百物語2011
Part24
Part1<<
Part20
Part21
Part22
Part23
Part24
Part25
Part26
Part27
Part28
>>Part100
評価する!(7942)
百物語一覧に戻る
評価する!(7942)
百物語一覧に戻る
95 :のらはり ◆EUWlqFWJAk :2011/08/19(金) 22:42:59.79 ID:9IkBRKai0
(1/2)
祖父は山の上の送電線の監視を仕事としており、長年T山に登り続けていた。
そのため祖父はT山を知り尽くしていて、休日などはよく祖父を先頭に家族で山登りをしていた。
あれは自分が高校生の時のこと。
春の雪解け後に出てくるふきのとうを狙って、祖父と自分と弟は一緒にT山を登っていた。
よく言う「山のルール」はやはりここでも存在し、すれ違う人との挨拶は絶対だった。
「挨拶しても返してこないのは幽霊だ」などと祖父は半分くらい冗談交じりで話していた。
雪解けの季節とはいえ、まだ雪はあちこちに残っており、それを踏みしめてのぼってくので思ったよりきつく、
先頭の祖父は元気にひょいひょいと登っていたが、後ろの自分と弟は下を向きながらフウフウ言いながら
登っていた。
すると先頭の祖父が「こんにちはー」と挨拶したので、自分たちも「こんにちはー」と言った。
そしてすぐ異変に気づいた。
誰ともすれ違わないのだ。
下を向いていたって足くらいは見えるし、そもそも歩く音が聞こえるはずである。
しかし足など見えないし、足音も聞こえない。
「ねぇ、今誰か通ったの?」
同じことを思っていたらしい弟がそう聞いた。
「ん、何も通ってないぞ?」「え、だって今じいちゃん誰かに・・」
96 :のらはり ◆EUWlqFWJAk :2011/08/19(金) 22:43:56.10 ID:9IkBRKai0
(2/2)
と弟が言いかけたところで、こっちに振り向いていた祖父がキッと山道の前方をにらみつけた。
遠くからクマよけの鈴の音が聞こえる。
微かにだが、複数人のものと思われる足音も聞こえる。
「道を変えよう」
そう言って祖父は笹の生い茂るあきらかな獣道へと入っていった。
「え、待ってよーじいちゃーん」
と祖父を追いかけていった弟の後に続く形になった私は一瞬だけだが、前方から来た集団が見えた。
黒い服を着た男性がなにやら大きな荷物を抱えていた。
その後、しばらくけもの道を歩いて祖父は「今年はふきのとうはやめておこう」と言って、気持ちゆっくりめに山を降りた。
次の日、地元紙を読んでいた祖父が「やっぱりな」と呟いた。
そこにはT山で行方不明になっていた大学生の遺体が雪が解け始めた谷沢で見つかったという記事だった。
「見つかったのがうれしくって、魂だけ先に下りてきてしまったんだな。
あの時はおぼえていなかったが、今はなんとなくおぼえている。
たしかに俺はあの時挨拶をしたんだ。そしたら返ってきたんだ、『ただいま』ってな。」
(1/2)
祖父は山の上の送電線の監視を仕事としており、長年T山に登り続けていた。
そのため祖父はT山を知り尽くしていて、休日などはよく祖父を先頭に家族で山登りをしていた。
あれは自分が高校生の時のこと。
春の雪解け後に出てくるふきのとうを狙って、祖父と自分と弟は一緒にT山を登っていた。
よく言う「山のルール」はやはりここでも存在し、すれ違う人との挨拶は絶対だった。
「挨拶しても返してこないのは幽霊だ」などと祖父は半分くらい冗談交じりで話していた。
雪解けの季節とはいえ、まだ雪はあちこちに残っており、それを踏みしめてのぼってくので思ったよりきつく、
先頭の祖父は元気にひょいひょいと登っていたが、後ろの自分と弟は下を向きながらフウフウ言いながら
登っていた。
すると先頭の祖父が「こんにちはー」と挨拶したので、自分たちも「こんにちはー」と言った。
そしてすぐ異変に気づいた。
誰ともすれ違わないのだ。
下を向いていたって足くらいは見えるし、そもそも歩く音が聞こえるはずである。
しかし足など見えないし、足音も聞こえない。
「ねぇ、今誰か通ったの?」
同じことを思っていたらしい弟がそう聞いた。
「ん、何も通ってないぞ?」「え、だって今じいちゃん誰かに・・」
96 :のらはり ◆EUWlqFWJAk :2011/08/19(金) 22:43:56.10 ID:9IkBRKai0
(2/2)
と弟が言いかけたところで、こっちに振り向いていた祖父がキッと山道の前方をにらみつけた。
遠くからクマよけの鈴の音が聞こえる。
微かにだが、複数人のものと思われる足音も聞こえる。
「道を変えよう」
そう言って祖父は笹の生い茂るあきらかな獣道へと入っていった。
「え、待ってよーじいちゃーん」
と祖父を追いかけていった弟の後に続く形になった私は一瞬だけだが、前方から来た集団が見えた。
黒い服を着た男性がなにやら大きな荷物を抱えていた。
その後、しばらくけもの道を歩いて祖父は「今年はふきのとうはやめておこう」と言って、気持ちゆっくりめに山を降りた。
次の日、地元紙を読んでいた祖父が「やっぱりな」と呟いた。
そこにはT山で行方不明になっていた大学生の遺体が雪が解け始めた谷沢で見つかったという記事だった。
「見つかったのがうれしくって、魂だけ先に下りてきてしまったんだな。
あの時はおぼえていなかったが、今はなんとなくおぼえている。
たしかに俺はあの時挨拶をしたんだ。そしたら返ってきたんだ、『ただいま』ってな。」
百物語2011
Part1<< Part20 Part21 Part22 Part23 Part24 Part25 Part26 Part27 Part28 >>Part100
評価する!(7942)
百物語一覧に戻る
怖い系の人気記事
百物語
→記事を読む
本当に危ないところを見つけてしまった
スレタイの場所に行き知人が一人行方不明になってしまったHINA ◆PhwWyNAAxY。VIPPERに助けを求め名乗りでた◆tGLUbl280sだったが得体の知れないモノを見てから行方不明になってしまう。また、同様に名乗りでた区らしき市民 ◆34uqqSkMzsも怪しい集団を目撃する。釣りと真実が交差する物語。果たして物語の結末は・・・?
→記事を読む
短編シリーズ
→記事を読む
毒男の怖い話とか音楽とか雑談とか
音楽をお供に、上質な怪談を味わってみませんか?
→記事を読む
師匠シリーズ
→記事を読む
唯一の友達の性癖が理解できない。
唯一の友達に唾液を求められ、VIPPERに助けを求める>>1。しかし運が悪いことに安価は「今北産業」で、スレの存在を友達に知られてしまう。そして事は予想だにしなかった展開に…!!
→記事を読む
守護霊「ゴルゴマタギ」
かのゴルゴそっくりなマタギの守護霊が憑いている友人を持つ報告者。そしてたびたび危機に巻き込まれるが、そのゴルゴよって救われる友人。愉快な心霊話に終わるかと思いきや、事態は予想外に大きくなっていき、そして…
→記事を読む
屋根裏から変な音する。獣害に詳しいやつ来てくれ
いっそ獣害だった方が救いはあった。
→記事を読む
笑い女
あなたは最近いつ人に笑われましたか?その声は耳に残ってはいませんか?居た。居た。居た。
→記事を読む
【都市伝説】都市伝説を語る会管理人が選ぶ【50選】
→記事を読む