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シャンバラ

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114 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 05:59:23 ID:???0
そこはキムさんの持ちビルの一室だった。
照明は落とされ、明かりは蝋燭の炎だけだった。
ガラス製のテーブルの上には注射器とアンプル、アルミホイルを巻かれたスプーンが置かれていた。
キムさんが「大丈夫か?注射にするか?それとも、もう一度鼻から行くか?」と声を掛けてきた。
俺は、朦朧とする意識で「注射で」と答えた。
塩酸ケタラール・・・2005年12月に麻薬指定が決定され、2007年1月1日より施行されたが、この時点では合法な麻酔薬の一つに過ぎなかった。
時間感覚が消失していたが、その30分ほど前、俺はアンプルの液体を蝋燭の炎で炙って得られた薄黄色の針状結晶を鼻から吸引していた。
テーブルの上でテレカで砕いた結晶を半分に切ったストローを介して一気に吸い込むと鼻の奥に強烈な刺激が走り、やがて俺の意識はブラックアウトした。
朦朧としながらも意識を取り戻した俺に、キムさんはアンプルから吸い上げた薬液を注射した。
シリンダーが押し込まれると、ゴォーッという大音響と共に俺は深くて暗い穴の奥に吸い込まれて行った・・・
俺がケタミンという、マイナーなサイケデリック系のドラッグを試したのは「仕事上」の必要から、擬似的な臨死体験とも形容される幻覚体験を得るためだった。
薬物による幻覚体験の中で意識を鮮明に保つ必要があったのだ。
事の発端は、キムさんが知り合いの女霊能者から請けた仕事だった。

115 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:00:11 ID:???0
俺はキムさんに伴われて、ある女霊能者の元を訪れた。
日を改めて書きたいと思うが、キムさんと女霊能者との間には只ならぬ関係がある様子だった。
女霊能者は俺たちを奥の部屋に通した。
部屋には「治療中」だという一人の男がいた。
男は、狂気を湛えた獣のような眼光を俺たちに向けていたが、骨と皮ばかりに痩せ衰え、カサ付いた皮膚からは精気と言うものが一切感じられなかった。
何か質の悪い「憑物」に取り付かれているのは明らかだったが、憑物の正体に付いては俺には伺い知れなかった。
それよりも気になったのは、枯れ果ててしまったかのような男の精気のなさだった。
この男の精気のなさに俺は思い当たる事があった。
これは、「房中術」によって精気を抜き取られた成れの果てなのではないか?
「房中術」について、俺には苦い記憶があった。
初めてマサさんの下で修行した折に、娑婆に戻ったばかりの俺は、聞き覚えた「房中術」を知り合いの風俗嬢で試した事があるのだ。
マサさんの警告を無視して1週間ほど彼女と交わり続けた俺は、荒淫の果てに彼女を「壊して」しまった。
「房中術」により許容限度を越えて「精気」を奪われた人間は、肉体に回復不能の重大なダメージを負ってしまうのだ。
この、松原と言う美大生は20歳を少し過ぎたばかりの年齢だったが、痩せ衰えたその姿からはとても信じられるものではなかった。
「憑物」の方は何とかなったとしても、精気を奪い尽くされた身体の方は元通りに回復する事は絶望的に見えた・・・

116 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:00:55 ID:???0
応接室に通された俺たちの前に、女霊能者が一人の女を連れてきた。
山佳 京子・・・崔 京子(チェ キョンジャ)は、松原とは美大の同級生と言うことだった。
松原とは少し異なる類のものだったが、京子にも相当質の悪い「憑物」が憑いている事が俺にも判った。
京子や松原に纏わりついている独特の「悪い空気」は、霊感の類などなくても殆どの人が「感じる」ことが出来たであろう。
松原は女霊能者の師匠である、先代の頃からの信者の子息だった。
幼少の頃から感受性や霊感が強く、先代の霊能者には「これだけ霊感が強いと普通の生活は難しいだろうから、修行の道に入った方が良い」と言われていたそうだ。
だが彼は、人並み外れた霊感や感受性という才能を霊能ではなく、絵画と言う芸術の道に生かす人生を選んだ。
強い霊能を持つ松原は、同級生の山佳 京子に纏わり憑く、非常に強力で悪性の「憑物」に気付いた。
この時点で、松原は女霊能者の元を訪れて相談するべきだった。
松原の家族が息子の異変に気付いた時には既に手遅れの状態であり、松原は回復不能な廃人状態に陥ってしまっていた。
そして、京子の話によれば、松原をこのような哀れで無残な状態にしてしまったのは、他ならぬ京子の母親と言う事だった。

117 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:01:43 ID:???0
京子の母親、山佳 京香こと朴 京玉(パク キョンオク)は、スタジオ数3軒程のヨガ・スクールの経営者だった。
キムさんの調査によると、朴 京玉は変わった経歴の持ち主だった。
とにかく、異常な数の宗教団体を渡り歩いていた。
名の知れた教団に所属していた事もあったが、その殆どが地方の小規模な教団だった。
神道系、仏教系、キリスト教系・・・教団の教義等には共通性はなかったが、何れも「生き神的」教祖が一代で築いた新興宗教が殆どだった。
山佳 京香が入信した多くの宗教団体は教祖や教団幹部の「女性問題」が元で解散や分裂の末路を辿っていた。
夫であり京子の父親である山佳 秀一こと崔 秀一(チェ スイル)は、京玉の宗教遍歴で入信した教団の一信者だった。
老齢の資産家だった崔 秀一と娘・京子との間には、京子の東アジア人離れした容姿が示すように血の繋がりはないようだ。
朴 京玉と結婚し、京子が生まれた直後に崔 秀一は病死している。
朴 京玉の宗教遍歴の中には「A神仙の会」という後に宗教団体に改変されたヨガ道場もあった。
宗教団体化したA神仙の会が後に未曾有の事件を起こした頃まで朴 京玉の宗教遍歴は続いた。
宗教遍歴を止めた山佳 京香は夫の遺産を使ってヨガ・スクールを開講した。
事件後の「ヨガ不況」の中、スクールは順調に展開し、数年の間に常設のスタジオ3軒を構えるまでに成長していた。

118 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:02:38 ID:???0
キムさんは更に朴 京玉の過去を洗った。
朴 京玉は日本人の母と在日朝鮮人の父との間に生まれた元・在日朝鮮人2世だった。
父母共に、家系的には宗教や呪術とは関わりのない、ごく普通の家庭だった。
京玉が小学6年生のとき、交通事故で母が死亡した。
長距離トラックの運転手として生計を営んでいた父親は、京玉を自分の両親に預けた。
京玉を預かる条件として、祖父母は彼女を地元の民族学校に通わせた。
しかし、帰化家庭に育ち、木下 京香という日本名のみを名乗り、朝鮮語も学んだ事のなかった京玉は学校に馴染む事が出来なかった。
中学1年の夏休み前に京玉は不登校となり、自室に引き篭もるようになった。
元々占いや呪い、心霊写真や怪談の好きな少女だった京玉は、引き篭もった自室でオカルト雑誌や超能力関係の書籍を読み耽るようになって行った。
やがて、オカルト雑誌の読者欄を通じて同好の士と文通するようにもなった。
部屋に引き篭もり切りとなった孫娘を祖父母は心配し、その原因を作ったことに強く責任を感じていたようだ。
そんな京玉が、祖父母に初めて頼み事をした。
ヨガを習わせて欲しいと言うのだ。
ヨガがどういったものなのか祖父母には良く判らなかったが、部屋から出て身体を動かして、孫が少しでも健康になってくれればと、京玉の願いを聞き入れた。


119 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:03:28 ID:???0
京玉はヨガにのめり込んだ。
祖父母は、電車で片道1時間のスタジオ通いがそう長く続くとは思ってはいなかったらしい。
しかし、安くはないレッスン料を払い続ける祖父母を十分に満足させる真剣さで京玉はレッスンを重ねた。
真剣な受講姿勢や京玉自身の才能もあったのだろう、2年目からは特待生としてレッスン料は免除された。
3年目からは「内弟子」として寮に入ることになったが、最早、父や祖父母も京玉を止める気はなかった。
京玉の通ったヨガスタジオの主催者は旭 桐子という女性だった。
入会から5年後、スタジオが閉鎖される頃には京玉は旭のアシスタント的な存在になっていた。
旭 桐子は年に数度インドに渡航して修行を重ねるといった本格派だったが、ヨガ業界では無名の存在だった。
むしろ、そういった方面とは一線を画していたようだ。
だが、彼女の名は一部の宗教関係者、特に「法力」や「超能力」を売り物にする怪しい連中の間では知られていたようだ。
朴 京玉も旭 桐子に伴われて何度もインドに渡航していた。
スタジオ閉鎖後の旭 桐子の消息は不明であるが、朴 京玉はヨガを続け、日本で滞在費を稼いではインドに修行の為に渡航すると言う生活を続けていたようだ。
そして、長期間・・・2年ほどのインド滞在の後に、朴 京玉の宗教遍歴が始まった。

120 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:04:13 ID:???0
柔軟体操の一種のように見られがちなヨガであるが、その本質は「悟り」の獲得を目的とした霊的進化の技法らしい。
アーサナと呼ばれる数々の複雑なポーズは、長時間の座禅瞑想を行っても新陳代謝や血流の阻害を起こさない柔軟で強靭な肉体を養成するためのものらしい。
また、少し前に「火の呼吸」で有名になったヨガの呼吸法は全身を走る「気道」を浄化すると共に、悟りに必要な生命エネルギーを養う物だと言う事だ。
瞑想法も複雑多岐に渉り、呼吸法と気や生命エネルギーの操作、瞑想によるイメージ操作を組み合わせて行うそうだ。
このような「行」を重ねることによって得られる「現」や「果」をシッディ、日本語では「悉地」と言うらしい。
この「悉地」を獲得し、保持した状態を「通」と呼ぶ。
「悉地」に「通じる」事によって発現する力をアビンニャー、日本語では「神通力」と呼ぶらしい。
「神通力」には主要なものとして神足通・天眼通・天耳通・他心通・宿命通・漏尽通の6種があり、この6種を六神通と呼ぶそうだ。
ヨーガ瞑想が深まると生命活動が極端に低下する。
アーサナで強靭な肉体を養い、プラーナヤーマと呼ばれる呼吸法で気道を阻害する「業(カルマ)」を浄化し、生命エネルギーを蓄えて掛からないと容易に命を落とすそうだ。
生命活動が低下し、仮死状態に至る程に深い瞑想の究極状態をサマディ、日本語で「三昧」と呼ぶらしい。
この「三昧」に至る過程で人は生理的な反応として様々な神秘体験をするらしい。
「三昧」が人為的に仮死状態に至るものだとすれば、人為的な臨死体験とでも呼ぶべきものなのだろうか?
「三昧」に没入した状態とは、「異世界」に魂や精神が踏み込んだ状態なのだそうだ。
この三昧によって踏み込んだ「異世界」で活動する為に必要な力が「六神通」だと言う事だ。
聞きかじりの話から俺が得た理解はかなり不正確なのだろうが、取り敢えずはこう言った所らしい。

121 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:04:53 ID:???0
ヨーガには様々な手法や技法が存在するらしいが、その目的は「三昧」に至り、その中で「悟り」を得ることのようだ。
それ故に、ヨーガの行者は、気道を阻害する「業」を避け、生命エネルギーを損なわないように、持戒して禁欲的な生活を送る。
だが、裏道を行く「外道者」はどんな世界にも現われる。
数あるヨーガの教派?の中には神通力や三昧へ至る過程で得られる神秘体験を修行目的とする教派が少なからず存在すると言う事だ。
性交によって異性から生命エネルギーを奪い取る「房中術」。
自己の「業(カルマ)」を他人の体内に転移させる事で自己の気道浄化を図る「シャクティーパット」。
視覚的な神秘体験を得るためにダチュラやバッカク、その他様々な植物アルカロイド、生物毒や金属を調合した幻覚剤、「秘薬」。
「悟り」と言う目的から逸脱した、本来、長く困難な修行と持戒の上に得られる「副産物」を手早く獲得しようとした様々な手法が開発された。
ただ、こういった外法は厳しく排斥されるものらしく、特に「秘薬」のレシピは秘伝とされ、偽物を掴まされて命を落とす者が少なくないようだ。
修行用の伝統的な「秘薬」の代用として、様々な「現代薬」が用いられた。
こういった薬物の中ではLSDとケタミンは双璧であり、特に規制の甘いケタミンは、インドからヨーガ愛好家の多い欧州に大量に持ち出されているそうだ。
旭 桐子の修めた、そして、朴 京玉が彼女から学んだヨーガはこういった「外法」を行う一派だったようだ。

122 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:05:37 ID:???0
山佳 京香ヨガスクールはダイエットなどで評判が高いらしく繁盛していた。
だが、山佳 京香には良からぬ噂もあった。
男性会員との不倫や、未成年者との援助交際の噂が流されていた。
もっとも、スクールの会員や周囲の者に言わせれば「同業者の嫌がらせのデマ」と言う事らしかったが・・・
キムさんに示されたヨガスクールのパンフレットと山佳 京香の写真は実年齢と比べてかなり若そうに見えた。
見た目で30代半ばから40歳前くらい。パンフレット上では年齢は40歳代と言う事になっていた。
何れにしても、50代後半と言う山佳 京香の実年齢からはかなり懸け離れていた。
いくら鍛え続けてきたと言っても、ありえない若さと美貌だった。
俺はキムさんに「何年前の写真ですか?」と聞いた。
だが、キムさんは首を横に振って「2ヶ月ほど前のものだ」と答えた。
キムさんの調査では、山佳 京香の不倫や援助交際は実際に行われていると言う事だった。
そして、山佳 京香と一夜を共にしたとされる男達は皆一様に体調を崩し、様々な不幸に襲われていた。
関係者を襲う不幸は本人だけではなく、その家族にも及んでいた。
霊能者の女には大凡の見当はついているようだった。
俺は偽名を使って、山佳 京香ヨガスクールに入校した。

123 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:06:23 ID:???0
やってみて初めて知ったのだが、ヨガと言うものはかなりハードなエクササイズだった。
俺はマサさんの指導による修行法の他に、キムさんのボディガードの連中の空手道場にも顔を出していたが、キツさの質が異なり、かなり堪えた。
入校前、料金の割りに短いと思った週1回60分という初心者クラスの時間も、運動経験のない初心者には十分すぎる長さだっただろう。
基本レクチャーの初心者クラス5回を終えた俺は、一般コースへ上がった。
慣れさえすれば体力的に問題はなかった。
一番の難関らしい呼吸法に付いても、細かいポイントは違っても同様のものをマサさんの下で「命がけ」で学んだ俺には問題なく進める事が出来た。
週2回のレッスンが通常の所、ほぼ毎日通ったせいもあるだろうが、俺は早くても1年半、人によっては3年かかると言う上級コースに3ヶ月で到達した。
上級コースに上がって暫くすると俺はインストラクターによる個人教授を勧められた。
この個人教授でどうやら「選別」を行っているのだろう。
俺は、学院長による特別コースの受講を勧められた。
インストラクター達はすばらしい事だと褒め上げ、上級コースの面々は羨望の眼差しを俺に向けた。
特別コース・・・詳しい内容は判らないが、ヨガの奥儀によって「神秘体験」をした会員が多くいるということだった。
特別コースはワンレッスン2名限定で、宿泊費別で一回3万円の連続12回の講座だった。
一般コースから上級コースまでは1レッスン90分で3.000円ほどだが、特別コースを受ける前提要件のインストラクターの指名による個人授業といい、2名限定の特別コースといい、
人の虚栄心や競争心を突いた実に上手い商売だと俺は感心した。

124 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:07:10 ID:???0
誓約書にサインをすると、泊り込みで12回の特別コースのレッスンが始まった。
レッスンを担当した山佳 京香は写真で見たよりも更に若々しく、妙にそそられる美女だった。
俺とペアで受講した女は、中級クラスでアシスタントをしていたインストラクター候補の特別会員の女だった。
気力や霊力もかなり高そうな様子だった。
どうやら、特別コース受講の可否は、受講生の「金回り」だけが基準ではないようだ。
コースの内容は新しい呼吸法と瞑想が中心だった。
呼吸法のあと、瞑想に入る前に俺達は妙な飲み物を飲まされた。
甘い花の香りとミントの清涼感のあるこの飲み物を飲むと汗が一気に引き、頭がスカッとした。
コースの回数が進むに連れて、丹田や会陰、尾底に「気」の熱が溜まって行くのが判った。
この「熱」を表現するとすれば、正に「性欲」の塊と言ったものだった。
5回目のレッスンに入る頃には、呼吸法に入って暫くの段階で俺は激しく勃起していた。
一緒にレッスンしていた女はレオタードの股間に汗とは明らかに違う液体で大きな染みを作っていた。
さほど広くはない部屋の中に女の発する雌の臭いが充満した。
タマラナイ・・・
間違いなく、これは呼吸法と瞑想によって掘り起こされた情欲だった。

125 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:07:54 ID:???0
困った事に、この掘り起こされた情欲は一発「抜いて」も収まる事はなかった。
別室で寝ているペアの女もタマラナイ状態になっていた事だろう。
俺は尾底や会陰部に溜まった気を少しづつ抜き出して全身に循環させ、丹田に落として圧縮する作業を繰り返した。
丹田に気を集める事で俺は冷静さを取り戻していた。
それでも、高まった気によって全身は火照りっぱなしだった。
翌日のレッスンでは、レッスンが始まる前から女の顔は上気して足元も定まらない様子だった。
呼吸法が終わった時点で京香の指示で俺達は全裸となってそのまま瞑想を行った。
次の日からは最初から全裸でレッスンは行われた。
レッスン終了後、気を抜き出して丹田に集める作業を行っていた俺は紙一重で理性を保っていたが、女の方は理性の限界だったのだろう。
瞑想が終わった段階で遂に女が俺にしな垂れかかってきた。
俺もそのまま女を押し倒して激しく交わった。
女は正に狂った獣のようだった。俺も獣になっていたが、頭の一点だけは冷静だった。
激しく交わる女と俺の狂態を山佳 京香は、さも当然と言うように冷めた目で見つめていた。
女は何度も達し、俺も幾度となく放ったが、気の昂りは一向に衰えなかった。

126 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:08:34 ID:???0
最終日、女は最早、呼吸法も瞑想もままならない状態だったようだ。
瞑想の途中で覆い被さってきた女に俺は応じた。
女と交わっていると、突然、今までに感じたこともないような快感に襲われた。
快楽から引き離してあった俺の理性が、女に房中術の「導引」を仕掛けられたことに気づいた。
俺は快楽に逆らって女の体から自分の身体を引き剥がした。
そして、再び女に乗り掛かると、体力が限界に達するまで「導引」を仕掛け続けた。
やがて体力の限界に達し、女の中に大量に放出した俺は女から離れると床の上に大の字に横たわった。
失神していたのか、女は死んだように動かなかった。
体力が回復すると俺の体は驚くほど軽く、力が漲っていた。
あれ程俺を苛んでいた情欲の炎も冷めていたが、気力や霊力は充実し切っていた。
横たわる女を置いたまま、俺は当てがわれていた自室へと戻った。

127 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:09:20 ID:???0
俺は全裸でベッドに横たわったまま気を整えていた。
暫くするとドアをノックする音がして、部屋に女が入ってきた。
山佳 京香だった。
京香は着ていたガウンを脱ぐと無言で俺の身体に唇と舌を這わせ始めた。
京香の口技は風俗嬢顔負けのテクニックだった。
やがて、俺の上に跨り身体を沈めてきた。
ゆっくりと腰をくねらせながら深く身体を沈め、強く締め付けながら吸引力を強め、亀頭の位置まで引き抜く腰使いは堪らなかった。
「導引」を掛けながらの京香の腰使いに、素の状態の俺ならば耐え切ることは出来なかっただろう。
だが、俺の気力は先ほどの女から奪った精気によって充実していた。
更に「気」を整えて、精神的に極めて冷静な状態にあった。
情欲や快感に溺れて頭がピンクに染まった状態でなければ「房中術」は成功しない。
京香が「息」をつき、「導引」が途絶えた瞬間に俺は攻勢に転じた。
俺は京香を攻め立て頃合を見て「導引」を仕掛けた。
京香は抵抗したが、不発に終わった「導引」の疲労や、元々の体力差からやがて俺の軍門に下った。
どんなに修行を重ね、若々しい容姿や肉体を保っていたとしても、所詮は還暦目前の初老の女に過ぎないのだ。

128 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:10:10 ID:???0
俺は体力の限界を超えて導引を仕掛け続けた。
性エネルギーを根こそぎ引き抜かれた京香の快感は凄まじいものだっただろう。
俺は「導引」を止め、京香の中に大量に放った。
ピクリとも動かない京香を見下ろしながら俺は思わず独り言を呟いた。
「若作りしていても、ババアはババアだな・・・」
大量の精気を抜かれた為だろう、京香の肌からは先ほどまでは溢れていた瑞々しさが失われていた。
やがて、俺の体の下で京香が目を覚ました。
俺は京香の中で硬さを取り戻したモノを再び動かそうとした。
京香は「もう止めて!」と叫んだ。
俺が京香の中から引き抜くと、彼女は俺に言った。
「アンタ、何者なの?」

129 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:10:47 ID:???0
俺は答えた。
「アンタが壊した松原 正志の縁者と崔 京子に雇われた拝み屋・・・見習いだ」
更に続けた。
「アンタ達はお互いに房中術を掛け合って、時には気力や霊力の強い人間から精気を奪い取って瞑想を行っていたんだろ?
他人の精気を奪って、怪しい薬物を使って得た神秘体験とやらはそんなに素晴しいものなのかい?」
京香は答えた。
「ええ、何者にも代え難いほどにね。頭の固いグルは持戒だ功徳だ、薬物に頼らなくても神秘体験は得られるだのって言うけどね・・・
辛気臭い生活を一生続けても、シャンバラを覗ける機会は一生に一度有るか無いかじゃない?
房中術に秘薬・・・確かに反則かもしれないけれど、到達点が同じなら合理的にやったほうが良いとは思わない?
それに、房中術で精気を貰った人も、普通では感じられない物凄い快楽を得た訳じゃない?
まあ、快楽に溺れて破滅しちゃう人が殆どだけどね。
快楽に溺れるのは本人の勝手。松原君もいいモノを持っていたんだけどね・・・アンタと違って修行が足りなかったようね」

130 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:11:33 ID:???0
京香は更に続けた。「それに、そう言うアンタも余り偉そうなことは言えないんじゃない?大分ご乱交を重ねてきたみたいだけど。
アンタのそんな所が気に入って『特別コース』にお誘いしたんだけどねw」
「他心通・・・いや、宿命通かい?」
「あとは天眼通もね。天耳通は・・・あんた、いっつもインストラクターや女の子達の胸やお尻を見て助平な事ばかり考えていたから、聞くに堪えなかったわw」
俺は頭を掻きながら京香に言った。
「なあ、アンタにぶっ壊された松原 正志にアンタの娘、アンタらが食い散らかした元会員や援交のガキ共は皆、質の悪い憑物に纏わり付かれているんだ。
だから、俺たちみたいな拝み屋が出張って来る事になったんだが、何故だと思う?」
京香は「そんな事、知らないわよ」とぶっきらぼうに答えた。
俺は「それじゃあさ、お得意のクスリをキめてぶっ飛ぶインチキ瞑想で、いつものようにシャンバラとやらを覗いてきてくれよ。
精力が落ちて難儀しそうだが、アンタはそこに繋がっているんだろ?
ヤバそうだったら、ええっと胸から気を入れればいいんだっけ?しっかりフォローしてやるからさ。
首尾よくシャンバラに行けたら、俺の負けだ。
さっきの続きを楽しもうぜ。好きなだけ気を抜かせてやるから。
俺も嫌いじゃないしね」
京香は全裸のまま呼吸法を始め、気が満ちて来るとピンク色の怪しい錠剤を飲み下した。
やがて彼女の呼吸は浅くなり、体温や心拍は下がって行った。

131 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:12:27 ID:???0
俺がキムさんの下でケタミン注射を受けて「神秘体験」の予行練習をしたのは「特別コース」の3日ほど前のことだった。
「特別コース」を薬物を用いて幻覚を見せる、カルト宗教にありがちなインチキ「儀式」と踏んでいたからだ。
薬物らしいものも用いられたが、「特別コース」は目的は兎も角、比較的まともな「行」を行う本格的なものだった。
高まった気を全身に循環させて浄化して、丹田なり、ヨガ行者が重視する尾底に導いて溜め込めば文句の付け所はなかったのだろう。
ケタミンを静脈注射された俺は臨死体験とも形容される独特な幻覚に襲われた。
暗く深いトンネルに大轟音と共に吸い込まれた俺は、途切れそうな意識を何とか繋ぎ止めながら、幻覚を見続けた。
トンネルの向こうから突き刺す強烈な光、緑色の雲のカーテン、真っ赤な光の迷路。
この世の全てを理解したかのような形容し難い全能感。
言葉では表現不可能な異様な幻覚に襲われ続けていた。
トンネルに吸い込まれて数分後か数千年後かは判らなかったが、俺は元居た部屋に戻ってきていた。
身体には「実在感」があり、部屋の空気も感じられた。
誰か人の気配を感じて後ろを振り向くと、ソファーに深く身体を沈めた俺が居た。
俺は自分の身体に触れてみようとしたが、どうしても触る事が出来なかった。
更に俺は、テーブルの上の蝋燭の炎に手をかざしてみた。
手に熱さを感じることは出来なかった。

132 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:13:23 ID:???0
熱くないと思った瞬間、あれほどリアルだった自分の体や部屋の存在感は揺らいだ。
おれは、蝋燭から意識をそらし、部屋の出口を探した。
俺はビルの階段を下り、建物の外に出た。
普段と変わらない通りの雑踏。
現実感はあるものの、通行人は俺を避けず、俺も避けようしなかったが、俺が通行人にぶつかる事はなかった。
女霊能者の話では、瞑想修行中の霊能者は、この状態になると自分の知っている道をひたすら歩いて進むのだという。
道を進むと、やがて、これ以上先は知らないというポイントに至るそうだ。
これより先の、知らない道を進むには強い霊力や気力が必要だという事だ。
道が何処に続いているかは、術者の精神レベルや状態、煩悩や功徳、背負っている業などによってまちまちなのだという。
術者は六神通を駆使して「異世界」に分け入って行くそうだ。
この状態を指すのか、この道を辿る瞑想技法を指すのかは判らないが、チベットやインドでは、この「道」にまつわる瞑想を「リンガ・シャリラ」と呼ぶそうだ。
俺は「リンガ・シャリラ」によって道を辿る前に、聞いたことのない誰かの声に呼び戻され、シュワーという泡のような音と共に、元居た部屋の現実世界に引き戻された。
ケタミンによる臨死体験。魅惑的な幻覚世界だったが俺には非常に危ういものに思われた。
女霊能者の話では、見知らぬ道を突き進み、到達した世界が何処なのかを判断するには「漏尽通」の神通力が必要なのだという。
だが、漏尽通は非常に脆い神通力で、功徳を積み全ての煩悩を「止滅」させなければ発揮できないが、発揮できても自己の僅かな煩悩や願望、先入観によって容易に歪められてしまうそうだ。
六神通の他の神通力によっても歪められ、甚だしくは、他の五神通が得てもいない漏尽通を得たものと誤解させる。
それまでの修行で得た成果、現や果、「悉地」への執着を捨て、全ての神通力を放棄した先でしか漏尽通は得られないらしい。
神秘体験や神通力にのみ執着し、功徳を捨て、手段を選ばない京香たち「外道者」では、到底及びそうにない境地なのだ。

133 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:14:24 ID:???0
京香の気の雰囲気が変わり、俺はもしもの場合に備えて「気」を高めた。
深い瞑想状態にあるはずの京香の顔は、苦悶とも恐怖ともつかない表情で醜く歪んでいた。
やがて京香はガクガクと激しく震え始めた。
俺は、以前マサさんやキムさんに施された方法を真似て、京香の胸から気を一気に注入した。
電気ショックに打たれたかのように、京香はバチッと目を開いた。
どうやら「シャンバラ」には行けなかったらしい。
憔悴し切った表情は、京香を実年齢よりも10歳は老けて見せた。
松原や崔 京子に纏わり憑いていたものより、何十倍も濃密な「嫌な空気」が京香を取り巻いていた。
無理も無い。松原達に纏わり憑いていた「憑物」も、「嫌な空気」も、元はと言えば、京香が覗き込み、足を踏み込んで「繋がった」世界から溢れ出たモノなのだ。
俺には見えず聞こえず、何も知る事は出来ないが、京香は「修行」によって得た「神通力」によって、現世に戻っても尚、恐ろしいモノから逃れられずに居た。
多くの人から奪った生命エネルギーが枯渇して、強い光に隠されていただけの魑魅魍魎が見えるようになっただけなのだろう。
こんな短時間の間に、恐怖で人はここまで衰えるのかと驚きを隠せないほどに、妖艶で美しかった京香は老いさらばえていた。
俺はキムさんを呼び京香を女霊能者の元へと連れて行った。
女霊能者は京香の「気道」を断ち切り、京香の体内を通じて現世に繋がった、異世界への「通路」を断ち切った。
「業(カルマ)」が浄化されておらず、功徳の蓄積も全く無かった京香は薬物に「酔って」正常な判断力を持っていなかった。
恐らく、最下層の地獄に繋がった京香たちは、地獄の住民に騙されて、地獄を天界・シャンバラと思い込まされてしまったのだ。
自分のいる世界を正確に判断する為に必要な「漏尽通」を持ち得なかった京香たちには無理も無い事だったのだが。


134 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:15:21 ID:???0
女霊能者が松原や京子を祓わなかったのは、「憑物」の源泉である京香がいる限り祓っても無駄であるし、京香の「気道」を絶てば全ては片付くからだった。
「気道」を絶たれた事により、京香の40年以上に及ぶ「修行」の成果は永久に喪われた。
今生の「悪業(カルマ)」を浄化しない限り、気道は永久に繋がることはない。
それは即ち、来世の「無間地獄」への転生を意味すると言う事だ。
俺は肌を重ね合った縁と言う事で、以前、女友達のアリサの郷里を訪ねた際にお世話になった住職を京香たちに紹介した。
中途半端な「行」を齧った末に「魔境」に堕ちた若者を数多く救ったと言うあの住職ならば、今、正に「魔境」の底に沈み行く京香たちを救えるかもしれない・・・

135 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:16:24 ID:???0
飯を食いながら俺からそれまでの経緯を聞いていたマサさんが俺に言った。
「薬物と言うのは思った以上に危ない代物なんだ。
薬物によって人が見る幻覚は、酔っ払った脳味噌が見せる只のマボロシではないんだな。
ラリって幻覚を見ている間、人は『異次元の風』を確実に受けているんだよ。
その人の功徳や気力、霊力によって、薬物の見せる幻覚は楽しくも恐ろしくもなる。
ただ、確実に言えることは、薬物は身体を傷付け、霊的な、生命エネルギーの循環路である『気道』を傷付け、気の流れを滞らせる。
悪業が『業(カルマ)』となって気道を詰まらせ、気や生命エネルギー、魂の浄化を滞らせるのと仕組みは殆ど同じだ。
気の流れが滞って浄化されない人の見る幻覚は、確実に苦しくて恐ろしいものになって行くだろうね。
クスリに酔い、幻覚と共に『地獄』と繋がる度に、地獄との『縁』を深めて行く。
現世で深めた地獄との『縁』によって、次の来世に地獄に転生する確率は高くなるだろうね」

136 :シャンバラ ◆cmuuOjbHnQ:2008/10/18(土) 06:18:15 ID:???0
ところで、と、マサさんは言葉を続けた。
「お前、女難の相が出ているなw」
「?」
「アリサちゃんだっけ?彼女の霊感や霊力は相当なものだ。天眼通や天耳通、他心通くらいは持ってるかもしれないぞw」
「・・・マサさん、アリサに何か言いました?」
「『俺は』何も言ってないよ。彼女はお前を探していたみたいだけどねw
俺のは、敢えて言うなら宿命通ってヤツかなw
まあ、がんばれやw」
俺は花とアリサの好物のケーキを買って、アリサの部屋へ向った・・・。
おわり

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