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赤い仏像

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Part2
364 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 06:11:20 ID:nuJ7Q8cXO
>>363
ミギャーだかオギャーだか判らないが、例えるならそう猫が喧嘩をしてる時の、赤ん坊が泣いてるような鳴き声がこだました。
咄嗟に俺は走り出した。
後ろからは赤ん坊の泣き声と足音が響く。
捕まったら喰われる。
暗い暗い森に駆け込んで行く。
こういう時、人間の力とは恐ろしく思う。
正に飛ぶように枝葉を掻き分け山を下る訳だが、明かりも無い闇の中を、まるでどこにどう木が生えているのか誰かが教えてくれているかのように、ぶつかりもせず縫うように走っていった。
いや…知っていた?
が、途中ふいに足を取られる。
倒れる刹那何かが頭を過ぎる。
全身に衝撃を受け止めながら湿気った土の感触が広がる。
と、同時に土から血なまぐさいような変な匂いも感じた。
どうやらそこだけ草木も無く、僅かに開けているようだった。
痛みをこらえ飛び起きると、再び走り出す。
後ろには赤ん坊の泣き声が迫っている。
途中ワンワン!と吠えられる。
太郎だ。
ワンワン!ワンワン!と吠えている。
グルルルと二匹の唸り声が重なった。
俺は木陰に身を隠し、対峙する獣の様子を窺った。
ギャウン!太郎の弱々しい悲鳴が森に響く。
ボリボリと音が後に続く。
喰っている。

365 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 06:13:33 ID:nuJ7Q8cXO
>>364
俺は踵を返すと再び走り出した。
また赤ん坊の泣き声が近付いてきた。
どんどんどんどん大きくなる。
オギャーオギャーと泣いている。
息遣いまで聴こえてくる。
次の瞬間!背中に強い衝撃を受け地面に突っ伏した。
『うぅ…』
仰向けに寝返ると、ソレは俺の腹を踏みつけ抑えつける。
もう…駄目…だ。
ギョロギョロとした目が眼前に迫り、俺は気を失った。
目を覚ますと、住職と割烹着のおばさんが俺の顔を覗き込んでいた。
どうやら生きているらしい。
『ん…ここは?』
『おぉ!目が覚めたか!』
住職とおばさんは喜び顔を合わせる。
『俺は…?』
『婆さんが日課の餌やりに行ったらお前が倒れとるのを見付けてな、助けを呼んで今に至ると言う訳だ』
なるほど、助かったらしい。
昨日のアレは…夢?

366 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 06:14:58 ID:nuJ7Q8cXO
>>365
『痛っ!』
痛みを感じ布団を捲り足に目をやる。
歯形だ。
『あ〜、それな。なんか咬まれてたみたいだから薬を塗っといた。なぁに傷は深くはない。剥き出しですまんが、あいにく包帯は切れとってな』
夢では無いようだ。
『ご迷惑お掛けしたみたいですみません。介抱して頂きありがとうございます』
『何か欲しいものない?』

367 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 06:22:23 ID:Z4xaPfVpP
>>366
『ミルキィ』

368 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 06:24:56 ID:QlaUf1Qw0
>>366
『ヴェルタースオリジナル』


369 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 06:43:54 ID:ED19pBrYO
>>366
『お金』

370 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 07:10:15 ID:Z4xaPfVpP
>>366
『オチ』
いや、マジで。お願いしますよ。ここまで引っ張っといて。

371 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 07:16:20 ID:Rt7YvUeGO
>>366
『果汁グミのオレンジとグレープ』

372 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 07:24:59 ID:nuJ7Q8cXO
>>366
『水を』と答えるとおばさんは台所へ向かった。
『しっかしお前さん、いったい何があったね?』
住職の問いに答えようとすると、またあの不気味なひゃひゃひゃという笑い声が聴こえた。
『“見た”んじゃろ?』
お婆さんはニタリと笑った。
『お婆さんはアレが何か知ってるんですね?』
『アレが例の魔物ですか?』
お婆さんは静かにだが深く頷いた。
『その足の鋸のような歯形は間違いない。ヒトアラズの仕業じゃ』
『ヒトアラズって言うとあのヒトアラズか?』
住職が口を挟む。
『ほうじゃ間違いない』
『そのヒトアラズって言うのは?』
『訊きたいか?』
ニタリと笑う。
俺はゴクリと喉を鳴らし頷いた。
婆さんは人形を寝かせた。

373 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 07:26:01 ID:nuJ7Q8cXO
>>372
『昔昔の話じゃ。ある日『ハイどうぞ』
間が悪い。
お婆さんが話し始めたその時におばさんが水を差し出した。
『あ、ありがとうございます』
『ごゆっくりね』
おばさんは部屋を後にした。
気を取り直し再び話を訊く。
『昔昔の話じゃ。ある日集落に不気味な牛の子が生まれた。その牛の子、なんと人の形赤子の姿をしとった』
『人々はこれは禍の前触れじゃと牛の子をバラバラにし埋めてしまった』

374 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 07:27:59 ID:nuJ7Q8cXO
>>373
『じゃが、それからというもの集落に全く子が出来んようなった。人々は牛の子の呪いじゃとはやし立てた』
『そこで、牛の子を供養する為に犬、猫、狸、兎、蛇、熊、梟、鴉、鷹などなどありとあらゆる獣を七匹ずつ生贄とし、生き血を墓に撒いて飲ませた』
『それから集落は子を授かり呪いは見事に破られた』
『しかし呪いを破ったは良いがこの儀式は新たな厄を呼び寄せた』
『ある集落の農夫がお供え物をしに行った時の事じゃ。シシガコミまで来るとその者はおっ魂消た』
『なんと!牛の子を埋めた場所にはぽっくりと穴が空いておるではないか!驚く農夫の耳に唸り声が届く』
『向き直るとそこには!化け物がおった!』
『走った走った、農夫は息も絶え絶え家に着くと、集落中に化け物の話をして回った』
『じゃがそんな話、だぁれも信じやせん。農夫がうなだれておると今まで聴いた事も無いおぞましい遠吠えが聞こえる』
『集落の人々はびっくらこいて皆家々を飛び出し広場に集うた』
『人々は遠目に獣を見た。魔獣じゃった。獣は己の存在を誇示すると満足したのか森に走って消えた』
『それがヒトアラズじゃ』
『お婆さんの言っていた“面白いもの”ですか?』

375 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 07:30:00 ID:nuJ7Q8cXO
>>374
なるほど。
人の悪い婆さんだ。
この婆さん、全て知ってて俺をあんな目に遭わせてくれやがったらしい。
『いんや、違う』
予想外です。
なら何が面白いものだったのか?
お婆さんは『紅仏様の側で寝たら面白いものが見れる』と言った。
俺はてっきり眠ったらだと解釈し、“面白いもの”とは夢を指すのだろうと思い込んでいた。
だから昨日も眠ろう眠ろうとしていた。
しかし違った。
寝ると言うのは一晩過ごすと言う意味で、その晩に俺はあの魔物“ヒトアラズ”に遭遇したのだ。
それ以外は覚えがない。
『違う?では“面白いもの”ってなんなんですか?』
『お前は逃げる時に何か見たはずじゃ、何を見たか覚えとらんのか?』
実に素っ頓狂な質問である。
何度も言うように昨日の晩に俺が見たのは“ヒトアラズ”だ。
それは婆さん自身が説明してくれたではないか。
他には何も見て…いや、待てよ。
何か忘れている。
逃げる最中に感じた既視感、俗にデジャヴュと呼ばれるそれを俺は確かに感じた。
そうか!転んだあの時だ!
確かに俺は見た。
フラッシュバックのようにそれを見た。
『思い出したかい?』

376 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 07:32:28 ID:nuJ7Q8cXO
>>375
『お婆さん、【赤い仏像】に使われた血は何処へ捨てるんですか?』
『牛の子にあげるんじゃよひゃひゃひゃ(笑)』
ビンゴだ。
恐らくはあの場所、俺が突っ伏した時に感じた血の匂いはそれだ。
『ヒトアラズを呼び寄せる時には、必ず人身御供が用意されますよね』
『ほうじゃほうじゃひゃひゃひゃ(笑)』
『それは集落の人間ですね』
『ほうじゃほうじゃひゃひゃひゃ(笑)』
『呪いを成就させるにはそれなりの犠牲が必要じゃ。犠牲を払ってでも遂げたい呪いが在ったとも言えるの』
俺は水をグイと飲み干した。
『お話と介抱、ホントに有難うございました』
『帰るのか?若いの?』
『はいお邪魔しました』

379 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 08:00:12 ID:nuJ7Q8cXO
>>376
『あ、それと太郎ですが…』
『なぁに気にする事は無いよ(笑)あれはこういう時の為に作ったんじゃからひゃひゃひゃ(笑)』
『作った?』
『ほうじゃほうじゃ(笑)毎年決まった時期に線香の灰を混ぜた酒を飲ませてな』
ニヤリと笑った。
『こうなると予見してたんですか?』
『念のためじゃよ。念のため身代わりくらいは立てとかんとな』
『じゃあ、お婆さんは俺の命の恩人ですね。適わないなぁ(笑)』
『また飯でも食いに来いひゃひゃひゃ(笑)』

380 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 08:02:17 ID:nuJ7Q8cXO
>>379
『良いですね(笑)また今度ご馳走になります』
『あ、そういう話なら昨日の晩御飯は何だったんです?』
『昨日か、昨日は山菜ご飯とサバの煮付けに里芋のふかし、ほうれん草のお浸し…』
そこまで言うとばつが悪そうにこちらを見た。
『また、ご馳走になる日を楽しみにしてますよ』
俺は笑った。
『ひゃひゃひゃ(笑)こりゃ一本取られたわい』
痴呆の婆さんも笑った。
何の為かは知らないが面倒な事をしている婆さんだ(笑)
庭に出ると山の駐車場に置き去りな筈の俺の車が在った。
『あぁ、車はこっちに持ってきておいた。中にテントやら何やらほっぽっとったもんも入っとる』
助かった。
正直、とてもあの場所へ戻る気にはなれなかったところだ。
『重ね重ね有難うございます』
俺の肩を叩き住職は笑った。
『なぁに気にすんな(笑)お前さんが来てからというもの、こっちも面白かったよ』
『いい酒の肴も出来たしな(笑)』
生臭坊主は笑った。
見送る三人に会釈すると俺は婆さんの家を後にした。
宿に着き。
帰り支度を整え、一人考えていた。
婆さんの話の細かい部分は割愛したが、その話やこの村に来てから判った事をメモに記していた。
以下はその内容である。

382 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 08:07:31 ID:nuJ7Q8cXO
>>380
赤い仏像
紅仏様(ベニブッサァ・ベニブツサマ)
血仏(チボトケ)
獣非(ヒトアラズ)
獅子囲み=死屍囲み(シシガコミ)
逃げる途中で何かに躓く(フラッシュバック?)
躓いたのは恐らくシシガコミの積み石
【赤い仏像】
昔山の集落で用いられた祭具
奉公に出て孕んで帰って来た娘の赤子の生き血に浸して作られた
それ以降も集落の人々の血を吸い続ける
色はドス黒い
余所者(集落以外の人間)を呪い殺す為の呪具
血の涙を流す
血の涙の跡から来たと思われるが、恐らく血に浸した仏像を取り出し、立てて乾かす際に、他の血が乾き最後に目尻に溜まった血が流れた、その跡だろう
【ヒトアラズ】
昔おぞましい牛の奇形が生まれた(人【赤ん坊】に近い形をしていた)
一節にはアルビノの人間だったというのも有る
牛の子として殺したんじゃないか?と
それを殺し使い魔化したモノ
鳴き声は猫が喧嘩してる時の様な赤ん坊のような鳴き声
風貌は極めて凶悪

383 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 08:08:43 ID:nuJ7Q8cXO
>>382
【シシガコミ】
獅子囲み=獣の王(この集落ではヒトアラズ)を祀る祠
死屍囲み=同上。ヒトアラズを埋め、様々な七匹の獣の生き血を飲ませた墓場(ベニブツサマを作る為に犠牲にした人身御供もここに埋められた。その際に仏像を浸した血の余りも棄てた)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
以上
『“面白いもの”か』
俺は一人呟く。
ヒトアラズから逃げたあの時、俺はあの場所を知っていた。

384 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 08:11:47 ID:nuJ7Q8cXO
>>383
前と同じように俺は逃げた。
シシガコミで前と同じように転んだ俺は全てを思い出した。
前の俺はまだ子供だった。
前の時も逃げてはいたが、追い掛けてくるのはヒトアラズでは無かった。
転んだ俺を押さえつけるそいつは…長だった。
寺の下に飼っている猫の世話をしに来た子供は寺の中を見ていた。
激しく言い争う二人。
長はもう一人を祭具で殴り殺した。
そして此方を向いた。
ビクリとしてかがみ込む。
『誰だ?』
長の声が聴こえる。
子供は走った走った。
だがやがて転び、追い付かれ今にいたる。
首を絞められ薄れて行く意識の中、視界には魔物が写っていた。
名をニンゲンと言う。
以上が俺が見た映像だ。
お婆さんが言うには余所者を消す為に儀式は行われ、人身御供が用意されるとの事だった。
だが前世なのか他人の体験なのか知らないが、俺が見た映像を考えるとどうやら違うらしい。
いつからか集落を守る為の儀式は、都合の悪い集落の人間を消す為の、体の良い免罪符になっていたのだ。
紅葉色の頬をした中居達と女将に見送られ宿を後にする。
車を走らせていると、どこからかまたあの遠吠えが聞こえビクリとする。
鮮やかな葉が降り注ぐ。
ある秋の日の出来事だった。

385 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 08:16:39 ID:APyOeU5JO
>>384
おつ
久しぶりにおもしろかった

386 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 08:20:23 ID:nuJ7Q8cXO
やっと終わった…orz
二年前に比べると何だかここも雁字搦めでやりにくくなりましたね。
起きていたのに待たせてしまった方すみませんでした。
>>381さん含め支援して下さった方々、有難うございます。
気付いた方が居るかは判りませんが『人型焼き』の者です。
夏秋と来たので、今度は冬を舞台にしようと今は鋭意執筆中であります。
また近い内に投下します。
その際はまた宜しく御願いします。


387 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 08:33:41 ID:g/Kqdn/TO
>>386
お疲れ様でした。とても面白かったです。質問いいですか?
『ほうじゃほうじゃ(笑)毎年決まった時期に線香の灰を混ぜた酒を飲ませてな』
太郎は犬ですよね?なんでお婆さんは太郎にそんな酒を飲ませていたのでしょうか?
また『昨日か、昨日は山菜ご飯とサバの煮付けに里芋のふかし、ほうれん草のお浸し…』
そこまで言うとばつが悪そうにこちらを見た。
これは 何でばつが悪そうに…なんでしょうか?また誰が誰に対してばつが悪いんでしょうか?

388 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 08:46:32 ID:nuJ7Q8cXO
>>387
お婆さんは山にヒトアラズが出るだろうと懸念してました。そこで同じ獣(犬)である太郎に何かあった際の身代わりになるよう育てて(作って)いたのです。
ばつが悪かったのは痴呆が演技だとバレたからです。
主人公は敢えて昨夜の献立を尋ねました。
それに乗せられついお婆さんはペラペラと晩餐の内容を語ってしまいましたが、途中ではめられたと気付いた訳です。
そこは、その後の文に今まで『婆さん』とだけ表記されていたのに急に『痴呆の婆さん』も笑った。>>と書いて判りやすいようヒントを出してあります。

389 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 08:49:00 ID:g/Kqdn/TO
>>388
丁寧にありがとうございます。すっきりしました次回作も期待してます。

390 :本当にあった怖い名無し:2009/05/04(月) 08:53:48 ID:nuJ7Q8cXO
ご声援有難うございます。

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