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百物語 第二回

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Part16
57 ::2006/08/11(金) 22:07:10 ID:QZLTaZZu0
第十六話 【部屋の女】
3年前、私の兄はとあるアパートの1階に住んでいた。
スーパーやバス停などは近かったが、窓のすぐ向かい側に高い塀が
そびえているせいで部屋はいつも薄暗く、常に湿気に満ちた陰鬱な部屋だった。
ある日曜日の昼間、うとうとと仮眠を取っていた時のこと。
兄は何となく人の気配を感じ、まだ頭がはっきりしないまま目を開けた。
仰向けの兄の上に見知らぬ人間が馬乗りになり、顔をのぞき込んでいる。
長めの髪と体型で、かろうじて女だと分かった。
「あ……れ……」
女はぶつぶつと、何かを呟いている。
眠気が一瞬で吹き飛んだ。
体を動かそうとしたが、ぴくりとも動かない。
それどころか悲鳴さえ出せない。
兄がもがいている間に、女は両手を近づけてきて、兄の首をぎゅっと締め上げた。
「……れ……あや……謝れ……」
女の言葉が次第に聞き取れるようになってきた。
低く絞り出すような声で、そう呟き続けている。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
分かった瞬間、兄は叫んだ。声は出なかったが、少なくともそのつもりだった。
そして直後、気を失った。
やがて気がついた時には、室内には誰もいなくなっていた。
現在は別のアパートに引っ越しているが、あの部屋で何かあったのか、
何を謝れと言っていたのか、3年経った現在でも分かっていない。
【完】

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