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昔々、廃墟に探検に行くと本を読んでいる女性がいました

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廃墟にいた女の人と>>1の紅茶風味のラブストーリーかと思いきや…別のカップルまで誕生してしまう始末。初々しい>>1と、まさかの結末をお楽しみに!
Part1
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 22:44:39.91 ID:MdxcIM5x0
暇なら聞いてってくれ。思い出しながらだから脳内補完が二割くらいあると思う。ちなみにホラー話ではない
昔俺が通ってた小学校の近くにでかい廃墟があったんだ。
好奇心旺盛な小学生は興味津々で、お化けが出るとか誰かが殺されたとか根も葉もない噂にみんな目を輝かせてた。
小6の春、元気でリーダーシップのある友人がそこに行こうって言い出した。
俺は運動はあんまり得意じゃなくて、小学生の頃は運動できる=かっこよくてクラスの中心だったからすみっこの方で本読んでるような奴だった。

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 22:51:29.66 ID:Ff+BhP4CO
PSPじゃ書きにくいから携帯に移動。
行くー!とノリノリな奴、怖いからやめとくと言う奴。
行こうって言い出した奴(K介としよう)はなぜか俺を気に入ってくれてたらしく、「お前も行くよな!」と声をかけてくれた。
昔からお化けは信じないタチだったからあまり興味はなかったけど断りきれず頷いてしまった。
結局6人集まり、放課後廃墟に向かった。
まわりは途中で木の棒を拾ってお化けが出たらやっつけようぜ!なんて言っていた。

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 22:59:11.34 ID:Ff+BhP4CO
廃墟は迫力があった。草木で包まれ、錆びた門の残骸のような物があって、本当に何か出そうな雰囲気だった。
意気揚々だったみんなも静かになり、K介が恐る恐る進んで行った。
敷地であっただろう門を入った所は草が生い茂り、建物は見えなかった。
奥へ進み入口からは見えなかったところを覗いてみると、建物があった。
ドアがあったけど半開きで中は見えない。
誰が最初に行くかで少しもめた。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 23:06:47.70 ID:Ff+BhP4CO
結局みんなで一緒に中を見ようということに決まった。正直少し怖くて帰りたかったけど、ここで帰ったらみんなにビビりと呼ばれる。普段目立たないのにそんな事で注目されるのは嫌だった。
K介「じゃあいっせーのーせっで見るぞ…いっ…せー…のー…せっ!」
中を見た。5人は。
「うわあぁああ!!」
「でたあああああ!!」
前の奴の頭が邪魔で見えなかった俺が中を見ようとしている間に5人は走って行った。
中には、女の人がいた。

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 23:15:28.86 ID:Ff+BhP4CO
とりあえず最初に思ったことは綺麗な人だなぁ、だった。
コンクリートの固まりの上に座ってこっちを見ている。
ひび割れた窓から入る光りが射すとこにいて、肌の白さが際立ってた。
ぼーっと見とれていたけど相手が不思議そうな顔でこっちを見ていることに気付いて、慌てた俺はなぜか何か喋らなくちゃ、と思った。
「な、なにしてるんですか」
「…寝てた…」
どうやら人間のようだ。そりゃそーだ。ビビっていた自分がバカらしくなった。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 23:17:33.78 ID:zKFl7ioxO
携帯で頑張るなぁ

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 23:21:46.74 ID:jRhfTeIKO
>>1
親指のドゥケルバン症候群だけ気を付けろよ

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 23:22:40.56 ID:Ff+BhP4CO
とりあえず睡眠を妨害したようだったから謝った。
「うるさくしてすいませんでした」
「うん…何してたの?」
「えーと…」
お化け探しに来てまわりはあなたがお化けかと思って逃げましたとは言えなかった。
ちょいちょいと手招きをしている。
恐る恐る近づく。←まだビビってる
「声が響いて聞こえづらいから」
ゆっくりした穏やかな細い声。よく見ると女の人が着ているのは地元の中学校の制服だった。

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 23:31:27.66 ID:Ff+BhP4CO
ちょっとした探検です、と濁してからなんでここにいたのか聞いてみた。
「ここが温かいから…」
「いや、日が射すところってことじゃなくて…」
「?」
「いや、なんで廃墟にいるんですか?」
「静かで落ち着くから」
「そうですか…」
会話が途切れる。なんとなく気まずい。
「何してたんですか?」
「本読んでた」
スッと本を取り出す女の人。小学生の俺には難しそうな本だった。
「そしたらいつの間にか寝てた」
「日差しが気持ちいいですもんね」
春の陽気は廃墟の中を温かく照らしていた。

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 23:36:18.88 ID:p2xyYOxCO
何か…嫌いじゃないっす

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 23:39:27.10 ID:Ff+BhP4CO
「お名前は?」
初めて質問が来た。
「俺です」
「私は紗奈です」
柔らかく微笑む紗奈さん。
「食べる?」
脇に置いていたバッグからバームクーヘンを取り出す。
知らない人から物をもらっちゃいけませんという言葉が浮かんだけど名前聞いたから知らない人じゃない、とごまかしてありがたくもらうことにした。うまそうだったし。
二人でバームクーヘンを食べる。
さっきの気まずさは無くなってなんだか居心地がよかった。

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 23:49:30.03 ID:Ff+BhP4CO
今思うと餌付けされた小学生のような気もするけどバームクーヘンはホントにおいしかった。
けどのどが渇いた。口の中パッサパサだった。
「飲む?」
水筒が目の前に出て来た。
「はい」
口の中パッサパサ。
トポポポ、と水音。ありがたいありがたい。
「どうぞ」
勢いよく飲む。…甘い…苦い?
「紅茶嫌い?」
「生まれて初めて飲みました」
ちょっと苦いけどのどの渇きを癒すためには仕方ない。
「本当はいれたてのほうが美味しいんだけど」
紅茶の事は全くわからないから黙って聞いていた。
「紅茶嫌い?」
「嫌いじゃないです」
紗奈さんは嬉しそうだった。

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/03(火) 23:59:48.46 ID:Ff+BhP4CO
それから少し紗奈さんは紅茶の話をしてくれた。
クリームを乗せたりフルーツを浮かべたりしたのもあるんだよ、と聞いて少し飲んでみたくなった。
少しずつ空が赤くなってきて、窓から差し込む光は違うところを照らしていた。
あたりを見学していた俺は紗奈さんが読書を再開しているのを見て帰ることにした。邪魔するのも悪い気がした。
「じゃあそろそろ帰ります、バームクーヘンおいしかったです」
「うん、またね」
またね。また来てもいいのかな。なんだか嬉しくなった。

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 00:06:34.89 ID:RydKMt3+O
次の日学校に行くとみんなが集まって来た。
「お前あの廃墟行ったんだろ、どうだった!?」
「昨日心配したんだぞ!」
「お化けでた?」
「がいこつとか!?」
ここで何かあると言ったらまた探検に行こう、となるかもしれない。それはなんか嫌だった。紗奈さんの読書の邪魔にもなるし。
「なんにもなかった。K介達は黒い岩みたいな奴を人と見間違えたんだと思う」
みんな明らかに落胆した顔。まじかよーつまんねーと聞こえる。
「まぁなんかあったらお前が帰って来れないか!」
バームクーヘン食って帰ってきましたけど。

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 00:17:00.24 ID:RydKMt3+O
その日の放課後はK介から遊ぼうと言われ、奇跡的に放課後に予定が入った。紗奈さんのことが少し気になったけど、久しぶりに入った遊ぶ約束を優先した。
次の日、金曜日。
紗奈さんのことが気になる。
もしかしたらホントは幽霊だったんじゃないか?でもバームクーヘンはちゃんと口から水分を奪い去っていったし紅茶は苦かった。
とにかく確認したかった。
貰ったからにはお返しをと、放課後、家に帰ってお菓子を取って廃墟に向かった。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 00:23:58.15 ID:wG6IsNbAO
支援☆

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 00:24:52.69 ID:caEsnAl7O
wktk

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 00:26:00.05 ID:xUlWGKEU0
なんかいいねこの話
廃墟ってのがいい

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 00:13:26.60 ID:x3D3E0Is0
実話?

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 00:28:22.60 ID:RydKMt3+O
>>24
実話を思い出しつつだから脳内補完も二割ほど。
門の残骸に着く。相変わらず迫力がある。少しビクビクしながら奥に進んだ。
半開きのドアを、覗き込む。
紗奈さんがいた。本を読んでいた。
やっぱり幽霊じゃなかった。安心して近寄る。紗奈さんも気付いたようだった。
「あの、こんにちは」
「はい、こんにちは」
優しく微笑む紗奈さん。
「今日も読書ですか?」
見りゃわかるだろ。と、自分で言った後に心の中で突っ込む。
「うん」
そういうとパタンと本を閉じる。
「食べる?」
取り出した袋にはクリームパンとかかれていた。


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 00:38:14.19 ID:RydKMt3+O
「俺も持ってきました」
ワッフル?のようなものを渡す。
「豪華だねぇ」
嬉しそうな紗奈さん。
「今日は砂糖多めに入れて来たから」
一昨日見た水筒がでてきた。
「お茶会だね」
お茶会らしい。
「お腹一杯」
紗奈さんは少食なようで、クリームパン一つとワッフル半分でお腹は満たされたらしかった。
「昨日もいたんですか?」
「うん、大体いるよ」
昨日もきとけばよかった。
「俺君は何年生?」
「6年です」
紗奈さんは俺の一つ上だった。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 00:40:27.16 ID:5pST7Kdd0
わっふるわっふる

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 00:47:10.45 ID:W3Gr5QEe0
なんか良いな

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 00:52:00.11 ID:RydKMt3+O
それからぽつぽつとお互いの話をした。
人見知りで友達があまりいないこと。
本が好きなこと。
学校に自分の居場所がないような気がすること。
なんだか似ている気がした。
向こうもそう思ってくれているのだろうか。
その日は一昨日より遅くまでいた。居場所を見つけた気がした。

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 00:54:50.76 ID:4FBPd5Ya0
面白いな、読むぜ

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 01:03:25.67 ID:RydKMt3+O
次の日は土曜日だった。
さすがに休日にはいないだろうと思って昼頃まで過ごしたけど、気になるので行ってみることにした。
ママチャリを必死に漕いで坂を昇る。
門について、ここに自転車を置いたら誰かいるとばれるので奥まで持っていくことにした。
これでいなかったら馬鹿みたいだ、などと考えながらドアをくぐると紗奈さんがいた。
けどいつものように(といっても二回しか見てないけど)コンクリートの固まりに座ってはいなかった。シートを敷いて寝ていた。
近づいてみると実に気持ち良さそうに寝ていた。
カラフルなピクニックシートのすみには弁当箱らしき包みがあった。

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 01:03:41.95 ID:RBEK9dZPO
映画みたいに脳内で再生される…面白い

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 01:07:33.77 ID:x3D3E0Is0
書き方が映像を鮮明に作るからこれまたすごい

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 01:08:31.77 ID:NVrm0d82O
久しぶりに廃墟探索したくなってきた

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 01:08:40.78 ID:skuoA+JR0
ショートフィルムで見たいな

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 01:18:53.24 ID:RydKMt3+O
寝ているのを起こすのは気が引けたけど、無防備な女の人の近くにいるのもなんだかいけない気がする。悩んだ末に起こすことにした。
「紗奈さん、俺です」
大きめの声を出してみる。
穏やかな寝息。
「紗奈さん?」
ゆさゆさと揺すってみる。
顔がむむ、と表情を作った。目がうっすらと開く。
「…あれ…」
「おはようございます」
「はい、おはようございます…」
寝ぼけているようだ。むにゃむにゃと効果音が付きそうな雰囲気。
むぅとかうーとか唸った後、少し意識が覚醒したらしい紗奈さんが口を開いた。
「ご飯は食べましたか?」
何故敬語。
「まだですけど…」
「じゃあどうぞ」
シートのすみの包みをほどく紗奈さん。やっぱり弁当箱だったのか。
「あれ、こっちは食べたやつだ」
まだ寝ぼけているらしかった。

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 01:21:51.15 ID:z11sqoyUO
ほのぼのしてるなぁ
こんなの好きだ

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 01:22:05.20 ID:5pST7Kdd0
か、かわいいじゃねぇか…

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 01:29:36.57 ID:RydKMt3+O
かばんからもうひとつ包みを取り出す紗奈さん。
中身はから揚げと卵焼きとおにぎりだった。
「ありがたいです」
「来なかったらどうしようかと思ってた」
えへへ、と笑う紗奈さん。
「いただきます」
から揚げ。冷凍のようだ。
おにぎり。うん、普通のおにぎり。
卵焼き。……
「?」
不思議そうにこっちを見てくる。
はっきり言って、まずい。
だけどそんなこと言えるはずもなく、
「すごく美味しいです」
「よかった」
この一言で後々苦しむことになる。

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 01:39:59.86 ID:RydKMt3+O
黄色い悪魔に見える卵焼きを無理矢理お茶で流し込み、弁当を食べ終わる。
紗奈さんは弁当箱を丁寧に包んでバッグにいれるとかわりにトランプを取り出した。
「いくよー」
たどたどしい手つきでトランプをシャッフルすると簡単なマジックをやってくれた。
タネがわかったような気もしたけど黙っておいた。
そのあとは紗奈さんの提案により二人でババヌキという最もつまらないトランプゲームをした。
ただ、普段は優しく微笑む紗奈さんの表情がくるくる変わるのを見るのは面白かった。

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/04(水) 01:49:35.36 ID:2IF/cHf7O
俺もこんな思い出ほしい

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