Part18
732 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 01:48:48 ID:
qyn3LwrI
木々がざわめく。
命ある者全てを否定するような凍てつく波動が辺りを包む。
勇者「よぉ、久しぶりだな」
背にある剣に手をかけ、滾る気を抑えながら目の前の男を見据えた。
魔王「まだ生きていたのか。 しぶとい奴だな」
魔王は精巧な彫刻のように表情一つ変えない。
少女「兄……様」
存在とは真逆。 髪の一本一本からつま先に致るまで、一切の汚れのないような純白のその身をゆっくりと揺らしながら近づいてくる。
733 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 01:49:29 ID:
qyn3LwrI
魔王が一歩近づく度に、その分だけ死が近付いてくる気がしているのは錯覚だと信じたい。
魔王「まぁいい、死ね」
魔王の手から宵闇を束ねた出来たかの如き漆黒の剣が現れた。
勇者「は、上等だぁぁッッ!!」
一気に剣を抜き放ち魔王に切りかかる。
魔王「ふん」
簡単にいなされる。
こっちは両手、そっちは片手だって言うのにな。
魔王「片手の方が、やりやすいのでな。 〜〜」
魔王の手の平から氷杭が数本飛んでくる。
勇者「うぉっ!?」
髪の毛が切れて舞った。 ぎりぎり避けれたが、禿げたらどーすんだ畜生。
734 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 01:50:58 ID:
qyn3LwrI
勇者「今度はこっちの番だぜ?」
腕に力を込める。 剣に込めるのは隼の如き、鋭く速き二撃。
魔王「くぅっ!!」
ち、防ぎやがったか。
ならごり押しだ。
勇者「オォォォッラァッ!!」
戦士直伝の乱舞技。 剣の勢いを殺さずに二の太刀三の太刀へと繋ぎ続ける。
隼程の速さは無いが体力の続く限りは切り続けることが出来る。
魔王「剣の勝負ならば多少分が悪い。〜〜〜」
呪文なんか唱えさせるかよ。
このまま押し切って……。
魔王「一度しか言わないぞ?」
魔王が一瞬、悲しげな笑みを浮かべた気がした。
魔王「少女、巻き込みたくはないから離れていてくれ」
今なんて言った?
735 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 01:53:59 ID:
qyn3LwrI
少女「え?」
魔王「〜〜〜〜。 消えろ」
しまっーー
大地を砕き稲妻が天へ伸びていく。
勇者「やるなぁ、おい」
死ぬかと思ったぜ。
まぁ、死んでなんかやらんけどな。
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736 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 01:57:30 ID:
qyn3LwrI
今回の更新は以上になります。
さて!やっとこさ最後の戦いまで書けました。
もうちょいで終わりです。
737 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 07:55:53 ID:41NLnOps
聖おっぱい出てないけど大丈夫だよな?
更新乙! 終わるのが寂しいぞ…
738 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 10:49:59 ID:iRMTQB5c
乙
739 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 11:08:28 ID:qkWpAUcU
おつぱい
740 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/08(土) 13:53:51 ID:
/RKnPo/Y
更新しますよー。
あと4〜5回の更新でおわるかぁ。
741 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/08(土) 13:55:00 ID:
/RKnPo/Y
近い。
逃げ出してしまいたくなる程の禍々しい気配。
絶望と諦観の象徴。
見下ろした先にソレは居た。
魔法使い「ガゥアアアアアアアアアッッ!!」
恐怖を振り払え。
僕は強い。 僕は戦える。 僕は負けない。
翼に力を込める。
天高く飛翔した後、魔王に向け急降下。
その身を降り注ぐ流星と化し、突撃した。
742 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/08(土) 13:56:58 ID:
/RKnPo/Y
勇者「新手かっ!?」
少女「違う、この魔力は……」
説明は後だ。 今はコイツを倒す事が先決。
魔王「〜〜〜〜」
障壁?
無駄だっ!!
魔法使い「ウゥアアアアアアアアアッッ!!」
魔王を捉えた。
鼻先の角に軽い衝撃。
魔王「むぅっ!?」
突進が直撃した魔王は広場を超え、森の奥まで吹き飛んでいった。
743 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/08(土) 13:57:43 ID:
/RKnPo/Y
勇者「魔法……使い?」
少女「使ったんだね、その魔法」
二人が僕を見つめる。
魔法使い「ガル……」
勇者は傷だらけだ。 少女には傷らしきものは見当たらない。
勇者は彼女を守りながら戦っていたのだろうか?
まったく、こんな時まで随分と余裕がある事で。
744 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/08(土) 13:58:38 ID:
/RKnPo/Y
魔法使い「ガゥア」
それにしても言葉が通じないのは困ったな。
一瞬、森の奥が光った気がした。
勇者「あぶねぇっ!!」
え……身体に穴が空いている?
魔法使い「ガフッ……」
身体の数カ所が、森の奥から伸びた深紫の光束に貫かれていた。
身体から力が抜けていく。
勇者「あの野郎、遠くからなぶるつもりか」
勇者が森の方へ駆け出していく。
魔法使い「……まって」
このままじゃ意識が……。
745 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/08(土) 13:59:23 ID:
/RKnPo/Y
少女「まったく、大事な所で決まらないね君って奴は」
魔法使い「自覚はあるよ……、て喋れてる?」
手もあるし、足もある。
少女「竜を維持するだけの魔力が無くなったんだろう」
魔法使い「……せっかく強くなれたのに」
竜の方が勇者の助けになれたのに。
少女「あれ以上行くと人に戻れなくなるんだ。 この機会に戻れたのは運が良いよ」
人に戻れなくたって良かったのに……。
少女「そう不満そうな顔しないでくれ。 人を止めるなんてそう簡単にするもんじゃない」
まぁ良い、人だろうと竜だろうとやる事は変わらない。
少女「申し訳ないけど、私も連れていってくれないか? 私はどうやら見届けなくてはならないらしい」
魔法使い「仕方ないね」
746 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/08(土) 14:01:09 ID:
/RKnPo/Y
今回の更新は以上になります。
あぁードラクエ7やりたい。
もしくはFFTでも可。
747 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/08(土) 16:47:43 ID:ExtkjlW2
更新おっぱい!乙!
748 :
sage:2013/06/09(日) 14:52:26 ID:6gA29UYE
乙
もう少しで一年経っちまうな・・・
終わりなんて寂しいな
749 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/09(日) 18:27:28 ID:JeU8AYK.
寂しいね(´・ω・`)
750 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/12(水) 08:44:03 ID:GFwCl8Ec
いや、コイツ(作者)のことだから完結まで暫くかかる
一年とかかかるんじゃね?
751 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/12(水) 14:30:30 ID:
wbolq/NY
一年かからないように気を付けるわ
更新します。
752 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/12(水) 14:31:53 ID:
wbolq/NY
魔法使い「勇者!」
勇者はすぐに見つかった。
魔王「どうした、威勢ばかりで実力の伴わぬは虚しいだけだぞ」
勇者「黙れっ」
二つの影が付いては離れを繰り返す。
実力は互角。
森の深くで、世界の片隅で、世界の命運をかけた戦いは行われていた。
753 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/12(水) 14:33:16 ID:
wbolq/NY
少女「……」
少女は何も言わずそれを見続けている。
魔法使い「今加勢すればたぶん倒せる。 加勢しに行っても良いかい?」
少女「何故私にそれを聞くのかな?」
少女は二人から目を逸らさずに言った。
魔法使い「聞かずに魔王を倒したら君が泣いてしまいそうだからね」
少女「腐っても兄貴だからね。 この感情をどう表して良いか分からないよ」
魔法使い「まぁ、君がどんな返事でも僕は魔王を倒すけど。 恨むなら僕一人にしてよね」
少女の兄と聞いてから心に決めていたんだ。 魔王の首を跳ねるのは、僕か戦士の仕事だって。
勇者や僧侶は、やるには優しすぎるからね。
754 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/12(水) 14:36:38 ID:
wbolq/NY
少女「恨みはしないさ……たぶん泣くだろうがな」
少女はまだ目を離さない。
兄の姿を目に焼き付けているのだと思う。
少女「無事魔王を倒せた暁には、私は肉親は愚か同じ民すら居ない独りぼっちになるからな」
少女は力なく笑う。
魔法使い「そっか……」
少女「さて、そろそろお願いしようかな」
魔法使い「もう良いの?」
少女「……あぁ」
目を瞑り大きく息を吸い込む少女。
その肩は僅かに震えていた。
755 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/12(水) 14:37:49 ID:
wbolq/NY
少女「今は無き我が国の姫としてお願い申しあげます。 旅の魔法使い様、どうか我が祖国を討ち滅ぼした悪虐非道の魔王を退治して下さいませ」
風になびく艶やかな黒髪の合間から、力強い深紫の瞳が見つめていた。
魔法使い「任せて」
魔法使い「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
魔力を杖に込める。
一撃に全魔力を込める。
魔法使い「勇者、ちゃんと避けてね?」
756 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/12(水) 14:39:14 ID:
wbolq/NY
杖の周囲から漏れ出した魔力が極光となり揺らめく。
発動に必要な魔力が溜まった。
少女「はは、中々に凄いじゃないか……」
杖から魔力が溢れ出る。
溢れ出した魔力は、光の洪水と化して魔王を飲み込んでいった。
757 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/12(水) 14:40:25 ID:
wbolq/NY
今回の更新は以上になります。
758 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/12(水) 20:00:32 ID:enbU3kNA
乙ん
終わりは近いか……感慨深いもんだ
759 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/12(水) 21:28:21 ID:.7W2lMqo
乙
760 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/13(木) 01:27:43 ID:PROeiGpk
乙。いよいよ魔女の過去話は終了間近か・・・・
つっても作者の当初の構想どおりなら、この話が終わってもまだ続編が二つ三つあるわけだし。のんびり気長に待たせてらうさ
764 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/19(水) 00:56:21 ID:
KGujct7k
更新します。
3
765 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/19(水) 00:57:33 ID:
KGujct7k
魔法使い「あー……キツい、動けない」
全身の倦怠感が酷い。
全神経を集中させなきゃ指先すら動かせない程だ。
少女「案外簡単に終わってしまったな……」
少女は目を細めて遠くを見ている。
彼女の表情から感情を推し量る事は出来ない。
766 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/19(水) 00:58:33 ID:
KGujct7k
勇者「やっぱり魔法使いは凄いな……」
薙払われた木々の合間から勇者が出てきた。
少女「……兄さ、いや、魔王は?」
勇者「んーそこで伸びている。 多分不相応な魔力で全身ガタ来てるから長くはない……話すなら今だ」
止めを刺さない甘さに呆れつつもほっとした。 勇者にはそうあって欲しいと思っていたから。
少女「……行ってくるよ」
少女が、倒れた魔王に歩み寄る。
無粋かもしれないが、少し離れた場所で見守る事にした。
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