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魔女「果ても無き世界の果てならば」
Part7


232 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/15(月) 00:33:46 ID:Cw.2dPWc
お待たせ致しました。
更新します。

233 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/15(月) 00:35:43 ID:Cw.2dPWc
魔法使い「なんでもお見通しみたいなその態度は腹立たしいんだけど」
少女「君ほどじゃあない」
 少女はニコリともしない。
少女「今のままじゃあ君たちは魔王に勝てない、違う?」
魔法使い「やってみなければわからない……といいたい所だけと」
少女「流石、君は聡明だな」
 少女がにやりと笑った。

234 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/15(月) 00:36:17 ID:Cw.2dPWc
少女「戦士、彼は戦闘力だけならなんの問題はないね。 問題なのはむしろ、彼に見合う武具が無いことくらいだ」
 知ってる。
少女「僧侶の回復能力は素晴らしいよ。 信心からではない純然たる慈愛の心がそれを産み出してるんだろう」
 知ってる。
少女「勇者も、もう大丈夫だろう。 彼の迷いはもうないからね」
 知ってる。
少女「魔法使い、君はただの人間が到達できうる最高峰の場所に居るだろう、だが、君には足りないものがある」
魔法使い「知ってる! だけど、どうすればいいっていうのさ!?」
 燭台の明かりの中、不敵に笑う少女。
少女「すべて私が解決してやろう、ただし……」

235 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/15(月) 00:36:40 ID:Cw.2dPWc
 翌朝、玉座に皆を集めて少女は話を始めた。
少女「魔王は私の一族からでたものだ。 責任をとる為にも僅かながら助力をさせてくれ」
 少女はそう言って頭を下げた。
 女狐め。
 昨夜の条件が頭を過ぎる。
 
 ーー全て済んだ後でいい、勇者を私にくれ。 私と、これからの世界の為に。

236 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/15(月) 00:37:25 ID:Cw.2dPWc
少女「まずは、戦士。 これを使ってくれ」
 少女が、戦士に白金に輝く戦斧を渡す。
 淡く全体が光っている。 目視できる程に、濃密な魔力が込められている戦斧。
 神代の武具でも無ければこんな業物は存在しないだろう。
 これほどの業物を所有していること事態が驚きだが、それを簡単に譲ってしまうことにも驚きだ。
少女「次は僧侶、君にはこれを」
 少女が僧侶に渡したのは同じく神錆びた銀色の大杖。
僧侶「これは?」
少女「君の所の聖人さんが使っていた杖らしい。 君が奇跡を起こす依代にはこれ以上ない逸品だと私は考える」
 この城にはいったいどれだけの物が在るのだろうか?
 どれも国の象徴として崇められても良い程の逸品だった。

237 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/15(月) 00:37:48 ID:Cw.2dPWc
少女「勇者、君にはもう何も必要はないね。 その強き心で、長らく続いた夜を切り裂き、世界に新しき朝を呼んでくれ」
 少女が満ち足りた笑みを浮かべて勇者に声をかけた。
 勇者は照れくさそうに笑い返すと、「おう」と短く返事をする。
少女「後は、魔法使い、君なんだが……」
 僕の番か……。
少女「君を正真正銘の魔法使いにしてあげよう」
 望むところだ。
 少女の手招きに応じ、先の見えない地下への階段に向かう。
 冷たい空気が満ちている階段を下りながら、案外小心者な自分に気が付いた。

238 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/15(月) 00:38:34 ID:Cw.2dPWc
とりあえず今回の更新は以上となります。

239 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/16(火) 00:01:20 ID:eDhQGxCQ
更新乙!

240 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/25(木) 22:26:54 ID:g1qnneE6
さて、そろそろ簡潔に向けて話を動かしていこうかと思います。
僕っこが好きになった理由は蒼星石です。

242 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/25(木) 22:31:01 ID:g1qnneE6
 階段を降りると石造りの書庫だった。
少女「君は私の正体を知りたがっていたな?」
魔法使い「あぁ、君の高慢な態度を維持するにはよっぽどの事がある筈だと僕は思ってる」
少女「酷い言われようだな」
魔法使い「自覚はあるさ」

243 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/25(木) 22:31:13 ID:g1qnneE6
 冷たい石造りの書庫の中に少女の足音だけが微かに響く。
少女「私、私達一族が、魔法というものを見つけたと言ったら?」
 突拍子もない事を言い出した。
 確かに魔法の発祥については明記されているような書物もなかったけど。
 だからといってハイそうですかと信じられる訳もない。
魔法使い「証拠は?」
少女「証拠に値するか分からないが、君に禁忌を犯す機会を与えよう」
 その言葉を聞いて、長らく静まっていた知的探求心が首を擡げる。
魔法使い「君を少しだけ好きになったよ」
少女「そいつは光栄だ」

244 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/25(木) 23:30:08 ID:g1qnneE6
魔法使い「なる程」
 術式は理解した。 ただ、使用する魔力が馬鹿げてる。
魔法使い「机上の空論と何ら変わらないね」
 こんな量の魔力を有しているのは、それこそ世界の始まりから生きているような古龍種か、信仰の対象になるような高位の精霊くらいだろう。

245 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/25(木) 23:31:46 ID:g1qnneE6
少女「使えるさ、全ては心ひとつ。 抗わず、流されず、全てを受け入れる。 魔術を用いる人間の基本だよ?」
魔法使い「精神論で何とかなる量じゃないだろう。 僕の魔力を限界まで溜め込んでも半分にも満たない」
少女「それは君が自分の事を理解していないからだ」
 少女が僕を見据える。 その瞳は夕闇のような深紫色だった。

246 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/25(木) 23:32:09 ID:g1qnneE6
少女「魂という魔力の塊から漏れ出た上澄みだけを使っているから足りないのだよ」
少女「更に、その気になれば周囲に満ちる魔力だって使う事が出来る筈さ」
 場の空気の重さが変わったような錯覚に陥る。
 目の前に居るこの少女は一体‘何’だ?
少女「私は」
少女「魔女、だよ」

247 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/26(金) 00:16:16 ID:hrm/52FM
今回の更新は以上となります。
蒼星石可愛いです。

248 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/26(金) 17:45:07 ID:rl6HJutA
更新乙です!

252 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 10:38:35 ID:NV.TSR/c
転職しました。
更新します。

253 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 10:39:40 ID:NV.TSR/c
 魔女。
 魔法使いとは似て非なる存在。
 例えば、魔法使いが泳ぎが得意な人間だとすると、魔女は大海を泳ぐ魚。
 走るのが得意な人間が魔法使いだとすれば、魔女は荒野を駆け抜ける駿馬だ。
 ソレほどの根本的な違いがある。
 人の身では到達出来ない魔の真髄を極めんとする種。
 そして、空想上の存在。

254 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 10:40:14 ID:NV.TSR/c
 
少女「信じられないかい? 当然だよね」
 少女は夕闇よりも濃い紫の瞳を愉快そうに細める。
少女「うん、君達が最初に感じた通り種族的な意味合いでは人間とは少し違う」
 少女は指先から淡く輝く紫色の光を発して空中に文字を書く。
 走り書きで読み辛いが、人間、化け物、心、等の文字が綴られている。
少女「けれど勇者曰わくそんな物は些細な事らしい」
 空中に浮かんだ‘心’という単語が‘人間’と‘化け物’という単語の間を行ったり来たりしている。
少女「大事なのは、‘コレ’がどこにあるかさ」

255 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 10:41:17 ID:NV.TSR/c
 少女の指の動きに応じて‘心’という単語が‘人間’という単語の下で止まる。
魔法使い「だから人間だと」
少女「私はそう思って無いけどね。 勇者が『誰かの苦しみを考えてそんな顔するのなんて化け物には無理だ』って言ってくれてね」
 少しはにかむような少女は確かに寓話に出てくる老獪な魔女になんかは見えなかった。

256 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 10:42:12 ID:NV.TSR/c
少女「なにも君に魔女になれと行ってる訳ではないぞ?」
魔法使い「君の話は要領を得ない事が多すぎる。 結局僕にどうしろって?」
 魔力が足りないのに魔法を教えてもらった所で、どうしようもないだろう。
少女「魔力が足りないんじゃなくて、使い方が分からないだけなんだろう?」
魔法使い「!?」
 後頭部に手を回され、強引に顔を引き寄せられる。
少女「教えてあげる。 じゃあ、一段上っちゃおうか?」
魔法使い「んぅ!?」
 見開いた瞳のすぐ近くには目蓋を閉じた少女の顔があった。

257 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 10:42:39 ID:NV.TSR/c
 唇に触れる柔らかい感触。
 え? え? もしかしなくてもコレって口づけ? 接吻? キス? チュウ? 口吸い?
 パパとママ以外とした事無かったのに?
 混乱した頭をどうにか整理しようとした瞬間、唇に鋭い痛みが走る。
 視界が歪む。
 意識が薄れていく。
 ただ、それは少女も同様なのか、力の抜けた身体がのしかかってくる。
 少女に押し倒されるような形で倒れ込む。
 いまだに離れない唇の感触だけがやけにはっきりと感じたところで、僕は意識を手放した。

258 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 10:43:21 ID:NV.TSR/c
今回の更新は以上になります。

259 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 17:17:05 ID:NoXjX9BA
歓喜

260 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 17:58:09 ID:NV.TSR/c
物語が最後に向かう転換期のきっかけはキス。
話を書く上でのこだわりです。
けして百合が好きな訳ではありません。
ストーリーの進行状、仕方ないのです。
けして百合が好きな訳ではありません。
更新します。

261 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 18:26:59 ID:NV.TSR/c
 「ここは?」
 目が覚めると、白い靄がどこまでも続く場所にいた。
少女「やぁ、ご機嫌は如何かね?」
 「やぁ、痴女。 いきなり同性に唇を奪われて喜んでいるように見えるかい? 見えるならその紫色の瞳の代わりに硝子玉でも填める事をお勧めするよ」
少女「酷い言われようだな。 気取ってるようで案外にうぶだね。 初めてだったのかい?」
 馬鹿にされているようで腹が立つ。 けど図星だ。

262 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 18:27:29 ID:NV.TSR/c
 「それは君の下衆な妄想に判断を委ねるよ」
 それよりもここはどこなんだろうか?
 ミルク色の濃い靄の所為で、全く見当もつかない。
 「いったい何のつもりかな? 先程の、その、キ、ス……といい、このよく分からない場所といい」
少女「好みだったから」
 「はぁ!?」

263 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 18:27:43 ID:NV.TSR/c
少女「冗談だ。 君に着いて来るにはあの方法しかないからだよ」
 「だから、ここはどこかって聞いてる」
 本当にコイツとの会話は要領を得ない。 わざとなんだろうか?
少女「もう一つの世界。 内なる世界。 魔術の根源たる魂の源泉」
少女「簡単に言えば君の精神世界だ。 よく感じてごらんよ? その証拠に君はもうこの世界に溶けてしまっている」
 言われてみて初めて気がついた。
 確かに身体の感覚がない。 この場に居るのにこの場に居ないような不思議な感覚だ。

264 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/29(月) 18:28:24 ID:NV.TSR/c
とりあえずここまでです。

266 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/10/30(火) 23:55:42 ID:Thxwh/yM
更新ないかなーと覗いてみたらめくるめく百合ワールドに俺歓喜

272 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/11/24(土) 00:59:25 ID:kksHjlgY
支援!

273 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/11/29(木) 18:29:57 ID:.RQMiRK6
しえん

274 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/01(土) 12:37:13 ID:kZxFgz9I
とうとう一月たったか・・・

275 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/01(土) 20:15:37 ID:BUjjTSXc
作者さん大丈夫だろうか

278 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/20(木) 21:17:34 ID:xIey68cA
放置して申し訳ありませんでした。
近いうちに更新予定です。
絶対に完走するので最後までお付き合いいただければ幸いです。

279 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/20(木) 22:13:29 ID:PSCkYDUo
来てくれてよかった...
ゆっくりでいいから完走頑張って!

280 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/20(木) 22:18:43 ID:VU.LqnR6
おお、よかった!
いつまでも待ってるから頑張って!

281 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/20(木) 22:43:44 ID:RAUJjkSg
作家さんのリアルを優先して貰うことが高いクオリティを維持する唯一の手段。

282 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/21(金) 23:22:48 ID:/nbkcEB6
約二ヶ月も経っているのにお前らは待っていたとは…くぅ、泣ける話だぜ

283 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/12/21(金) 23:43:22 ID:80YiyxiI
あなたの作品マジ大好きだぜ!
急がなくていいから待ってますよ