Part9
346 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:21:42 ID:
cL90GAto
更新します。
347 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:23:09 ID:
cL90GAto
痛いーー。
明らかに致命傷だ。 臓腑は確実にグチャグチャになっているだろうし、こう冷静に思考できるのも後数秒だろう。
僕は、何をしているんだ?
孤独に村で過ごしていればこんな最後は遂げなかった?
僅かに残る思い出に縋りながら、ただただ時に身を任せていれば。
違う。
違うっ!!
魔法使い「まだ、彼らに何一つ返してない」
348 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:24:31 ID:
cL90GAto
暖かな気持ちも、孤独ではない夜も、僕に居場所をくれたみんなに僕は何も返せてはいない。
自分に負けてなんか居られない。 僧侶が悲しむ、戦士が責任を感じる。 それに。
勇者の笑顔が曇っちゃう。
魔法使い「ここは僕の世界なんだろう? 詰まるところ、すべては心一つだ」
幼女「ほう、上出来だ主」
魔法使い「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
幼女「ふむ」
少女の説明の内で説明された禁忌の魔法、原初の三つ。
その内の一つ。
馬鹿げた量の魔力と、それを針の穴を通す程の精密な魔力操作によって発現する魔法。
世界創造の名を冠した極大爆発魔法。
魔法使い「〜〜〜〜〜僕は」
魔法使い「抗わず、されどけして流されず、総てを受け入れるよ」
349 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:24:57 ID:
cL90GAto
手のひらから魔力が溢れる。
宙に小さな黒点が浮かぶ。
成功だ。
黒点は周囲の魔力を吸収し圧縮し、臨界点を超えて、轟音と共にその魔力を爆発させた。
350 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:25:45 ID:
cL90GAto
視界が白む。
何も見えない。
「ママは死んじゃうの?」
「必ずパパが助けてみせる。 愛した人一人救えるなら、喜んでこの命すら捧げよう」
「パパもげんきじゃなきゃ、めー!」
「くそ、くそ、なにが魔法使いだ、結局僕は愛した人一人救えない」
「パパ……」
「パパは、駄目な奴だな」
「そうだ、死んだなら蘇らせればいい。 簡単な事だ、なぜ気づかなかったんだ、あは、あははは」
「パパ、おかおがこわいよ」
351 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:26:48 ID:
cL90GAto
「なぁ娘、そこの魔導書には有効な術はあったか?」
「ないの、でもみて、あたしも魔法できるようになったよ!」
「そうか、その調子で色々な魔法を学べ。 ママを甦らせよう」
「パパ、言いづらいけど、その、死んだ人は蘇ったりは」
「〜〜!」
「きゃあ」
「いいか、良く聞け娘、それは貴様がまだまだ未熟だからそう思うだけだ」
「痛いよ、やめて、打たないでパパ!」
「従僕になれ。 敬虔なる魔術と知的探求心の従僕だ。 大気中の至る所に居る精霊たちの、夕闇に潜む禍々しき者達の、彼岸と此岸を行き来する亡霊達の、魔術という禁忌をそれを知り得る為に人である事を辞めろ、お前は古今東西総ての魔法を修めろ」
「そうしたら……」
「なんだ!」
(優しいパパに戻ってくれますか?)
352 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:32:29 ID:
cL90GAto
「パパ、僕の担当していた魔導書は総て終わったよ」
「随分早いな」
「普通だよ」
「なんだ、その目は、お前は俺を馬鹿にしてるんだろう! ありもしない魔法を追い求めた愚かな男だと嘲笑っているんだろう!」
「違う、そんな事ないよ」
「うるさい! 〜〜!」
「やめて、〜〜〜〜」
「うぐぁっ」
「パパ、だいじょ」
「もう嫌だ、あはは、あははははは、娘ちゃん、パパはママを探しに行ってくるよあは、あははは」
353 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:32:58 ID:
cL90GAto
「パパ、行かないでパパ!」
「僕、一人ぼっちになっちゃうよ……」
「一人ぼっちは、寂しいよパパ……」
「朝だ、あれ? パパ、どこに行ったの? あぁ、僕にお留守番を頼んで旅に出たんだった」
「帰ってきた時には立派な魔法使いになってなきゃ」
魔法使い「僕が忘れたかった記憶……これが、僕の記憶」
少女「お帰り」
気がついたら開いた扉の中で僕は泣きながらうずくまっていた。
354 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:33:19 ID:
cL90GAto
こんなにも魔法に拘りがあったのはこんな過去があったからなんだ。
幼女「後悔、しているか? 我が主」
魔法使い「胸にぽっかりと穴が空いたみたいだ」
少女「……」
あぁ、少し前ならきっと僕の心は砕けていたかもしれない。
魔法使い「少女、君のいいたい事は何となく理解したよ」
幼女「魂の扉は開かれた。 存分に魔力を振るわれよ」
魔法使い「さぁ、戻ろう、勇者達にも報告しなきゃ」
今は大丈夫だ。 一人じゃないから。
霧はもうなかった。
355 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 00:34:21 ID:
cL90GAto
今回の更新は以上です。
356 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 01:29:54 ID:jwsoi0pk
乙
357 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 08:42:07 ID:RmFd5ncc
ダディェ…
358 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 09:50:35 ID:9veDEiXc
少年が亡くなった時
魔女もダディみたいになりそう
359 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 20:54:28 ID:
cL90GAto
ダディじゃなくて、パパです。
ほんの少しの遠慮とたっぷりの愛情をこめて呼んで下さい。
更新します。
360 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 20:56:01 ID:
cL90GAto
重い。
唇に何か柔らかい物が当たってる?
魔法使い「んぅ……ん!?」
少女「やぁ、おはよう」
あーそう言えばそうだった。
魔法使い「〜」
怪我をさせないように注意しつつ爆発の呪文をつかう。
少女「うおっ!?」
吹き飛ぶ少女、衝撃に震える地下室。
魔法使い「威力が上がった?」
少女「げほ、げほ。 やれやれ、乙女の唇は命よりも重いらしいね」
無傷か、残念。
361 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 20:57:13 ID:
cL90GAto
勇者「終わったのか?」
広間に戻ると日が暮れていた。
魔法使い「どれくらいの時間がたったの?」
戦士「日が暮れる程度だ」
思ったより時間はかかっていないらしい。
勇者「成果は?」
勇者が笑いかけてくれる。
おかしい、なんだか恥ずかしい。
魔法使い「ぼ、僕が失敗するとでも?」
勇者だけじゃない、戦士の顔さえまともに見れない。
山高帽を深く被り直して深呼吸、おーけい、落ち着こう。
362 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 20:58:05 ID:
cL90GAto
魔法使い「所で僧侶は?」
勇者「あぁ、あいつならーー」
広間の扉が勢いよく開く。
僧侶「魔法使いちゃん!」
間の抜けた声に振り向くと見慣れた肉の塊が二つ、眼前に迫ってきた。
魔法使い「そおいっ!」
抱きしめられたら確実に窒息する。 やられる前にやってやる。
僧侶「ひゃあ」
双丘を横から全力で叩く。
相変わらず手首にかかる負担は凄いが、コツを掴んだ僕の手首を壊す程ではない。
魔法使い「その脂肪の塊は不愉快なんだ、僕に押し付けないでくれ」
僧侶「んもう、再会のハグですよ? お帰りなさい、魔法使いちゃん」
魔法使い「うん、ただいま」
363 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 20:59:19 ID:
cL90GAto
全員揃った事を祝して、その夜は宴だった。
少女「大した物は出せないがそれでも当方の出来る最大の物を用意した」
魔法使い「まるで君が料理したみたいじゃないか」
テーブルの上には所狭しと料理が並んでいる。
僧侶「少女さんも頑張っていましたし、私も頑張りましたよ?」
僧侶が殆ど作ってた気がするんだけどなぁ。
少女「そういう君こそ、一体なにを作ったんだい?」
魔法使い「僕はそれよりも大切な事を任せられていたんでね」
そう、どうにかして料理に参加したがる戦士の気を逸らすという大仕事だ。 けして僕が料理できないという証拠にはならない。
まぁ、料理なんて作ったことはないけど。
364 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 21:00:35 ID:
cL90GAto
食事はまぁ、美味しかった。
いつの間にか追加された料理の内に戦士特製のパイが混じっていたけど。
それを食べた勇者が噴水みたいになってたけど。
まぁ、楽しかった。
魔法使い「頬が熱いや、お酒なんて飲むもんじゃないね」
広間から繋がるテラスで一人空を見上げる。
満天の星は今にも降ってきそうだ。
365 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 21:01:03 ID:
cL90GAto
僧侶「お邪魔ですか?」
魔法使い「僧侶、いや、そろそろ寂しくなってきたとこだよ」
あれ? 僧侶が目を丸くしている。 変な事言ったかな?
僧侶「反則ですね、可愛すぎますよ、それ?」
色白の彼女の頬にもほんのりと朱がさしている。
少し肌寒いテラスで手すりに寄りかかると僧侶は困ったように視線を泳がせた。
魔法使い「話し辛いことでもあるのかい?」
僧侶「えーうー、あー……はい」
僧侶は俯くと小さな声で呟いた。
僧侶「あの……その……好き、なんです」
魔法使い「へ?」
366 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 21:02:32 ID:
cL90GAto
今回の更新は以上になります。
367 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/13(水) 21:05:41 ID:iO7dHaGo
おつおつ
魔法使い復活ッ!魔法使い復活ッ!魔法使い復活ッ!
368 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/14(木) 00:19:30 ID:p/EtPfy.
百合か?百合なんか?
369 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/14(木) 05:34:06 ID:nSBSQ1/.
これは少年が教会に乗り込むフラグだな
370 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/14(木) 12:24:34 ID:19wPY0u2
冷静に考えると勇者…ゲフンゲフン
371 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/15(金) 00:27:06 ID:
LQ3j1/z2
本日二度目だ、おーけい、落ち着こう。 僕はクールな魔法使い。 魔法使いは動じない。
魔法使い「えーとそれは、愛の告白なのかい?」
僧侶「……そんな、愛だなんて、その、えーと」
僧侶「はい」
ど、ど、どうしよう。
私、いや、僕告白なんて初めてされたんだけど、でも同性だし、でもあーと。
僧侶「勇者様を、お慕いしています」
魔法使い「え、あ、そーだよね」
びっくりさせないでよこの乳袋。
372 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/15(金) 00:27:55 ID:
LQ3j1/z2
魔法使い「そっか」
僧侶「伝えなくばこの想いに胸が張り裂けてしまいそうで」
僧侶が弱々しく笑う。
なんて声をかけて良いか分からない。
僧侶「でも、知ってるんです」
魔法使い「え?」
僧侶「少女さんとの契約、それに気付いているんです、私では彼の後ろをついていく事はできても、隣に並んで歩く事は出来ないと」
返す言葉がない。
373 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/15(金) 00:28:08 ID:
LQ3j1/z2
僧侶「だからこの話はここでお仕舞いです」
僧侶「ただーー」
顔を上げた僧侶は泣いていた。
僧侶「初めての気持ちですし、誰にも知られぬまま朽ちて行くには惜しくて」
懸命に笑みを繕うように口角を上げている。
魔法使い「よし」
手に持ってきた果実酒の瓶を飲み干す。
魔法使い「いこうか僧侶」
腹割って話そうか。 あの鈍感勇者と。
374 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/15(金) 00:29:02 ID:
LQ3j1/z2
今回の更新は以上です。
375 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/15(金) 01:13:35 ID:ZRPs7AU.
乙
376 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/16(土) 10:12:28 ID:jyXy5ZkY
魔法使いも僧侶もペロペロしたいなぁ
377 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/16(土) 17:14:21 ID:DYh8NGt2
少年「いいよ、なら戦争だね」
378 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/16(土) 20:20:15 ID:/2QQTgMY
>>376の所為で地球に氷河期が訪れる
379 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/02/16(土) 21:31:30 ID:jyXy5ZkY
ごめんなさい