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喪服の女

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Part2
786 :喪服の女8:2011/06/12(日) 04:54:38.82 ID:D9irWjtj0
>>785の続き
Aは自分が一番危ない状況だったのだから当たり前だが。
そして俺が「あいつら見捨てて逃げただけじゃないぞ、あの時見つけた懐中時計
を盗んで逃げやがった、しんじらんねぇよ…」と、懐中時計が盗まれている
事も皆に教えた。
その日はそのままBの家に泊まり、DとEに文句言うのは月曜ということになった。
月曜日、俺たちが学校へ行くと、DとEは予想通り俺たちを避けていた。
文句を言おうにも授業が終ると教室の外へ行き、次の授業まで帰ってこない、
そんな状態が暫らく続いた。
その間俺たちは、DとEの話をクラスのみんなに話したのだが、その時初めて
何故女子が無視していたのかを知った。
なんとDとEは、女子相手にクラスの男子の陰口や自分達の自慢話をしていて、それで
嫌われていたらしいのだ。
その結果、3日もしないうちにDとEはクラスで完全に孤立した。
それから数日後、俺たちはこの事件がまだ終わっていない事を思い知らされた。
最初の変化はBのところに現れた。
Bによると、夜中寝ているとBの部屋の窓のところに老婆が現れ、一晩中ガラスを
引っ掻いていたらしい。そして、同じ事それから一日後にAと、更に1日あけて俺
ところにもやってきた。
ただ、窓辺に立って引っ掻く音を立てるだけで、実害らしい実害はなかったが、
空き家であれの顔を見ていたBはかなり怯えていた。
俺のところに老婆がやってきた翌朝、その事を教室で話していると、Aが「もしかして…」
と携帯を弄り始めた。
何かと思ってみていると、Aは携帯の地図を見せながら「ここがBの家で、ここが空き家で…」
と説明し始めたのだが、俺はその意味がすぐに解った。
「問題の空き家から近い順に回っている?でもなんで?」Bが答えると、Aは「解らないけど、
もしかして例の懐中時計を探しているとか…?」と言った。
続く

787 :喪服の9:2011/06/12(日) 04:55:48.26 ID:D9irWjtj0
>>786の続き
たしかに可能性はある、でも、懐中時計を持っていったのはDとEで俺たちは関係が無い、
Cもそう思ったのか「俺たち関係ねーじゃん、なんで付き纏われるんだよ」という。
たしかに、懐中時計が原因だとすると凄く理不尽だ。
そして肝心のDとEなのだが、2人がホームステイしている家はあの日のメンバー
の中で一番空き家から遠い、俺たちが考えている通りならば、まだ留学生2人のところにも
来る可能性はあった。
とにかく次は距離的にCのところに老婆が来る可能性が凄く高いので、一応部屋に盛り塩
をして警戒しようという話になった。
何かあるにしてもそれはDとEに対してであって、Cのとろこに来ても俺たち3人に起きた
程度のことだろうとタカを括っていたからだった。
Cの家に来る予定だった日の翌朝、学校へ行くとCが入院したと言う話を聞かされた。
詳しく聞いてみると、入院と行ってもすぐに退院できる程度らしいが…
放課後俺たちが病院へ行くと、擦り傷だらけで真っ青な顔のCがベットに横に
なっていた。
意識もあるしぱっと見怪我も大した事無さそうだが、精神的に相当まいっているようだ。
俺たちはCに何があったのか事情を聞いた(以下はCの話)
Cが夜寝ていると、俺たちのときと同じように窓のあたりから
…カリ…カリ
と何かを引っ掻くような音が聞こえてきたらしい。
Cはとにかく気にしないように、窓とは反対方向を向いて寝ていたのだが、はじめ
外から聞こえていた引っ掻く音が、暫らくすると「部屋の中」から聞こえるように
なった。
なにかおかしい。
そう思ったCが寝返りをうつ振りをして窓の方を見たとき、なんと自分の顔のすぐ横
にやつの顔があり、やつはニヤニヤという感じの明らかに悪意のある顔でCを
覗き込んでいた。
続く

788 :喪服の女10:2011/06/12(日) 05:01:51.24 ID:D9irWjtj0
>>787の続き
びっくりして布団から飛びのくと、そのままやつはニヤニヤと笑いながら両手を
伸ばして近付いてきたらしい。盛り塩なんて何の役にも立たなかったとCは言っていた。
Cは部屋から飛び出して1階まで逃げたのだが、やつはCをずっと追いかけてきた。
それでパニックになり、Cは玄関から飛び出して外に逃げ出した。
ただ、その時は勢いで外に逃げ出したので、その後どうすればいいか全く考えて
おらず、とにかくあても無く夜道を走り続け、ふと目に付いた小さな神社に
逃げ込んだ。
そして、拝殿の中に逃げ込みそのまま朝まで篭城するつもりだったらしい。
だが、Cの目論みは外れてしまった。
神社の中なら大丈夫だろうと思っていたらしいが、暫らく拝殿の周囲を歩き回って
いたがやつは何なく拝殿の扉をすり抜け
ハハハハハ!ヒュー…
ハハハハハ!ヒュー…
と喘息患者みたいな呼吸と笑い声を上げながらCに近付くと、Cの首を絞め始めた。
Cは「あ、俺こんな事で死ぬのか…」と思いながら気を失ったらしい。
翌朝、Cは神社に掃除に来たお爺さんに発見され、そのまま救急車で病院へ
運ばれ今に至ると。
病室でCは続けてこう言った「あいつ婆さんじゃなかった…ガリガリに痩せてたから
ぱっと見婆さんに見えたけど、声は明らかに若かった…たぶん20代くらいなんじゃ
無いかと思う」と。
色々とんでもない話だったが、一番とんでもなかったのはCが殺されかけたって
事で、話を聞いて相当ショックを受けた。
俺たちとCに何か違いがあったのか、それとも俺達はただ偶然助かっただけ
なのか、原因がさっぱり解らない。
Cは体に異常は無いとうことらしく、その日1日入院するだけで退院できた。
続く

789 :喪服の女11:2011/06/12(日) 05:02:41.23 ID:D9irWjtj0
>>788の続き
翌日は1学期の終業式で授業もなく学校が早く終った。
しかし、俺たちは担任に生徒指導室へと呼ばれた。
担任の話はこうだった。
俺たちがDとEを連れて空き家に肝試しに行き、そこでDとEを置き去りにしたと、
そして、学校に来てからも2人を泥棒呼ばわりしてクラス全員で無視していると。
しんじられん、最悪だ。
それが俺の率直な感想だった。
DとEがやけに最近余裕そうな顔をしていると思ったら、ある事無いこと担任にチクって
俺たちを完全に悪者にしていたのだ。
そして担任は、DとEをこれから呼ぶからお前たちは2人に謝罪しろと言い出した。
俺もAもBもCも相当ムカついたが、まずは誤解を解かないといけないので担任に
あの日あった事をすべてありのままに話した。が、まったく取り合ってくれない。
挙句に「D君とE君が嘘をついているとでも言うのか!」と逆切れし始めた。
どうやらこっちの話ははじめから聞く耳持たないらしい。
それどころか、謝罪しないなら内申にも響くし、親を呼んで生徒指導をするとまで
言い出した。
その一言で俺たちも完全にぶち切れ担任と口喧嘩になり、「親呼ぶなら呼べば良い
じゃないですか!」と捨て台詞を残してそのまま生徒指導室を出た。
翌日、なぜか親は呼ばれなかったが、俺たちは学校に再び呼び出された。
生徒指導室に入ると、担任はみょうにヘラヘラしていて、昨日あれだけ喧嘩したのにやけに
馴れ馴れしい。
担任の話はこうだった「D君E君とお前たちの意見に行き違いがあったらしいから、
昨日の話はなかった事にする。ただ、2人を肝試しに連れて行った責任はお前たちにも
あるから、これはお前たちが責任もって返してきてくれ」そういうと担任は例の桐の小箱
にはいった懐中時計を長机に置いた。
意味が解らない。
続く

790 :喪服の女12:2011/06/12(日) 05:03:28.62 ID:D9irWjtj0
>>789の続き
後から知ったのだが、こんな事を言い出した事の顛末はこうだった。
予想通り、DとEのところにあのガリガリに痩せた喪服の女が現れたのは確実のようだ、
そして、恐らくCがあったの以上に酷い目にあったのだろう。
ビビりまくったDとEは、その日の朝に駅の近くにある質屋に懐中時計を持ち込んで売ろうと
したのだが、当然の事だが店主に怪しまれ、それで騒ぎとなり担任やホームステイ先の人たち
まで質屋に呼び出され、逃げられなくなって事の真相をゲロったらしい。
それで今、それでも2人の肩を持とうとする担任がこんな都合のいい話をし始めたと。
当然の事だが、ここまでバカにされて言う通りにする義理など俺たちには無い。
Aがキレ気味に「なら先生が返しに行けば良いんじゃないっすか、俺たちがそこまでしてやる義理ないし」
というと、そのまま生徒指導室を出て行ってしまった。
俺もBもCも顔を見合わせ、Aのあとをついて生徒指導室を出た。
この後、俺たちにはとくに何もなかったのだが、3つ後日談がある。
まず一つ目。
担任のその後なのだが、休みが明けると学校には来ておらず、始業式では病気療養のため
長期入院する事になったと言っていた。
あの懐中時計を持っていたのだから、恐らく何かあったのだろう事だけは容易に想像が付いた、
何があったのかは解らないが、学校にこれなくなるほどだから余程の事があったのだろう。
出家したなんて噂もあったが、真相は解らない。
その後卒業まで担任は学校に戻ってくる事はなく、結局別の教師が俺たちを受け持つ事になった。
ちなみに、懐中時計に関してはその後どうなったのか完全に不明だった、三つ目の後日談に
関わるので後で書くが、少なくとも空き家には戻されていなかったのが確実だからだ。
続く


791 :喪服の女13:2011/06/12(日) 05:10:32.50 ID:D9irWjtj0
>>790の続き
二つ目
問題の留学生2人なのだが、やつらは予定を切り上げて夏休み中に母国へ帰国した。
で、その見送りに生徒会の役員が何人か行ったらしいのだが、そいつらの話だとDとEは明らかに
様子が変で、げっそりとやつれて常に周囲をキョロキョロと挙動不審に見ていて、ちょっとした
物音にも過剰に反応したとか。
そして、なぜか2人とも両手をぐるぐる巻きに包帯で巻いていたらしい。
あとホームステイ先の家もかなり異常なことになっていて、なにか建物中から線香のような臭い
がたちこめ、玄関のところにはあからさまにでかでかとお札が貼ってあり、明らかに「家そのもの
に何かあったのは確実」だったとか。
それと、DとEは両親が迎えに来ていたのだが、それ以外に首からロザリオ?を下げた神父か
牧師のような人が付き添っていて、一緒に車に乗って帰って行ったそうだ。
ちなみに、その牧師か神父のような人も、日本語が通じていなかったっぽいのでDとEと同じ国の
人のようだったと言っていた。
三つ目
俺は高校卒業後進学して地元を離れたので知らなかったのだが、今年のGWに戻ったときに
あの空き家が道路拡張のために取り壊されたという話を聞いた。
そして、同じく帰って来ていたAから聞いたのだが、どうもAの中学校時代の友達がその
解体に関わっていたらしく、Aが変なことなかったか色々聞いていたらしい。
それで聞いた話によると、解体中何度か「喪服を着た女」を見かける人がいたようで、当時少し
噂になったとか。
Aの友達も夕方帰る時に見かけたらしい。そこで俺はあれ?と思ってAに聞いてみた。
「あのさ、俺たちあいつがガリガリに痩せてたから婆さんと見間違ったんだよな?でも話
聞く限り容姿が違わないか?」と、すると、Aもそれを不思議に思って友達に聞いたらしいのだが、
その友達曰く「普通の女だった」とかでガリガリでも老婆っぽくもなかったと、その友達は
はっきり言っていたのだという。
続く

792 :喪服の女14(ラスト):2011/06/12(日) 05:13:53.56 ID:D9irWjtj0
>>791の続き
それと肝心の懐中時計なのだが、友達曰く「そんなものはなかった」とのこと。
そういうものが現場で見付かれば普通は話題になるのだが、誰もそんな話はしていなかったし、
床の間のスペースや箱などは珍しいつくりだったので友達も覚えていたのだが、中は空っぽ
で何も入っていなかったとの事だった。
途中から後から聞いた伝聞を繋ぎ合わせた内容なので、かなり中途半端で変な
話になってしまいました、ごめんなさい。
以上でこの話は終わりです。
長々とおつきあい、ありがとう御座いました。

793 :本当にあった怖い名無し:2011/06/12(日) 05:16:50.18 ID:7pBazqgT0
おー、凄く良かったよ!いいもの読ませてくれて有難うございます。

794 :本当にあった怖い名無し:2011/06/12(日) 05:18:05.93 ID:vbkqeZa30
乙、久々いい話が聞けた

796 :本当にあった怖い名無し:2011/06/12(日) 05:30:00.82 ID:Kk7sqJoD0
>>喪服の女
乙!おもしろかったよ!
老婆姿が普通の女になってたってなんでだろ?

799 :本当にあった怖い名無し:2011/06/12(日) 05:55:54.58 ID:dWFMbR2p0
>>796
老婆が徐々に若返るのは、封印が解けた懐中時計の持ち主の、
生気を吸いとっているからと、俺は解釈。

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