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魔女「果ても無き世界の果てならば」
Part17


703 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:25:48 ID:qPedC0Ic
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魔人「もう終わりなの?」
魔法使い「っはぁ、はぁ」
 痛い。 苦しい。
 致命傷には至らないが傷を多く負ってしまった。
魔法使い「まだまだこれからだよ」
 あまり長引かせたくはない。
 僧侶も戦士も勇者も一人で戦うには相手が悪すぎる。
 僕が助けるんだ。

704 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:26:21 ID:qPedC0Ic
魔人「威勢が良いのねぇ。 でももう飽きちゃったわ。 終わりにしても良いかしら?」
 魔法は効かないし、肉弾戦で何とかなる程甘くはない。
 どうする?
 どうすればーー。
魔人「じゃ、バイバイ。 私の仕事は貴方をここに隔離する事だから」
魔法使い「え?」
 こいつは何を言っている?

705 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:26:53 ID:qPedC0Ic
魔人「直接命を奪うなんて下品だし、そこまでする程の報酬もないしね。 この結界、貴方じゃ絶対に破れないけど、三日もすれば消えるから」
魔法使い「ちょっ、待っ……」
魔人「それじゃ、もしかしたらまた会いましょ?」
 そういうと、魔人の姿は跡形もなく消えていた。
 助かった?
 違う。 現状は好転している訳じゃない。
 早くここから出なくては。

706 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:27:39 ID:qPedC0Ic
魔法使い「〜〜〜〜」
 ありったけの魔力を込めて結界に干渉する。
 少女に結界の理論だけでも聞いていたのがこんな所で役に立った。
 結界は対魔術特化の物だ。
 強力な物理攻撃なら破る事も可能だろう。
魔法使い「ふんっ!!」
 杖で思い切り結界を叩いてみたが、手応えはない。
魔法使い「肝心な所で無力だな、僕は」
 自分が情けなくて泣き出したい気分だ。

707 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:29:52 ID:qPedC0Ic
 それでも杖で結界を叩き続ける。
魔法使い「壊れてよっ!!」
 手のひらから血が滲んで杖を伝い地面に痕を付ける。
 こんな時、戦士か勇者が居てくれたら。
魔法使い「こんな時まで他力本願か。 僕は仲間なのに……何か役に立つ事も出来ずに」
 戦士も僧侶も命を懸けているのに。
 一際大きい力の波長が結界越しだと言うのに分かった。
 これは、戦士だ。
 相対したもう一つは何だろう? 竜種に似ているが馬鹿げた力だ。
 2つの力が徐々に消えていく。
 嘘だ、戦士が負ける筈ない。

708 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:30:47 ID:qPedC0Ic
 もう一度強く揺らぐと、戦士の気配が消えた。
 感じ取れない程弱ってしまったのか、もしくはーー。
魔法使い「大丈夫、きっと戦士は生きている。 竜種を倒して疲れきって気を失っただけ。 早く回復してあげなきゃ」
 杖を持つ手は既に感覚が無い。
魔法使い「あぁ……」
 嫌な予感がして僧侶の気配を探してみた。
 酷く弱々しいが確かにある。
 どうやらリッチを倒せたみたいだ。
魔法使い「はは、早く出てチューしてあげなきゃね」
 だから、だからっ!!
魔法使い「まだ逝くな、逝かないでよ」
 僧侶の気配が途切れた。

709 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:31:28 ID:qPedC0Ic
 最悪の事態が頭に張り付いている。
 大丈夫。 でも、もしかしたら。
 頭の中でぐるぐると同じ事を考え続けている。
魔法使い「早く早く早く早くっ!!」
 壊れろ! こんな所でゆっくりしてる暇なんて……。
 勇者の気配の近くに酷く禍々しい魂の波長が一つ。
 こんな気配は、僕は一つしか知らない。
魔法使い「……魔王」

710 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:32:16 ID:qPedC0Ic
 駄目だ、こんな事している場合じゃない。
 三人が危機に瀕してる。
 僕が出来ることはーー。
 身体中に残った魔力をかき集める。
 発動させるべき魔法は、三つの禁術の内の最後の一つ。
 混沌の名を冠した魔法だ。

711 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:35:20 ID:qPedC0Ic
魔法使い「〜〜〜〜〜〜」
 通常は予測不能のこの魔法を、魔力によって無理矢理望む効果を呼び込む。
 呪文がむなしく鳴り響いた。
 失敗だ。
魔法使い「〜〜〜〜〜」
 諦めてたまるか。 
 もしかしたら死ぬかもしれない。
 成功しても、人の理から外れるてしまうだろう。
魔法使い「〜〜〜〜〜」
 だからどうした。
 今何も出来ないなら。
 仲間を助ける事が出来るのならば。
魔法使い「こんな命くれてやる!!」

712 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:35:59 ID:qPedC0Ic
 頭上から光の束が降り注ぐ。
 細胞の一つ一つが灼かれているかのような激痛が駆け巡る。
 視界が白く染まる。
 ………………。
 …………。
 ……。
魔法使い「ガゥァァアアアァァァァッッ!!」

713 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:36:50 ID:qPedC0Ic
 全身を這いずる激痛を堪えながら叫ぶ。
 身体が造り変わっていく。
 大地を踏みしめる巨躯。
 白き竜鱗は何者をも寄せ付けぬ鉄壁の盾。
 力が満ち溢れてくる。
 僕の身体は今、巨大な竜種と化した。
 命を賭して、白き龍神をその身に降ろす魔法。
 混沌の魔法の効果の中でも最も危険なものだ。
 人に戻れる保証もない。
 確実なのは。
 この結界を破る力を見に宿せるという事だけだ。

714 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:37:24 ID:qPedC0Ic
魔法使い「ガゥアアアアアアアアアッッ!!」
 強く大地を踏みしめて、結界へ向けて突進する。
 少しの抵抗の後、砕け散る結界。
 空を見上げる。
 翼を広げ羽ばたく。
 みんな。 あと少しだけ待っていて。
 
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715 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 00:39:22 ID:qPedC0Ic
今回の更新は以上になります。
ちなみにド○ゴラムではありません。 パ○プンテです。
次回 ちっぱい無双

716 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 03:28:17 ID:RE2W194.
更新乙!
ちっぱい期待!!

717 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 08:35:50 ID:cONOwZ4c
ちっぱい!!がんばれ!みんなを助けて!
乙でした!おっぱい!

718 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 11:04:01 ID:GvG2Jjds
頑張るちっぱい応援します

719 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/01(土) 14:01:57 ID:cwaz/Woo
更新乙です!
ちっぱい! ちっぱい!

721 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/03(月) 10:57:56 ID:lpk1V/lM
月が変わってまだ終わってないのかよ

723 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 00:01:39 ID:qyn3LwrI
無理だったー。
更新します。

724 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 00:03:04 ID:qyn3LwrI
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 見えた。
 一面真っ白になった平原に横たわる巨竜の影に、戦士の姿。
魔法使い「ガゥ!!」
 しまった。 言葉が喋れない。
戦士「ちょっと見ないうちに随分デカくなったみたいだな」
 さすが戦士。 一目で僕だと分かるんだ。

725 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 00:04:24 ID:qyn3LwrI
戦士「役目は果たした。 少しゆっくりしてから合流させてくれ」
 戦士は生きているのが奇跡な程の重傷だ。
 
戦士「この目では大して役には立てんだろうしな」
 目?
戦士「失明はしてないが、ぼんやりとしか見えん。 まぁ、竜種の頂に居るような相手だったんだ。 視力くらいで何とかなるならおつりがくる」
 戦士は紅蓮の竜種の亡骸をぼんやりと見つめて呟いた。

726 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 00:04:55 ID:qyn3LwrI
戦士「僧侶もやばそうだが、死んじゃ居ないみたいだ。 俺が見に行く、さっきの借りも返さにゃならんしな」
 戦士は熱で形が変わってしまった戦斧を背負うと歩き出した。
戦士「俺や僧侶より今お前を必要としてる奴が居るだろう? 向かってやれ。 そして、全部終わらせてこい」
 うん。 ありがとう。
 翼をもう一度強く羽ばたかせ飛翔する。
 僕は僕の出来る事をしよう。

727 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 00:05:38 ID:qyn3LwrI
 ………………
 …………
 ……
 飛び去っていく白い竜を見送り、ゆっくりと息を吐く。
 長かったこの旅も、そろそろ終わりに近い。
 旅の切っ掛けは、おかしな二人組に声をかけられたんだったか。
『そこのおっさん、辛そうだな!! どうしたんだ』
『すみませんいきなり、でも何か辛い事を抱え込んでいるのではありませんか? 貴方の瞳はとても深い悲しみの色をしています』
 まさか、ここまで一緒に来る事になるなんてな。

728 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 00:06:09 ID:qyn3LwrI
『僕に何ができるかは分からないけど、それで良いなら』
 捻くれ者の小娘もその後仲間に加わったんだったな。
 最初はただの小娘かと思っていたが。
戦士「いつの間にかデカくなったな、どいつもこいつもこれからが楽しみだ」
 悲鳴をあげる身体と、ほとんど役に立たない目に鞭を入れ、僧侶の所へ向かう。
戦士「上手くやれよ」
 頬が緩む。
 そういえば、最後に笑ったのはいつだったかな?

729 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 00:07:11 ID:qyn3LwrI
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 ついに二人になったか。
 戦士は、きっと無事だ。
 僧侶は、泣いてなきゃ良いな。
 魔法使いは、無茶してなきゃ良いけど。
少女「なぁ……勇者」
 後ろを歩く少女に呼び止められる。
勇者「ん?」
 振り向くと、少女は怒ってるような、心配してるような、なんだかよく分からん顔でこっちを見つめていた。

730 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 00:10:02 ID:qyn3LwrI
少女「身体は……大丈夫なのか? お前、あの時使っちゃっただろう?」
 普段とは随分違う態度に戸惑う。 むしろこれが素なのか?
勇者「あー、特に心配すんな。 あれくらい何の問題もないぜ」
 みんな頑張ってるのに俺だけへばってなんかいられないしな。
少女「‘あの技’は、今の身体じゃ使えて一発なんだ。 例え魔王でも使ったらいけないからな」
 僧侶助ける時に使っちゃったもんなー。
 んー、でもまぁ。
勇者「きっと大丈夫だ」

731 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/07(金) 01:48:05 ID:qyn3LwrI
 強くあろう。 と思う。
 勇者だから。 じゃあない。
 みんなの笑顔を曇らせたくないから。 
 勇者なんて柄じゃあないな。 世界を救う、なんてつもりじゃなかったんだ。
 誰にも握り返されない手に、手を差し出してただけだったんだ。
 必死に伸ばした手が、誰かに手を差し伸べて欲しくて伸ばした手が。
 誰にも握り返されないのは辛いから。 
勇者「もちろん、お前の手も離さないぞ?」
少女「いきなり何?」
勇者「気にすんな」
 そろそろ本命も来たようだしな。