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魔女「果ても無き世界の果てならば」
Part21


824 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:15:36 ID:eDQHik8k
更新します。
次で最後。 今までありがとうございました。

825 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:16:58 ID:eDQHik8k
 ある日。
 勇者は正式に国を建てた。
 切れ者だった少女が色々と企てたらしい。 近隣諸国との関係は比較的良好だ。
 ある日。
 戦士が遊びに来た。 随分と老けている。 女の子を一人連れていた。 彼は守る物を見つけたと笑っていた。
 ある日。
 僧侶が訪ねてきた。 教会ではかなりの地位らしい。 自由に動けなくて息が詰まると愚痴っていた。

826 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:17:56 ID:eDQHik8k
 ある日。
 勇者が死んだ。
 僕が、殺した。
 魔王の呪いが原因だったらしい。最後には年齢とは思えない程老けていた。 恐慌の呪いが進行する前に殺して欲しかったそうだ。
 泣いたのは数年ぶりだ。
 少女は「ありがとう」と言って泣き崩れていた。
 娘はまだ理解できる程の年齢ではない所為か勇者と少女の間を行き来している。

827 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:19:38 ID:eDQHik8k
 ある日。
 勇者の国と、僧侶の教会のある国で戦争が起きた。
 教会と国が腐敗していたからだろう。
 でも、全面衝突した平原では死者は一人しか居なかったらしい。
 亡くなったのは僧侶。
 僧侶は、その命と引き換えに戦場の全ての命を救ったんだ。
 僧侶らしいね。 教会は腐敗した上層部を切り捨てて、僧侶を新たなる成人として祀るらしい。
 勇者の国ではそれを国教として採用した。 決めたのは勇者と少女の娘だ。
 最後まで馬鹿だよ……。
 こんなに胸が痛くなるなんて……。 僕の心はまだ凍てついてはいなかったみたいだ。

828 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:20:31 ID:eDQHik8k
 ある日。
 戦士の連れていた娘が訪ねてきた。
 戦士が死んだらしい。
 娘は泣いていた。 己の力不足を恨んでいた。
 戦士も幸せだっただろうと思う。 彼の崇高なる武人の魂はきっとこの娘を通じて連綿と受け継がれていく事だろう。
 ついに……ひとりになってしまった。

829 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:21:44 ID:eDQHik8k
 もう、泣かなくて済む。 そう言い聞かせながら泣いた。


830 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:22:06 ID:PK/GgQIU
魔女・・・・

831 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:33:31 ID:eDQHik8k
 ある日。
今日は勇者達のの記念祝典らしい。
 魔王討伐百周年記念らしく、様々な国が式典を開いている。
 あれから百年も経っていたのか。
 僕だけ除け者にされて居るみたいで悔しいね。
 果ても無き世界の果てには、死せる魂が安らぐ楽園が在るという。
 彼らはそこに居るのだろうか?
 少女は、今度は勇者を僧侶に譲ってあげても良いのじゃないかな?
 そんな事を考えて笑ってしまう。
 そういえば、旅をしていた頃に勇者に「寂しそうな笑顔」って言われたな。
 昔を懐かしむ。
 大丈夫。 涙は流さない。

832 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:34:30 ID:eDQHik8k
 ある日。
 近くに村ができて居た。
 僕の事を恐れてか、塔には一向に近づいてこなかった。
 そういえば、僕の故郷の村はまだあるのだろうか?
 魔法で見てみようかと考えた。
 けれど、いつかは無くなってしまうだろう。
 これ以上思い出は増やさない方が良い。
 これ以上過去に縋ると思い出に溺れて沈んでしまいそうだから。

833 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:36:26 ID:eDQHik8k
 ある日。
 王国の四代目の戴冠式典に出る事になった。 この娘は髪が少女に良く似た黒髪だった。
 ある日。
 ふと昔の夢を見た。
 覚めなければ良かったのに。
 泣いていたのだろうか? 枕が濡れていた。
 泣いてなんか居られない。 これは僕が選んだ道なのだから。

834 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:43:11 ID:eDQHik8k
 ある日。
 うたた寝してしまった。
 微睡みの中、懐かしい声が聞こえて起こされた気がした。
 思わず辺りを見渡す。
 「勇者? 僧侶? 戦士? 少女?」
 居る訳も無いのに必死に呼びかけている自分に気が付くと、滑稽さに思わず自嘲する。
 僕は、こんなにも弱かったのだろうか?
 百年以上昔の事を昨日のように思い出しては幼子のように狼狽える。
 今日は良くない日だ。
 でも、一瞬でも幸せな気持ちになれた。
 彼らの夢を視たのも数十年ぶりだ……
たまには、許してもらえるよね?

835 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:46:36 ID:eDQHik8k
 ある日。
 今日も本を読んで過ごす。
 遠くの国では戦争が始まったらしい。 愚かな事だ。
 勇者達が愛した世界だと言うのに、人間というのは争わなければ生きていけないのだろうか?
 こんな事を考えて、自分が人間ではない事を実感した。

836 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:47:47 ID:eDQHik8k
 ある日。
 今日も本を読んで過ごす。
 村で疫病が流行っていたらしい。
 言ってくれれば、薬くらいは用意してあげても……いや、彼等の世界に僕は介入する訳には行かないな。
 僕は、この世界の片隅で、魔王の墓守りをしながら見守ろう。
 この果ても無き世界の行く末を。

837 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 00:49:45 ID:PK/GgQIU
ああ、ここでか

838 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:07:15 ID:eDQHik8k
 もう何年経ったのだろう。
 そろそろ二百年程度の月日が流れたのかな。
 やはり、少し寂しいな。
 でも、この終わりの無い命では、人と関わった所で悲しいだけだ……。
 そう、思っていた。

839 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:11:19 ID:eDQHik8k
 そんなある日の朝だった。
 塔の中に誰かが入って来たのがわかる。
 足音は一人。 多分まだ子供だろう。
 どうやって追い返そうか?
 でも、久しぶりに誰かと会うのかと思うと、少しだけ胸が高鳴った。

840 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:13:11 ID:eDQHik8k
 そっと、部屋の扉が開いた。

841 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:14:24 ID:eDQHik8k
少年「あなたが塔の魔女?」


842 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:20:32 ID:eDQHik8k
魔女「いかにも……僕が悪名高い塔の魔女だよ」
 この果ても無き世界の果てならばーー。
 もしかしたら。


843 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:22:30 ID:eDQHik8k
魔女「果ても無き世界の果てならば」
完。

844 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:25:51 ID:PK/GgQIU
乙!一年近く続いた魔女の過去話も遂に完結か・・・>>1にお疲れ様と言いたい。
仲間が誰もいなくなった魔女にとって、少年は本当に救いだったんだなあ・・・

845 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:27:28 ID:eDQHik8k
以上で
魔女「果ても無き世界の果てならば」
終了となります。
感想、質問等ございましたらできる限り答えたいと思います。
放置、遅筆がちにもかかわらず最後まで付き合って下さった方、本当にありがとうございました。

846 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:46:33 ID:NhulV7O.
乙!
あなたの作品のせいで何度寝不足になりかけたか
大好きなSSだよ
タイトルセンスも好きだ いろいろ良いな!

847 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 01:53:00 ID:bVL2rFps
遂に完結ですか
作者さんお疲れ様です!

848 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 02:31:15 ID:fC6TI55w
面白かったよ!!
乙!!

854 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 07:46:01 ID:ujkeLhWY
お疲れ様!!
ずっと前作、関係作読ませて貰いました!
凄く魔女の切なさが伝わってきました
泣けました
続編待ってます!

855 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 09:48:14 ID:eDQHik8k
蛇足1
魔女「とまぁこんな所かな」
少年「……ぐすっ……ひっく」
 魔女の過去は、あの時見てきたから知ってはいました。
 でも、魔女の気持ちまで見た訳ではないです。
魔女「そんな泣かないでくれ……涙は人を弱くするよ?」
 魔女は強いですね。 でも、弱くたって良いじゃないですか……。
少年「魔女……僕は何があっても君の側にいるよ。 絶対に離れたりしない」
魔女「……ありがとう。 でも君は君の生きる道を見つけるべきだ。 君を縛り付ける気はないよ」

856 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 09:52:35 ID:eDQHik8k
魔女「ふふ……期待はしないでおくよ」
少年「ねぇ、魔女」
魔女「ん?」
少年「出会ってくれて、ありがとう」
魔女「どういたしまして。 こちらこそ」
 魔女の笑顔を絶対に守りたい。
 僕は誓う。
 神様なんて居るか居ないか分からないものじゃなくて、 僕自身にかけて誓いを立てる。

857 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 09:57:55 ID:eDQHik8k
少年「それと魔女、僕はね」
魔女「なんだい?」
少年「僕は小さくても良いと思うよ」
 最後まで気にしてたみたいだし。
魔女「〜〜」
少年「え? ちょ? 魔女? それは……」
魔女「うん、お仕置き」
 痛いのは嫌です。
嫌だってばっ!?
 うわあー。
終わり

858 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 10:00:43 ID:eDQHik8k
ちなみに、次の話は勇者と少女の話の予定です。
次作
勇者「この美しき世界で」少女「生きていこうか」
ご期待下さい。
たくさんの乙ありがとうございました。

859 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 10:51:37 ID:VjN.kAYQ
逆鱗に触れてはいけないとあれほど……

860 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 11:28:37 ID:Cpnzut5E
微乳乙!

861 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 11:51:04 ID:Qp9YTp8g
まな板おつ! 最後笑えて良かった

868 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 23:11:39 ID:au0CvLHo
長い間お疲れ様です
最後まで楽しませていただきました
ありがとうございました

869 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 18:26:45 ID:t0/4O/CA
楽しかったよ
ありがとう