毒男の怖い話とか音楽とか雑談とか 2017/08/06 スレ
Part1
1 :毒男 :2017/08/06(日) 22:06:48.406 ID:dPY1p1cE0
|A-) 怖い話は探しながら人がいる限りゆっくりと
怖い話書ける人、貼れる人はどうぞー
レスがなくなったらさるさんくらったか寝たか人いなくなったと思ってね
インスト好きは音楽をどうぞ
聴くには音楽プレイヤーの ファイル→URLを開く→http〜8000/までをコピペ
http://dokuobd.orz.hm:8000/
2 :秋山 :2017/08/06(日) 22:07:14.205 ID:M9rpC+4S0
どっくんよーどっくんよー
3 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/08/06(日) 22:07:58.859 ID:F+NafY8m0
久々
4 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/08/06(日) 22:09:06.148 ID:1a9JQKGa0
ょぅ
9 :毒男 :2017/08/06(日) 22:14:40.704 ID:dPY1p1cE0
僕は昔、霊感が強いっていうか他の人には見えないものが見える子どもでした。
でも大人になるにつれそういうものが見えなくなって、霊の記憶なんて薄れ始めたころです。
去年の夏休み。
僕は部活で学校に通ってました。
いつもの駅の、ホームに下りる階段で、僕は何かイヤな予感を感じました。
ホームの少し向こう、線路際に、スーツ姿の、中年の男がたっていたんです。
暑さのためか、ぼーっとしてるみたいでした。
足元に目を向けると、アナウンスで流れる「黄色の線」の上に立っています。
そのまま視線をずらすと、ホーム下でしゃがんでいるのか、胸から上だけホーム上に出してる男が見えました。
その両腕は男のズボンの裾を掴んでいました。
昔の感覚がよみがえったのか、ホーム下にいる男はこの世のものじゃないとわかりました。
ホーム下の男の手は、中年の男の足をひっぱっているみたいで、中年の男はフラフラと、少しずつホームの端に引きずり寄せられているようでした。
この駅は普通しか停まりません。電光掲示板をみると、次の列車は「通過」となっています。
僕はあせりました。
かけよっておじさんに声をかけるべきか、どうしようか、迷っていました。
すると、
「パアァーン」
と、逆側のホームを、急行が通り過ぎました。
その音でおじさんは我に戻ったらしく、ホーム下の男の手を振り払うように、ホームの中央に歩いていきました。
僕は、ほっとするのも束の間、ホーム下の男は、まだそこに残っていました。
「見える」僕に気がついたのか、その男は、同じ体勢のまま横移動して、僕に向かってすごい速さで近づいて来たんです!
僕はなりふり構わず階段を駆け上がり駅を出ました。
駅の外から線路の方を見ても、そんな男は見当たりませんでした。
…それから、何度も同じ駅をつかってますが、こういった経験はこれだけです。
13 :毒男 :2017/08/06(日) 22:22:10.746 ID:dPY1p1cE0
学校の帰り道、気が向いたので少し回り道をして裏山を通ってみる事にした。
ねこじゃらしで遊んだり、花を摘んだりしながら歩いていくと、幾つかの建物が見えてきた。
(それは廃墟になった住宅地で、そこ自体には何度か行ったことがあった)
ついでにここで遊んでいくか、と思いずんずん奥へ入っていった。
1棟、2棟、…と来て一番奥の3棟に上り、あたりの気色を見回していた時、うっそうと繁った雑木林の奥に、もう1つ建物があるのを見つけた。
あれーあんなところに建物あったかなー、と思い、とりあえずそこに行ってみることに。
近づいてみるとその建物は他の3棟よりも少し大きく、4階建てだった。
とりあえず1階に登ると、自動販売機があり、見た事も無いジュースが売っていた。
何も書いてない真っ赤なラベルのもの、旧字体がびっしり書いてあるもの、
「血」と書いてあるもの、細かい文字で「ありがとう」とびっしり書いてあるもの…
それを見て少し怖くなったが、とにかく2階に上ってみることにした。
2階に上ってバタバタドアを開けまくって遊んでいると1つだけ開かないドアがあった。
しょうがないのでドアの新聞受けから覗き込むと、誰かの顔が見えた。
まだ幼稚園くらいの幼い男の子の顔だった。
一瞬ビビったが、向こうからテレビのアンパンマンの歌が聞こえてきたので、
「誰か住んでたのか」
と思いほっとした。幽霊が出るとき普通アンパンマンの歌なんか聞こえてこないよな。
安心した俺は、向こうの男の子を笑かしてやろうとバイキンマンの物真似をした。男の子はキャッキャッと声をあげて笑った。俺は調子に乗ってドキンちゃんの物まねもした。男の子はまた笑った。
よし、次は木の枝でも突っ込んで脅かしてやろう。俺は木の枝を探す為に一旦新聞受けから顔を離した。
木の枝を探す俺の視界に開いたドアが入る。俺はふと違和感を感じた。何かがおかしい…
ドアの向こう側は、新聞受けのポストになっていたのだ。
幼稚園の男の子と言えども、顔なんて突っ込めるはずはない。
それに気づいた瞬間、ドアノブがすごい勢いでガチャガチャと回り始めた。
俺は2階から飛び降り、めちゃくちゃに走って家に着いた。どこをどう走ったのか全く覚えていない。
それから何度もあの廃墟に行ったが、一度もあの4棟目の建物を見つけた事はない。
雑木林の中に友達を連れて行ってみた事もあったが、見つからなかった。
何よりも、雑木林の奥は、崖になっていたんだ。
23 :毒男 :2017/08/06(日) 22:44:22.238 ID:dPY1p1cE0
北海道の某市にて。学生の頃だった。
よく行ってた銭湯が、自転車で5分くらいのところにあった。
その夜もジャージ着てサンダル履きで、フロ道具持って、自転車に乗った。
目的地の銭湯は、道路を真っ直ぐ何百メートルか行って、橋を渡って、また百メートル位行って、曲がったところ。
その辺は空き地や駐車場が多いし、夜だから、周囲には誰もいない。
良い気分で、手放しで鼻歌歌いつつ自転車を飛ばしていると、遥か前方に誰かいるのが見えた。
北海道の街は碁盤の目で見通しが良いから、相当遠かったがそいつが橋の上にいるのは確認できた。
体つきから男のように見えたが、すぐに変な事に気が付いた。
そいつは両腕を曲げて、欄干に必死で取り縋ったような妙な姿勢で、橋の上で膝をついていた。
「酔っ払いが吐いてんのかな?」
とか思ったが違った。
そいつは首を曲げて、顔をこちら側に向けていた。
相変わらず周囲には誰もいないから、そいつが今自転車を漕いでいる自分を見ているのに間違いない。
コートがバタバタ風に煽られているのにもかかわらず、同じ姿勢でこちらを向いたままでいる。
「頭のおかしい奴かも」
「でも何か用があるのかもしれない」
頭の中で二つの考えが交錯した。
その間にも足の方は無意識にペダルを漕いでいるから、そいつとの距離はどんどん縮まってゆく。
距離が50メートル位に縮まった時、そいつの顔の一部がキラリと光った。
眼鏡をかけているのが分かった。
その奥の眼は、しっかり自分を捕らえていた。
「ああ、やっぱり自分に用があるんだ」
この時、自分はいわゆる「魅入られた」状態にあったのだろう。
「助けなければ」「傍に寄って声を掛けなければ」という考えしか、頭の中に浮かばなくなっていた。
自転車はどんどん進み、遂に橋の手前の横断歩道に差し掛かった。
「あのう」
と声を掛けながら、そのまま道路を渡ろうとしたその時、そいつの口が動いた。
自分に何か言おうとするのか…と思ったが、違った。
そいつは大口を開けて笑った。笑うと同時に、顔が斜めにぱっくり2列に割れた。
両手は欄干を握っていなかった。
血塗れの指先が、まるで自分を手招きするようににチロチロと蠢いていた。
一瞬で全てを悟った。
小脇に抱えていた洗面器が落ちて、道路に転がり出た。
咄嗟にハンドルに手を掛けることが出来たのは本当に良かった。
満身の力を込めて、ブレーキを握り締めた。
まさに間一髪の命拾いだった。
25 :毒男 :2017/08/06(日) 22:46:06.001 ID:dPY1p1cE0
信号が青になってから道路へ出て、中に入れた石鹸ごとペシャンコに潰れた洗面器を拾い、自転車を押しつつ橋を渡った。
時々「そこ」にお供物が置いてあるのを、以前から何度か見ていたはずだった。
タオル以外の風呂道具は銭湯で買いなおすことにした。引き返す気は無かった。
恐怖の余韻はずっと続いていて、身体が震えて仕方なかったが、気付いてしまった以上は、最後までこいつに負けてはならないと直感的に思った。
足をガクガクさせながら、橋を渡りきった。
暫く自転車を押して進んで、恐る恐る橋の方へ振り返ってみた。
あいつがいた。
橋を渡るときにはいなかったのに、また同じ場所に膝をついている。
さっきとは顔の向きを逆にして、こちらを向いて自分を見ているのが遠目でもはっきりと分かった。
身体中から汗が吹き出た。
「もう諦めろ!頼むから引っ張るな!」
と心の中で叫んだが動じている気配は全く無かった。
それでも必死で念じていると、不意に欄干にめり込んだ半身を窮屈そうに反らして、再び向こう側へ首を曲げた。
諦めてくれたのだろうか。急いで自転車に跨って、目的地へ向かった。
湯に浸かっていると多少は気が落ち着いて楽になった。
銭湯を出ると友人を呼び、厄払いのつもりで朝まで飲んで騒いだ。
下宿に戻ると、郵便受けにもう朝刊が挿してあった。
部屋で開いて目を通しているうち、ある記事に目が止まって愕然とした。
あいつが何故急に向こうを向いたのか分かった。
記事に出ていた人も学生で、行き先も同じ銭湯だった。
しかも事故は自分が辿り着いたのとほぼ同時の出来事だった。
物凄い罪悪感に襲われて、手に持った新聞の活字が涙で曇りそうになった。
昼休みにあの橋へ行くと、欄干にグチャグチャに染みついた汚れの跡が遠目からもはっきり分かった。
お供物の数は2倍になっていた。
情けないがそれ以上近づく勇気は出なかった。
遠くから必死に手を合わせて、後は逃げるようにしてその場を立ち去った。
それからその橋を使うことは絶対になかった。
32 :毒男 :2017/08/06(日) 23:06:35.287 ID:dPY1p1cE0
突然彼女からメールが来なくなった。
何度メールしても返事が返ってこない。
嫌われたのかと思い一人へこんでいると、一ヶ月くらいして急に彼女からメールが来た。
「久しぶり!急なんだけど一緒に行きたい所があるんだ」
女の子特有の気まぐれ?などと思いつつも俺は喜んでOKした。
「どこで会う?」
「○○海岸で会おっ」
「了解!」
「でも私今、足がないから…」
「大丈夫!俺車あるから!」
「じゃ今週の日曜日にしよっ」
…って感じでデートの約束をした。
そして日曜日、待ち合わせ場所は○○海岸だったけど、俺は彼女を驚かそうと思い早めに家を出て彼女の家まで迎えにいった。
ピンポーン…チャイムをならすとお母さんらしき人が出てきた。
「どちら様ですか?」
「ああ僕は友達で…今日娘さんと遊ぶ約束を…」
「あの…娘は一ヶ月前…交通事故で死んだんですけど…」
…お母さんの話によると、その子は一ヶ月前ひき逃げに会い足を踏み潰され出血多量で死んだんだそうだ。
だからあのとき…
…「私今、足無いから」…
もし俺が○○海岸に行っていたら…
…「一緒に行きたい所があるんだ」…
33 :秋山 :2017/08/06(日) 23:12:12.347 ID:M9rpC+4S0
あの世に連れて逝く気だったのか、、、
怖い怖い(((;゚д゚)))
34 :毒男 :2017/08/06(日) 23:15:18.923 ID:dPY1p1cE0
大学時代半年ほど付き合った彼女がいた。
1コ上で美術コースにいた人だった。
バイトが同じで知り合ったのだが、一見するとごく普通の女子大生。
しかしなんどか描いている絵を見せてもらったことがあるが、前衛的というのか、絵は詳しくないのでよくわからないけれどどれも「体の一部が大きい人間の絵」だった。
グループ展やスケッチブックのラフ画などすべてがそうだった。
たとえば半裸の外人が正面を向いている絵があるが、左目だけが顔の半分くらいの大きさで外にまではみ出ていた。
他にも足の先だけが巨大化した絵だとか、鼻、口、肩、親指…
写実的じゃない抽象画のような作風だったが、パっと見吐き気を覚えたことがある。
そんな時彼女は困ったような顔をしていた。
彼女とつきあいはじめてふとあることに気がついた。
子供の頃からずっと、何度も何度も繰り返し見ていた夢を見なくなっていた。
それは悪夢というべきなのか、よくある追いかけられたりするような脅迫的なものではなく、静かな静かな夢だった。
それは唐突にやってくる。
袋が見えるのだ。
巾着袋のような艶かしい模様をした大きな袋。
子供くらいなら隠れられそうな。
それまでどんな夢だったのか、関係が無い。
とにかく気がつくと場面は大昔住んでいたアパートの一室になり、夕日が窓から射し込む中で袋がぽつんと畳の上に置いてある。
この夢がとてもとても恐ろしかった。
夢なんてものは奔放に目まぐるしく変わるものなのに、この部屋に入りこむとそれが凍りついたように止る。
部屋には扉はどこにもなく、ただ立ち尽くして袋と向かい合う。
目を反らしたいのに魅入られたように動けない。
やがてわずかに開いている袋の口の陰を、負の期待感とでもいうものでじっと見つめてしまうのだ。
ああ、はやく。はやく夢から覚めないと。
逃げ場はたったひとつしかない。
その部屋はいつも夕日が照っている。
それが翳り始めると、袋の口が開いていくような気がして。
|A-) 怖い話は探しながら人がいる限りゆっくりと
怖い話書ける人、貼れる人はどうぞー
レスがなくなったらさるさんくらったか寝たか人いなくなったと思ってね
インスト好きは音楽をどうぞ
聴くには音楽プレイヤーの ファイル→URLを開く→http〜8000/までをコピペ
http://dokuobd.orz.hm:8000/
2 :秋山 :2017/08/06(日) 22:07:14.205 ID:M9rpC+4S0
どっくんよーどっくんよー
3 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/08/06(日) 22:07:58.859 ID:F+NafY8m0
久々
4 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/08/06(日) 22:09:06.148 ID:1a9JQKGa0
ょぅ
9 :毒男 :2017/08/06(日) 22:14:40.704 ID:dPY1p1cE0
僕は昔、霊感が強いっていうか他の人には見えないものが見える子どもでした。
でも大人になるにつれそういうものが見えなくなって、霊の記憶なんて薄れ始めたころです。
去年の夏休み。
僕は部活で学校に通ってました。
いつもの駅の、ホームに下りる階段で、僕は何かイヤな予感を感じました。
ホームの少し向こう、線路際に、スーツ姿の、中年の男がたっていたんです。
暑さのためか、ぼーっとしてるみたいでした。
足元に目を向けると、アナウンスで流れる「黄色の線」の上に立っています。
そのまま視線をずらすと、ホーム下でしゃがんでいるのか、胸から上だけホーム上に出してる男が見えました。
その両腕は男のズボンの裾を掴んでいました。
昔の感覚がよみがえったのか、ホーム下にいる男はこの世のものじゃないとわかりました。
ホーム下の男の手は、中年の男の足をひっぱっているみたいで、中年の男はフラフラと、少しずつホームの端に引きずり寄せられているようでした。
この駅は普通しか停まりません。電光掲示板をみると、次の列車は「通過」となっています。
僕はあせりました。
かけよっておじさんに声をかけるべきか、どうしようか、迷っていました。
すると、
「パアァーン」
と、逆側のホームを、急行が通り過ぎました。
その音でおじさんは我に戻ったらしく、ホーム下の男の手を振り払うように、ホームの中央に歩いていきました。
僕は、ほっとするのも束の間、ホーム下の男は、まだそこに残っていました。
「見える」僕に気がついたのか、その男は、同じ体勢のまま横移動して、僕に向かってすごい速さで近づいて来たんです!
僕はなりふり構わず階段を駆け上がり駅を出ました。
駅の外から線路の方を見ても、そんな男は見当たりませんでした。
…それから、何度も同じ駅をつかってますが、こういった経験はこれだけです。
学校の帰り道、気が向いたので少し回り道をして裏山を通ってみる事にした。
ねこじゃらしで遊んだり、花を摘んだりしながら歩いていくと、幾つかの建物が見えてきた。
(それは廃墟になった住宅地で、そこ自体には何度か行ったことがあった)
ついでにここで遊んでいくか、と思いずんずん奥へ入っていった。
1棟、2棟、…と来て一番奥の3棟に上り、あたりの気色を見回していた時、うっそうと繁った雑木林の奥に、もう1つ建物があるのを見つけた。
あれーあんなところに建物あったかなー、と思い、とりあえずそこに行ってみることに。
近づいてみるとその建物は他の3棟よりも少し大きく、4階建てだった。
とりあえず1階に登ると、自動販売機があり、見た事も無いジュースが売っていた。
何も書いてない真っ赤なラベルのもの、旧字体がびっしり書いてあるもの、
「血」と書いてあるもの、細かい文字で「ありがとう」とびっしり書いてあるもの…
それを見て少し怖くなったが、とにかく2階に上ってみることにした。
2階に上ってバタバタドアを開けまくって遊んでいると1つだけ開かないドアがあった。
しょうがないのでドアの新聞受けから覗き込むと、誰かの顔が見えた。
まだ幼稚園くらいの幼い男の子の顔だった。
一瞬ビビったが、向こうからテレビのアンパンマンの歌が聞こえてきたので、
「誰か住んでたのか」
と思いほっとした。幽霊が出るとき普通アンパンマンの歌なんか聞こえてこないよな。
安心した俺は、向こうの男の子を笑かしてやろうとバイキンマンの物真似をした。男の子はキャッキャッと声をあげて笑った。俺は調子に乗ってドキンちゃんの物まねもした。男の子はまた笑った。
よし、次は木の枝でも突っ込んで脅かしてやろう。俺は木の枝を探す為に一旦新聞受けから顔を離した。
木の枝を探す俺の視界に開いたドアが入る。俺はふと違和感を感じた。何かがおかしい…
ドアの向こう側は、新聞受けのポストになっていたのだ。
幼稚園の男の子と言えども、顔なんて突っ込めるはずはない。
それに気づいた瞬間、ドアノブがすごい勢いでガチャガチャと回り始めた。
俺は2階から飛び降り、めちゃくちゃに走って家に着いた。どこをどう走ったのか全く覚えていない。
それから何度もあの廃墟に行ったが、一度もあの4棟目の建物を見つけた事はない。
雑木林の中に友達を連れて行ってみた事もあったが、見つからなかった。
何よりも、雑木林の奥は、崖になっていたんだ。
23 :毒男 :2017/08/06(日) 22:44:22.238 ID:dPY1p1cE0
北海道の某市にて。学生の頃だった。
よく行ってた銭湯が、自転車で5分くらいのところにあった。
その夜もジャージ着てサンダル履きで、フロ道具持って、自転車に乗った。
目的地の銭湯は、道路を真っ直ぐ何百メートルか行って、橋を渡って、また百メートル位行って、曲がったところ。
その辺は空き地や駐車場が多いし、夜だから、周囲には誰もいない。
良い気分で、手放しで鼻歌歌いつつ自転車を飛ばしていると、遥か前方に誰かいるのが見えた。
北海道の街は碁盤の目で見通しが良いから、相当遠かったがそいつが橋の上にいるのは確認できた。
体つきから男のように見えたが、すぐに変な事に気が付いた。
そいつは両腕を曲げて、欄干に必死で取り縋ったような妙な姿勢で、橋の上で膝をついていた。
「酔っ払いが吐いてんのかな?」
とか思ったが違った。
そいつは首を曲げて、顔をこちら側に向けていた。
相変わらず周囲には誰もいないから、そいつが今自転車を漕いでいる自分を見ているのに間違いない。
コートがバタバタ風に煽られているのにもかかわらず、同じ姿勢でこちらを向いたままでいる。
「頭のおかしい奴かも」
「でも何か用があるのかもしれない」
頭の中で二つの考えが交錯した。
その間にも足の方は無意識にペダルを漕いでいるから、そいつとの距離はどんどん縮まってゆく。
距離が50メートル位に縮まった時、そいつの顔の一部がキラリと光った。
眼鏡をかけているのが分かった。
その奥の眼は、しっかり自分を捕らえていた。
「ああ、やっぱり自分に用があるんだ」
この時、自分はいわゆる「魅入られた」状態にあったのだろう。
「助けなければ」「傍に寄って声を掛けなければ」という考えしか、頭の中に浮かばなくなっていた。
自転車はどんどん進み、遂に橋の手前の横断歩道に差し掛かった。
「あのう」
と声を掛けながら、そのまま道路を渡ろうとしたその時、そいつの口が動いた。
自分に何か言おうとするのか…と思ったが、違った。
そいつは大口を開けて笑った。笑うと同時に、顔が斜めにぱっくり2列に割れた。
両手は欄干を握っていなかった。
血塗れの指先が、まるで自分を手招きするようににチロチロと蠢いていた。
一瞬で全てを悟った。
小脇に抱えていた洗面器が落ちて、道路に転がり出た。
咄嗟にハンドルに手を掛けることが出来たのは本当に良かった。
満身の力を込めて、ブレーキを握り締めた。
まさに間一髪の命拾いだった。
25 :毒男 :2017/08/06(日) 22:46:06.001 ID:dPY1p1cE0
信号が青になってから道路へ出て、中に入れた石鹸ごとペシャンコに潰れた洗面器を拾い、自転車を押しつつ橋を渡った。
時々「そこ」にお供物が置いてあるのを、以前から何度か見ていたはずだった。
タオル以外の風呂道具は銭湯で買いなおすことにした。引き返す気は無かった。
恐怖の余韻はずっと続いていて、身体が震えて仕方なかったが、気付いてしまった以上は、最後までこいつに負けてはならないと直感的に思った。
足をガクガクさせながら、橋を渡りきった。
暫く自転車を押して進んで、恐る恐る橋の方へ振り返ってみた。
あいつがいた。
橋を渡るときにはいなかったのに、また同じ場所に膝をついている。
さっきとは顔の向きを逆にして、こちらを向いて自分を見ているのが遠目でもはっきりと分かった。
身体中から汗が吹き出た。
「もう諦めろ!頼むから引っ張るな!」
と心の中で叫んだが動じている気配は全く無かった。
それでも必死で念じていると、不意に欄干にめり込んだ半身を窮屈そうに反らして、再び向こう側へ首を曲げた。
諦めてくれたのだろうか。急いで自転車に跨って、目的地へ向かった。
湯に浸かっていると多少は気が落ち着いて楽になった。
銭湯を出ると友人を呼び、厄払いのつもりで朝まで飲んで騒いだ。
下宿に戻ると、郵便受けにもう朝刊が挿してあった。
部屋で開いて目を通しているうち、ある記事に目が止まって愕然とした。
あいつが何故急に向こうを向いたのか分かった。
記事に出ていた人も学生で、行き先も同じ銭湯だった。
しかも事故は自分が辿り着いたのとほぼ同時の出来事だった。
物凄い罪悪感に襲われて、手に持った新聞の活字が涙で曇りそうになった。
昼休みにあの橋へ行くと、欄干にグチャグチャに染みついた汚れの跡が遠目からもはっきり分かった。
お供物の数は2倍になっていた。
情けないがそれ以上近づく勇気は出なかった。
遠くから必死に手を合わせて、後は逃げるようにしてその場を立ち去った。
それからその橋を使うことは絶対になかった。
32 :毒男 :2017/08/06(日) 23:06:35.287 ID:dPY1p1cE0
突然彼女からメールが来なくなった。
何度メールしても返事が返ってこない。
嫌われたのかと思い一人へこんでいると、一ヶ月くらいして急に彼女からメールが来た。
「久しぶり!急なんだけど一緒に行きたい所があるんだ」
女の子特有の気まぐれ?などと思いつつも俺は喜んでOKした。
「どこで会う?」
「○○海岸で会おっ」
「了解!」
「でも私今、足がないから…」
「大丈夫!俺車あるから!」
「じゃ今週の日曜日にしよっ」
…って感じでデートの約束をした。
そして日曜日、待ち合わせ場所は○○海岸だったけど、俺は彼女を驚かそうと思い早めに家を出て彼女の家まで迎えにいった。
ピンポーン…チャイムをならすとお母さんらしき人が出てきた。
「どちら様ですか?」
「ああ僕は友達で…今日娘さんと遊ぶ約束を…」
「あの…娘は一ヶ月前…交通事故で死んだんですけど…」
…お母さんの話によると、その子は一ヶ月前ひき逃げに会い足を踏み潰され出血多量で死んだんだそうだ。
だからあのとき…
…「私今、足無いから」…
もし俺が○○海岸に行っていたら…
…「一緒に行きたい所があるんだ」…
33 :秋山 :2017/08/06(日) 23:12:12.347 ID:M9rpC+4S0
あの世に連れて逝く気だったのか、、、
怖い怖い(((;゚д゚)))
34 :毒男 :2017/08/06(日) 23:15:18.923 ID:dPY1p1cE0
大学時代半年ほど付き合った彼女がいた。
1コ上で美術コースにいた人だった。
バイトが同じで知り合ったのだが、一見するとごく普通の女子大生。
しかしなんどか描いている絵を見せてもらったことがあるが、前衛的というのか、絵は詳しくないのでよくわからないけれどどれも「体の一部が大きい人間の絵」だった。
グループ展やスケッチブックのラフ画などすべてがそうだった。
たとえば半裸の外人が正面を向いている絵があるが、左目だけが顔の半分くらいの大きさで外にまではみ出ていた。
他にも足の先だけが巨大化した絵だとか、鼻、口、肩、親指…
写実的じゃない抽象画のような作風だったが、パっと見吐き気を覚えたことがある。
そんな時彼女は困ったような顔をしていた。
彼女とつきあいはじめてふとあることに気がついた。
子供の頃からずっと、何度も何度も繰り返し見ていた夢を見なくなっていた。
それは悪夢というべきなのか、よくある追いかけられたりするような脅迫的なものではなく、静かな静かな夢だった。
それは唐突にやってくる。
袋が見えるのだ。
巾着袋のような艶かしい模様をした大きな袋。
子供くらいなら隠れられそうな。
それまでどんな夢だったのか、関係が無い。
とにかく気がつくと場面は大昔住んでいたアパートの一室になり、夕日が窓から射し込む中で袋がぽつんと畳の上に置いてある。
この夢がとてもとても恐ろしかった。
夢なんてものは奔放に目まぐるしく変わるものなのに、この部屋に入りこむとそれが凍りついたように止る。
部屋には扉はどこにもなく、ただ立ち尽くして袋と向かい合う。
目を反らしたいのに魅入られたように動けない。
やがてわずかに開いている袋の口の陰を、負の期待感とでもいうものでじっと見つめてしまうのだ。
ああ、はやく。はやく夢から覚めないと。
逃げ場はたったひとつしかない。
その部屋はいつも夕日が照っている。
それが翳り始めると、袋の口が開いていくような気がして。
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