酔った勢いで先輩とSEX、そして・・・
Part4
809 :607: sage New! 2005/10/20(木) 11:30:00 ID:y8aaZ6gZ0
テーブルの由香さんがに移動しいざ座ろうと思ったが、椅子は片側3脚ある。
由香さんは一番奥に座っていた。俺、真ん中でいいんか?と思ったが一番手前に座った。
それを見た裕美が言った。
「どうして君は離れたとこに座るかなぁ〜。隣に座ってあげなよ」
「あっ、はい・・・」ちょっと照れくさかったが素直に裕美の言葉に従った。
ナイスフォロー裕美!グッジョブ!(って当時そんな言い方なかったけど)。
俺が席に着くと同時に、由香さんが紅茶を持ってきて俺の隣に座った。
ふわっと昨日と同じリンスの匂いがした。やっぱ昨日のことは夢じゃなかったんだと確信できたひと時だった。
「はい、どうぞ。お砂糖は?」
「いえ、いらないっす」いつもは2,3杯砂糖を入れる俺はかっこつけて言った。
一口飲んでの感想。やっぱ砂糖入れればよかった・・・
814 :607: sage New! 2005/10/20(木) 13:43:01 ID:6xTudlpc0
不気味な静けさが辺りを包む。誰も何も話さない。
由香さんは頬杖をういて、顔を少し横に向けティーカップをいじっている。
そういった姿の由香さん絵になるなぁ〜。ぼーっと見とれている俺。
かたや裕美はと言うと、椅子の背もたれに片腕を回し、あごに手をやり
足を組んでふんぞり返って(ちょと大げさかも)座り、由香さんをじっと見ている。
まるでこの家の主みたい。違う意味でこれも絵になっている。
どれぐらい時間が経っただろう?突然裕美が言った。
「ねぇ?由香?・・・いいの?」
うんっ?いいのって何が?主語もなにもなく裕美の言ってる意味が一人分からない俺。
「うん」自分の返事を噛みしめるように、軽く二度三度うなずきならが、ちょっと口に笑みを携え由香さんが答えた。
ちょっと沈黙の後、裕美がつぶやいた。
「・・・そっか・・・」
815 :607: sage New! 2005/10/20(木) 13:51:40 ID:6xTudlpc0
あのぉ〜お二人の会話、俺、まったくみえてないんですけど?
そう思ったのもつかの間、その場の雰囲気をかき消すかのように裕美が元気よく
立ち上がりながら言った。
「そっか。分かった」
いや、俺分かってないんですけど・・・
「ヒロ君ごめんね、私たちちょ〜っとこれから用事があるんだ。それで悪いんだけど」
みなまで言うな裕美。そこまで言われれば分かります。
裕美の言葉を途中でぶった切るように俺は「あっ、はい。分かりました」と急いで返事をした。
「ごめんね」自分の顔の前で手を合わせ、謝るような仕草をする裕美。
816 :607: sage New! 2005/10/20(木) 13:59:12 ID:6xTudlpc0
帰り支度(と言っても制服の上着を着てバックを持つぐらいだけど)をして玄関へと。
その場でさよならかと思ったけど、二人とも外まで見送りに出てきてくれた(正直いって裕美が邪魔だと思った)。
なんて言っていいのか分からなかったが、そこは進行役の裕美の出番。
「一人で帰れるか?まっ気をつけて帰りたまえ」
「あっ、どうもお邪魔しました」そう言い、少し頭を下げ由香さんの方を見た。
素敵な笑顔で応えてくれましたよ。俺超ハッピーって感じだった。
「じゃ」といってその場から立ち去る俺。
帰り道、俺なんで連絡先聞かなかったんだろう?って思った。
でも同じ学校だし会おうと思えばいつでも会えるでしょって簡単に考えてた。
817 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:08:56 ID:6xTudlpc0
なんか家についてもふわふわした気分で、のぼせてるみたいだった。
昨日の出来事って本当は夢なんじゃないかと思えた。
でも、お風呂に入ったとき、由香さんが肩につけた爪あとがちくりとしたからやっぱ現実なんだって思った。
俺、この体験を友達に超話したかったし、自慢したかった。でも止めておいたよ。
こんな話しをして、友達が好奇の目で由香さんを見ることに耐えられなかったし、
せっかくの想い出が汚されると思ったから。
学校へ行ってもしばらく、授業の内容が身に入らなかった。
まっそれは以前からだからあまり変わらないんだけどな。
もう由香さんのことしか考えられなかった。もう俺の中由香さんで一杯。
日を追うごとに思いが募る。由香さんを訪ねて2年の教室に行くか?
いや、でもちょっと恥ずかしいし、やっぱ上級生のフロアに行くのは緊張する。
819 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:23:45 ID:6xTudlpc0
友達と一緒なら行けるか?とも思ったけど、そうするなら事情を話さなくては友達も納得しないだろ。
由香さんとのことを話すわけにはいかないし。
由香さんに会いたい、やっぱ会いに教室まで行くか?いや、でも・・・
見事な腰抜けっぷりを存分に発揮する俺。ジレンマに陥り時間だけがいたずらに過ぎていく。
近いうちに会えるだろう。そう自分に言い聞かせるように無理やり納得させその時を待った。
820 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:27:44 ID:6xTudlpc0
裕美の姿は1、2度見た。裕美なんてどうでもいいんだよ。由香さんだよ由香さん。
しかし由香さんの姿を見かけることはなかった。ってゆーかおかしくないかっ?
同じ学校だぞ?いくらなんでも姿さえ見かけないってことあるか?
もう我慢でっきーん!俺は意を決した!
ようし放課後待ち伏せ作戦だ!(意を決したわりには屁たれな作戦でごめん)。
2年生が利用する階段でうんこ座りをしながら待つ俺。
何度も、「んだっ、こいつぁ〜?おらぁ〜!」って感じの先輩の厳しい視線に晒されること数十分。
本命ではないが、裕美発見。裕美も俺に気づいたようだ。
はっとするような表情をする裕美。
この時その裕美の表情が気になった。なんかいやな予感がした。妙な胸騒ぎがした。
821 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:36:26 ID:6xTudlpc0
軽く会釈をする俺の脇を逃げるように、足早に去ろうとする裕美。
えっ!?ちょっと、なんか意外な反応なんすけど。慌てて俺は声をかけた。
「いや、ちょっと、先輩っ!!」ちょうど通りかかった2,3人の先輩が振り向いた。
おめぇ〜らじゃねぇ〜よ。心の中で突っ込みつつ、裕美の後を追った。
「ちょっと、先輩待ってくださいよ」
「あぁ・・・君か」今始めて気づいたって感じでちょっと動揺しながら裕美が言った。
「いや、君かじゃなくって、今、視線合ったじゃないっすか」
「あっ、ごめん、気づかなかったよ」んなわけねぇ〜だろ。ばっちり視線合ってたじゃん!?
そう突っ込みたかったが、そんな押し問答してる場合じゃないと、冷静になる俺。
「で、なにっ?」ちょっときつめの口調で裕美が聞いてきた。
「?」今日はやけにきついな。そう思いながら尋ねた。
823 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:43:07 ID:6xTudlpc0
「あっいや、由香さん、何組かを聞こうかと思って」
「・・・」
?意外な反応なんすけど。すぐに教えてくれるかと思ってたから。
じっと俺のことをを厳しい目つきで見つめる裕美。えっ!?なに?ホントなに?この反応は?
聞こえなかったのか?もう一度聞くか。
「由香さ・・・」
俺の言葉を遮るように裕美が答えた。
「由香、いないよ」
「はっ!?いないって?今日休みってこと?」
「いや、違う。もうこの学校にはいないってこと」
はっ!?もうこの学校にはいないってどういうこと?意味がわからん。
825 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:49:28 ID:6xTudlpc0
「・・・えっ!?・・・えっ!?はっ!?」
この学校にはいない?もういない?もう???
なんか裕美の言った言葉が理解できずに軽い錯乱状態。
微動だにしない俺に向かって裕美が言ってきた。
「由香、家の事情で学校辞めたの」
はぁっ!?学校辞めた?えっ?誰がっ!?俺、この時言葉も出なかった。
「だから、もうこの学校にはいないの。分かった?」
そう言い、その場を立ち去ろうとする裕美。
おいっ!お前ちょっと待てよっ!そんな話しで納得できるか!俺、ぶち切れた!
829 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:59:26 ID:6xTudlpc0
「ちょっと待てよっ!」
腹の底から絞り出すような大声でどなり、裕美の腕を力いっぱい掴んで強引にこっちに引き寄せた。
少しおびえたような表情をする裕美。
「はぁっ!?ちょっと待てよ!お前、なに言ってんだっ!?」
もう先輩も後輩もない。切れてる俺に上下関係はない。
その声を聞きつけた、周りの2年生の男共が「んだっこのヤロー」って感じで威嚇しながら近寄ってきた。
ヤバイかなって思ったけど、そんなこと気にしてる余裕なんてその時の俺にはなかった。
「君、ちょっと落ち着きな。なんでもないから、大丈夫だから」
後半の台詞はいかついお兄様方へ向かって投げかけた裕美の言葉。
収まりがつかないご様子のお兄様を見て、まずいと思ったのか裕美が俺の手を引き屋上へと移動した。
831 :607: sage New! 2005/10/20(木) 15:10:44 ID:6xTudlpc0
屋上で裕美が話しを始めた。
由香さんは、父親の仕事の都合で海外(イギリス)に留学することが決まっていたこと。
本当は、9月に行かなくてはいけなかったんだけど、どうしても心残り(俺のこと)があるのでひとり日本に残っていたこと。
自分のわがままで親に迷惑をかけるわけにはいかないので、自分で出来る限りのことをしようとバイトをしていたこと。
そう言われていればそうだよな。あんな豪邸に暮らしていてバイトするのってへんだよな。
その話しを聞いて初めて納得した。
なんかその話しを聞いて悲しくなってきたというか、健気な由香さんを思って可哀想で泣けてきた。
もう超号泣って感じ。これが号泣じゃなかったらなにが号泣なんだって感じで泣いた。
いくら泣いても泣き足りない。この悲しみや由香さんを思う愛おしさをどこにぶつけていいのか分からなかった。
俺は腕をぶんぶん振り回し、泣きながら裕美に言った。
「何であの時言ってくれなかったんだよっ!?先輩、知ってたんでしょ?何でだよっ!?」
833 :607: sage New! 2005/10/20(木) 15:19:05 ID:6xTudlpc0
もう涙なんてぬぐってる場合じゃない。涙や鼻水、もう色んな物が出てたと思う。
でもそんなのなんてお構いなしって感じだった。
「もうっ!先輩ずっけぇ〜よっ!何でだよっ!何でだよっ!何でなにも言ってくれなかったんだよっ!」
あ〜ん、あ〜んって子供みたいに泣きじゃくったよ。もう後半自分でなに言ってるか分からんかったよ。
そんな中突然裕美が大声で言ってきた。
「じゃどうればよかったのっ!?えっ!?じゃあの時、由香はもう近々学校辞めて海外に行くんだよって言えばよかったわけっ!?
それ聞いてうするのっ!?どうすることも出来なかったでしょ!?」
後半裕美も涙声っすよ。
その裕美の言葉聞いて、更に泣きっすよ。確かにどうすることも出来なかったよ。
でもね、でも、いくらなんでもそれってひどすぎっすよ由香さん。残酷だよ。
834 :607: sage New! 2005/10/20(木) 15:29:28 ID:6xTudlpc0
「由香はもう君の事諦めるつもりだったんだよ。でも偶然あの時会っちゃったから。
私はお互い悲しい思いするから止めておきなっていったんだよ。そのことについては由香もずいぶん考えてみたい。
でも、由香、君が自分のこと好きなってくれるなんて思ってもいなかったみたいね。
だから青春のいい想い出ってことで、たまに思い出すぐらいじゃないかねって言ってたよ」
そんなわけないじゃん!なに勝手に人の気持ちを決め付けてるんだよ!
俺その台詞聞いた途端、制服がよごれるなんて気にもせずにその場に突っ伏してて泣いたよ。
更に大声で泣いたよ。喉から血が出るんじゃないかってぐらい声を張り上げ泣いた。
836 :607: sage New! 2005/10/20(木) 15:38:46 ID:6xTudlpc0
どれぐらい時間が経ったんだろ?もう涙も出尽くしたって感じがした。
俺はゆっくりと立ち上がった。もう辺りは真っ暗だよ。
とっくに裕美はいないと思ってたけど、じっと待っててくれた。
ちょっと悲しそうな、物悲しそうな視線で俺を見ている。
俺は顔に涙をぬぐうようにして、その場を立ち去ろうとした。
その時、裕美がハンカチを差し出した。そのハンカチに見向きもせずに俺はゆっくりと歩き出した。
「由香は・・・由香もあの日の朝泣いてた・・・」
由香の言葉が背中越しに聞こえた。その言葉でまた涙が流れた。
首を振りながら俺はその場を立ち去った。もうそんな話しは聞きたくなかった。
いくら聞いたところでもう由香さんには会えない。なんの意味もない言葉だ。
838 :607: sage New! 2005/10/20(木) 15:49:07 ID:6xTudlpc0
しばらくもぬけの殻のように俺は過ごした。
朝起きて、支度をして、電車に乗り、学校に行き、友達とバカやってすごした。
友達を一緒にいる時は、由香さんのこと考えずに過ごせた。
でも夜一人になるとやっぱり思い出す。裕美が最後に言った台詞が。
「由香もあの日の朝泣いてたよ」
聞くんじゃなかったよそんな話し。
その台詞のせいで立ち直るまでかなりかかったよ。
まったく裕美も余計なこと言うよな。
839 :607: sage New! 2005/10/20(木) 15:53:04 ID:6xTudlpc0
そんな屁たれで、泣き虫で根性なしな俺も来月結婚します。
一つ年上の、色白で華奢でハスキーな声の持ち主のイギリス帰りの素敵な女性と。
由香さん改め、塔子さんと結婚します。
長々とお付き合いありがとうございました。
じゃ(by 裕美改め久恵さん)。
38 :607: sage New! 2005/10/23(日) 22:59:56 ID:nKH9eS2H0
ヒロ君、お元気ですか?
手紙はシンプルな便箋に、塔子さんらしい綺麗な字でこう始まりました。
(ほぼ原文のまま書きます)
久恵から聞いてもう知っていると思いますけど、私は今、イギリスのリバプールという街にいます。
ヒロ君はリバプールという街を知っていますか?
リバプール?どこだそれ?ビートルズにもサッカーにもまるっきり興味がなく、
イギリスというとロンドンしか思い浮かばない、俺の無知っぷりを知ってか知らずか
リバプールの街についての説明が数行あったけど省略。
39 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:00:21 ID:nKH9eS2H0
あの後、自分の口から留学することをヒロ君に伝えようかとずいぶん悩んだけど、結局言えませんでした。
ヒロ君にその話しをしている最中に、きっと泣いてしまうだろうなと思っていたし、
せっかくの決心が鈍ると思い出来ませんでした。
それに伝えたところで、もうどうすることも出来ないって思っていたから・・・。
40 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:01:42 ID:nKH9eS2H0
あの後のことを、久恵からの手紙で知りました。
ヒロ君の気持ちを考えずに、自分本位な行動をしてしまったこと、また逃げるように日本を発った
自分の行動が恥ずかしいと思い、今とても後悔しています。
でも誤解のないように言っておきたいんですけど、ヒロ君とああいったことになり、
自分の思いを遂げることができたから、イギリスへと発つ決心をしたわけわけではありません。
あの日から1週間後に日本を発つことはもう、前から決まっていたんです。
でもこれって自分勝手な考えで、結局は言い訳ですよね。
それにヒロ君が私に好意を寄せてくれる可能性があるなんて、考えてもいなかったから。
だって、ヒロ君の前の彼女と私、ぜんぜんタイプが違うでしょ?
41 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:03:34 ID:nKH9eS2H0
あの日、本当に偶然ヒロ君が一人でいる姿を見つけ、もう自分の中ではとっくに整理が
ついていたと思っていた気持ちは、結局は自分の気持ちをごまかしているんだなって気づきました。
もう1週間後には日本を発ち、ヒロ君にはもう二度と会えない。でも今日こうして出会えたのは
なにかの運命なのかなって自分にいいように考え、久恵にお願いして声をかけてもらいました。
久恵は最後までずいぶんと反対してたけど。
実はあの日、日本での最後の週末ってことで、久恵とは以前から朝まで語ろうと計画をしていました。
でも、偶然ヒロ君の姿を見かけその計画を変更して、私の家へと誘いました。
43 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:04:04 ID:nKH9eS2H0
こっからあの日に俺の行動(泥酔っぷり)について書かれてました。
家に電話するのに間違い電話を4、5回もしていたこと、しかもそのうち2回は同じ家に電話していたこと、
更に、やっと繋がったと思った電話も、妹がいたずら電話かと思い1度切られてしまったことなど。
もちろんエビの話しも書いてありましたよ・・・(照れ)。
(全文を書くのもちょっとどうかと思いますので途中省略します。)
44 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:04:48 ID:nKH9eS2H0
父の仕事の都合もあり、いつ日本に帰国できるのかはまだ分かりません。
日本に帰った時、あの日のように偶然ヒロ君の姿を見つけることができると信じています。
きっと見つけることができるよね?だってあの日、見つけることができたんだから。
少し大人になり、素敵な男性に成長したヒロ君の姿をきっと見つけることができると信じています。
ヒロ君も、もし偶然にも私の姿を見かけることがあったら、その時は声をかけてください。
塔子
P.S ずいぶんと心配していましたが、私は現在一人です。 安心しましたか?
それともヒロ君は酔っていたので、よく覚えていないかしら。
45 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:05:43 ID:nKH9eS2H0
ざっくりですが、こんな感じで塔子さんが日本を離れ、1ヶ月ちょっとしてからエアメールがきました。
最初この追伸の文の意味がよく分からなかった。
後に本人に聞いたところ、「赤ちゃんは出来ていませんでした」と言いたかったらしいです。
自分の部屋にこの手紙が置いてあったのを見たとき、心臓の鼓動が超早くなったよ。
もうすっごい勢いでドッキンドッキいってるの。その鼓動で胸が痛くなるぐらい。
塔子さんからだ!!
すぐに分かった。手紙なんてくれる人は塔子さんしかいないって思ってたし。
それにエアメールでしょ?海外に知り合いなんているわけもなく、もうこれは塔子さんでしょって確信した。
47 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:06:45 ID:nKH9eS2H0
俺の住所は、裕美・・・じゃなくって久恵さんが調べて知らせたらしいです。
久恵さんも、俺の号泣っぷり(後に「ありゃ〜ギネス級だったねぇ〜」と言ってました(照れ))を見て
ほんの少し(!と言っていた)可哀想と思ったことと、やっぱり塔子さんの行動に少なからず疑問を
抱いていたみたいなので、俺に連絡をするようにと勧めていたみたいです。
手紙を読み進めていくうちに当時の感触が蘇ってきて、どんどん涙が出てきた。
ホント涙で、字がにじんで見えなくて、まともに手紙が読めないぐらい涙が出た。
手紙をくれたことについては、ちょっと複雑な心境だった。
手紙が来たことについては、正直うれしかった。手紙そのものは確かにうれしかった。
でも、この手紙、来るのが早すぎた。もっと時間が経ってからきて欲しかった。
48 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:07:30 ID:nKH9eS2H0
だって俺まだまだ全然立ち直ってないんだもん。
まぁ〜ほんの僅かだけど心の傷は癒えてたと思うよ?そう屋上での出来事の時と比べるとね。
でも、まだぜんぜんダメ。ぜんぜんっていうか全くダメって感じ。
そんな、まだまだ落ち込んでいる最中にこの手紙でしょ。立ち直るために更に時間が必要だよって思った。
もう、相変わらず久恵は余計なこと言うなよな〜って当時は思った。
49 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:08:30 ID:nKH9eS2H0
どうにも出来ないもどかしさ、自分の力のなさ(旅費を捻出する経済力とかね)に憤りを感じた。
金がないなら密航でもなんでもしろって、思うかも知れないけど、俺、当時高校生じゃん?しかも屁たれ。
密航でもなんでもして、いざイギリスに行ったとしても、
どうやって塔子さんに会いにいけばいいのか、分からなかったよ。
言葉も通じない、地理もまったく分からない。分かってるのはイギリスって国の場所ぐらい。
(俺この時、社会の地理、5段階評価で2、英語は4だったけどそれじゃ無理でしょ!?)。
こりゃ迷子になって身元不明死体になること必至っしょ!?って思った。
会いたいって思う気持ちよりも、不安な気持ちの方が大きかったってのが、当時の俺の正直な意見。
それに会ってどうなるの?とも思った。せっかく会ってもずっと一緒にはいられないんだしって思った。
50 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:09:22 ID:nKH9eS2H0
更に、手紙の最後の数行が俺の熱意とわずかにあった勇気を一瞬でそぎ落とし、失意のどん底へ落とし込めたね。
普通、こういった場合、待っててくださいねとか、あなたに会いに日本へ帰りますとかって書かない?
そういったことが一切書かれてないんだもん。
いつ帰国するか分からないって、それっていくら待ってても無駄ですよって遠まわしな言い方でしょ?
あっこりゃもう終わったなって思った(ってゆ〜か始まってもいないけど)。
でも、そうは思ったもののやっぱなんか諦めきれない。それに自分自身納得ができなかった。
53 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:09:56 ID:nKH9eS2H0
俺はダメ元覚悟で返事を書いた。ミミズがのた打ち回ってるようなへたっぴな字で。
女性に手紙を書くなんて、小学生の時の交換日記以来のことだよと思いつつ書いた。
何度も何度も書いては消し、消しては書いての繰り返しだった。
2日ぐらいかかったかな?やっと完成した。汚い字だけど心を込めて書いた手紙が。
きっと俺のこの想いが塔子さんに届くだろうって、信じて書いた手紙が。
55 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:10:55 ID:nKH9eS2H0
約3年の時が過ぎた。俺大学2年生。
56 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:11:54 ID:nKH9eS2H0
俺は、同じ学校の同じ年の子(以下、優菜)と付き合い始めた。
まぁ〜優菜との付き合い、楽しかったことは楽しかった。お惚気じゃないが結構可愛かったし、性格もよかった。
優菜に対しては別になんの不満もなく、周りの人たちもいいカップルだねって言ってくれてた。
お世辞じゃなくみんな本心からそう言ってくれてるんだと、自分自身でも分かっていた。
でもね、お決まりの台詞じゃないけど、なんか違う。
優菜は優菜でホントいい子なんだよ。俺にはもったいないって、謙遜してるわけじゃなくそう思ってた。
でもね、いくらいい子でもこの子は塔子さんじゃないんだよねって思った。当たり前だけど。
57 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:12:27 ID:nKH9eS2H0
こんな思いのまま、この付き合いを続けても相手に悪いと思ったし、
なにより自分の気持ちに嘘をつくのがたまらなく嫌だった。
結局、俺の方から別れ話を切り出して別れた。その話しをした時、優菜あまりびっくりしていなかったよ。
俺の心の中には、自分とは違う誰か他の人がいる、っていうのが分かってたみたい。実際そう言われたし。
当人よりもむしろ周りの人の方がびっくりしてたっけ。
フリーになった俺だけど、塔子さんに会いに行こうなんて思わなかったよ。
だって、もう諦めろってニュアンスの手紙ももらってたから。
58 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:13:15 ID:nKH9eS2H0
なにも変ったこともなく、更に1年の時が過ぎた。俺が大学3年生の時の冬の話し。
冬休みってことで、下宿先から実家へ帰るのに俺、電車を間違えて乗っちゃって、
自分の降りる駅の2個手前までしかいかない電車に乗っちゃったんだ。
あぁ〜なんか久しぶりだなぁ〜って感じで駅の階段を降りていった。
何年経っても変り映えしない駅前の光景を見回し、特になんもすることもないし
次の電車の時間まで、本屋で立ち読みでもするかって思って、駅の階段わきの狭い歩道を歩き出した。
ホント歩道が超狭くって、車に荷物を入れようとしている、白いコートを着た女性と俺はぶつかった。
「あっ!ごめんなさい」「すませぇ〜ん」
ほぼ同時に言葉を発し、その女性のわきをすり抜けようとした時、なにか違和感を感じた。
59 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:14:15 ID:nKH9eS2H0
なにかって分からなかったけど、本能が俺に何かを訴えかけてくる。そんなような気がした。
当時、そんな風に思ったかどうか定かじゃないんだけど、なにかが気になったことは確かだった。
俺はその違和感を確かめるべく、何気なく振り返った。
それまでうるさかった周りの喧騒が、一瞬で聞こえなくなった。本当にそんな気がした。
全身が小刻みに震え、寒気というかぞくぞくすると言うか、もうなんていうんだろ?
とにかく、もうなんとも言えない感覚に捉われた。
その俺の気配を感じたのか、その女性がゆっくりと顔を上げ俺の顔を見た。
60 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:14:52 ID:nKH9eS2H0
はっとするその女性。左手を自分の口にあて、信じられないって表情で俺を見ている。
その女性の瞳が妙にきらきらしていた。車のライトや街頭がその女性の瞳に反射している。
そのきらめきが一瞬なくなったような気がした。そう思うと同時にその女性の目から大粒の涙がこぼれ出した。
何粒も何粒も、口に当てた手を伝わり涙が道路に落ちる。
自分を落ち着かせるためか、その女性は右手を自分の胸にあて、少しの間目をつぶっていた。
その間も、閉じた瞼から涙が何粒かこぼれ出していた。
どれぐらい時間が経ったんだろ?多分長くても1分ぐらいだろうね?
俺その間、超間抜けに口を半開きにしてたと思う。
なにか言わなきゃ、そう思ったけど言葉が出てこない。
なにかとてつもなく大きな物を飲み込んで、息苦しいような感じっていうのかな?
喉になにか詰まってる、そんな感じがした。
塔子・・・さん?やっぱ塔子さんだよな?
テーブルの由香さんがに移動しいざ座ろうと思ったが、椅子は片側3脚ある。
由香さんは一番奥に座っていた。俺、真ん中でいいんか?と思ったが一番手前に座った。
それを見た裕美が言った。
「どうして君は離れたとこに座るかなぁ〜。隣に座ってあげなよ」
「あっ、はい・・・」ちょっと照れくさかったが素直に裕美の言葉に従った。
ナイスフォロー裕美!グッジョブ!(って当時そんな言い方なかったけど)。
俺が席に着くと同時に、由香さんが紅茶を持ってきて俺の隣に座った。
ふわっと昨日と同じリンスの匂いがした。やっぱ昨日のことは夢じゃなかったんだと確信できたひと時だった。
「はい、どうぞ。お砂糖は?」
「いえ、いらないっす」いつもは2,3杯砂糖を入れる俺はかっこつけて言った。
一口飲んでの感想。やっぱ砂糖入れればよかった・・・
814 :607: sage New! 2005/10/20(木) 13:43:01 ID:6xTudlpc0
不気味な静けさが辺りを包む。誰も何も話さない。
由香さんは頬杖をういて、顔を少し横に向けティーカップをいじっている。
そういった姿の由香さん絵になるなぁ〜。ぼーっと見とれている俺。
かたや裕美はと言うと、椅子の背もたれに片腕を回し、あごに手をやり
足を組んでふんぞり返って(ちょと大げさかも)座り、由香さんをじっと見ている。
まるでこの家の主みたい。違う意味でこれも絵になっている。
どれぐらい時間が経っただろう?突然裕美が言った。
「ねぇ?由香?・・・いいの?」
うんっ?いいのって何が?主語もなにもなく裕美の言ってる意味が一人分からない俺。
「うん」自分の返事を噛みしめるように、軽く二度三度うなずきならが、ちょっと口に笑みを携え由香さんが答えた。
ちょっと沈黙の後、裕美がつぶやいた。
「・・・そっか・・・」
815 :607: sage New! 2005/10/20(木) 13:51:40 ID:6xTudlpc0
あのぉ〜お二人の会話、俺、まったくみえてないんですけど?
そう思ったのもつかの間、その場の雰囲気をかき消すかのように裕美が元気よく
立ち上がりながら言った。
「そっか。分かった」
いや、俺分かってないんですけど・・・
「ヒロ君ごめんね、私たちちょ〜っとこれから用事があるんだ。それで悪いんだけど」
みなまで言うな裕美。そこまで言われれば分かります。
裕美の言葉を途中でぶった切るように俺は「あっ、はい。分かりました」と急いで返事をした。
「ごめんね」自分の顔の前で手を合わせ、謝るような仕草をする裕美。
816 :607: sage New! 2005/10/20(木) 13:59:12 ID:6xTudlpc0
帰り支度(と言っても制服の上着を着てバックを持つぐらいだけど)をして玄関へと。
その場でさよならかと思ったけど、二人とも外まで見送りに出てきてくれた(正直いって裕美が邪魔だと思った)。
なんて言っていいのか分からなかったが、そこは進行役の裕美の出番。
「一人で帰れるか?まっ気をつけて帰りたまえ」
「あっ、どうもお邪魔しました」そう言い、少し頭を下げ由香さんの方を見た。
素敵な笑顔で応えてくれましたよ。俺超ハッピーって感じだった。
「じゃ」といってその場から立ち去る俺。
帰り道、俺なんで連絡先聞かなかったんだろう?って思った。
でも同じ学校だし会おうと思えばいつでも会えるでしょって簡単に考えてた。
817 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:08:56 ID:6xTudlpc0
なんか家についてもふわふわした気分で、のぼせてるみたいだった。
昨日の出来事って本当は夢なんじゃないかと思えた。
でも、お風呂に入ったとき、由香さんが肩につけた爪あとがちくりとしたからやっぱ現実なんだって思った。
俺、この体験を友達に超話したかったし、自慢したかった。でも止めておいたよ。
こんな話しをして、友達が好奇の目で由香さんを見ることに耐えられなかったし、
せっかくの想い出が汚されると思ったから。
学校へ行ってもしばらく、授業の内容が身に入らなかった。
まっそれは以前からだからあまり変わらないんだけどな。
もう由香さんのことしか考えられなかった。もう俺の中由香さんで一杯。
日を追うごとに思いが募る。由香さんを訪ねて2年の教室に行くか?
いや、でもちょっと恥ずかしいし、やっぱ上級生のフロアに行くのは緊張する。
819 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:23:45 ID:6xTudlpc0
友達と一緒なら行けるか?とも思ったけど、そうするなら事情を話さなくては友達も納得しないだろ。
由香さんとのことを話すわけにはいかないし。
由香さんに会いたい、やっぱ会いに教室まで行くか?いや、でも・・・
見事な腰抜けっぷりを存分に発揮する俺。ジレンマに陥り時間だけがいたずらに過ぎていく。
近いうちに会えるだろう。そう自分に言い聞かせるように無理やり納得させその時を待った。
820 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:27:44 ID:6xTudlpc0
裕美の姿は1、2度見た。裕美なんてどうでもいいんだよ。由香さんだよ由香さん。
しかし由香さんの姿を見かけることはなかった。ってゆーかおかしくないかっ?
同じ学校だぞ?いくらなんでも姿さえ見かけないってことあるか?
もう我慢でっきーん!俺は意を決した!
ようし放課後待ち伏せ作戦だ!(意を決したわりには屁たれな作戦でごめん)。
2年生が利用する階段でうんこ座りをしながら待つ俺。
何度も、「んだっ、こいつぁ〜?おらぁ〜!」って感じの先輩の厳しい視線に晒されること数十分。
本命ではないが、裕美発見。裕美も俺に気づいたようだ。
はっとするような表情をする裕美。
この時その裕美の表情が気になった。なんかいやな予感がした。妙な胸騒ぎがした。
821 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:36:26 ID:6xTudlpc0
軽く会釈をする俺の脇を逃げるように、足早に去ろうとする裕美。
えっ!?ちょっと、なんか意外な反応なんすけど。慌てて俺は声をかけた。
「いや、ちょっと、先輩っ!!」ちょうど通りかかった2,3人の先輩が振り向いた。
おめぇ〜らじゃねぇ〜よ。心の中で突っ込みつつ、裕美の後を追った。
「ちょっと、先輩待ってくださいよ」
「あぁ・・・君か」今始めて気づいたって感じでちょっと動揺しながら裕美が言った。
「いや、君かじゃなくって、今、視線合ったじゃないっすか」
「あっ、ごめん、気づかなかったよ」んなわけねぇ〜だろ。ばっちり視線合ってたじゃん!?
そう突っ込みたかったが、そんな押し問答してる場合じゃないと、冷静になる俺。
「で、なにっ?」ちょっときつめの口調で裕美が聞いてきた。
「?」今日はやけにきついな。そう思いながら尋ねた。
823 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:43:07 ID:6xTudlpc0
「あっいや、由香さん、何組かを聞こうかと思って」
「・・・」
?意外な反応なんすけど。すぐに教えてくれるかと思ってたから。
じっと俺のことをを厳しい目つきで見つめる裕美。えっ!?なに?ホントなに?この反応は?
聞こえなかったのか?もう一度聞くか。
「由香さ・・・」
俺の言葉を遮るように裕美が答えた。
「由香、いないよ」
「はっ!?いないって?今日休みってこと?」
「いや、違う。もうこの学校にはいないってこと」
はっ!?もうこの学校にはいないってどういうこと?意味がわからん。
825 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:49:28 ID:6xTudlpc0
「・・・えっ!?・・・えっ!?はっ!?」
この学校にはいない?もういない?もう???
なんか裕美の言った言葉が理解できずに軽い錯乱状態。
微動だにしない俺に向かって裕美が言ってきた。
「由香、家の事情で学校辞めたの」
はぁっ!?学校辞めた?えっ?誰がっ!?俺、この時言葉も出なかった。
「だから、もうこの学校にはいないの。分かった?」
そう言い、その場を立ち去ろうとする裕美。
おいっ!お前ちょっと待てよっ!そんな話しで納得できるか!俺、ぶち切れた!
829 :607: sage New! 2005/10/20(木) 14:59:26 ID:6xTudlpc0
「ちょっと待てよっ!」
腹の底から絞り出すような大声でどなり、裕美の腕を力いっぱい掴んで強引にこっちに引き寄せた。
少しおびえたような表情をする裕美。
「はぁっ!?ちょっと待てよ!お前、なに言ってんだっ!?」
もう先輩も後輩もない。切れてる俺に上下関係はない。
その声を聞きつけた、周りの2年生の男共が「んだっこのヤロー」って感じで威嚇しながら近寄ってきた。
ヤバイかなって思ったけど、そんなこと気にしてる余裕なんてその時の俺にはなかった。
「君、ちょっと落ち着きな。なんでもないから、大丈夫だから」
後半の台詞はいかついお兄様方へ向かって投げかけた裕美の言葉。
収まりがつかないご様子のお兄様を見て、まずいと思ったのか裕美が俺の手を引き屋上へと移動した。
831 :607: sage New! 2005/10/20(木) 15:10:44 ID:6xTudlpc0
屋上で裕美が話しを始めた。
由香さんは、父親の仕事の都合で海外(イギリス)に留学することが決まっていたこと。
本当は、9月に行かなくてはいけなかったんだけど、どうしても心残り(俺のこと)があるのでひとり日本に残っていたこと。
自分のわがままで親に迷惑をかけるわけにはいかないので、自分で出来る限りのことをしようとバイトをしていたこと。
そう言われていればそうだよな。あんな豪邸に暮らしていてバイトするのってへんだよな。
その話しを聞いて初めて納得した。
なんかその話しを聞いて悲しくなってきたというか、健気な由香さんを思って可哀想で泣けてきた。
もう超号泣って感じ。これが号泣じゃなかったらなにが号泣なんだって感じで泣いた。
いくら泣いても泣き足りない。この悲しみや由香さんを思う愛おしさをどこにぶつけていいのか分からなかった。
俺は腕をぶんぶん振り回し、泣きながら裕美に言った。
「何であの時言ってくれなかったんだよっ!?先輩、知ってたんでしょ?何でだよっ!?」
833 :607: sage New! 2005/10/20(木) 15:19:05 ID:6xTudlpc0
もう涙なんてぬぐってる場合じゃない。涙や鼻水、もう色んな物が出てたと思う。
でもそんなのなんてお構いなしって感じだった。
「もうっ!先輩ずっけぇ〜よっ!何でだよっ!何でだよっ!何でなにも言ってくれなかったんだよっ!」
あ〜ん、あ〜んって子供みたいに泣きじゃくったよ。もう後半自分でなに言ってるか分からんかったよ。
そんな中突然裕美が大声で言ってきた。
「じゃどうればよかったのっ!?えっ!?じゃあの時、由香はもう近々学校辞めて海外に行くんだよって言えばよかったわけっ!?
それ聞いてうするのっ!?どうすることも出来なかったでしょ!?」
後半裕美も涙声っすよ。
その裕美の言葉聞いて、更に泣きっすよ。確かにどうすることも出来なかったよ。
でもね、でも、いくらなんでもそれってひどすぎっすよ由香さん。残酷だよ。
834 :607: sage New! 2005/10/20(木) 15:29:28 ID:6xTudlpc0
「由香はもう君の事諦めるつもりだったんだよ。でも偶然あの時会っちゃったから。
私はお互い悲しい思いするから止めておきなっていったんだよ。そのことについては由香もずいぶん考えてみたい。
でも、由香、君が自分のこと好きなってくれるなんて思ってもいなかったみたいね。
だから青春のいい想い出ってことで、たまに思い出すぐらいじゃないかねって言ってたよ」
そんなわけないじゃん!なに勝手に人の気持ちを決め付けてるんだよ!
俺その台詞聞いた途端、制服がよごれるなんて気にもせずにその場に突っ伏してて泣いたよ。
更に大声で泣いたよ。喉から血が出るんじゃないかってぐらい声を張り上げ泣いた。
836 :607: sage New! 2005/10/20(木) 15:38:46 ID:6xTudlpc0
どれぐらい時間が経ったんだろ?もう涙も出尽くしたって感じがした。
俺はゆっくりと立ち上がった。もう辺りは真っ暗だよ。
とっくに裕美はいないと思ってたけど、じっと待っててくれた。
ちょっと悲しそうな、物悲しそうな視線で俺を見ている。
俺は顔に涙をぬぐうようにして、その場を立ち去ろうとした。
その時、裕美がハンカチを差し出した。そのハンカチに見向きもせずに俺はゆっくりと歩き出した。
「由香は・・・由香もあの日の朝泣いてた・・・」
由香の言葉が背中越しに聞こえた。その言葉でまた涙が流れた。
首を振りながら俺はその場を立ち去った。もうそんな話しは聞きたくなかった。
いくら聞いたところでもう由香さんには会えない。なんの意味もない言葉だ。
838 :607: sage New! 2005/10/20(木) 15:49:07 ID:6xTudlpc0
しばらくもぬけの殻のように俺は過ごした。
朝起きて、支度をして、電車に乗り、学校に行き、友達とバカやってすごした。
友達を一緒にいる時は、由香さんのこと考えずに過ごせた。
でも夜一人になるとやっぱり思い出す。裕美が最後に言った台詞が。
「由香もあの日の朝泣いてたよ」
聞くんじゃなかったよそんな話し。
その台詞のせいで立ち直るまでかなりかかったよ。
まったく裕美も余計なこと言うよな。
839 :607: sage New! 2005/10/20(木) 15:53:04 ID:6xTudlpc0
そんな屁たれで、泣き虫で根性なしな俺も来月結婚します。
一つ年上の、色白で華奢でハスキーな声の持ち主のイギリス帰りの素敵な女性と。
由香さん改め、塔子さんと結婚します。
長々とお付き合いありがとうございました。
じゃ(by 裕美改め久恵さん)。
38 :607: sage New! 2005/10/23(日) 22:59:56 ID:nKH9eS2H0
ヒロ君、お元気ですか?
手紙はシンプルな便箋に、塔子さんらしい綺麗な字でこう始まりました。
(ほぼ原文のまま書きます)
久恵から聞いてもう知っていると思いますけど、私は今、イギリスのリバプールという街にいます。
ヒロ君はリバプールという街を知っていますか?
リバプール?どこだそれ?ビートルズにもサッカーにもまるっきり興味がなく、
イギリスというとロンドンしか思い浮かばない、俺の無知っぷりを知ってか知らずか
リバプールの街についての説明が数行あったけど省略。
39 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:00:21 ID:nKH9eS2H0
あの後、自分の口から留学することをヒロ君に伝えようかとずいぶん悩んだけど、結局言えませんでした。
ヒロ君にその話しをしている最中に、きっと泣いてしまうだろうなと思っていたし、
せっかくの決心が鈍ると思い出来ませんでした。
それに伝えたところで、もうどうすることも出来ないって思っていたから・・・。
40 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:01:42 ID:nKH9eS2H0
あの後のことを、久恵からの手紙で知りました。
ヒロ君の気持ちを考えずに、自分本位な行動をしてしまったこと、また逃げるように日本を発った
自分の行動が恥ずかしいと思い、今とても後悔しています。
でも誤解のないように言っておきたいんですけど、ヒロ君とああいったことになり、
自分の思いを遂げることができたから、イギリスへと発つ決心をしたわけわけではありません。
あの日から1週間後に日本を発つことはもう、前から決まっていたんです。
でもこれって自分勝手な考えで、結局は言い訳ですよね。
それにヒロ君が私に好意を寄せてくれる可能性があるなんて、考えてもいなかったから。
だって、ヒロ君の前の彼女と私、ぜんぜんタイプが違うでしょ?
41 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:03:34 ID:nKH9eS2H0
あの日、本当に偶然ヒロ君が一人でいる姿を見つけ、もう自分の中ではとっくに整理が
ついていたと思っていた気持ちは、結局は自分の気持ちをごまかしているんだなって気づきました。
もう1週間後には日本を発ち、ヒロ君にはもう二度と会えない。でも今日こうして出会えたのは
なにかの運命なのかなって自分にいいように考え、久恵にお願いして声をかけてもらいました。
久恵は最後までずいぶんと反対してたけど。
実はあの日、日本での最後の週末ってことで、久恵とは以前から朝まで語ろうと計画をしていました。
でも、偶然ヒロ君の姿を見かけその計画を変更して、私の家へと誘いました。
43 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:04:04 ID:nKH9eS2H0
こっからあの日に俺の行動(泥酔っぷり)について書かれてました。
家に電話するのに間違い電話を4、5回もしていたこと、しかもそのうち2回は同じ家に電話していたこと、
更に、やっと繋がったと思った電話も、妹がいたずら電話かと思い1度切られてしまったことなど。
もちろんエビの話しも書いてありましたよ・・・(照れ)。
(全文を書くのもちょっとどうかと思いますので途中省略します。)
44 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:04:48 ID:nKH9eS2H0
父の仕事の都合もあり、いつ日本に帰国できるのかはまだ分かりません。
日本に帰った時、あの日のように偶然ヒロ君の姿を見つけることができると信じています。
きっと見つけることができるよね?だってあの日、見つけることができたんだから。
少し大人になり、素敵な男性に成長したヒロ君の姿をきっと見つけることができると信じています。
ヒロ君も、もし偶然にも私の姿を見かけることがあったら、その時は声をかけてください。
塔子
P.S ずいぶんと心配していましたが、私は現在一人です。 安心しましたか?
それともヒロ君は酔っていたので、よく覚えていないかしら。
45 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:05:43 ID:nKH9eS2H0
ざっくりですが、こんな感じで塔子さんが日本を離れ、1ヶ月ちょっとしてからエアメールがきました。
最初この追伸の文の意味がよく分からなかった。
後に本人に聞いたところ、「赤ちゃんは出来ていませんでした」と言いたかったらしいです。
自分の部屋にこの手紙が置いてあったのを見たとき、心臓の鼓動が超早くなったよ。
もうすっごい勢いでドッキンドッキいってるの。その鼓動で胸が痛くなるぐらい。
塔子さんからだ!!
すぐに分かった。手紙なんてくれる人は塔子さんしかいないって思ってたし。
それにエアメールでしょ?海外に知り合いなんているわけもなく、もうこれは塔子さんでしょって確信した。
47 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:06:45 ID:nKH9eS2H0
俺の住所は、裕美・・・じゃなくって久恵さんが調べて知らせたらしいです。
久恵さんも、俺の号泣っぷり(後に「ありゃ〜ギネス級だったねぇ〜」と言ってました(照れ))を見て
ほんの少し(!と言っていた)可哀想と思ったことと、やっぱり塔子さんの行動に少なからず疑問を
抱いていたみたいなので、俺に連絡をするようにと勧めていたみたいです。
手紙を読み進めていくうちに当時の感触が蘇ってきて、どんどん涙が出てきた。
ホント涙で、字がにじんで見えなくて、まともに手紙が読めないぐらい涙が出た。
手紙をくれたことについては、ちょっと複雑な心境だった。
手紙が来たことについては、正直うれしかった。手紙そのものは確かにうれしかった。
でも、この手紙、来るのが早すぎた。もっと時間が経ってからきて欲しかった。
48 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:07:30 ID:nKH9eS2H0
だって俺まだまだ全然立ち直ってないんだもん。
まぁ〜ほんの僅かだけど心の傷は癒えてたと思うよ?そう屋上での出来事の時と比べるとね。
でも、まだぜんぜんダメ。ぜんぜんっていうか全くダメって感じ。
そんな、まだまだ落ち込んでいる最中にこの手紙でしょ。立ち直るために更に時間が必要だよって思った。
もう、相変わらず久恵は余計なこと言うなよな〜って当時は思った。
49 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:08:30 ID:nKH9eS2H0
どうにも出来ないもどかしさ、自分の力のなさ(旅費を捻出する経済力とかね)に憤りを感じた。
金がないなら密航でもなんでもしろって、思うかも知れないけど、俺、当時高校生じゃん?しかも屁たれ。
密航でもなんでもして、いざイギリスに行ったとしても、
どうやって塔子さんに会いにいけばいいのか、分からなかったよ。
言葉も通じない、地理もまったく分からない。分かってるのはイギリスって国の場所ぐらい。
(俺この時、社会の地理、5段階評価で2、英語は4だったけどそれじゃ無理でしょ!?)。
こりゃ迷子になって身元不明死体になること必至っしょ!?って思った。
会いたいって思う気持ちよりも、不安な気持ちの方が大きかったってのが、当時の俺の正直な意見。
それに会ってどうなるの?とも思った。せっかく会ってもずっと一緒にはいられないんだしって思った。
50 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:09:22 ID:nKH9eS2H0
更に、手紙の最後の数行が俺の熱意とわずかにあった勇気を一瞬でそぎ落とし、失意のどん底へ落とし込めたね。
普通、こういった場合、待っててくださいねとか、あなたに会いに日本へ帰りますとかって書かない?
そういったことが一切書かれてないんだもん。
いつ帰国するか分からないって、それっていくら待ってても無駄ですよって遠まわしな言い方でしょ?
あっこりゃもう終わったなって思った(ってゆ〜か始まってもいないけど)。
でも、そうは思ったもののやっぱなんか諦めきれない。それに自分自身納得ができなかった。
53 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:09:56 ID:nKH9eS2H0
俺はダメ元覚悟で返事を書いた。ミミズがのた打ち回ってるようなへたっぴな字で。
女性に手紙を書くなんて、小学生の時の交換日記以来のことだよと思いつつ書いた。
何度も何度も書いては消し、消しては書いての繰り返しだった。
2日ぐらいかかったかな?やっと完成した。汚い字だけど心を込めて書いた手紙が。
きっと俺のこの想いが塔子さんに届くだろうって、信じて書いた手紙が。
55 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:10:55 ID:nKH9eS2H0
約3年の時が過ぎた。俺大学2年生。
56 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:11:54 ID:nKH9eS2H0
俺は、同じ学校の同じ年の子(以下、優菜)と付き合い始めた。
まぁ〜優菜との付き合い、楽しかったことは楽しかった。お惚気じゃないが結構可愛かったし、性格もよかった。
優菜に対しては別になんの不満もなく、周りの人たちもいいカップルだねって言ってくれてた。
お世辞じゃなくみんな本心からそう言ってくれてるんだと、自分自身でも分かっていた。
でもね、お決まりの台詞じゃないけど、なんか違う。
優菜は優菜でホントいい子なんだよ。俺にはもったいないって、謙遜してるわけじゃなくそう思ってた。
でもね、いくらいい子でもこの子は塔子さんじゃないんだよねって思った。当たり前だけど。
57 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:12:27 ID:nKH9eS2H0
こんな思いのまま、この付き合いを続けても相手に悪いと思ったし、
なにより自分の気持ちに嘘をつくのがたまらなく嫌だった。
結局、俺の方から別れ話を切り出して別れた。その話しをした時、優菜あまりびっくりしていなかったよ。
俺の心の中には、自分とは違う誰か他の人がいる、っていうのが分かってたみたい。実際そう言われたし。
当人よりもむしろ周りの人の方がびっくりしてたっけ。
フリーになった俺だけど、塔子さんに会いに行こうなんて思わなかったよ。
だって、もう諦めろってニュアンスの手紙ももらってたから。
58 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:13:15 ID:nKH9eS2H0
なにも変ったこともなく、更に1年の時が過ぎた。俺が大学3年生の時の冬の話し。
冬休みってことで、下宿先から実家へ帰るのに俺、電車を間違えて乗っちゃって、
自分の降りる駅の2個手前までしかいかない電車に乗っちゃったんだ。
あぁ〜なんか久しぶりだなぁ〜って感じで駅の階段を降りていった。
何年経っても変り映えしない駅前の光景を見回し、特になんもすることもないし
次の電車の時間まで、本屋で立ち読みでもするかって思って、駅の階段わきの狭い歩道を歩き出した。
ホント歩道が超狭くって、車に荷物を入れようとしている、白いコートを着た女性と俺はぶつかった。
「あっ!ごめんなさい」「すませぇ〜ん」
ほぼ同時に言葉を発し、その女性のわきをすり抜けようとした時、なにか違和感を感じた。
59 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:14:15 ID:nKH9eS2H0
なにかって分からなかったけど、本能が俺に何かを訴えかけてくる。そんなような気がした。
当時、そんな風に思ったかどうか定かじゃないんだけど、なにかが気になったことは確かだった。
俺はその違和感を確かめるべく、何気なく振り返った。
それまでうるさかった周りの喧騒が、一瞬で聞こえなくなった。本当にそんな気がした。
全身が小刻みに震え、寒気というかぞくぞくすると言うか、もうなんていうんだろ?
とにかく、もうなんとも言えない感覚に捉われた。
その俺の気配を感じたのか、その女性がゆっくりと顔を上げ俺の顔を見た。
60 :607: sage New! 2005/10/23(日) 23:14:52 ID:nKH9eS2H0
はっとするその女性。左手を自分の口にあて、信じられないって表情で俺を見ている。
その女性の瞳が妙にきらきらしていた。車のライトや街頭がその女性の瞳に反射している。
そのきらめきが一瞬なくなったような気がした。そう思うと同時にその女性の目から大粒の涙がこぼれ出した。
何粒も何粒も、口に当てた手を伝わり涙が道路に落ちる。
自分を落ち着かせるためか、その女性は右手を自分の胸にあて、少しの間目をつぶっていた。
その間も、閉じた瞼から涙が何粒かこぼれ出していた。
どれぐらい時間が経ったんだろ?多分長くても1分ぐらいだろうね?
俺その間、超間抜けに口を半開きにしてたと思う。
なにか言わなきゃ、そう思ったけど言葉が出てこない。
なにかとてつもなく大きな物を飲み込んで、息苦しいような感じっていうのかな?
喉になにか詰まってる、そんな感じがした。
塔子・・・さん?やっぱ塔子さんだよな?