Part2
30 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/10(金) 18:51:29 ID:
6EQT8t52
魔法使い「ん?」
僧侶「どうしました?」
魔物「キーっ!」
僧侶「ひゃああぁぁあぁ」
現れたのは、丸いからだにコウモリの羽をつけたような魔物。
もちろん悲鳴をあげるほどの魔物じゃない。
魔法使い「えいっ」
手にした杖で殴る。 魔法を使うまでもない。
魔物「キュー……」
僧侶「〜」
魔法使い「何してるの?」
僧侶「回復です。 悪い子じゃないみたいなので」
魔法使い「馬鹿なの?」
僧侶「かもしれませんね」
この人は教会からでないで毎日お祈りだけしていれば良いんじゃないか?
31 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/10(金) 18:51:43 ID:
6EQT8t52
魔法使い「この辺、臭うね」
僧侶「生臭いような、嫌な臭いです」
遺跡の奥、オークの貯蔵庫なのだろう。
僧侶「なんの臭いなんでしょうか?」
魔法使い「腐った血肉とオークの精液じゃないか」
その言葉聞いた瞬間嫌悪を露わにして眉間に皺を寄せる乳女。
僧侶「なんだか気分が優れなくなってきそうです」
はん、ざまぁみろ。
32 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/10(金) 18:52:15 ID:
6EQT8t52
今回の更新は以上となります
33 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/10(金) 18:55:21 ID:SqIAZnf6
もう乳女呼ばわりかw
34 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/10(金) 19:09:00 ID:.zvcYdAA
なんだ宗教の勧誘かにワロタ
35 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:02:04 ID:
zYSKR4Y6
割と大量に更新します
36 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:04:26 ID:
zYSKR4Y6
遺跡の深部はいやな臭いだが、幸いな事にオークの陰は見えなかった。
魔法使い「さて、多分この奥にさらわれた人達は居るんじゃないかな?」
僧侶「えぇ、早く助けて差し上げましょう」
どーせみたら情けない悲鳴をあげるんだろうな。
石造りの扉に手をかけてそんな事を思う。
食い散らかされた死体と苦痛と恐怖で精神崩壊した人間が無造作に転がる部屋なんて僕でも見たくない。
37 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:06:23 ID:
zYSKR4Y6
案外扉はすんなりと開く。
魔法使い「……酷いね」
眼前に広がった光景は予想よりも酷い物だった。
血と精液が床に溜まり、その中で原型をとどめていない死体、内臓、骨、肉片が転がっている。
そんな中にうつろな目をした女性たちが力なくうずくまっていた。
魔法使い「……」
オークに衛生観念を期待してはいなかったけど、この性欲と食欲を満たす為の部屋の不潔さに、足を踏み入れることすら戸惑う。
どーせこの乳女も、そうなんだろう、きっと自分が汚れるのを嫌う人種だ。
僧侶「大丈夫ですか!?」
そう、思ったんだけど。
38 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:07:14 ID:
zYSKR4Y6
僧侶「〜〜〜〜」
この乳女、いや、僧侶は純白の法衣が汚れる事になんの躊躇いも示さなかった。
腐った血と肉片と精液の溜まった部屋に、なんの躊躇もなく駆け込むと、女性達に寄り添い回復の魔法をかけている。
魔法使い「ふーん」
口だけではない、のか。
僧侶「私たちがもう少し早ければ、すいません……」
助けた人間にまず謝罪するなんて。
魔法使い「お人好しだね」
あらかたの人間に回復魔法をかけると、僧侶は一人ずつになにやら励ましとも謝罪ともとれる言葉をかけていた。
魔法使い「それも大事かもしれないけど……」
僧侶「?」
この部屋は臭すぎるから、水洗いしなきゃ。
39 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:08:43 ID:
zYSKR4Y6
魔法使い「〜〜」
僧侶「きゃっ」
出したのは攻撃にすら使えないような水を生み出すだけの呪文。
魔法使い「どうかな? 少しはましになったんじゃないかい」
一応、血まみれのままなんて嫌だろうし。
僧侶「魔法使いさ〜ん……先に何をするか言って下さい。 ビチョビチョになったんですけど」
魔法使い「あぁ、すまなかった」
確かにビチョビチョだ。 服が張り付いて更に体のラインが強調されている。
魔法使い「軽い仕返しのつもりが見事なカウンターだよ……」
僧侶「へ?」
40 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:09:09 ID:
zYSKR4Y6
魔法使い「なんでもない、それよりあの人たちに毛布なり外套なりを渡してあげなくて良いの?」
僧侶「そうですね!」
私も外套を脱ぎ、渡したいところだけど……
僧侶「サイズが合いませんね……」
うるさい、そのうち女性的な身体付きになる予定なんだ。
41 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:09:50 ID:yenU3BYQ
更新wktk
( ・ω・)っ?
42 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:10:20 ID:
zYSKR4Y6
処理を終え、焚き火をして勇者達を待つことにして一刻程経つ。
魔法使い「遅いね」
僧侶「まさか……」
魔法使い「戦士がいる時点でそれはないよ」
竜種が纏めて三体位いたなら別だけど。
魔法使い「でも、確かに待つだけでは暇な事は確かだ」
僧侶「さらわれた人達は疲労で寝てしまってますから、動くわけにもいきませんし」
まぁ、その通りなんだけど。
魔法使い「とりあえず、部屋の外に魔物が居ないか警戒するくらいは必要じゃないかな?」
まず、この空気に耐えられない。
43 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:10:40 ID:4W9byLmM
更新乙
応援してるよー
44 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:11:07 ID:
zYSKR4Y6
僧侶「確かにそうですね」
なのに何でついてくるかなこの乳女は。
魔法使い「いや、二人で部屋をでる必要は無かったんじゃないかな?」
僧侶「いやぁ〜魔法使いさん、ひとりじゃ心細いかと思いまして」
どれだけ臆病なんだろうこの人……。
魔法使い「確かにこんな場所にひとりは心細いかもしれないけ」
僧侶「危ない!」
僧侶に突き飛ばされる。
魔法使い「!?」
僧侶「きゃあっ」
僕が居た所には、太い腕に掴まれた僧侶の姿。 それと。
魔法使い「オーガ!?」
オークとは段違いに強力な魔物が僧侶を捕まえていた。
45 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:12:05 ID:
zYSKR4Y6
くそ、油断したーー。
僧侶「ぐぅ……お怪我は、ありませんでしたか?」
どこまでお人好しなんだこの乳袋は…
魔法使い「〜〜…駄目だ」
僧侶を巻き込まずにオーガを止める事の出来る魔法がない。
魔法使い「待て!」
杖で思い切り叩く。
オーガ「グルルルルッ!!」
オーガが雄叫びを上げる。 杖が効いたとは思えない。
オーク「ブモモモ」
オーク「ブィイイイ」
魔法使い「オークの群!?」
仕方なくオークとの交戦になるが、こんな事をしている間にどんどんオーガは遺跡の奥に消えていく。
何でこんな時には悲鳴をあげないんだよ、あのお人好しめ。
46 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:15:22 ID:
zYSKR4Y6
魔法使い「〜〜〜〜」
悪いけど速攻で片付けさせて貰うからね。
魔力の残量を考えずに高位の呪文を連発する。
一体一体は大したこと無いくせに数だけは多いからやっかいな奴らだ。
魔法使い「はぁ、はぁ、片付いた」
まずい、時間がかかりすぎた。
手には折れた杖、魔力は枯渇寸前だった。
47 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:15:55 ID:
zYSKR4Y6
魔法使い「さて、この状態でオーガを単騎撃破するのか……」
正直な所、分が悪い。
亜人種の中ではそれなりに強い部類だ。 一発で仕留める事のできる魔法でなければこっちが危ない。
魔法使い「戦士と勇者を待ってから確実性を……いや」
脳裏に乱暴された僧侶が過ぎり、自分の言葉を否定する。
魔法使い「見たくないしね」
僕は、山高帽を被り直すと遺跡の奥に走った。
48 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:16:45 ID:
zYSKR4Y6
じめじめと湿った遺跡の奥は居心地が悪くて仕方がない。
魔法使い「僧侶ー!」
返事がない。 既に返事ができないような状態なのかとも思うが、考えたくはなかった。
魔法使い「無駄にでっかいのを二つもつけているから」
遺跡の再深部、祭壇のようなところに僧侶は居た。
魔法使い「僧侶! 無事!?」
見たところ外傷はない。
間に合った、のかな?
僧侶「魔法使いさん!? 駄目、逃げて!!」
魔法使い「え?」
オーガ「グルルルルッ」
オーガ「グアァアアア」
最悪だ。 オーガが群で居るなんて。
49 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:18:26 ID:
zYSKR4Y6
僧侶「私なら大丈夫ですから、早く!」
僧侶は今まで聞いたことがないくらいに強い口調で叫んだ。
今僕が逃げたら自分がどんな目に遭うか分からないくらい馬鹿なのだろうか?
いや、違うだろう。
きっと僕の心配をしての言葉だ。
まったく、どれだけ他人に優しいんだか……。
魔法使い「気に入らない!」
僧侶「へ?」
気に入らない奴だ、私がこんな図体ばかりの魔物にいいようにやられるとでも?
魔法使い「僕がコイツ等をさっさと片づけるから大人しくそこで待ってて!!」
50 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:18:52 ID:
zYSKR4Y6
折れた杖? 問題ない。
魔力がない? 一発打てればそれで良い。
魔法使い「〜〜〜〜!」
全身の魔力をかき集める。 足りない分は気合いで補う。
魔法使い「〜〜〜〜!」
折れた杖をかざし、放つのは亡者を使役する魔法。
直接魂を刈り取り死の淵へ誘う忌むべき業。
魔法使い「さぁ、思う存分食い荒らせ」
51 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:19:05 ID:
zYSKR4Y6
オーガ「ギァアァアア」
オーガ「グゥエェェ」
流石に怨みを持った対象に使えば良く効くらしい。
オーガの群を一層する為には充分な威力だった。
僧侶「……」
僧侶と、さらわれた人達の元へと向かう。
僕の勘違いでなければ、空気が重いのは湿度が高いというだけではないだろう。
一体何を怒っているのか見当もつかない。
52 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/11(土) 23:20:23 ID:
zYSKR4Y6
今回の更新は以上となります。
53 :
塔を探す男:2012/08/12(日) 16:33:09 ID:EFb0TtGs
今までまとめでしかssを見たことなかったけど「あなたが塔の魔女?」を見てから飛んで来たわw
応援してる!!
54 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/13(月) 00:07:08 ID:sb4ZWUY.
割と初っ端から大盤振る舞いな魔法使い良いな
乙乙ー
55 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/13(月) 08:50:45 ID:79KRiRI.
更新乙
まとめから飛んできた
56 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/13(月) 11:00:59 ID:AtWoNO.c
同じくまとめから
塔の魔女の本スレ覗いて慌てて飛んできたわw
応援してる!
57 :
塔を探す男:2012/08/13(月) 11:49:43 ID:tOLiBA2c
まとめから意外と多いんだなw
58 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/15(水) 19:38:27 ID:iF3BkRw2
支援
59 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/15(水) 23:47:46 ID:
aD55uUOE
前作を見て下さった方、わざわざまとめからきて下さった方、ありがとうございます。
更新します。
60 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/15(水) 23:49:33 ID:
aD55uUOE
魔法使い「ねぇ、僕の勘違いでなければ君は怒っているよね?」
僧侶「……いえ」
本当に面倒な奴だ。
明らかに怒っているじゃないか。
魔法使い「まぁいいや、怒っていないというならその態度の理由が知りたいんだけど」
僧侶はちらりと横目でこちらを見た。
どんなに不機嫌でも、大きくて垂れがちなその目元のせいでいまいち迫力にかけていると思う。
61 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/15(水) 23:49:56 ID:
aD55uUOE
僧侶「……なぜ、逃げてくれなかったのですか?」
怒られた幼子のような、それでいて幼子を窘める母のような雰囲気だ。
魔法使い「逃げなかったらどうなってたか分かった上で言ってるの?」
僧侶「……」
僧侶は答えずに俯いた。
しばらくの間、薄暗い遺跡の中を無言で歩く。
やっぱり人と接するのは苦手だよ。 どうすればよいのかさっぱりわかんないや。