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幼なじみが春から大阪の大学に行くらしい

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Part57
258 名前: 和菓子職人(コネチカット州)[sage] 投稿日:2007/03/17(土) 22:21:28.21 ID:ZNJbA+h7O
そして、こうして卒業の日。
溝は埋まることはなく。
「今日が、最後なんだよ……」
「…………」
「行きなよ……」
「…………」
「もう、会わないつもりなの……?」
「…………」
俺の沈黙を、どう受け取ったのか。
「やだよ………」
「…………」
「そんなの……ぜったい……」
なんで。
どうしてお前が泣くんだよ。
昔も今もそうだ。人のことを思いやりすぎだ。
もっと自分を好きになれ、というくらいに。
泣きたいのは、泣くべきなのは、
「ふたりが…ふたりが離ればなれになるのはイヤ……」
「お願い……結衣のところに行って………」
「お願いだから……」
俺だ。
よっちゃんをその場に残して、俺は教室を出た。

261 名前: 声優(神奈川県)[sage] 投稿日:2007/03/17(土) 22:27:12.87 ID:xzVqSVt+0
よっちゃんいい娘すぎる(´;ω;`)

263 名前: 和菓子職人(コネチカット州)[sage] 投稿日:2007/03/17(土) 22:30:17.94 ID:ZNJbA+h7O
母校や恩師、そして級友たちに別れを告げる生徒たちの間を、
俺は一陣の風となり、まあ実際はそんな早くなかったわけだが、
とにかく昇降口へ急いだ。
靴を見れば、校内にいるか否かがわかる。
空っぽの下駄箱が、俺を迎えてくれた。
既に名前シールは剥がされていたが、
幼なじみの靴入れには、下履きがなかった。
俺が、間違えるはずがない。
幼なじみのことに関しては、だが。
「外!!」
今でも覚えている。
俺は周りにちらほらと生徒がいるのにも関わらず、こう叫んだ。
下靴にはきかえる時間すらも惜しみ、
俺は上靴のまま玄関から外に飛び出す。
卒業生やその親が何事かと向ける視線も、気にはならない。
ただ、一つだけ。
目指していたのは、ただ一つだけだった。

265 名前: 和菓子職人(コネチカット州)[sage] 投稿日:2007/03/17(土) 22:40:12.32 ID:ZNJbA+h7O
見つけた。
玄関から正門へと向かうアスファルトの道。
そこに、幼なじみらしき後ろ姿が見えた。
紺のセーラー。小さい背中。やや短くしたスカート。
幼なじみの親はうちと同様、先に帰ったようだった。
ひとり、とぼとぼと、これは単に主観なのだが、
少しだけ寂しそうに見える。
俺は安堵の息をついて、距離を詰めた。
「結衣」
幼なじみの動きが、止まる。
急停止をかけられた、機械のように。
そして、振り向きはしないまま。
「……なに」
悲しくなるくらい、冷めた声色だった。
風が吹き、幼なじみの長い髪とスカートを揺らす。
「…………」
言いたいことがある。
たとえ、幼なじみが違う高校へ行っても、
会える時間が少なくなったとしても、
俺は、俺は………
「……………」
言葉に、ならない。

268 名前: 工作員(catv?)[sage] 投稿日:2007/03/17(土) 22:49:38.64 ID:z8wX8r2W0
(ノд`)


269 名前: 和菓子職人(コネチカット州)[] 投稿日:2007/03/17(土) 22:53:44.16 ID:ZNJbA+h7O
「言いたいことがあるんじゃないの…?」
「…………っ」
「言えないの…?」
言いたいこと?山ほどある。
会えないからこそ、これからは二人の時間を大切にしていこう。
高校生なんだし、ちょっと遠出もできる。
幼なじみと行きたい所はたくさんある。
幼なじみと話したいこと、やりたいこと、
まだまだたくさんある。
「…………」
だけど、言えない。
口から洩れるのは、微かな吐息だけ。
言葉が出てこない。生まれない。
「何も、ないんだね」
そんなことはない。
もうすぐ桜が見所になる。
そしたら一緒に見に行こう。
よっちゃんも誘って。
三人別々の高校に行くことになっても、
何一つ変わらない、そんな俺たちでいよう。
「…………」
「……わかったよ」
何が分かったんだろう。

271 名前: 声優(神奈川県)[sage] 投稿日:2007/03/17(土) 22:55:09.41 ID:xzVqSVt+0
いくらヘタレでもこれは・・・orz

272 名前: 訪問販売(北海道)[sage] 投稿日:2007/03/17(土) 22:55:43.05 ID:bWStbhuK0
正直ねーよ

279 名前: 和菓子職人(コネチカット州)[] 投稿日:2007/03/17(土) 23:08:18.71 ID:ZNJbA+h7O
「……いくじなし」
そう言われても、言い返せなかった。その通りだと思った。
親友を泣かせないと、ここに立つことすらできなかった男だ。
何を言われても、反論する資格なんかない。
この世に存在しえる罵倒を全部言われたって、
それが幼なじみになら、堪えることができそうだった。
「…卒業」
「……え?」
だが届いたのは、憎悪のかけらも感じさせない言葉だった。
「卒業、おめでとう」
今まで前を向いていた幼なじみが、そこだけ、振り返って笑顔を見せた。
目からは、一筋の線を垂らしながら。
この世に存在するどの線よりも、真っ直ぐだった。
――何で人間の目はふたつあると思う?
――ひとつだと見えにくいからだろ。遠近が分からないし
――そういうことじゃなくて。
――どういうことだ。なぞなぞか?
――泣いているとき、一人じゃないよ、って思わせるためだと思う。
――だって、涙の線は二つできるもん

281 名前: 和菓子職人(コネチカット州)[sage] 投稿日:2007/03/17(土) 23:19:59.78 ID:ZNJbA+h7O
「今までありがとう」
幼なじみが言った。
そう言いながら渡されたのは、やや大きな紙袋。
俺がくまさんを入れてプレゼントしたのとは、一回りもでかい。
「一人暮らし、頑張ってね」
「……おう」
卒業式から、三年。
あれほど好きだったこの町を離れようとしている。
あの一生忘れられそうにない修学旅行で行った所、東京へ。
合格してすぐに知らせたのは、親でも悪友でもなく、この幼なじみだった。
あれだけVIPに張り付いていた俺が。奇跡としか言いようがない。
「割れ物だから注意してね」
「え?……おう」
さっきの言葉から察するに、食器か何かだろう。
有り難く使わせてもらうとしよう。
「……手紙は?」
「同封してます」
「同封て」
笑いながら、心から感謝した。
寂しい東京暮らしも、これでご飯を食べれば寂しくない。

282 名前: 天使見習い(福島県)[sage] 投稿日:2007/03/17(土) 23:20:01.68 ID:sNj0Vw9c0
・・・・・・・・・

285 名前: 和菓子職人(コネチカット州)[sage] 投稿日:2007/03/17(土) 23:26:13.92 ID:ZNJbA+h7O
「あ、そうだ」
「ん?」
「忘れ物って、なに?」
そういえば、とっさにそんなことも言った。
まあ、忘れていた物といえば、そうなのだが。
「ああ……」
「?」
「はい、これ」
俺がポケットから出したもの。
一ヶ月の思いを、すべて綴ったもの。
手紙を、小首を傾げる幼なじみに差し出した。
「これ……」
「初めて書いたから」
「うん……」
中学の時は、メールなんかなかった。
携帯電話はそこまで普及していなかったからな。
今じゃ小学生から持っているらしいが。
幼なじみから手紙は貰うことはあったが、
俺がその返事を書くことはなかった。
最後の最後にまで。

290 名前: 相場師(九州)[sage] 投稿日:2007/03/17(土) 23:33:02.23 ID:wJ9dOqf3O
言葉が見つからない

293 名前: 和菓子職人(コネチカット州)[] 投稿日:2007/03/17(土) 23:41:56.42 ID:ZNJbA+h7O
卒業式の約一ヶ月後。
ソメイヨシノが全国的に勢力を誇るこの時期、
クラスのあるグループで花見へ行こうという話が持ち上がった。
言い出しっぺはやはりよっちゃんで、幼なじみはもちろん、
お情けで俺にまでお呼びの声がかかった。
よっちゃんは、俺を責めることはしなかった。
あのあと、うなだれながら教室に戻った俺を、
何も言わず、ただただ手を握ってくれた。
周りには帰っていない生徒がちらほらいて、
かたや目を腫らし、かたや余命半年を宣告された患者のような顔付きの二人が
無言で両手を重ねているのを、街角でコウテイペンギンを見たかのような目つきで見ていた。
それは小学校の校庭に犬が入るの同じで仕方のないことであり、
そうなればみんなに追いかけ回されるのと同じように、当たり前のことだ。
幼なじみとの連絡は皆無。俺からもしなかった。
向こうは受験勉強の邪魔になると思ったんだろう。
きっとそうだ………

294 名前: 和菓子職人(コネチカット州)[] 投稿日:2007/03/17(土) 23:53:19.86 ID:ZNJbA+h7O
「ちょっと」
「……ん」
「そのブルーなオーラ消し去ってくれる?」
「なんで?俺明るいよ?わあ桜タノシミダナー」
「うわ、キモ…」
「…………」
ゆうちゃんは俺と話す数少ない女子であり、卒業してもそれは変わらない。
だが花見の後は接点もなく、メールもせず、
アドレスを変えればとりあえず報告するだけの間柄になってしまった。
それからセンター試験会場で再会することになるのだが、
中学の時にはなかったけだるさというか女を感じさせる容貌になり、
ヘタレなことに話し掛けることすらできなかった。
「久しぶり」
「おっす」
ヨシ君とは同じ高校に通うことになった。
勉強が出来る奴で、常に俺の先に行て、
やはり相応の国公立に進学を決めた。
「やあ」
「おっす」
こいつはかなり後になって知ったのだが、創価だった。
創価大を受けたが落ちて、浪人するらしい。
あとはしらん。名前も出す必要はないな。

296 名前: 僧侶(コネチカット州)[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:00:01.51 ID:8h6TQkm4O
幼なじみは無難にラウンジに合格していた。
きっと俺が受けた学校にも受かっていただろう。
もしもの話だが。そして俺はイフもたらればも嫌いだが。
「綺麗だねー」
「ねえー」
よっちゃんと幼なじみは相変わらず仲がいい。
俺は三人の輪から外されたんじゃない。
自分から逃げるように外れたんだ。
言葉を発することが怖くて、逃げたんだ。
「一夜」
「はい」
「結衣が話あるって」
よっちゃんにそう呼ばれたときに、
俺はある覚悟をした。
言うしかない。決めた。必ず言うんだ。
今日こそは。

298 名前: 公務員(広島県)[] 投稿日:2007/03/18(日) 00:04:41.48 ID:NCAaZjbf0
リアル桜坂の世界じゃないっすか…。

304 名前: 僧侶(コネチカット州)[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:09:23.13 ID:8h6TQkm4O
「久しぶり」
「…! 久しぶり」
幼なじみは、笑った。
卒業式の後に見せた、無理矢理作ったような形ではなく。
「合格おめでとー」
「あ、聞いたんだ…」
「よかったじゃん」
「そっちも」
「妹もね、VIP目指してて……」
「そうなんだ……」
二年先、幼なじみのかわりに、幼なじみの妹は合格を果たす。
「今の成績じゃ無理っぽいんだけど……」
「大丈夫だろー」
「いやいや、あの子数学悲惨だよ?」
何てことのない身内話。
久しぶりに話が弾んだ。
その一時だけでも、昔に戻れた気がした。
あの夏祭りの日より、もっと昔に。

311 名前: 僧侶(コネチカット州)[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:24:12.44 ID:8h6TQkm4O
だから、言わなければ。
今までずっと、思ってきたことを。
言いたくて、言えなかったすべてを。
「…あはは」
「ん?」
「……なんでかなぁ」
「え?」
「なんでこんな話が弾むかなぁ……」
「…………」
幼なじみは、笑った。
ただ、先程とは大きく異なり、今にも泣きそうな。
見ているだけで、消えて無くなってしまいたくなった。
「一夜なら……」
「…………」
「うちの言いたいこと、分かってくれる…?」
分かりたくなかった。
なのに、分かってしまった。
なんでだろう。考えていることなんて、知りたくなかった。それなのに。
「……別れよう?」
桜は、散る瞬間こそが、もっとも美しく咲き誇るという。
風に舞う花びらは、確かに、綺麗だと思った。

314 名前: シェフ(福島県)[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:28:02.43 ID:RyGZZe4V0
うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん


316 名前: 貧乏人(catv?)[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:30:05.59 ID:uUPGNRjy0
(ノД`)

319 名前: 僧侶(コネチカット州)[一夜 もうさげなくてもいいか……] 投稿日:2007/03/18(日) 00:33:39.34 ID:8h6TQkm4O
「……俺も」
何を言うつもりだ。
やめろ。俺が言おうとしていることは…
「そう言おうと思ってた」
違う。
これからもよろしくって、付き合って行こうって、
何があっても笑いあえる二人でいようって、
それを言いたかった。別れたくなんかなかった。
「……やっぱりね」
「…………」
「気付いてたんだ…このままじゃフラれるって」
そんなつもりはない。
俺からふろうだなんて、ありえないことだ。
現に、あんなことを言われなければ、言うつもりだった。
………後手に回ったばかりに。
いや、今日に限ったことじゃなかった。
俺はいつも肝心なところで逃げていた。
その結果が、こうして別れる形になったんだ。

321 名前: バンドマン(神奈川県)[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:35:34.57 ID:nJgIJG9Q0
あぁぁああ・・・・・

322 名前: ピアニスト(北海道)[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:36:18.32 ID:ISWlyJ2r0
なんというヘタレ

325 名前: 2軍選手(九州)[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:38:39.70 ID:/9Kog2KaO
>>319
まさか今回は逃げてないよな?
ちゃんとサヨナラの覚悟はできてたんだよな?

328 名前: 僧侶(コネチカット州)[一夜] 投稿日:2007/03/18(日) 00:46:03.13 ID:8h6TQkm4O
「……うち、思ってた」
「…………」
「うちらは、やっぱり、幼なじみなんだ」
幼なじみじゃなかったら。
家が近くて、昔からの縁じゃなかったら。
俺たちは別れずにすんだのかな。
今も、付き合っていられたのかな。
今も、笑っていられたのかな。
だったら、どうすればいい。
幼なじみじゃなくなるなんて、無理だ。
だったら……疎遠になるしかない。
ようやく手にした携帯電話のメモリ。
幼なじみのものを全て消そう。
違う高校だから会うこともない。
やや遠いが、自転車で通えば駅や電車で会うこともない。
やがて、向こうは俺のことなんか忘れるだろう。
幼なじみじゃなくなれば、また、好きになってくれるのか?
そんなわけはない。
だが、このまま友達に戻れそうもなかった。

335 名前: 僧侶(コネチカット州)[一夜] 投稿日:2007/03/18(日) 00:55:52.33 ID:8h6TQkm4O
「……そうだね」
頭の中では、ものすごい早さで考えがまとまっていく。
小型の台風が渦巻いているかのように。
だが、でてきた言葉は淡々としたものだった。
「よっちゃーん、お腹すいたよー」
そんなことを言いながら、俺から離れてゆく幼なじみ
話は終わった。同時に、俺とも。
幼なじみらしい、あっさりとした終わり方だった。
そんなところが、好きだったのかもしれない。
今となっては、遅いこと。
何を言っても、どうしようもなくなっていた。
この先何が変わろうとも、桜は綺麗なままだろうと思った。
俺の頭上で咲く桜も、散って落ちた桜も、同じ桜。
生まれ変わったら、あなたのそばで花になろう。
誰かがそう歌っていたが、俺はそうは思わない。
咲く場所を選ばないのが、花なのだから。

336 名前: 文科相(catv?)[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 00:57:22.41 ID:8Vn2lyBL0
(つд⊂)

339 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 01:00:48.30 ID:RyGZZe4V0
名前もどtったあああああああああああああああああああああああああああ

344 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 01:03:18.79 ID:8Vn2lyBL0
直ったね

345 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 01:04:59.88 ID:jOfCJ6Oi0
おー、やっとか。これでいっちーも酉を使えるな。

346 名前:一夜 ◆Ifzsr.6s6Q [てすつ] 投稿日:2007/03/18(日) 01:09:02.46 ID:8h6TQkm4O
もしも、もう一度。
出逢えることがあるならば。
その時は言おう。
ありがとう。
そして、大好きだ。
それまでは、誰とも付き合わない。
俺にとって好きになれる相手は、幼なじみしかいない。
たとえ広末似の美女にあの微笑みで迫られても。
幼なじみ以上の花を咲かせられる人間など、他にはいない。
溶けていくソフトクリームの線よりも真っ直ぐに泣けるのは、
百万年分の太陽より明るく笑うことのできるのは、
一万年と二千年よりも昔から愛していたと言えるのは、
俺の幼なじみだけだ。
そう誓った、高校入学を間近に迎えた日。
それから卒業まで、俺は少なからず告白されたが、
そのすべてを払いのけた。

349 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 01:10:52.19 ID:8Vn2lyBL0
(´;ω;`)ブワワッ

350 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 01:11:22.73 ID:nJgIJG9Q0
カコイイ

351 名前: ピアニスト(北海道)[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 01:16:15.31 ID:ISWlyJ2r0
名前また戻ったっぽい

352 名前: 解放軍(関西地方)[sage] 投稿日:2007/03/18(日) 01:16:20.01 ID:/WoxZ2yV0
またもどった

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