣「……」
魔法使い「殺したいなら全て終わってからにしてくれ」
僧侶「魔法使いさん、どこに!?」
魔法使い「お先にいかせてもらう。僧侶、あなたは危ないから援護に行ってくれ」
僧侶「魔法使いさんだって!」
魔法使いは笑って僧侶の頭を撫でた。
842:
1:2012/08/23 23:21:37.46 ID:q5pwSgPAO
魔法使い「行かなきゃ」
僧侶「……」
魔法使い「道を開ける。そしたらすぐに侵入を開始してくれ」
側近「…お前だけで大丈夫か」バサッ
魔法使い「今の私は、周りを巻き込みかねないから」
側近「……なら、行ってこい」
魔法使い「行ってきます」
魔大臣「混血」
魔法使い「?」
魔大臣「確かに、あまり混血は良く思っていないが――」
魔大臣「別に嫌いなわけじゃない。――それに、おまえのようなやつは好感が持てる」
魔法使い「…そう」
歩き出す。
城門と城壁が騒がしくなった。
侵入者を排除するために。
剣士「魔法使い!」
魔法使い「?」
剣士「帰ったら色々聞かせてく」れ、で魔法が切れたらしい。
一度だけ大きく手をふった。