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百物語2011

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Part96
334 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/20(土) 04:41:05.41 ID:hPkmSRgw0
キツネ ◆8yYI5eodys様
「刑場跡の三角石」
【刑場跡の三角石】1/4
あれは高校時代のことです。
週末、部活を終えた私は仲間たちと部室で駄弁っていました。
話の内容はというと……まあ、くだらないシモネタだったんじゃないでしょうか。
とうに日が暮れた部室で、いやはや、どういう会話の流れを辿ったのかは
分かりませんが、みんなで肝試しに行こう!ということになりました。
確か部員のKくんが、
「うちの近くに『出る』って場所があるよ。しかも昔処刑とかやってたらしい」
と言うので場所も決まり。
強がり真っ盛りの年代だった私たちは、口々に幽霊なんていないよ、全然怖くないし、などと強がっていたのを覚えています。
私たちは一度家に帰って学校の近くのコンビニに集合し、自転車でKくんの家に向かいました。
少し山道を登るから、とKくんが言うので私たちはKくんの家に自転車を置かせてもらい、懐中電灯で遊びながら目的の場所へ。
舗装されてはいるものの車1台分ほどの狭い道を抜けると、そこは森に囲まれた真っ暗な広場……入口から懐中電灯で照らしても奥が見えないほど広く、暗い場所でした。
周囲の森に吸い込まれそうな錯覚を覚えていますと、じゃあ始めよう、とKくんが発した声で我に返ります。
おっと、一応ルールがあったので記しておきましょう。
1人ずつ広場に入ってそのどこかにある祠を探し、そこKくんが予め置いておいたうまい棒を持って再び広場の入り口まで戻ってくる。
前の人が戻ってきたら、次の人がスタートする―――
さすがKくん!シンプルで安上がり。

335 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/20(土) 04:41:46.50 ID:hPkmSRgw0
【刑場跡の三角石】2/4
私は順番が最後ということで、のんびり待っていました。
意外にも広場が広いのか、はたまた祠を探すのに手間取ってしまうのでしょうか。
みんな帰ってくるまでに結構な時間がかかり、一息ついてうまい棒をかじる顔は汗だくでした。
さて、いよいよ私の番。
「置いて帰らないでよ?」「えー、怖いの?」などとやり取りした後で、懐中電灯のスイッチを入れて、いよいよ広場に踏み込みます。
中に入ってみると分かるのですが、広場はいびつな形で、奥行きも結構深い。
迷うのは嫌だったので、私は公園を囲む森沿いに進むことにしました。
どれほど歩いたでしょうか?
急に森が途切れた小高い場所に、小さな三角屋根が見えます。
あそこかー、と緊張が解けた私が近付くと、それは木造の小さな、私の腰ほどまでの高さの祠でした。
あった!
うまい棒はその小さな祠の中に1本だけ……ちぇ、キャベツ味か。
懐中電灯でうまい棒を照らしながら祠から離れようと踏みだした時でした。
何故か足を取られてすっ転んだ私。
何かに躓いたのかな、と倒れたまま懐中電灯を足元に向けると、地面から何かが飛びだしていました。
よく見ると、それはちょうど正方形を半分に割ったような三角形の大きな石。
ついてないな、と潰れたうまい棒を拾い上げ、立ちあがろうとした―――その時でした。

336 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/20(土) 04:42:28.02 ID:hPkmSRgw0
【刑場跡の三角石】3/4
『……ずるり。』
突然、数メートル先の森の中から音が響きました。
何かを引きずるような、そんな音。
さらに耳に神経を集中させると引きずるような音に混じって、コキリ、コキリ、と何だか固い物がぶつかるような、こすれるような音まで聞こえてきます。
慌てて森の方に目を向けると、小さな人影が目に入りました。
背の低い人影。
それがずるり…、ずるり…と足を引きずるような格好で私に向かって歩いてきたんです。
するり…コキリ。ずるり…コキリ。
次第に鮮明になるソレは、着物というにはズタボロの布を纏った男の人でした。
それにしては背が、こう、子供のように低い。
その違和感に気付いたまさにその時。
倒れ伏した私の目の前をずるり…コキリ、と男の人が横切っていきました。
過ぎて行ってくれた、とほっとその後ろ姿を見た時、私は目を見開きました。
その男の人が引きずっていたのは両の足の、膝から下の部分。
そうです、膝から下を引きずるようにして、膝先で歩いていたのです。
ずるり、コキリ。ずるり、コキリと。
男の人の姿が森に消えると、フッと身体が軽くなったのを感じました。
そして、懐中電灯とうまい棒を手に、全速力で駆けて入口まで引き返しました。

337 :代理投稿 ◆96j0kyRRhEF2 :2011/08/20(土) 04:43:10.16 ID:hPkmSRgw0
【刑場跡の三角石】4/4
それから数年後。
大人になった私はそんな事があったのなんてすっかり忘れていたのですが、ある時友人と酒のつまみに怪談話をしていたときに、ふと、思い出しました。
それがずっと頭に引っかかっていた私は、去年、地元に帰った時に郷土の歴史に詳しいAくんにその場所、刑場跡だという場所について聞いてみたんです。
Aくんが調べてくれたところ、そこは確かに刑場の跡だったとのこと。
翌日、私はAくんの車でその場所に向かいました。
懐かしのあの広場は変わっておらず、あの日の出来事をAくんに話してみました。
バカな、と一笑に付したA君ですが、男の人が歩いて行った方向を見て驚いた表情を見せました。
Aくんに一言、ついて来い、と言われた私はそのままAくんに連れられて車で移動しました。
その車中でAくんが教えてくれたこと。
それは江戸時代、この地域には藩が定めた「念仏禁制」というものがあり、一向宗、いわゆる浄土真宗が禁止されていたそうです。
しかし農民の中で根強く信仰されており、見つかると見せしめに酷い拷問や処刑を受けたのがあの場所だったのです。
例えば水責め、火責め。
裸にした若い娘に、塩水に浸してピンと張った縄を跨いだ状態で歩かせる。
中には洗濯板のような尖った石の上に正座させ、膝の骨が砕けるまで平たい正方形の石を何枚も膝に乗せていく。
ちょうど、あの時地面から生えていた三角形の石を2枚重ねたような平たい石を。
車が停まり、A君が案内してくれたのは小さな洞穴でした。
隠れ念仏洞といって、一向信徒が隠れて念仏を唱えた場所だそうです。
そしてこの念仏洞は、ちょうどあの晩、男の人が進んだ森の先に当たると教えてくれました。
あの足を引きずっていた男の人は、ひょっとしてこの念仏洞に向かって歩いていたのでしょうか?
砕けたその足でもなお、この念仏洞に。
私は目をつぶり、静かに念仏洞に向かって手を合せました。
心の中で南無阿弥陀仏、と唱えながら。
【完】

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