旅男「ルビーイーターか……」
Part10
117 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 01:17:13.95 ID:DwPfEm8AO
帽子「このマンイーターが退治したイーターって博士が討伐したことになるのかな?」
旅男「それじゃまた博士が丸儲けだな」
博士「そうなったら奢るよ……、よし、これでいけるはずだ!」
タン、とキーボードを小気味良く叩く
イーターはゆっくり目を覚ました
旅男「蜘蛛の糸取っても大丈夫か?」
博士「ちょっと待ってろ」
博士はマンイーターの頭をゆっくり撫でる
マンイーターは嬉しそうにぐるる、とのどを鳴らす
博士「成功か……、いや、まだ分からんな」
博士「とりあえず蜘蛛の糸を取り払ってくれ」
旅男「分かった」
博士はマンイーターの頭と背中に青いペイントスプレーを振り掛けた
そして博士と藍たちが避難してから旅男が蜘蛛の糸を切り裂いて行く
ようやく切り終えると、マンイーターはゆっくりと身体を起こす
博士「お前をEEと名付けよう、マンイーターをかき回してこい!」
EE「アンギャーッ!」
博士にEEと名付けられたマンイーターは一直線に仲間のマンイーターの方へと駆けて行く
そして格闘が始まった
そもそもマンイーターにはマンイーターと戦う習性がない
あっさりとEEはマンイーターを捕食した
121 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 20:57:54.20 ID:DwPfEm8AO
博士「成功だーっ!」
帽子「やったね博士!」
旅男「よし、俺達も行くぞ」
茶髪「早くやらないとあいつに全部食われちゃう」
藍「イーターはどこですか?」
博士「あの格闘音を聞きつけて集結しつつある、気をつけろ!」
旅男達は敵に発見されないように更に外側からイーターを攻撃する
巨大な要討伐対象マンイーター達も後ろから襲えば茶髪でも倒せる
茶髪「やっほーっ!」
藍「大量ハントの時間ですよぉー!」
旅男「ふふ、あいつらもやるじゃないか」
博士「AHイーターはまだこちらを警戒してる、旅男と帽子で当たってくれ」
旅男「分かった」
博士がEEに近付くとEEも頭を下げる
博士はEEの鼻先を撫でた
満足したのか、EEはうなり声を上げると、AHイーターに向かい走り出す
博士「EEがそちらにいった、気をつけろ!」
旅男「分かった!」
帽子「EEちゃんに乗ってみたいな」
旅男「アイツを倒してからだ!」
眼前にEEより一回り大きい傷だらけのマンイーターが現れる
明らかにAHイーターと呼ばれる存在だろう
AHイーターはEEが自分を狙っている事に気付き、長い尻尾ではねつけた
122 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:00:02.42 ID:DwPfEm8AO
その後AHイーターはビルの影に隠れ潜む
流石の慎重さである
旅男達も一旦ビルの影からAHイーターを伺う
帽子「難易度で言ったらこの前のルビー保持型より上なんですけど……」
旅男「確かにな」
帽子「賞金いくらかな」
旅男「三千万は貰わないと割に合わないな」
帽子「うへへ、積み立てよ」
旅男「たまには奢れ」
二人が話をしているとEEが起き上がりビルの向こうに回っていく
AHイーターを追い立てるつもりなのだろうか
旅男「アイツ頭良いな」
帽子「EEちゃんを撃たないように気をつけないと」
旅男「よし、二手に分かれるぞ」
追われてきたAHイーターはビルを蹴りつけて別のビルの隙間に隠れる
とんでもない身のこなしである
旅男「初めて見たな、あんなに動くイーター」
対面のビルの上の帽子も呆れたような顔をしていた
AHイーターは隠れている限りは撃たれないことを知っているのだろう
こちらを伺う時も素早くビルからビルへと移って行く
仕方なく帽子が帰ってくる
帽子「あれを倒すのは難しいかも」
旅男「EEに任せてみるか」
帽子「そうだね、動きを止めてもらってから奇襲をかけよう」
123 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:03:19.11 ID:DwPfEm8AO
EEはうなり声を上げながら自分より一回り大きいAHイーターに果敢に挑みかかっていく
尻尾に噛みつき、背中に噛みついた
流石にAHイーターも反撃する
二体は睨み合い、動かない
旅男「チャンスだ!」
旅男のルビーガンは確実にAHイーターの脚を貫いた
AHイーターは叫び声を上げ、周囲のビルに身体を打ち付けていく
埃で姿を隠したのだ
帽子「頭良いなぁ、アイツも!」
埃はルビーガンのレーザーの威力を激しく落とす
このままでは狙えないのだ
旅男「脚に怪我を負ってるんだ、そんな遠くには行かないだろ」
EEが先にAHイーターを捕らえる
素早く喉元に食らいついた
埃が落ち着いてくる中から倒れたAHイーターが現れる
旅男と帽子は素早くAHイーターにルビーガンでとどめを刺した
帽子「……EEちゃんが居なかったら倒せなかったかも」
旅男「博士の研究のお陰だな」
帽子「ちゃっかりとどめも刺させて頂きましたし、帰りますかー」
旅男「そうだな」
EEが二人の所にどすどすと誇らしげに足音を立てて帰ってくる
帽子「子犬みたい、可愛い〜」
124 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:05:46.37 ID:DwPfEm8AO
旅男「子犬……頭から尻尾の先まで全長で八メートルはあるけどな」
帽子「EEちゃんの背中に乗ってみよ」
帽子はEEの背中に乗る
EEはどすどすと博士の元まで歩いていく
帽子「お尻痛い」
博士「お帰り」
博士「んふふ」
旅男「どうした、気持ち悪いな?」
博士「いやあ、このプログラムにはいくらの値がつくかと思ったらな?」
旅男「楽しみだな」
帽子「しかし厳しい討伐だったよ、EEちゃんが殆どやっつけた感じ」
旅男「助かったな」
博士「そうだろうそうだろう」
旅男「で、こいつはどうする?」
旅男がEEを指差すとEEは首を傾げた
博士「しばらくはEEにイーターを狩ってもらおう、一応EEに攻撃しないようにハンター協会の方に通達を出しておく」
旅男「皆びっくりするだろうな、コイツ見たら」
茶髪「く、食われねえの?」
博士「もうコイツはイーターしか食わないよ、そう言うプログラムにしてある」
茶髪「生きてるマンイーターに触れるの珍しいよな、なんか小さいウロコみたいな肌触りだな」
旅男「見た目はまんま恐竜なんだよな、誰の趣味やら」
博士「全くだな」
125 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:08:49.35 ID:DwPfEm8AO
EEを囲んで全員で語らっていると不穏な群集が旅男達に近付いてきた
旅男達は忘れていた
このI地区で危険なのはイーター達だけではないのだ
数十人の中から白い髭を生やした長老風の人物が語りかけて来た
白髭「お見事で御座います、旅男様……」
旅男「何者だ?」
旅男は男に問い返しながら帽子に目配せする
白髭「ご心配なく、我々は危害を加える者では有りません」
旅男「何者だっつの」
博士「選民教教徒だろ、いや、司教様かな?」
白髭「これはこれは、博士は流石に博識でいらっしゃいますな」
博士「ただの推測だ、ボールも付けてない、犯罪者でもない、砂漠に住んでる物好きが大勢で徒党を組んでいる、となれば選民教教徒以外にないだろう」
博士「選ばれた民として旅男に目を付けていたと言うことか」
旅男「はあ……」
旅男「そんなもんどうでも良いわ、帰れ」
白髭「そうおっしゃらずにお話だけでも……」
白髭「我々はサンルビーの雨の日を生き残った、選ばれた民なのです」
サンルビーの雨の日とは、世界を大破壊に追いやった巨大ルビー輸送船の爆発事故の事である
126 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:11:06.61 ID:DwPfEm8AO
巨大輸送船は隕石のように大陸を焼き尽くし、世界中に散らばったサンルビーはそのまま落ちたり、砕け散り莫大なサンルビーのエネルギーで大地を、海を、氷河期で凍った世界を焼き尽くした
大破壊は更に津波をもたらし、海に面したあらゆる地域は飲み込まれた
その大破壊の中を生き残ったのが現在の人々だが、その中には中央政府に従わず生きる人々が居た
選民教教徒達である
大破壊を生き残った選ばれた民として、より優れた生き残る力を持つ者を選び、その血を残して行く
邪教である
旅男「帰れよ」
白髭「そうおっしゃらず、我々は旅男様の血を必要としてるのです」
旅男は自分の腕を皮一枚斬った
その血を白髭になすりつけた
旅男「どうぞ」
旅男「藍、頼むわ」
藍「はい、回復初めてですね」
旅男の傷はすぐに瘡蓋に変わり、その瘡蓋もすぐに剥がれた
旅男「おお、すげえ」
白髭「旅男様……」
白髭がそれでも旅男に言い寄ろうとすると、ビルの上からレーザーが降ってきた
白髭「ひゃいっ」
旅男「今度は誰だ?」
ビルの上から現れたのはいつかのマントの男と右目に黒い眼帯をした男、そしてその仲間らしき数人の男女だ
127 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:13:07.12 ID:DwPfEm8AO
眼帯「そいつらはウチが先約だ」
マント「やあ、たまたま会えたな!」
旅男「お前らとも約束した覚えがねえな」
眼帯の男達は十メートル程のビルから躊躇いもなく飛び降りて来た
全員がAHなのだろう
眼帯「おいおい旅男ちゃんよ〜」
眼帯の男は厳つい外見とは違ってとても馴れ馴れしい
眼帯「そこのAHの彼女達も子供欲しくねえ?」
帽子「欲しい」
眼帯「お嬢ちゃんはもっと大人になったらだけどな〜」
眼帯「俺達はAHの国を作る、その為にAHの子供の作り方を研究してる」
眼帯「そこの博士ちゃんもまとめて一括引き抜きよ〜?」
博士「はっはっはっは!」
博士「いや、あんまりバカバカしくて笑ってしまった」
博士「モテない男が集まってナンパしてるようにしか見えん」
眼帯「あちゃー、博士ちゃん厳しいねぇ」
旅男「俺はホモじゃねえしな」
藍「一昨日来やがってください」
眼帯「きびしっ」
旅男達が徹底拒否する中、帽子だけが違う様子を見せた
帽子「……ボク行きたい……」
旅男「何を……」
旅男には予感があった
だからマントの男に脅しまでかけたのだ
帽子を取られてしまう
128 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:15:15.44 ID:DwPfEm8AO
眼帯「じゃあちょこっと見学って事で、うちに来てくれ」
マント「メンテナンスもうちの女医さんがやってくれるからな」
帽子「旅男」
旅男「行くな、帽子」
帽子「ちょこっと見学に行くだけだから……」
旅男「駄目だ」
マント「旅男さん、言ったはずだ」
マント「思想信条は個人の自由だってな」
マントの男はそう言うと選民教徒達を睨み付けた
マント「お前等も思想の押し付けしてるんじゃねえよ」
白髭「ひいっ」
先の旅男の血を擦り付けられた件で既に教徒達は引いていたのか、逃げ出した
眼帯「お嬢ちゃんの気が変わらないうちに行くか」
眼帯「なあに、見学だけだ」
旅男「行かせんぞ」
マント「いい加減往生際悪過ぎだろう」
マントの男は帽子に着いてくるよう促して、跳んだ
旅男「待て!」
帽子「ごめん、みんな、旅男!」
帽子「すぐ帰るから!」
旅男「駄目だ、帽子、行くな!」
博士「行ってこい」
博士が言うと帽子は一つ頷いて、跳んだ
博士「……はあ、何を恐れてる、旅男」
旅男「俺達の運命は玩具じゃねえ……、イーターを作り出した偉い人間達も俺達を作り出したドクター達も……」
129 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:17:19.18 ID:DwPfEm8AO
旅男「どいつもこいつも俺達の命を弄びやがって!!」
旅男「うおおおおおお!!」
旅男の叫びは、砂漠の夕焼けに木霊した
…………
博士「はあ……」
旅男「……」
藍「はあ……」
茶髪「暗いのやめようぜ」
旅男「……ふう……」
旅男達は三人ともメンテナンスをするための湯船に浸かっている
それを茶髪は来客用テーブルにつっぷして眺めている
博士「帽子はすぐに帰って来るさ」
旅男「そんな事は分かっている」
博士「……ちょっと独り言を言うぞ」
博士「イーター発生はルビーの値段を高騰させる目的だ」
旅男「……やっぱりくだらねえ理由だな」
博士「AHに子供が作れないと言う噂が広まったのも、無力な人間の方がルビーを使うからだろう」
博士「弄ばれるだけじゃ悔しいだろうから少し面白い話をしてやろう」
旅男「どうしたら面白い話になるんだ?」
博士「私達に与えられる賞金は中央を通してサンルビー協会から八割出ている」
博士「今回の討伐報酬は旅男と帽子が五千万、藍と茶髪が一千万、殲滅報酬が各五百万、私が二千万、EEのプログラム報酬が二億」
旅男「はあっ!?」
博士「面白い話だったろう」
130 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:20:24.49 ID:DwPfEm8AO
博士「良いんだ、こうやって荒稼ぎしていたらそれが私達の復讐になるんだ」
旅男「プログラム報酬高過ぎだろ」
博士「突っ込むのそこか?」
博士「EEは今もイーターを狩って食ってる」
博士「並みのハンターでは出来ない仕事だ」
博士「EEはいつかルビーイーターに焼き殺されるかも分からないが……」
藍「可愛かったですよね、EEちゃん……」
博士「また一目会えたらな……」
博士「因みにどんどん討伐報酬は私のクレジットに入っている、うふふ」
旅男「うふふ、じゃねえ!」
茶髪「儲けすぎじゃね、博士」
藍「いいなあ」
博士「旅男、余計なお世話ではあるが……」
旅男「分かってる」
博士「帽子が帰ってきたら運命を受け入れろ、それが人工の、アーティフィシャルな運命だとしても」
旅男「……」
旅男「分からねえよ、そんな事は……」
茶髪「俺には難しくて分かんねえけど、酒飲んで忘れろよ」
茶髪「奢るぜ」
旅男「生意気だ、糞餓鬼」
藍「美味しいもの食べましょうよ〜」
博士「行くか、おっと、お前等、薬」
旅男「サンキュ」
藍「帽子ちゃんも薬、きちんと飲んだかなあ?」
131 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:22:47.10 ID:DwPfEm8AO
旅男「女医さんがいるらしいから大丈夫だろ」
茶髪「貧乳な女医さんだったらどうする?」
旅男「それなら良いなあ、俺も行くんだったなあ」
藍「帽子ちゃんの代わりに言いますが、躊躇えよ」
…………
旅男達はそれから一週間、メンテナンスを続けた
その後も藍に映画に引っ張られたり博士に釣りに誘われたりして、旅男はゆっくり休養した
そんな中博士が慌てて酒場に来た
博士「ルビーイーターだ……、I地区に!」
旅男「何!?」
…………
旅男達がI地区に向かう事を決めると、博士は旅男の手足、胸、下半身に皮の鎧を纏わせていく
博士「まだ完成品とは言えないが、この際仕方有るまい」
旅男「助かるぜ」
博士「直撃したら穴くらいは開くかもな」
茶髪「旅男、俺待ってるぜ」
茶髪「生きて、帽子の姉ちゃんと帰ってきてくれ!」
旅男「……ああ!」
藍「私の分のアーマーも有りますか?」
旅男「藍……」
藍「私は救護班として隠れてますんで、頑張って下さい」
藍「やられるなら回復できる程度にやられちゃって下さいよ?」
旅男「分かった」
帽子「このマンイーターが退治したイーターって博士が討伐したことになるのかな?」
旅男「それじゃまた博士が丸儲けだな」
博士「そうなったら奢るよ……、よし、これでいけるはずだ!」
タン、とキーボードを小気味良く叩く
イーターはゆっくり目を覚ました
旅男「蜘蛛の糸取っても大丈夫か?」
博士「ちょっと待ってろ」
博士はマンイーターの頭をゆっくり撫でる
マンイーターは嬉しそうにぐるる、とのどを鳴らす
博士「成功か……、いや、まだ分からんな」
博士「とりあえず蜘蛛の糸を取り払ってくれ」
旅男「分かった」
博士はマンイーターの頭と背中に青いペイントスプレーを振り掛けた
そして博士と藍たちが避難してから旅男が蜘蛛の糸を切り裂いて行く
ようやく切り終えると、マンイーターはゆっくりと身体を起こす
博士「お前をEEと名付けよう、マンイーターをかき回してこい!」
EE「アンギャーッ!」
博士にEEと名付けられたマンイーターは一直線に仲間のマンイーターの方へと駆けて行く
そして格闘が始まった
そもそもマンイーターにはマンイーターと戦う習性がない
あっさりとEEはマンイーターを捕食した
121 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 20:57:54.20 ID:DwPfEm8AO
博士「成功だーっ!」
帽子「やったね博士!」
旅男「よし、俺達も行くぞ」
茶髪「早くやらないとあいつに全部食われちゃう」
藍「イーターはどこですか?」
博士「あの格闘音を聞きつけて集結しつつある、気をつけろ!」
旅男達は敵に発見されないように更に外側からイーターを攻撃する
巨大な要討伐対象マンイーター達も後ろから襲えば茶髪でも倒せる
茶髪「やっほーっ!」
藍「大量ハントの時間ですよぉー!」
旅男「ふふ、あいつらもやるじゃないか」
博士「AHイーターはまだこちらを警戒してる、旅男と帽子で当たってくれ」
旅男「分かった」
博士がEEに近付くとEEも頭を下げる
博士はEEの鼻先を撫でた
満足したのか、EEはうなり声を上げると、AHイーターに向かい走り出す
博士「EEがそちらにいった、気をつけろ!」
旅男「分かった!」
帽子「EEちゃんに乗ってみたいな」
旅男「アイツを倒してからだ!」
眼前にEEより一回り大きい傷だらけのマンイーターが現れる
明らかにAHイーターと呼ばれる存在だろう
AHイーターはEEが自分を狙っている事に気付き、長い尻尾ではねつけた
122 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:00:02.42 ID:DwPfEm8AO
その後AHイーターはビルの影に隠れ潜む
流石の慎重さである
旅男達も一旦ビルの影からAHイーターを伺う
帽子「難易度で言ったらこの前のルビー保持型より上なんですけど……」
旅男「確かにな」
帽子「賞金いくらかな」
旅男「三千万は貰わないと割に合わないな」
帽子「うへへ、積み立てよ」
旅男「たまには奢れ」
二人が話をしているとEEが起き上がりビルの向こうに回っていく
AHイーターを追い立てるつもりなのだろうか
旅男「アイツ頭良いな」
帽子「EEちゃんを撃たないように気をつけないと」
旅男「よし、二手に分かれるぞ」
追われてきたAHイーターはビルを蹴りつけて別のビルの隙間に隠れる
とんでもない身のこなしである
旅男「初めて見たな、あんなに動くイーター」
対面のビルの上の帽子も呆れたような顔をしていた
AHイーターは隠れている限りは撃たれないことを知っているのだろう
こちらを伺う時も素早くビルからビルへと移って行く
仕方なく帽子が帰ってくる
帽子「あれを倒すのは難しいかも」
旅男「EEに任せてみるか」
帽子「そうだね、動きを止めてもらってから奇襲をかけよう」
123 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:03:19.11 ID:DwPfEm8AO
EEはうなり声を上げながら自分より一回り大きいAHイーターに果敢に挑みかかっていく
尻尾に噛みつき、背中に噛みついた
流石にAHイーターも反撃する
二体は睨み合い、動かない
旅男「チャンスだ!」
旅男のルビーガンは確実にAHイーターの脚を貫いた
AHイーターは叫び声を上げ、周囲のビルに身体を打ち付けていく
埃で姿を隠したのだ
帽子「頭良いなぁ、アイツも!」
埃はルビーガンのレーザーの威力を激しく落とす
このままでは狙えないのだ
旅男「脚に怪我を負ってるんだ、そんな遠くには行かないだろ」
EEが先にAHイーターを捕らえる
素早く喉元に食らいついた
埃が落ち着いてくる中から倒れたAHイーターが現れる
旅男と帽子は素早くAHイーターにルビーガンでとどめを刺した
帽子「……EEちゃんが居なかったら倒せなかったかも」
旅男「博士の研究のお陰だな」
帽子「ちゃっかりとどめも刺させて頂きましたし、帰りますかー」
旅男「そうだな」
EEが二人の所にどすどすと誇らしげに足音を立てて帰ってくる
帽子「子犬みたい、可愛い〜」
124 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:05:46.37 ID:DwPfEm8AO
旅男「子犬……頭から尻尾の先まで全長で八メートルはあるけどな」
帽子「EEちゃんの背中に乗ってみよ」
帽子はEEの背中に乗る
EEはどすどすと博士の元まで歩いていく
帽子「お尻痛い」
博士「お帰り」
博士「んふふ」
旅男「どうした、気持ち悪いな?」
博士「いやあ、このプログラムにはいくらの値がつくかと思ったらな?」
旅男「楽しみだな」
帽子「しかし厳しい討伐だったよ、EEちゃんが殆どやっつけた感じ」
旅男「助かったな」
博士「そうだろうそうだろう」
旅男「で、こいつはどうする?」
旅男がEEを指差すとEEは首を傾げた
博士「しばらくはEEにイーターを狩ってもらおう、一応EEに攻撃しないようにハンター協会の方に通達を出しておく」
旅男「皆びっくりするだろうな、コイツ見たら」
茶髪「く、食われねえの?」
博士「もうコイツはイーターしか食わないよ、そう言うプログラムにしてある」
茶髪「生きてるマンイーターに触れるの珍しいよな、なんか小さいウロコみたいな肌触りだな」
旅男「見た目はまんま恐竜なんだよな、誰の趣味やら」
博士「全くだな」
EEを囲んで全員で語らっていると不穏な群集が旅男達に近付いてきた
旅男達は忘れていた
このI地区で危険なのはイーター達だけではないのだ
数十人の中から白い髭を生やした長老風の人物が語りかけて来た
白髭「お見事で御座います、旅男様……」
旅男「何者だ?」
旅男は男に問い返しながら帽子に目配せする
白髭「ご心配なく、我々は危害を加える者では有りません」
旅男「何者だっつの」
博士「選民教教徒だろ、いや、司教様かな?」
白髭「これはこれは、博士は流石に博識でいらっしゃいますな」
博士「ただの推測だ、ボールも付けてない、犯罪者でもない、砂漠に住んでる物好きが大勢で徒党を組んでいる、となれば選民教教徒以外にないだろう」
博士「選ばれた民として旅男に目を付けていたと言うことか」
旅男「はあ……」
旅男「そんなもんどうでも良いわ、帰れ」
白髭「そうおっしゃらずにお話だけでも……」
白髭「我々はサンルビーの雨の日を生き残った、選ばれた民なのです」
サンルビーの雨の日とは、世界を大破壊に追いやった巨大ルビー輸送船の爆発事故の事である
126 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:11:06.61 ID:DwPfEm8AO
巨大輸送船は隕石のように大陸を焼き尽くし、世界中に散らばったサンルビーはそのまま落ちたり、砕け散り莫大なサンルビーのエネルギーで大地を、海を、氷河期で凍った世界を焼き尽くした
大破壊は更に津波をもたらし、海に面したあらゆる地域は飲み込まれた
その大破壊の中を生き残ったのが現在の人々だが、その中には中央政府に従わず生きる人々が居た
選民教教徒達である
大破壊を生き残った選ばれた民として、より優れた生き残る力を持つ者を選び、その血を残して行く
邪教である
旅男「帰れよ」
白髭「そうおっしゃらず、我々は旅男様の血を必要としてるのです」
旅男は自分の腕を皮一枚斬った
その血を白髭になすりつけた
旅男「どうぞ」
旅男「藍、頼むわ」
藍「はい、回復初めてですね」
旅男の傷はすぐに瘡蓋に変わり、その瘡蓋もすぐに剥がれた
旅男「おお、すげえ」
白髭「旅男様……」
白髭がそれでも旅男に言い寄ろうとすると、ビルの上からレーザーが降ってきた
白髭「ひゃいっ」
旅男「今度は誰だ?」
ビルの上から現れたのはいつかのマントの男と右目に黒い眼帯をした男、そしてその仲間らしき数人の男女だ
127 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:13:07.12 ID:DwPfEm8AO
眼帯「そいつらはウチが先約だ」
マント「やあ、たまたま会えたな!」
旅男「お前らとも約束した覚えがねえな」
眼帯の男達は十メートル程のビルから躊躇いもなく飛び降りて来た
全員がAHなのだろう
眼帯「おいおい旅男ちゃんよ〜」
眼帯の男は厳つい外見とは違ってとても馴れ馴れしい
眼帯「そこのAHの彼女達も子供欲しくねえ?」
帽子「欲しい」
眼帯「お嬢ちゃんはもっと大人になったらだけどな〜」
眼帯「俺達はAHの国を作る、その為にAHの子供の作り方を研究してる」
眼帯「そこの博士ちゃんもまとめて一括引き抜きよ〜?」
博士「はっはっはっは!」
博士「いや、あんまりバカバカしくて笑ってしまった」
博士「モテない男が集まってナンパしてるようにしか見えん」
眼帯「あちゃー、博士ちゃん厳しいねぇ」
旅男「俺はホモじゃねえしな」
藍「一昨日来やがってください」
眼帯「きびしっ」
旅男達が徹底拒否する中、帽子だけが違う様子を見せた
帽子「……ボク行きたい……」
旅男「何を……」
旅男には予感があった
だからマントの男に脅しまでかけたのだ
帽子を取られてしまう
128 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:15:15.44 ID:DwPfEm8AO
眼帯「じゃあちょこっと見学って事で、うちに来てくれ」
マント「メンテナンスもうちの女医さんがやってくれるからな」
帽子「旅男」
旅男「行くな、帽子」
帽子「ちょこっと見学に行くだけだから……」
旅男「駄目だ」
マント「旅男さん、言ったはずだ」
マント「思想信条は個人の自由だってな」
マントの男はそう言うと選民教徒達を睨み付けた
マント「お前等も思想の押し付けしてるんじゃねえよ」
白髭「ひいっ」
先の旅男の血を擦り付けられた件で既に教徒達は引いていたのか、逃げ出した
眼帯「お嬢ちゃんの気が変わらないうちに行くか」
眼帯「なあに、見学だけだ」
旅男「行かせんぞ」
マント「いい加減往生際悪過ぎだろう」
マントの男は帽子に着いてくるよう促して、跳んだ
旅男「待て!」
帽子「ごめん、みんな、旅男!」
帽子「すぐ帰るから!」
旅男「駄目だ、帽子、行くな!」
博士「行ってこい」
博士が言うと帽子は一つ頷いて、跳んだ
博士「……はあ、何を恐れてる、旅男」
旅男「俺達の運命は玩具じゃねえ……、イーターを作り出した偉い人間達も俺達を作り出したドクター達も……」
129 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:17:19.18 ID:DwPfEm8AO
旅男「どいつもこいつも俺達の命を弄びやがって!!」
旅男「うおおおおおお!!」
旅男の叫びは、砂漠の夕焼けに木霊した
…………
博士「はあ……」
旅男「……」
藍「はあ……」
茶髪「暗いのやめようぜ」
旅男「……ふう……」
旅男達は三人ともメンテナンスをするための湯船に浸かっている
それを茶髪は来客用テーブルにつっぷして眺めている
博士「帽子はすぐに帰って来るさ」
旅男「そんな事は分かっている」
博士「……ちょっと独り言を言うぞ」
博士「イーター発生はルビーの値段を高騰させる目的だ」
旅男「……やっぱりくだらねえ理由だな」
博士「AHに子供が作れないと言う噂が広まったのも、無力な人間の方がルビーを使うからだろう」
博士「弄ばれるだけじゃ悔しいだろうから少し面白い話をしてやろう」
旅男「どうしたら面白い話になるんだ?」
博士「私達に与えられる賞金は中央を通してサンルビー協会から八割出ている」
博士「今回の討伐報酬は旅男と帽子が五千万、藍と茶髪が一千万、殲滅報酬が各五百万、私が二千万、EEのプログラム報酬が二億」
旅男「はあっ!?」
博士「面白い話だったろう」
130 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:20:24.49 ID:DwPfEm8AO
博士「良いんだ、こうやって荒稼ぎしていたらそれが私達の復讐になるんだ」
旅男「プログラム報酬高過ぎだろ」
博士「突っ込むのそこか?」
博士「EEは今もイーターを狩って食ってる」
博士「並みのハンターでは出来ない仕事だ」
博士「EEはいつかルビーイーターに焼き殺されるかも分からないが……」
藍「可愛かったですよね、EEちゃん……」
博士「また一目会えたらな……」
博士「因みにどんどん討伐報酬は私のクレジットに入っている、うふふ」
旅男「うふふ、じゃねえ!」
茶髪「儲けすぎじゃね、博士」
藍「いいなあ」
博士「旅男、余計なお世話ではあるが……」
旅男「分かってる」
博士「帽子が帰ってきたら運命を受け入れろ、それが人工の、アーティフィシャルな運命だとしても」
旅男「……」
旅男「分からねえよ、そんな事は……」
茶髪「俺には難しくて分かんねえけど、酒飲んで忘れろよ」
茶髪「奢るぜ」
旅男「生意気だ、糞餓鬼」
藍「美味しいもの食べましょうよ〜」
博士「行くか、おっと、お前等、薬」
旅男「サンキュ」
藍「帽子ちゃんも薬、きちんと飲んだかなあ?」
131 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/10/18(土) 21:22:47.10 ID:DwPfEm8AO
旅男「女医さんがいるらしいから大丈夫だろ」
茶髪「貧乳な女医さんだったらどうする?」
旅男「それなら良いなあ、俺も行くんだったなあ」
藍「帽子ちゃんの代わりに言いますが、躊躇えよ」
…………
旅男達はそれから一週間、メンテナンスを続けた
その後も藍に映画に引っ張られたり博士に釣りに誘われたりして、旅男はゆっくり休養した
そんな中博士が慌てて酒場に来た
博士「ルビーイーターだ……、I地区に!」
旅男「何!?」
…………
旅男達がI地区に向かう事を決めると、博士は旅男の手足、胸、下半身に皮の鎧を纏わせていく
博士「まだ完成品とは言えないが、この際仕方有るまい」
旅男「助かるぜ」
博士「直撃したら穴くらいは開くかもな」
茶髪「旅男、俺待ってるぜ」
茶髪「生きて、帽子の姉ちゃんと帰ってきてくれ!」
旅男「……ああ!」
藍「私の分のアーマーも有りますか?」
旅男「藍……」
藍「私は救護班として隠れてますんで、頑張って下さい」
藍「やられるなら回復できる程度にやられちゃって下さいよ?」
旅男「分かった」