少女「君は爆弾に恋をした」
Part3
26 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:00:29.27 ID:nePH+j+AO
少女「頬にだよ!」
男「あ〜あ、女に話しちゃったか〜」
友「世界中の人に知られるぞ」
女「そこまでお喋りじゃないよ!?」
眼鏡「私ならネットで拡散……」
男「やめてくれよ!?」
みんなで騒いでいる間にショッピングモールに着いた
男「う〜ん」
女「何悩んでんのよ?」
男「どこにデートに行こうかと」
女「寒くなってきたから室内でデートとか〜」
男「室内か……」
女「私がコース組もうか?」
男「アイデアだけくれたら良いよ」
眼鏡「浮気とはけしからんけしからん」
男「してないよ!」
眼鏡「少女ちゃんゲットのチャンス!」
男「やめて〜!」
女「真面目な話彼女スポーツ万能だしボウリングとか体動かす系が良いかもよ?」
男「ふむふむ、参考になる」
少女「私なんでも良いよ」
男「聞いてた?」
少女「うん、楽しみ」
女「そうだ、登山なんか良いんじゃない?」
男「そろそろ紅葉シーズンだし、良いかも」
少女「じゃあそうしよう」
少女「私が爆発しても被害が少ない山に行こう」
女「久々に聞いたよそれ」
少女「どっかーん」
女「きゃー、バラバラ」
男「何その遊び」
27 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:02:17.72 ID:nePH+j+AO
女友「爆発ごっこ」
男「流行ってるの?」
眼鏡「少女ちゃんがどっかーんと言ったら皆がリアクションしないといけない禁断の遊び」
男(遊んじゃってて本当に爆発したり……しないよな)
少女「どっかーん」
男「うわあー」
友「俺も混ぜてくれよ〜」
少女「みんなでどっかーん」
女友「ひゅ〜、どっかーん」
友「花火かよ」
男「友は既にバラバラだ」
友「なにそれこわい」
少女「私は特定のバイオ薬を服用しない限り爆発しない、誤爆は有り得ない」
女「少女ちゃんの不思議設定は細かいね〜」
男(そうなんだ)
女「まあ本当に人間が核爆発に匹敵する爆発したらテロが酷い事になりそう」
男(……そう言う組織が彼女を作ったのかな……?)
男(ただ身体能力が高いだけの女の子なら良いのにな……)
女友「何黙っちゃってんの?」
男「僕も爆発する設定考えてた、頭頂部にスイッチあるとか」
女友「マジマジ?えいやっ」
男「どっかーん」
少女「きゃー」
女「ばらばら」
友「うわあ〜」
眼鏡「眼鏡がはじけた」
女友「みんなバラバラになってしまった。 生き残ったのは私だけ……」
28 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:05:49.35 ID:nePH+j+AO
男(本当に爆発したらどこにいても助からないだろうな)
男(でも、彼女が爆発しなきゃいけない日は来ない)
男(彼女の秘密が守られるか、追っ手と僕が戦えばいい)
男「体鍛えておかないとな〜」
女「何唐突に」
男「だって彼女が爆発しないように僕が戦わないと」
女「お、漢だね〜」
男「不良くらいには勝ちたいな〜」
女「彼女不良二人も楽勝だったけど?」
男「強過ぎだよね」
男(軽々と三メートルを超えるジャンプが出来るもんなあ……)
比べてはいけないのかも知れない
絶対あそこまで強くなんかなれない
ショッピングモールを一周して僕らはバラバラに帰ることにした
女たちは買い物を続け、僕と彼女は一緒に帰り、友は何故か眼鏡と帰った
友と眼鏡とは胡散臭い取り合わせだが、今の僕は彼女と二人きりになれた幸せでいっぱいだ
また手を握る
またドキドキしている
不思議だ
いつまでもこんな風にドキドキするのかな?
この幸せはいつまでも続くのかな?
彼女と僕は山登りの話をした後、公園で別れた
29 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:08:39.86 ID:nePH+j+AO
紅葉が始まったとニュースで流れ始めた
僕らはついに二人で山登り計画を実行に移すことにした
まず僕の部屋で細かい計画を話し合う
少女「人の少ない所で窪地になっていて、安全に爆発できそうな所を見つけた」
男「なんで爆発するの前提?」
少女「機密を守らなければ、私がテロに使われたら世界が滅茶苦茶になるのは解るだろう」
男「そうかも知れないけど……」
僕は最近筋トレを始めていた
どうにか彼女を守るために、心も体も頭も、もっと強くしたかった
だから爆発することが決まっているように言う彼女が、寂しかった
男「そもそもどう言う原理で爆発するのさ?」
少女「生物学的元素転換で核物質を体内で合成したり、同原理の応用で核融合反応を起こす」
男「そんなこと可能なら大ニュースになってると思うけど」
少女「逆だ、出来るから隠蔽された」
少女「私を作った機関も国家機関だったと言う話だ」
男「じゃあ情報は闇に葬られるわけだ」
少女「複雑な利権も絡むし、研究が遅れたらそれこそ致命的な大研究なんだ」
少女「だから世界中で秘密裏に研究が行われている」
30 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:11:31.05 ID:nePH+j+AO
何か信憑性が増した気がする
彼女の説明は淀みがなかったし矛盾点も僕には感じられなかった
しかしそうなると、彼女を狙う者も一人や二人ではあるまい
それこそ世界中の組織が狙っているかも知れない
彼女自身の身体能力が異常に高いのも、機密を守るために生物学的に改造されているのだとしたら頷ける
少女「私のような存在は、私一人でいい」
少女「博士は私の情報を全て焼却し、隠れ住む方法を選んだ」
男「でも実際君が生まれたなら、時間の問題で他の国も君みたいな子を作るかもよ?」
少女「どこの国も核テロリズムの標的になんかされたくないだろうし、データはどこの国も公にはしないだろう」
少女「結果使われるとしたら、戦争だ」
戦争……平和ボケの僕には遠い世界のお話に聞こえる
でも彼女を手に入れたら?
誰にも分からないように戦争を始め、終わらせることが出来る
敵がなんであれ、容易にできるだろう
恐ろしい話だった
男「でも僕は、君に爆発して欲しくない」
男「恐いからでも命が惜しいからでもない」
男「好きだから……」
少女「……ありがとう」
少女「私の彼氏はかっこいい」
そんなこと言われたら僕の顔が爆発する
31 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:12:58.24 ID:nePH+j+AO
山登りの計画をまとめると、次に僕らは買い物の計画を立てた
登山グッズと言っても軽い装備だが、新しく買い足さないと駄目な物も多い
お金には問題ないと、彼女は言う
多分博士には貯えがあったのだろう
彼女が自由に生きられる程度の……
もしその貯えが無くなるなら、僕が彼女たちを養わなければ
僕は彼女を家に送り、自分の家に戻ると勉強を始めた
ふとパソコンで彼女に聞いた言葉を調べてみる
生物学的元素転換……
なんと何件もヒットした
セシウムを無害化出来る、とか最後の錬金術、だとか、怪しげな言葉が並んでいる
研究していたのはかなり実績のある科学者だったようで、ノーベル賞候補にもなったらしい
現在でも僅かに研究されてはいるものの、とんでも学説の扱いを受けているようだ
当たり前だ
彼女の言ってることが本当なら人間が手を着けて良い世界を大きく超えている
人類の倫理が未完成の世界でこんな……
彼女が世界に出てしまったら……
32 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:15:27.88 ID:nePH+j+AO
僕はそっとパソコンの電源を落として、勉強を再開した
ご飯を食べ、筋トレをして、お風呂に入って寝る
そんな生活を続けていると、少し身体つきも変わっていく
小さいのは仕方がないが
そして彼女と買い出しに出掛ける日が来た
これもデートだな、と考えると少し顔が熱くなる
浮き上がるような気分で家を出ると、いつもの公園に向かう
彼女が桃色の笑顔で手を振ってきた
可愛いなあ、もう!
僕が、初めてのデートだね、と言うと
桃色の顔が真っ赤になった
彼女が人間じゃないわけがない
普通に暮らさせてあげたい
僕たちは普通の、初めてのデートを開始した
男「登山グッズってどこで売ってるんだろう」
少女「ホームセンターやアウトドアグッズ専門店で売ってるらしい」
少女「あと初心者は専門的な装備を揃えなくても良いって」
少女「とりあえず靴と懐中電灯、リュックは必要らしい」
男「火とか起こせた方が良いのかな?」
少女「遭難した時のために火を起こす装備は必須」
男「遭難はしたくないけど、隠れ住めるような所に行ってみたいな〜」
少女「木を隠すなら森の中、田舎より都会の方が隠れやすいらしい」
33 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:17:30.95 ID:nePH+j+AO
だから彼女は僕たちの町に来たんだよな
僕は思う
今まで生きてきて、町に感謝したのは初めてだ
男「でもサバイバルも面白そうなんだけどな〜」
少女「防寒装備が無いと、これからの時期は厳しいかもね」
男「そっか、寒いよね」
少女「ふふ、あなたとならサバイバルも幸せそう」
男「そうかも知れないね」
僕は彼女と見つめ合う
だけどここは街中だ
二人で顔を真っ赤にして、手を繋いで歩いた
アウトドアグッズと看板に書かれた店に二人で入っていく
寝袋や何か鉄製の器具がいくつも置いてあるが、この辺りは必要ないだろう
懐中電灯も高い
こんなに高いのは必要ない気がする
結局何も買わずに店を出た
ちょっと罪悪感を感じるけれど
少女「ホームセンターに行ってみよう」
男「うん」
ホームセンターには意外と色々なアウトドアグッズが揃っている
カッパや懐中電灯に、寝袋からテントまで置いてある
少女「必要な物はだいたい揃っちゃうね」
男「そうだなあ、最初にこっちに来たら良かったかな?」
少女「でも一緒に色々探すのは楽しかった」
男「僕も!」
これがデートなのを忘れてた
34 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:19:32.81 ID:nePH+j+AO
一通り買い物を終えると、僕は彼女とハンバーガーを食べることにした
安いけど、すごく美味しく感じる
二人でお互いの食べている物がどんな味だとか話しているだけで幸せを感じる
男「この後どうする?」
少女「映画とか見てみたいかな」
男「行こう!」
少女「本当?」
彼女は多分あまり外出していないんだろう
僕たちが誘わなければ
映画……
彼女と映画!?
少女「わくわくする……」
僕たちはとりあえず今流行の戦争映画を見に入った
評判は良い映画だから、おそらく外れはないだろう
デート向きかは分からないけれど
映画は恋愛描写の後、戦争が起こり、最後は恋敵との戦闘で終わるという物語だった
感動しつつも良くある話だな、と、僕は思ったが
彼女は涙を流していた
綺麗だ……
少女「あは、私泣きすぎだな!」
僕は何も言えなかった
だって可愛すぎる
僕は悶え死にそうになりながら次のプランを考えた
帰りにまたあの公園に寄ろう
何か食べながらでもいい
少女「もう終わりなんだな、初デート」
そうだよね、何かもったいない気がする
35 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:22:30.85 ID:nePH+j+AO
コンビニで適当に食べ物を買い、公園まで走って行く
彼女は寒そうにしている
百テラジュールの熱量も、彼女を暖められないなら意味がない
僕は彼女を抱きしめた
少女「……」
白い肌が真っ赤だ
それだけで嬉しくなる
コーヒーを飲みながら、彼女に肩を当てる
彼女も僕に肩を当てる
吹き飛ぶかと思ったが踏ん張った
なんて不便なエネルギーの持ち主なんだろう
笑った
二人で笑った
何もないのに、楽しかった
終わらないと、いいな
二人で公園のベンチで肩を寄せ合っていると、知らない女性が近付いてきた
少女は僕の肩に頭を乗せて眠っているように動かない
それを正面から女性に見つめられて、恥ずかしくて赤くなる
博士「君が男君か」
男「はい!?」
その瞬間気がついた
この人が彼女のお母さん、博士だ
彼女は目を覚ますと、博士を見た
少女「あ、お母さん」
博士「うひっ」
何か嫌な予感が迸った
博士「いい男じゃないか我が娘!」
少女「抜かりない」
彼女はグッと親指を立てる
博士「君ぃ!実験してみないかね!」
マッドサイエンティストだ
僕の直感が危機を告げる
36 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:24:50.19 ID:nePH+j+AO
博士「遺伝子変えてみないかね? 爆弾抱えてみないかね?」
みません
博士はものすごく興奮しているようだ
少女の方は温もりが名残惜しいのか僕の右腕にしがみつく
待って、頭がまわらないよ!
右腕が暖かい!
前から変質者!
博士「いつもありがとうな……」
男「へう?!」
何か変な声が出た
博士「私は酷い人間だ」
博士「人間の遺伝子を弄んで……その子の人生も台無しにしてしまった」
男「……台無しになんかさせませんよ」
少女「私は今、幸せだ」
彼女の言葉を聞いて、彼女の母は優しい顔になった
博士「私の言いつけさえ守れば、何も悪いことは起こらない」
博士「いいか、その彼氏と幸せになりたかったら」
博士「私に何かがあっても見捨てること」
男「!」
そうか、如何にデータを消したとしても博士の記憶までは消せない
博士を誘拐し拷問にかければ……
僕はそこまで考えて、ぞっとした
男「み、見つからなければ良いんですよね」
博士「そうだな、戸籍は完全に改竄してある」
博士「私たちを探し出すのは砂漠から砂粒を探すほど難しいだろう」
少女「頬にだよ!」
男「あ〜あ、女に話しちゃったか〜」
友「世界中の人に知られるぞ」
女「そこまでお喋りじゃないよ!?」
眼鏡「私ならネットで拡散……」
男「やめてくれよ!?」
みんなで騒いでいる間にショッピングモールに着いた
男「う〜ん」
女「何悩んでんのよ?」
男「どこにデートに行こうかと」
女「寒くなってきたから室内でデートとか〜」
男「室内か……」
女「私がコース組もうか?」
男「アイデアだけくれたら良いよ」
眼鏡「浮気とはけしからんけしからん」
男「してないよ!」
眼鏡「少女ちゃんゲットのチャンス!」
男「やめて〜!」
女「真面目な話彼女スポーツ万能だしボウリングとか体動かす系が良いかもよ?」
男「ふむふむ、参考になる」
少女「私なんでも良いよ」
男「聞いてた?」
少女「うん、楽しみ」
女「そうだ、登山なんか良いんじゃない?」
男「そろそろ紅葉シーズンだし、良いかも」
少女「じゃあそうしよう」
少女「私が爆発しても被害が少ない山に行こう」
女「久々に聞いたよそれ」
少女「どっかーん」
女「きゃー、バラバラ」
男「何その遊び」
27 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:02:17.72 ID:nePH+j+AO
女友「爆発ごっこ」
男「流行ってるの?」
眼鏡「少女ちゃんがどっかーんと言ったら皆がリアクションしないといけない禁断の遊び」
男(遊んじゃってて本当に爆発したり……しないよな)
少女「どっかーん」
男「うわあー」
友「俺も混ぜてくれよ〜」
少女「みんなでどっかーん」
女友「ひゅ〜、どっかーん」
友「花火かよ」
男「友は既にバラバラだ」
友「なにそれこわい」
少女「私は特定のバイオ薬を服用しない限り爆発しない、誤爆は有り得ない」
女「少女ちゃんの不思議設定は細かいね〜」
男(そうなんだ)
女「まあ本当に人間が核爆発に匹敵する爆発したらテロが酷い事になりそう」
男(……そう言う組織が彼女を作ったのかな……?)
男(ただ身体能力が高いだけの女の子なら良いのにな……)
女友「何黙っちゃってんの?」
男「僕も爆発する設定考えてた、頭頂部にスイッチあるとか」
女友「マジマジ?えいやっ」
男「どっかーん」
少女「きゃー」
女「ばらばら」
友「うわあ〜」
眼鏡「眼鏡がはじけた」
女友「みんなバラバラになってしまった。 生き残ったのは私だけ……」
28 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:05:49.35 ID:nePH+j+AO
男(本当に爆発したらどこにいても助からないだろうな)
男(でも、彼女が爆発しなきゃいけない日は来ない)
男(彼女の秘密が守られるか、追っ手と僕が戦えばいい)
男「体鍛えておかないとな〜」
女「何唐突に」
男「だって彼女が爆発しないように僕が戦わないと」
女「お、漢だね〜」
男「不良くらいには勝ちたいな〜」
女「彼女不良二人も楽勝だったけど?」
男「強過ぎだよね」
男(軽々と三メートルを超えるジャンプが出来るもんなあ……)
比べてはいけないのかも知れない
絶対あそこまで強くなんかなれない
ショッピングモールを一周して僕らはバラバラに帰ることにした
女たちは買い物を続け、僕と彼女は一緒に帰り、友は何故か眼鏡と帰った
友と眼鏡とは胡散臭い取り合わせだが、今の僕は彼女と二人きりになれた幸せでいっぱいだ
また手を握る
またドキドキしている
不思議だ
いつまでもこんな風にドキドキするのかな?
この幸せはいつまでも続くのかな?
彼女と僕は山登りの話をした後、公園で別れた
29 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:08:39.86 ID:nePH+j+AO
紅葉が始まったとニュースで流れ始めた
僕らはついに二人で山登り計画を実行に移すことにした
まず僕の部屋で細かい計画を話し合う
少女「人の少ない所で窪地になっていて、安全に爆発できそうな所を見つけた」
男「なんで爆発するの前提?」
少女「機密を守らなければ、私がテロに使われたら世界が滅茶苦茶になるのは解るだろう」
男「そうかも知れないけど……」
僕は最近筋トレを始めていた
どうにか彼女を守るために、心も体も頭も、もっと強くしたかった
だから爆発することが決まっているように言う彼女が、寂しかった
男「そもそもどう言う原理で爆発するのさ?」
少女「生物学的元素転換で核物質を体内で合成したり、同原理の応用で核融合反応を起こす」
男「そんなこと可能なら大ニュースになってると思うけど」
少女「逆だ、出来るから隠蔽された」
少女「私を作った機関も国家機関だったと言う話だ」
男「じゃあ情報は闇に葬られるわけだ」
少女「複雑な利権も絡むし、研究が遅れたらそれこそ致命的な大研究なんだ」
少女「だから世界中で秘密裏に研究が行われている」
30 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:11:31.05 ID:nePH+j+AO
何か信憑性が増した気がする
彼女の説明は淀みがなかったし矛盾点も僕には感じられなかった
しかしそうなると、彼女を狙う者も一人や二人ではあるまい
それこそ世界中の組織が狙っているかも知れない
彼女自身の身体能力が異常に高いのも、機密を守るために生物学的に改造されているのだとしたら頷ける
少女「私のような存在は、私一人でいい」
少女「博士は私の情報を全て焼却し、隠れ住む方法を選んだ」
男「でも実際君が生まれたなら、時間の問題で他の国も君みたいな子を作るかもよ?」
少女「どこの国も核テロリズムの標的になんかされたくないだろうし、データはどこの国も公にはしないだろう」
少女「結果使われるとしたら、戦争だ」
戦争……平和ボケの僕には遠い世界のお話に聞こえる
でも彼女を手に入れたら?
誰にも分からないように戦争を始め、終わらせることが出来る
敵がなんであれ、容易にできるだろう
恐ろしい話だった
男「でも僕は、君に爆発して欲しくない」
男「恐いからでも命が惜しいからでもない」
男「好きだから……」
少女「……ありがとう」
少女「私の彼氏はかっこいい」
そんなこと言われたら僕の顔が爆発する
山登りの計画をまとめると、次に僕らは買い物の計画を立てた
登山グッズと言っても軽い装備だが、新しく買い足さないと駄目な物も多い
お金には問題ないと、彼女は言う
多分博士には貯えがあったのだろう
彼女が自由に生きられる程度の……
もしその貯えが無くなるなら、僕が彼女たちを養わなければ
僕は彼女を家に送り、自分の家に戻ると勉強を始めた
ふとパソコンで彼女に聞いた言葉を調べてみる
生物学的元素転換……
なんと何件もヒットした
セシウムを無害化出来る、とか最後の錬金術、だとか、怪しげな言葉が並んでいる
研究していたのはかなり実績のある科学者だったようで、ノーベル賞候補にもなったらしい
現在でも僅かに研究されてはいるものの、とんでも学説の扱いを受けているようだ
当たり前だ
彼女の言ってることが本当なら人間が手を着けて良い世界を大きく超えている
人類の倫理が未完成の世界でこんな……
彼女が世界に出てしまったら……
32 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:15:27.88 ID:nePH+j+AO
僕はそっとパソコンの電源を落として、勉強を再開した
ご飯を食べ、筋トレをして、お風呂に入って寝る
そんな生活を続けていると、少し身体つきも変わっていく
小さいのは仕方がないが
そして彼女と買い出しに出掛ける日が来た
これもデートだな、と考えると少し顔が熱くなる
浮き上がるような気分で家を出ると、いつもの公園に向かう
彼女が桃色の笑顔で手を振ってきた
可愛いなあ、もう!
僕が、初めてのデートだね、と言うと
桃色の顔が真っ赤になった
彼女が人間じゃないわけがない
普通に暮らさせてあげたい
僕たちは普通の、初めてのデートを開始した
男「登山グッズってどこで売ってるんだろう」
少女「ホームセンターやアウトドアグッズ専門店で売ってるらしい」
少女「あと初心者は専門的な装備を揃えなくても良いって」
少女「とりあえず靴と懐中電灯、リュックは必要らしい」
男「火とか起こせた方が良いのかな?」
少女「遭難した時のために火を起こす装備は必須」
男「遭難はしたくないけど、隠れ住めるような所に行ってみたいな〜」
少女「木を隠すなら森の中、田舎より都会の方が隠れやすいらしい」
33 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:17:30.95 ID:nePH+j+AO
だから彼女は僕たちの町に来たんだよな
僕は思う
今まで生きてきて、町に感謝したのは初めてだ
男「でもサバイバルも面白そうなんだけどな〜」
少女「防寒装備が無いと、これからの時期は厳しいかもね」
男「そっか、寒いよね」
少女「ふふ、あなたとならサバイバルも幸せそう」
男「そうかも知れないね」
僕は彼女と見つめ合う
だけどここは街中だ
二人で顔を真っ赤にして、手を繋いで歩いた
アウトドアグッズと看板に書かれた店に二人で入っていく
寝袋や何か鉄製の器具がいくつも置いてあるが、この辺りは必要ないだろう
懐中電灯も高い
こんなに高いのは必要ない気がする
結局何も買わずに店を出た
ちょっと罪悪感を感じるけれど
少女「ホームセンターに行ってみよう」
男「うん」
ホームセンターには意外と色々なアウトドアグッズが揃っている
カッパや懐中電灯に、寝袋からテントまで置いてある
少女「必要な物はだいたい揃っちゃうね」
男「そうだなあ、最初にこっちに来たら良かったかな?」
少女「でも一緒に色々探すのは楽しかった」
男「僕も!」
これがデートなのを忘れてた
34 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:19:32.81 ID:nePH+j+AO
一通り買い物を終えると、僕は彼女とハンバーガーを食べることにした
安いけど、すごく美味しく感じる
二人でお互いの食べている物がどんな味だとか話しているだけで幸せを感じる
男「この後どうする?」
少女「映画とか見てみたいかな」
男「行こう!」
少女「本当?」
彼女は多分あまり外出していないんだろう
僕たちが誘わなければ
映画……
彼女と映画!?
少女「わくわくする……」
僕たちはとりあえず今流行の戦争映画を見に入った
評判は良い映画だから、おそらく外れはないだろう
デート向きかは分からないけれど
映画は恋愛描写の後、戦争が起こり、最後は恋敵との戦闘で終わるという物語だった
感動しつつも良くある話だな、と、僕は思ったが
彼女は涙を流していた
綺麗だ……
少女「あは、私泣きすぎだな!」
僕は何も言えなかった
だって可愛すぎる
僕は悶え死にそうになりながら次のプランを考えた
帰りにまたあの公園に寄ろう
何か食べながらでもいい
少女「もう終わりなんだな、初デート」
そうだよね、何かもったいない気がする
35 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:22:30.85 ID:nePH+j+AO
コンビニで適当に食べ物を買い、公園まで走って行く
彼女は寒そうにしている
百テラジュールの熱量も、彼女を暖められないなら意味がない
僕は彼女を抱きしめた
少女「……」
白い肌が真っ赤だ
それだけで嬉しくなる
コーヒーを飲みながら、彼女に肩を当てる
彼女も僕に肩を当てる
吹き飛ぶかと思ったが踏ん張った
なんて不便なエネルギーの持ち主なんだろう
笑った
二人で笑った
何もないのに、楽しかった
終わらないと、いいな
二人で公園のベンチで肩を寄せ合っていると、知らない女性が近付いてきた
少女は僕の肩に頭を乗せて眠っているように動かない
それを正面から女性に見つめられて、恥ずかしくて赤くなる
博士「君が男君か」
男「はい!?」
その瞬間気がついた
この人が彼女のお母さん、博士だ
彼女は目を覚ますと、博士を見た
少女「あ、お母さん」
博士「うひっ」
何か嫌な予感が迸った
博士「いい男じゃないか我が娘!」
少女「抜かりない」
彼女はグッと親指を立てる
博士「君ぃ!実験してみないかね!」
マッドサイエンティストだ
僕の直感が危機を告げる
36 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/26(日) 18:24:50.19 ID:nePH+j+AO
博士「遺伝子変えてみないかね? 爆弾抱えてみないかね?」
みません
博士はものすごく興奮しているようだ
少女の方は温もりが名残惜しいのか僕の右腕にしがみつく
待って、頭がまわらないよ!
右腕が暖かい!
前から変質者!
博士「いつもありがとうな……」
男「へう?!」
何か変な声が出た
博士「私は酷い人間だ」
博士「人間の遺伝子を弄んで……その子の人生も台無しにしてしまった」
男「……台無しになんかさせませんよ」
少女「私は今、幸せだ」
彼女の言葉を聞いて、彼女の母は優しい顔になった
博士「私の言いつけさえ守れば、何も悪いことは起こらない」
博士「いいか、その彼氏と幸せになりたかったら」
博士「私に何かがあっても見捨てること」
男「!」
そうか、如何にデータを消したとしても博士の記憶までは消せない
博士を誘拐し拷問にかければ……
僕はそこまで考えて、ぞっとした
男「み、見つからなければ良いんですよね」
博士「そうだな、戸籍は完全に改竄してある」
博士「私たちを探し出すのは砂漠から砂粒を探すほど難しいだろう」