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引っ越してきた二つ年下の子

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近所に引っ越してきた二つ年下の女の子「香子」。小学生の>>1が香子を助けた事がきっかけで、二人の距離は次第に縮まってゆくのだが………傷つけては離れ、また近づいてゆく。そんな二人の物語。
Part1
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 09:14:33.30 ID:9k1Z+XoP0
ちょっと遅めのお盆休みで実家に帰ってきたら、
昔のことを思い出した。
友人・知人にはなかなか話せないので、
ここで淡々と書いてみる。

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 09:19:54.22 ID:9k1Z+XoP0
もうすぐ小三になる春休み。
団地住まいだった俺は、いつものように団地の真ん中にある
ちょっとした公園で、近所の友達と遊んでいた。
春は引越しのシーズンで、その日もあちらこちに
引越しのトラックが停まっていて、忙しく荷物を運び出している。
団地では、毎年の風景でもあった。

11 :1:2009/08/25(火) 09:27:23.99 ID:9k1Z+XoP0
公園のジャングルジムに登って、そんな光景を眺めていたら、
ふと、一台の引越しのトラックのそばに、一人小さな女の子がいることに気付いた。
人形を抱えながら、忙しく働く引越し業者さんや両親らしき人を見つめている。
その子が目に付いたのは、どうも、俺の周りにはいないようなタイプだったからだ。
ウチの地元は田舎で、子供と言えばTシャツに短パンやら、ミニスカートやら、
適当な動きやすい服のやつばかりだったのだが、
その子はまるで余所行きのような花柄のワンピースで、
ちょっと癖のある栗色の髪には、可愛らしいリボンまでついていて、
まるで漫画に出てくるような女の子だった。

13 :1:2009/08/25(火) 09:32:48.70 ID:9k1Z+XoP0
ボケーとその様子を見ていると、ちょっとだけ女の子の不安な様子が感じられた。
そういえば、俺も引越してきたときは見知らぬものだらけで、
友達もいないし、心細かったなあ、などと思っていたが、
だからといってその子に話しかけるようなこともなく。
下から友達の呼ぶ声が聞こえ、その子を忘れてジャングルジムから降りた。

16 :1:2009/08/25(火) 09:40:12.63 ID:9k1Z+XoP0
新学期が始まって、俺は三年生になった。
人生初のクラス替えもあったりしたが、まあ三分の一は前と同じヤツだし、
そこまで憂鬱になることもなかった。
相変らず勉強もそこそこに遊び回る毎日。
特に、下校中に道草をくうのが楽しくて、下校は登校の3倍以上の時間がかかったものだ。
そんな4月の終わりのある日。
いつものように俺は下校中に友達んち経由で大回りで帰ったため、
普段は通らない登下校コースを歩いていた。
人通りの少ない、閑静な住宅街。
その細い道の傍らで、女の子がしゃがみ込んで泣いていた。


20 :1:2009/08/25(火) 09:50:11.26 ID:9k1Z+XoP0
それは春休みに見かけた、引っ越ししてきた女の子だった。
その後も何度か見かけたが、団地以外では初めてだ。
ランドセルについたカバーから、彼女が一年生だということがわかった。
三年生にもなると、ちょっと先輩面というか、お兄さんっぽくしたい気持ちも出てくる。
相手が新一年生ともなると、尚更だ。
俺は、泣いてるその子の隣に行って同じようにしゃがみこんだ。
「君、○○団地の子だよね?どうしたの?」
女の子はハッと顔を上げ、俺を見つめた。
瞬間、更にポロポロと涙が零れる。
「どうしたの?大丈夫?」
相手を刺激しないように、なるべく優しく聞いたつもりだ。
「……おうちが、わかんなく、なっちゃた」
彼女はなんとかそれだけ言うと、またわんわん泣き出した。

23 :1:2009/08/25(火) 09:55:58.07 ID:9k1Z+XoP0
まあ予想通りの答えではあった。
田舎の道は入り組んでいて、俺も一年生の頃はよく迷ったものだ。
「じゃ、連れてってやるよ。」
「え?」
俺は立ち上がると泣いている女の子の手を引いた。
女の子はゆっくりとだが、立ち上がった。
「さ、帰ろう。」
女の子は黙って頷いた。
喋ったこともなかった女の子といきなり手を繋げるなんて、
子供の頃の無鉄砲な勢いっていうのは、偉大だと思う。

28 :1:2009/08/25(火) 10:04:20.35 ID:9k1Z+XoP0
かといって、気を使って女の子に話しかけるようなスキルは当然無い。
そのまま黙々と団地へと歩き続けた。
女の子も黙って歩いた。
団地が近づいてくると、その入り口でキョロキョロと辺りを見回している女の人がいた。
「あ、ママ!」
その人は女の子のお母さんだったようだ。
娘の帰りが遅かったので心配して出てきたのだろう。
女の子は俺の手を離すと、お母さんに向って走っていった。
女の子はお母さんに抱きついて、一頻り泣いた後、
こっちを振り返って俺を指した。
お母さんがペコっと頭を下げて、こっちに向ってくる。
大人の人に頭を下げられるなんて初めてだった俺は、
なんか混乱と気恥ずかしさで、その場を走って逃げ出してしまった。

31 :1:2009/08/25(火) 10:12:44.70 ID:9k1Z+XoP0
その日の夜、ウチに女の子とお母さんが尋ねてきた。
義理堅いお母さんだった。わざわざ俺がどこのウチの子か近所で聞いて回ったらしい。
俺は母親によって無理矢理玄関に呼ばれ、お母さんからお礼のケーキを受け取った。
女の子はずっとお母さんの足にしがみついていて、チラチラと俺と母親を交互に見ていた。
俺は嬉しいとか誇らしいとかそういう気持ちは全然なくて、
ただ早く自分の部屋に戻りたかった。
が、女の子達が帰った後、母親に褒められたのは悪い気がしなかった。
「香子ちゃんは一年生で、こっちにきたばっかりなんだから、これからも助けてあげなさいよ?」
「んあ。」
そうか『かこちゃん』っていうんだな。名前も知らんかった。
そんなことを思いながら食べるケーキは、美味かった。

33 :1:2009/08/25(火) 10:21:51.56 ID:9k1Z+XoP0
まもなくGWに入った。
俺はいつものごとく団地で遊びながらも、どこかで香子の姿を探したが、
連休中にその姿を見る事はなかった。
GWが終わり、ダルイ学校生活がまた戻る。
朝、欠伸をしながら家を出ると、公園を挟んで向かいの棟の下に、
香子とお母さんがいるのが見えた。
お母さんに何事か言われ、香子がこっちに走ってくる。
なんだなんだと思いつつ待っていると、香子は小さな袋を差し出してきた。
「これ。」
「ん?くれるの?」
香子が頷くので、袋を貰って開けて見ると、中から陶器で出来たフグのキーホルダーが出てきた。
後で聞いた話だが、お爺ちゃんの家が下関にあるそうだ。
「おみやげ。」
「あー…ありがとう。」
物を貰ったらお礼を言う。それくらいは子供でも分かった。
香子は嬉しそうに笑顔を見せた。

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 10:26:24.20 ID:kgfbKzUT0
GW不自然じゃね?
お土産の前振りなんだろうけど
何にも無いなら要らないだろwwwwww

37 :1:2009/08/25(火) 10:29:54.12 ID:9k1Z+XoP0
>>34
すみません、GW中に香子が下関に行ってた、というだけです。

35 :1:2009/08/25(火) 10:28:30.40 ID:9k1Z+XoP0
俺はそのまま学校へと歩きだす。
と、香子もトコトコと付いて来る。……目的地が一緒なので当たり前だが。
さすがに登校中に手を繋ぐようなマネは出来なかったが、
ほっといてどんどん先に行く訳にもいかないので、歩くペースを彼女にあわせた。
「学校慣れた?」
「………うん。うぅん。」
歯切れの悪い返事だった。
これも後から知ったんだが、都会っ子の香子は服も垢抜けてたし、
容姿もまるで人形のように可愛らしかったが性格が大人しかったため、
クラスでちょっと浮いていたらしい。
団地にも同い年の子はいるはずなのに、一緒に登校するところを見たことは無かった。

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 10:29:25.40 ID:fCnBdBUU0
書き溜めは・・・
してなさそうだな

39 :1:2009/08/25(火) 10:31:07.63 ID:9k1Z+XoP0
>>36
すみません、お盆休み最終日に
直で書いてます

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 10:30:52.35 ID:ySK/OHUe0
まぁまぁ自分語りなんだから好きにやらせてあげなよ

41 :1:2009/08/25(火) 10:37:28.29 ID:9k1Z+XoP0
>>38
ありがとうございます。

40 :1:2009/08/25(火) 10:36:30.83 ID:9k1Z+XoP0
香子からしたら、俺がこっちに来て初めての友達、のつもりなんだろう。
そう思うと、年下ということもあって、無碍には出来ない気がした。
「勉強好き?」
勉強嫌いの俺が聞くことではないかもだが、他に話題もわからない。
「こくごとおんがくが好き。」
「あー、おんがくは俺も好きかな。」
リコーダーが本格的になるにつれ、音楽もだんだんと面倒くさくなっていくのであるが。
結局その登校中は、学校の話ばかりで終わったような気がする。ちょっと記憶が曖昧。

42 :1:2009/08/25(火) 10:40:08.90 ID:9k1Z+XoP0
それから、登校にはいつも香子がついて来るようになった。
俺が意識して時間を合わせた記憶はないので、向こうがこっちを待っててくれたんだろう。
団地で遊んでいるときも、トコトコと寄って来てはジっと見ていたので、
こっちから呼んで混ぜてやった。
そのせいか、団地でも徐々に友達が増えているようだった。

43 :1:2009/08/25(火) 10:45:04.89 ID:9k1Z+XoP0
低学年、中学年の頃はそれでも良かった。
しかし、高学年に入ると、状況は変わってきた。
自転車を手に入れ、活動範囲が広がった俺は、
団地の小さな公園で遊ぶより、運動公園に行ってサッカーしたり、
友達の家でゲームをする方が楽しくなっていった。
後、女の子と遊ぶことが妙に恥ずかしくなったりする頃でもある。
俺は、だんだんと放課後に香子と遊ぶことが少なくなっていった。


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 10:48:08.75 ID:AF7twqhD0
うんうん

45 :1:2009/08/25(火) 10:50:52.22 ID:9k1Z+XoP0
それでも、日課となっていた一緒に登校は続いていた。
「こーちゃんあのね、昨日先生がね…」
放課後会えなくなった分、登校中の香子はよく喋った。
昨日学校であったことや、友達のことを事細かに話す。
俺は「うん」とか「ああ」とか言いながら、適当に聞き流していた。
正直、それもちょっと面倒になってきてたんだろう。
それに、登校中にクラスメイトに出会ってしまった時、
からかわれるのが物凄く嫌だった。
「やい幸介、今日も女と仲良く登校か?ww」
「うるせー!」
大体、女といることをからかっていたようなヤツに限って
早めに彼女を作ってたりするもんだが、それはもっと後のこと。
子供にとって、重要なのは今だった。

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 10:54:05.41 ID:kgfbKzUT0
なんか子供心がリアルだwwwwww

48 :1:2009/08/25(火) 10:57:55.28 ID:9k1Z+XoP0
六年生になって間もないある日。
俺は、自転車で迎えに来た友達と供に、運動公園へサッカーをしにいくところだった。
自転車に乗り込んで、いざ出発、と思ったときだった。
「こーちゃん!」
なんと、香子が真新しい自転車に乗ってやってきた。
そういえば、春休みに買ってもらったと言っていた。
「……なんだよ。」
「私も、サッカー観に行っていい?」
香子にしてみれば、自転車を手に入れてやっと団地の外もついて行ける、
そんな気分だったんだろう。
だが。
「お、幸介いいなぁ、カノジョも一緒なんてw」
「ひゅーひゅー!」
悪友達のベタな煽りが、ものすごく恥ずかしかった。
その思いは、香子へとぶつけられる。
「駄目だ、ついてくんな。」
「え?どうして?観てるだけで邪魔しないよ。」
不思議そうに言う香子。ますます酷くなる煽り。
「駄目だったら駄目だ!女がついてくんな!居るだけで邪魔なんだよ!」

49 :1:2009/08/25(火) 11:01:16.13 ID:9k1Z+XoP0
俺の剣幕に驚いたのか、香子は大きな瞳を更に丸くして、固まっていた。
構わず俺は、自転車を漕ぎ出す。
「おい、行こうぜ!」
慌てて、友達二人もついて来る。
「幸介いいのかよ、あんなこと言って。」
散々煽ったくせに、心配そうに言う友達。
「いいんだよ、言わなきゃわかんないんだあいつは。」
そう言いながらも、俺はちょっとだけ気になって、団地を出る寸前に振り返った。
遠目でよく分からなかったが、香子は泣いているように見えた。

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 11:02:42.18 ID:ySK/OHUe0
>>1くん最低ー

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 11:04:17.40 ID:kgfbKzUT0
でもこういうのって有るよな

54 :1:2009/08/25(火) 11:12:23.84 ID:9k1Z+XoP0
>>50
ホント、最低でした…
>>51
意地のせいか、素直に謝れないんですね、子供って。

52 :1:2009/08/25(火) 11:06:13.77 ID:9k1Z+XoP0
次の日、香子は登校中に現れなかった。
俺は清々した、と思いながらどこかで後悔もしていた。
かといって、謝るような素直さももっていない。男子小学生なんて意地の塊だ。
次の日だけでなく、それから以後、小学校卒業まで香子と一緒に登校することはなかった。
一人で登校しながら、俺は香子を傷つけてしまったことを知った。
これから何度となく俺は香子を傷つけることになるが、これがその一番最初だった。

53 :1:2009/08/25(火) 11:11:02.17 ID:9k1Z+XoP0
中学に入ると、俺はサッカー部に入った。
サッカーは好きだし、走るのも好きだったが、
ヘタクソなので万年補欠だった。
が、それはまあ置いといて。
部活が始まると、小学生の頃とは比べ物にならないくらい忙しい。
家に帰るのは七時くらいだし、テスト勉強もしなくちゃならない。
小学生の頃は一緒に登校しないまでも、団地やコンビニでたまに香子と会うことがあったが、
中学に入るとほとんど会うこともなくなった。
まあ、子供の頃の女友達なんてそんなもんだろう。
そう思いながら、俺はやっぱり、どこか淋しい想いを抱えていた。

55 :1:2009/08/25(火) 11:18:00.26 ID:9k1Z+XoP0
中一も終わりに近づいた、2月。
俺は部活の後、WJを買いにコンビニに寄っていた。
買い物を済ませ、コンビニを出たその時。
「こーちゃん。」
振り向くと、香子が立っていた。
久しぶりに見る香子は、もう子供子供した感じじゃなくなってきていて、
手足がスラっとしていて、髪はポニーテールだった。胸はまだない。
「久しぶりだなw」
俺は久々に会う動揺を隠して、努めて普通に挨拶した。
「うん、久しぶりw学ラン似合うね。」
そういえば、制服着て会うのも初めてだった気がする。

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 11:18:57.40 ID:t+omtvp00
支援してやんよ!

57 :1:2009/08/25(火) 11:24:56.54 ID:9k1Z+XoP0
「中学どう?楽しい?」
「まあまあかな。部活はしんどいけど、楽しい。」
「サッカー部なんだよね?」
「ああ。」
帰り道は一緒なので、歩きながら喋った。
「そういえば、こんな遅くに一人でコンビニなんて、危ないじゃないか。」
「あ、うん、ちょっと材料が足らなくて…」
言いながら、香子はしまった、というような顔をした。
「材料?なんの材料だよw」
問いながらも、本当は俺にも分かっていた。
もうすぐバレンタインデーだ。
小学生の時、香子は既製のチョコを俺にもくれたが、
いよいよ手作りであげたくなるような男子も出来たんだろう。
「エヘヘ、ナイショだよw」
笑う香子を見ながら、なんか感慨深い気持ちになった。
同時に、ちょっと淋しくもあった。

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 11:29:54.14 ID:ewVlDIR+0
なんだよ
なんだよ
うらやましい

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